オンラインにて8月24日~26日にわたって開催の「CEDEC2021」。ここでは、8月25日に行われたセッション「コール&レスポンス!- FINAL FANTASY VII REMAKE インターグレード――生ライブでプレイしてるかのような音楽演出と日英2言語対応プロセス」の内容をお届けする。

登壇者はスクウェア・エニックスより鈴木光人氏、河盛慶次氏、土岐望氏。このセッションでは、「FFVIIRインターグレード」(以下、「FFVIIRI」)のインタラクティブミュージックの制約下に基づいて作成された事例と制作についての紹介が行われた。

「FFVIIRI」におけるBGMの使用方法の数々

まずは河盛氏からBGM再生法の基礎知識として、「FFVIIRI」におけるBGMの使用方法が紹介された。

「FFVIIRI」では、ほぼ全編でインタラクティブミュージックが採用されており、実装例としてまず挙げられたのはフィールドからカットシーンへのBGM遷移。フィールド曲では「忍びの末裔」が使用されており、そのままカットシーン曲に遷移するように作成されている。

フィールドからバトルシーンへと遷移するパターンもあり、フィールド曲のメロディを引き継ぎながらバトルBGMへと遷移するパターンではバトル曲に入ったところで少しボリュームを上げるという工夫が。

本来であればスムーズに遷移させるためにはボリュームはいじらないほうがいいそうだが、バトルはテンションアップを狙うためにあえて少しボリュームを上げているという。バトルBGMにはフィールドBGMよりも派手なパーカッションを入れたりすることで、更にプレイヤーの気分を盛り上げる工夫もしているそうだ。

だが、このフィールドからバトルへの遷移には弱点もあり、曲がスムーズに入りすぎることによってバトルに入るインパクトが減ってしまうこともあり、それを軽減するためにバトルに入る際にHIT音や効果音などを足したりする。

また遷移からのバトル曲はイントロから入るわけではないので、シチュエーションにあわせて臨機応変に鳴らし方を変える必要があり、そのバトル曲が初めて流れる時や、強敵と戦う時はあえてイントロから流すことによって、曲の印象とバトルの印象を刻み付けることが出来るという。

スムーズに遷移させることばかりに囚われても、より良いゲーム体験にはつながらないようだ。

次は、ボス戦「ガードスコーピオン」戦でのBGM遷移例が紹介された。ボス前のカットシーンBGMから、ボス戦へと突入してボス戦BGMフェーズ1に切り替わる。

「FFVIIR」は基本的にボス戦は3~4フェーズで制作されており、楽曲もフェーズごとに用意されている。フェーズ1では、「FFVII」ファンにも印象的な「更に闘う者達」のフレーズを中心に進行。ボス戦ではフェーズが変わる時にカットシーンが入ることが多いため、そにれあわせて音楽を切り替えることでフェーズが変わったことをユーザーに印象付け、フェーズ2からは更に曲が展開して「爆破ミッション」のフレーズを入れている。

なおボス戦でのフェーズ移行は曲のテンポや小節などの情報はまったく考慮されていないため、映像と音楽のタイミングが多少ズレても違和感が出ないように、カットシーン部分の楽曲を作成するという。

最終フェーズでは盛り上がりを演出するため、これまでよりもテンポを上げたアレンジに。バトルにもよるが、最終フェーズではそのまま撃破カットシーンに移ることが多いため、撃破カットシーンに繋がりやすいような曲の構成で制作することもあるそうだ。

そして最後の撃破カットシーンでは曲がしっかり終わるように制作するが、このシーンでもプレイするユーザーによって音楽のタイミングが前後するため、違和感なくはまるように制作しているという。

最後はダンジョンの進行や状況に合わせて遷移するケースについて、河盛氏は軽く触れた。例えば「地下下水道」など背景があまり変わらないロケーションの場合、ギミックの進行度はBGMでもわかるようになっている。

実際に楽曲を制作している鈴木氏は、「ゲームでのインタラクティブミュージックは、作曲家の個性とスキルが発揮されるところ」と語った。

ダンジョンのBGM遷移は、鈴木氏より後述
プレイヤーの動きに連動させるための楽曲制作法

ここからは「FFVIIR」「FFVIIRI」で数多くの楽曲を制作した鈴木氏から、具体的なデモと共にプレイヤーの動きに連動させるための楽曲制作法が紹介された。

具体的には、「TRACK&シーケンス」「EXPORT」「編集&プラグイン」の3つが挙げられ、鈴木氏が実際に使用しているソフト「Nuendo」の画面を使って鈴木氏の楽曲の作成手法が紹介された。

使用されたのは、「FFVIIRI」で「物資輸送場」~「廃棄物処理場」~「メインピラー整備場」と繋がっているダンジョンのシーン。なお、ここからは「FFVIIRI」のサウンドトラックを持っている人はぜひ実際に「ラナラウンド Pt.I~V」(※「ラナラウンド Drum Solo」を含め、計6曲)を流しながら読んでほしい。

