ダウンロードで遊べる、気になるゲームの魅力を実際にプレイした上でご紹介する「DLゲームインプレッション」。第7回は、Nintendo Switchにて配信中の横スクロールアクションゲーム「熊と大将さん」をピックアップ!
「熊と大将さん」は個人ゲーム開発者のジャック・ボイラン氏が開発したゲームだ。Switchのeショップをこまめにチェックしている方ならば、本作の色鮮やかで異彩を放つグラフィックが印象に残っているかもしれない。
筆者もこのビジュアルに目を奪われ、「どんなゲームなのだろう?」と手に取ってみたのだが、その中身は極めて真っ当におもしろい、そして作者が描きたい世界を表現し尽くしたであろう、愛すべき作品となっていた。
ちなみに本作は製品版こそNintendo Switch専用タイトルだが、ひとつ目の惑星のみをプレイできるデモ版はPC向けのインディーゲーム販売サイト「itch.io」にて無料でダウンロードできる。サイト内で、原題である「The Bear And The Admiral」で検索するとヒットするので、お試しプレイをしてみたい方は、こちらに触れてみるといいだろう。
爽快アクションで紡がれる、宇宙を股にかける冒険
「熊と大将さん」で最初に心を動かされたのは、バイオリンの旋律が美しいテーマ曲だった。このテーマ曲はエニックス(現スクウェア・エニックス)の「天地創造」や、ガストの「アトリエ」シリーズなどの音楽を手掛けた高岡美代子氏が作曲を担当している。YouTubeで公開されている海外向けのトレーラーでもこのテーマ曲は流れるので、気になった方はチェックしてみてほしい。
宇宙船で旅をしていた“大将さん”と相棒の“熊”が、宇宙にできた巨大な壁に激突。この壁を取り除くために、いろいろな惑星に散らばった“ブルーグル”と呼ばれる石を集めるというのが本作のあらすじ。
大将さんと熊のいずれかを操作してアクションステージに散らばるブルーグルを集めれば、一定数を入手するたびに新たな惑星に進めるようになり、最終的には6つの惑星を股に掛けて冒険することになる。ひとつの惑星の中にもいくつものモチーフが混在しており、各ステージの世界観は多種多様だ。
ストーリーは宇宙船内での熊と大将さんの会話によって語られる。日本語の品質はハッキリ言って機械翻訳レベルだが、そこまで難しい話ではないので、なんとなく理解する分には支障は無かった。なお、本作の対応言語は世界各国の13の言語に加え、くま語(!?)の合わせて14言語からゲーム開始時に選択できる。この規模のゲームとしては珍しいくらいの対応言語のバリエーションだ。
肝心のアクション部分だが、これがなかなかよくできている。基本操作は左右への移動とジャンプ、攻撃手段は銃撃とグレネード。銃撃は左スティック/方向ボタンと組み合わせて8方向に撃ち分けられ、遠くの敵を倒すのに使える。グレネードは放物線を描いて手前に落下。威力が高く、連続して投擲できるので、敵との位置関係次第では銃撃より有効だ。
ふたつの攻撃手段を状況に応じ使い分けて敵を倒し、ステージを進んでいくのは爽快で、夢中になれる。敵は倒すたびにハートやお金をばら撒き、ハートを取ると体力が回復、お金は後述するショップで使用することができる。
各ステージの地形やギミックもけっこうバリエーションが豊富。ブロックを壊したり、トランポリンで跳ねながら進んだりといったギミックで、楽しませてくれる。
ステージの途中にはアイテムが落ちていることも。特殊な銃を拾えば広範囲に拡散する弾を撃ったり、強力なレーザーを放てるようになるなど、敵をより爽快に倒せるようになる。ジェットパックを拾えば空中でジャンプボタンを長押しして、ゲージがゼロになるまでホバー移動が可能に。ロケットブースターは猛スピードでダッシュし、触れた敵を蹴散らす。なお、各惑星にはショップが配置されており、一部のアイテムはここで購入して、好きなステージで使用することも可能だ。
ステージの途中で熊、または大将さんのアイコンに触れれば、操作中のキャラクターが倒れても、もう片方のキャラクターでチェックポイントに戻されずにプレイを継続できる。背中に乗せてくれる動物が登場することもあり、彼らは攻撃も強力な上、ダメージを一度肩代わりしてくれる。動物たちは一度ダメージを受けると逃げ出してしまうが、もう一度背中に乗れば、また力を貸してくれる。このあたりはスーパーファミコンの「スーパードンキーコング」シリーズを彷彿とさせる要素だ。
ボス戦のステージもある。ボスの行動パターンをある程度把握するまで、倒すのに少々手こずるかもしれないが、その分やり甲斐がある。このように、ステージ中にはいろいろな仕掛けや工夫が凝らされており、どのステージも攻略は実に楽しいものになっているのだ。
ちなみに今回はひとりプレイのみを対象に紹介したが、本作はJoy-Conを分け合っての協力プレイにも対応している。大将さんと熊、それぞれを操作して、仲の良い友達と協力しながらステージを攻略するのも、ひとりプレイとはひと味違う楽しさが味わえることと思う。
無邪気な子どもの頭の中に迷い込んだような体験
攻略を続けていると、敵キャラクターや背景のグラフィックもまた、作者の膨大なイマジネーションが注ぎ込まれたことによる、多様な姿を見せてくれていることに気づく。はじめは「すごく変わっている」という感想でしかなかった「熊と大将さん」の鮮やかで奇妙な世界が、気づけば「次はどんな光景が見られるのだろう!」とワクワクさせてくれていたのだ。
この世界は、ジャック氏が5歳の頃からノートに描いていた落書きがモチーフになっているという。そうして作られた本作はまさに、大冒険を夢見る無邪気な子どもの頭の中に迷い込んだような体験で、商業的に開発されたゲームでは決して体験できないものだろう。
それでいて、プレイフィールは「スーパードンキーコング」シリーズと「ガンスターヒーローズ」を組み合わせたようなものになっており、2Dアクションの楽しさが詰まっている。
いま挙げたタイトルのような完成度を有しているわけではなく、引っ掛かりを覚える部分も無くはないが、プレイしていると作者が思う「楽しい」が詰め込まれていることが分かり、ゲーム好きとして愛さずにはいられない。対応言語の豊富さも、この作品を世界中のより多くの人々に体験してもらいたいという想いの現れなのだと思う。
グラフィックにビビッと来たなら、そして手軽に楽しめるアクションゲームが好きなら、ぜひプレイしてみてほしい。
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