8月24日に行われた「CEDEC2021」のセッション「『アサルトリリィ Last Bullet』「イノチ感じる」キャラを魅力的に見せるための思考スタンスとSpineを中心とした実装アプローチ」の内容をレポートする。
ポケラボがブシロード、TBS、シャフトとともに取り組む「アサルトリリィ Last Bullet(以下、ラスバレ)」は、アクションドールとフィギュアのハイブリットコンテンツを軸としたさまざまな媒体で展開する「アサルトリリィ」のゲームアプリとなっている。
講演者の武井俊文氏は、ポケラボでは演出・モーションデザイナーとしてさまざまなゲームアプリの開発に参加。「ラスバレ」ではアートディレクターを務めている。本セッションでは「ラスバレ」の素材作りで大切にしていること、そしてキャラクターの魅力を届けるためにした4つの選択について解説していった。
「ラスバレ」のグラフィックにおいては、“CCR”をユーザーに届けることを意識して制作しているという。これはコンセプト(Concept)、コネクト(Connect)、リアリティ(Reality)の頭文字をとったもので、それぞれに期待する効果が異なるという。
コンセプトが示すのは、ユーザーを惹き付ける要素。本作ではメディアミックスで展開していることもあってアプリにおける全体のコンセプトを言語化する必要がある。それを“儚くも美しく戦う少女達”というキャッチコピーに集約し、それを構成する要素として女子高生×巨大な武器×世界の荒廃感というコンセプトを共有している。
一方、マスに向ける狙いもあって、本作の特徴の一つである女の子同士の関係性は、コンセプト時点では全面には押し出さないようにしているという。メインとなるプロモーション用のビジュアルは、廃墟をバックに武器を持った女子高生という対比のあるルックを描くことで、ただの美少女ゲームではないという物語の背景の危機感を匂わせている。
ユーザーに対して何をフックとするかを言語化することで、プロモーション広告などのデザイン展開におけるNG部分も分かりやすくなる。結果的に、フォントやレイアウトもコンセプトを伝えることを意識したレイアウトで統一されている。
コネクトは、ユーザーを定着させる要素を指している。「アサルトリリィ」では女の子同士の濃密な関係性が重要なファクターとして表現されているため、特定のペア同士を絡ませた一部のメモリアをカップリングメモリアとして排出することで、いわゆる“エモい”“尊い”といったユーザー感情を意識し、構図や仕草も関係性に重きを置いている。特に誰が誰に対して、どういう感情を持っているのかを明確化することを重視ししているとのこと。
また、同じキャラクターの日常と戦闘を極端な対比として描くことで、バックボーンとしての過酷な状況や深い設定をユーザーが感じ、日常のメモリアがより尊いものとなるように意識しているという。
そのほか、アドベンチャーパートにおける立ち絵にも注意を払っており、仲の良いキャラクター同士のベースポーズは相反した向きにならないようにしたり、複数キャラとの絡みが想定されるキーパーソン(主人公)は特定のキャラクターに向かないように意識されている。
最後のコンセプトとなるリアリティは、ユーザーに想像させる要素を示している。イラストを動かすことの利点はリッチに見せることではなく、絵の中に“空気感”と“時間軸”を発生させることにあるとし、結果としてユーザーがその奥にある世界に感情移入しやすくなるという。
バトル画面も2Dでありながらポストエフェクトやリアルな落ち影を入れるなど3Dの概念を可能な限り取り入れたり、画面外まで大きく使ったクリティカルアクションによってステージの広さや立体感にこだわるなど、リアリティの増加にこだわっている。
このように、CCRとは何にこだわるかを明確にするものであり、本作においてはユーザーに届ける上での共通認識を開発チームで持つことが可能となった。
とはいえ、これらのこだわりを実現するためにはコストや工数の肥大化は避けて通れない。その問題を解消するために、「ラスバレ」では大きく分けて4つの選択が行われている。
1つ目は、大部分の設計に2Dを、アニメーションにはSpineを選択したこと。「ラスバレ」ではキャラクター同士の絡みや繊細な表情を描写したメモリアイラストを中心商材として設定。その上で、キャラクターへの没入感を大事にするためにメモリアからの画面遷移でユーザーの心象を途切れさせることがないよう、キャラクターはすべて2Dの描写を選択している。
ただし、ここでは本IPの特徴でもある「CHARM」と呼ばれる変形ギミックを備えた武器の扱いが課題となった。CHARMのデザインは原作のフィギュア化にも耐えうるよう変形機構にも整合性をもたせているため、3Dのほうがその魅力を引き出せることは確実だった。
また、仕様上すべての武器をすべてのキャラクターが装備できるようになっていたことから、Spineの制作におけるコストが増加することが懸念されたほか、メモリアにもCHARMを描写する必要性があり、その際のギミックの整合性やディティールの細やかさを担保することへの監修コストも高いものになると予想された。