このダンジョンではBGMをずっと鳴らし続けたいというオーダーと、ジャズテイストの音楽が良いというオーダーがあったそうで、ライブ会場でゲームをしているような雰囲気を目指したという。

フィールドとバトル、カットシーン、全ての要素を含んだ曲にしなければならなかったが、テンポは全てBPM135で統一したという、鈴木氏。画像左側のカットシーン名と共に、BGMが遷移していく。

黄色のファイルはメロディがないカラオケのようなもの、赤がフルトラックの完全版で、バトルに入るとメロディが入り、バトルが終わるとメロディが抜けるようになっているそうだ。こうすることで、BPMが同じままでもスピード感が損なわれることなく変化を与えられるという。

黄のファイルと赤のファイル下にもうひとつファイルがあり、そちらは短い音がずっとループしているが、これはパーカッションのみのファイルで、鈴木氏はドラムフィルと呼んでいるとのこと。

ドラムフィルはバトル中にもずっと鳴っているが、あえて別のファイルに分けてある。その理由は、バトルからカットシーンに入る時などに繋がりが上手くいかないことがあり、フィルインを1小節か2小節いれることでタイミングを合わせるためで、ドラムフィルによってカットシーンのBGMへとスムーズに繋がるようになっているのだという。

更に、「ジージェが逃走を始めるシーン」「リフト穴を降りたところ」「メインピラー」と、ダンジョン内で次々とBGMが変わっていく様子をデモで再現。カットシーンの曲も含めてBPMは全て135で統一されているのは前述の通りで、縦軸・横軸、どこで切り替わってもいいようになっているそうだ。

オレンジがドラムのファイル、黄色がメロディで主にサックスやトランペット、緑がベースでこの楽曲では主にウッドベース、青がアザートラックでギターなどが入っている場合が多いという。この4つのファイルをパートに分けてMIXしているのが「ラナラウンド」メドレーだ。

鈴木氏は楽曲が完成してから構成を考えるそうで、ドラムのパートを抜いてみたり、メロディを抜いてみたり、リアルタイムで色々遊び心を持ちながら試行錯誤しているという。「ラナラウンド Drum Solo」は、ドラムだけで鳴らすとグルーヴ感があって良いと感じたので、このようなパートも作成したという経緯を語った。

また、同じ曲でもドラムパターンを変えると違う雰囲気になることも。「ラナラウンド」はジャズだったので、ドラムでのアレンジ効果を出しやすく「今回は特に変更はしなかったものの、次回はこういうアレンジも出来たら良い」と、ドラムのパターンを変えた楽曲を流す場面もあった。

ドラム以外でもソロパートや、歌の抜き差しだけでも楽曲に表情をつけやすくなるという、鈴木氏。「テンポが同じでも、これだけ表情つけられる」という「ラナラウンド」一連の楽曲は、ぜひ「FFVIIRI」本編かオリジナルサウンドトラックで実際に確認してほしい。

更に、鈴木氏はドラムで様々な効果を出せることを実演。「今はドラムの波形自体を手動で動かしているけれど、ランダムで波形を動かしてドラムパートを作れると面白いかもしれない」と語った。

大事なのは、ミキシングしやすいように各トラックで楽器の種類をまとめることであり、プロジェクトファイルの受け渡しルールについても重要だという。なお、メロディはMIDIでコントロールできるほうが良いこと、歌詞などもあわせて共同制作者に送ることを考え、共通DAWのPJファイルで受け渡しすること、どの環境でも同じように楽曲が聞けるためにも標準プラグインを使用することなども大事だと述べた。

日英2言語でのボーカル曲、驚きの作成法

次は土岐氏が「FFVIIRI」で実際に使用されたBGM「かめ道楽」シリーズを例に、日英2言語でのボーカル曲の制作方法を紹介。「かめ道楽」シリーズは、日本語版7曲と歌入りジングル2曲の合計9曲あり、曲数は英語版でも同じだ。基本的にバックオケは共通で、日本語版のデモが作られた後、英語版のデモを作成し、それから収録となる。

まず日本語の歌詞が完成したらローカライズ部に翻訳を頼み、そこから再びサウンドチームに英語詞が戻され、どうしても歌詞とメロディが上手くはまらない場所がないかなどの確認を行う。

ローカライズ部に英訳を依頼する場合、ローカライズ部は制作中のゲームの世界観を理解しているため、世界観を反映した歌詞にしてくれるという利点があるそうだ。だが、メロディにはまらない歌詞になることがあり、何度も修正する可能性がある。そのため、サウンド部でも言語の特徴にあわせてメロディを微調整するなどの必要があるという。

また、日本語と英語の言語の特徴として、日本語は単語のどこを高く読むかによる高低差アクセントが大事なのに対して、英語は単語のどこを強く読むかの強弱アクセントが大事であること。

日本語はカナ1つを同じ長さで発音するモーラ拍リズムなのに対して、英語は強勢拍が一定の感覚で繰り返される強勢拍リズムであることも挙げ、英語の場合は音楽にも強拍・弱拍という基本リズムがあり、日本語用メロディにそのまま英詞をあてはめるとメロディが持つ強拍・弱拍とずれて不自然になることがあるという。

そこで「かめ道楽の歌」を実例に、日本語詞と英語詞の時の変更点を見てみよう。

まずは「かめ道楽の歌」の「すてきなひととき」というフレーズだが、ここを英詞にすると「Everyone loves our ambience」となる。

それをそのままあてはめてみると、強拍・弱拍が楽曲のリズムと合わなかった。特に「bi」の音などは不自然だったという。

そこで歌い出しをずらし、更に元々なかった3拍目を追加。高低差も低くして調整した。こうすることで、日本語と英語のどちらもで統一感を持たせつつ、違和感を失くすことが出来たそうだ。

他にも、「ゆっくりがっつりかめ道楽」は、収録当日に歌い方を変更したという。日本語詞は「ゆっくりがっつり」という歌詞で、英詞にしたものは「You n' me,nice and easy」。メロディを多少変更した程度ではまりそうだったが、収録当日にボーカリストの人が歌いにくそうにしていたため、急遽リズムを変更したという。

具体的には「You」や「nice」の16分音符が、8分音符になっている。英語で強く読む部分は音が長くなるため、8分音符にすることで発音がしやすくなるのでは、と土岐氏は語ったが、ここはボーカリストの個性にもよる部分でもある。だが、結果的にはポップ調の曲なのでこちらのほうがポップらしくなったこと、より英語らしいフレーズにすることができたそうだ。

この土岐氏の仕事は、鈴木氏も河盛氏も詳細を知らなかったという。

なお、英語版の「かめ道楽」シリーズはオリジナルサウンドトラックに収録されているが、「FFVIIRI」にて言語を英語に切り替えると、日本語版の「FFVIIRI」でも「かめ道楽」シリーズのボーカルが全て英語版になるという裏技があるので、ぜひゲーム中でも実際に聞き比べてみてほしい。

リモート録音を活用したボーカル制作

次は異なる環境で収録した音声ファイルの音質共通化を目指した編集&プラグイン活用法として、リモートでのボーカル制作事例について、鈴木氏から紹介された。

「かめ道楽音頭」で多重コーラスが必要になったのだが、現環境では大人数でスタジオに入れないため、サウンドスタッフ各自の環境で録音してもらい、それを鈴木氏宛に送ってもらったのはいいものの、録音環境の違いが音質に影響してしまったという。

具体的には、自宅録音で起こりがちな「部屋鳴り」と「環境ノイズ」で、特に自宅録音の場合、今の季節ならばセミの鳴き声が入ってしまったりすることも、環境ノイズに含まれる。これらのノイズを取り除くことで、エフェクトノリが変わり、ミキシングもしやすくなり、奥行きが作りやすくなるという、利点がある。

そこで鈴木氏は、ノイズを取り除くために「IZotope RX8」という音楽制作とポスプロに適したオーディオ・リペア・ツールを使用したという。特に部屋鳴りなどの残響音を除去する「De-Reverb」、バックグラウンドのノイズ除去に使う「Spectral De-noise」、PC内蔵マイクなどのハムノイズ(ブーンという音)を除去する「De-Hum」を使用することで解決したそうだ。

ノイズを抽出し、そこに「Spectral De-noise」を使用。そこから更に細かい調整を行い、ノイズを取っていくという作業を、ひとつずつ全てのトラックに行ってゆく。「De-Reverb」などをかけてミックスを進め、直したファイルを重ねてそこにメロディも重ねると完成だ。

これはぜひ実際に「かめ道楽音頭」を聞きながら読んでほしいところだが、随分大人数で歌っているように聞こえるものの、ひとりで3パターンくらいの歌を取ってもらっているため、実際の参加人数は歌の印象よりも少ないらしい。

鈴木氏はリモートレコーディングのメリットについて、離れた環境で時間に関係なく自由に録音が可能であることや、方向性と締め切りだけを明確にしておけば立会も必要ないこと、みんなで制作しているという一体感などを挙げ、「リテイクなしで、どんなファイルもラッキーという姿勢」や「それぞれの個性を楽しむ」ということが重要であることも語った。

最後に河盛氏は「今後はより作曲や実装段階でのスキルに加え、アドリブ感と未来志向が問われるのでは」と、土岐氏は「言語の特徴に寄り添ったメロディ作りで違和感を取り去り、さらにノリの良い楽曲を目指したい」と、鈴木氏は「固定概念にとらわれずアイデアを惜しみなく投入していき、リモート多重収録などのような事例は今後も積極的に行っていきたいこと」などを語り、セッションは幕を下ろした。

改めて「FFVIIRI」をプレイしながら、或いはオリジナルサウンドトラックを聞きながら、「FFVIIRI」の音楽の様々な挑戦を、辿ってみてほしい。

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