そこで、変形武器を活かすための選択として、キャラクター部分は2D、武器は3Dと組み合わせた仕様にすることに。別カメラで映した3DモデルをSpine側で設定した1枚のレンダーテクスチャに投影してキャラクターに持たせている。これにより、Spineモーション、3Dモーションの別軸での持たせ方が可能になり、同時に3Dモデル化することで詳細画面でも立体的な変更を見ることができるようになった。
また、3Dモデルを制作していることを活かして、社内外で使用可能なブラウザツールとしてCHARMのビューワーを開発。3Dモデルをイラストのあたりに使うことで制作や監修のコストを大幅に軽減することに成功している。
3つ目の選択は、メモリアアニメーションには自社システムを採用したこと。最初はLive2D、Spineといった2Dアニメーションソフトの仕様を検討したものの、従来の工程では莫大なコストがかかってしまい、特にセットアップとモーションについては作業者のスキルによってスピードやクオリティに振れ幅が出てしまうことを懸念。さらに「ラスバレ」では、月間でのメモリアの想定排出枚数が多かったこともあって、監修者の作業工数も考えると現実的では無かったという。
そこで、カードイラストアニメはマイページに設定可能な仕様上、ループするという特徴から、目を引く部分だけをリッチに動かす、シネマグラフ的な演出を採用。具体的には1枚絵の動きの中で“揺れもの”を重要視し、アニメーションの対象をそこだけに絞ることに。
揺れものは一番工数とコストがかかり、かつクオリティに差が出やすい部分でもあったため、逆にそこさえ解消できれば大きく工数を削減できると考えて、揺れものをすべて数値で管理できる「メモリアWAVEシステム」を作成。これにより、セットアップとモーションの工程を大幅に簡略化することに成功し、最終的に1点あたりの作業工程が同社比で約1/8に。また、このシステムではキャラ人数増加による負荷がほぼ無いことも利点となっている。
アドベンチャーパートでの立ち絵表現は運用コストと表現の担保のバランスを考えることが求められ、「ラスバレ」においてはキャラクターの衣装を切り替えていく必要があり、かつ制作人員も限られていたことから、それを見越した設計が重要だった。結果として、教育や導入に対するコストが低く、社内での知見も豊富だったSpineを使用した自社ツールを採用したのが、4つ目の選択だ。
「ラスバレ」は女の子同士の関係性を描く作品であることから、プレイヤーはいわゆる神視点でのプレイとなり、ゲーム内には存在しない。そのため、ユーザーに対するキャラクターの動的反応は不要で、必要要件もシンプルだったことからSpineでのシステムを組むことに向いていた。
制作にあたっては「汎用性」「追加が可能な仕組み」の2点を最重要としてシンプル化を徹底。表情の基本は喜怒哀“驚”パーツで構成。眉毛と口パーツの組み合わせをスクリプトで指定することによって16パターンの表情を表現、そこに目のパーツを組み合わせることでかなりのパターンの表情を用意できるように。その中でも、中割に関してはいわゆるジト目や寝ぼけ目に使えるように、まぶたの閉じ方を抑えている。
瞬き・リップシンクの制御はシステム側でランダムに自動制御。リップシンクは母音に合わせたものではなく、ボイスの尺に合わせたものになっているという。その一方で、視線の制御に関してはSpineでの導入が難しかったことから、一旦オミットされている。
また、素体共通化による衣装差し替えコストの最適化を最優先にしており、顔のみ立体的な動きが可能なセットアップに。顔から下はメッシュ変形によるモーションは行わないようにしている。前述した関係性による立ち絵の違いは、モーションの汎用性を感じさせにくくする効果もある。
これらの取り組みを経て、優先度を明確にし、必要なものの精査を丁寧に行うことでSpineでもユーザー満足度の高い表現は十分だという結論に達したとのこと。ただし、セットアップのクオリティがモーションのクオリティに直結すること、シナリオスクリプターの表現技術が必要になってくることにも言及していた。
素材の見栄えをいかに良くするかという観点だけではなく、いかにコンスタントにユーザーが求める素材を提供していくのか、そしてそのためにQCD(クオリティ・コスト・デリバリーの頭文字をとった生産管理に必要な視点)上の課題を洗い出していくのかを実例を交えて紹介していった本セッション。「ラスバレ」でのゲーム体験と照らし合わせると、実装のアプローチがしっかりと反映されているように感じられた。
本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。


































































