「これぞ!」という女性向けコンテンツについて語っていく連載企画「おとめげ!」。Nintendo Switch用ソフト「終遠のヴィルシュ -ErroR:salvation-」についてお届けします!
目次
「おとめげ!」は、イケメンと可愛い女の子をこよなく愛するライターが、さまざまな乙女コンテンツをご紹介する連載企画です。今回はアイディアファクトリーの女性向けゲームブランド「オトメイト」から2021年10月7日に発売したNintendo Switch用ソフト「終遠のヴィルシュ -ErroR:salvation-」についてお届けします!
「終遠のヴィルシュ -ErroR:salvation-」ここがポイント!
・SFと中世ファンタジーが融合したような世界の真実
・さまざまな「死」にまつわる謎と、キャラクターの本質が紐解かれていく過程
・何度も“絶望”を乗り越えて辿り着く、2人にとっての確かな“救済”
「終遠のヴィルシュ -ErroR:salvation-」とは?
“――これは永遠の終焉へ向かう物語。”
黒き災いの花――リコリス・ノワージュに囲まれた小国アルペシェール。23歳までに死に至る呪いと、死神と呼ばれた少女が辿る運命を描くダークな世界観が特徴。メインシナリオライターは「Code:Realize~創世の姫君~」や「幻奏喫茶アンシャンテ」を手掛けた中山智美氏で、キャラクターデザイン・原画を担当したイラストレーターの読氏は本作がオトメイト作品への初参加となっている。
メインキャラクターは【人を愛する運命を享受する男】イヴ(CV:斉藤壮馬)、【人を導く運命を切望する男】リュカ・プルースト(CV:平川大輔)、【人を赦す運命を拒絶した男】マティス・クロード(CV:天﨑滉平)、【人を生かす運命に熱狂した男】シアン・ブロフィワーズ(CV:細谷佳正)、【人を求める運命と共鳴する男】アドルフ(CV:八代拓)、【死を司る運命を翻弄する男】アンクゥ(CV:興津和幸)の6人。
死神と呼ばれる少女が、死神に魅入られた国の謎に挑む
本作の舞台は、西ヨーロッパにある小さな島国「アルペシェール」。海と災いをもたらす黒い花「リコリス・ノワージュ」に囲まれたこの国は、23歳までに必ず死んでしまう「死の呪い」に脅かされていました。
しかし約百年前、外の世界から「漂流者」が現れます。彼の持つ知識と稀代の天才により、人の遺伝子から生み出した「クローン体」へ記憶データをダウンロードし、再び同一人物として生き続ける「リライバー」という仕組みが確立されました。これにより少なくない代償はあるものの、リライバーとなって再び23年分の生活を繰り返すことが当たり前となり、この国の人々は呪いへの対抗手段を手に入れることができました。
主人公のセレス(名前変更可)は、そんな国に生まれた美しい金髪の女の子。物心つく前に両親と死別して養護施設で育ちましたが、彼女の周りでは不審な死が立て続けに発生し、多くの犠牲が生まれた事件も起きてしまいます。それゆえ「死神」と呼ばれ、周囲から忌み嫌われながら生活してきました。
母代わりのサロメ(CV:桑島法子)や施設の子供たちと表面的には穏やかな生活を送っていましたが、ある日セレスは凄惨な事件現場に遭遇。死神の力のせいだと強く疑われ、さらに恩人を傷つけてしまい限界を迎えた彼女は自ら命を絶とうとします。リコリスの花畑で死を迎えようとした瞬間、自らを「死の番人」と名乗る謎の青年アンクゥと出会い、この国に巣食う死の謎へ迫る――というのが物語の始まり。セレスはアンクゥの力によって「普通の女の子になれる」という導きを受け、いくつもの事件へと向き合います。
こうしてセレスは死刑執行人(ブロー)による連続殺人や不可思議な変死、失踪事件などに触れ、そこから死の呪いやセレスが死神と呼ばれる理由、この国の抱える闇などへ深く切り込むことに。そしてこれ以外にも、さらなる真実が待ち受けています。振り返ってみればゲーム開始直後から色々なヒントが散りばめられていたものの、辿り着いてみるまで全然分からず「そんな真実が……?!」と非常に驚かされました。とはいえ突拍子のないものではなく、読み進めていけば必ず「なるほど!」となるので大丈夫です。
本作は全三幕構成となっていて、第一幕のプロローグを経て始まる第二幕ではメインキャラクターたちと出会いながらある事件について追いかけていく共通ルートをプレイ。そこで一度事件は幕を下ろし、個々のキャラクターと残された謎ごとにストーリーが展開します。まずはリュカ・マティス・シアンのいずれか3人が選択でき、残りの1人と第三幕は条件を満たすと進められるようになります。
第三幕の解放は条件が少し特殊で「気に入ったキャラクター1人に絞って、全部のイベントを見てから次のキャラクターを見よう!」といったようなやり方ではうまくいきません。どうしても分からない場合は公式ブログ第3回(http://blog.otomate.jp/virche/article/2021/0929-4609.php)のヒントを参考にしつつ、選択肢スキップやフローチャートも駆使しながら試してみてくださいね。個人的にお伝えするなら「とにかく、たくさんの絶望を味わおう!」といったところでしょうか。
知れば知るほど変化していく、複雑な内面を抱えたキャラクターたち
それでは、各キャラクターについても紹介していきます。イヴ(CV:斉藤壮馬)は、相棒のヒューゴ(CV:山下誠一郎)と共に“クルーン”と呼ばれる街の便利屋を営む青年。どんな依頼も実直にこなし、穏やかで誠実な人柄もあって周囲からの信頼も厚い「まさに好青年!」といった印象です。
とある事情で便利屋を手伝うことになった主人公は、接していくうちに彼のやや度を超えた博愛主義を目の当たりに。そこまでして彼が人を愛するようになった原因は、顔の半分を覆う仮面の下に隠されています。主人公とは浅からぬ縁で繋がっていて、本来であれば決して惹かれ合うような仲にはなれなかったでしょう。でもイヴと主人公はお互いの存在が救いとなっていて、このまま何事もなく日々が続けばと願いましたが……そうもいかないのが辛い! 本当に厳しい運命が待っていますが、それでも2人なら苦しみも分かち合えると信じられました。
リュカ・プルースト(CV:平川大輔)は、教会や養護施設を回る訪問教師です。主人公が授業を受けたのは数えるほどですが、ほかの子供たちと同じように教え子として大切に扱ってくれました。年齢は22歳と死の呪いの影響が強く表れていますが、人間らしくありのままの生を享受すべきだという考えの人たちも少なからず存在し、リュカ自身もリライバーをあまり肯定的に受け止めていません。
調査の傍らリュカの授業を手伝うことになった主人公は、彼の妹であるナディア(CV:久保田梨沙)とも親しくなっていきます。恋の話が大好きなナディアの後押しもありリュカを意識していく主人公でしたが、やがて彼がずっと隠し、苦しんでいた衝撃の事実を知ってしまいます。これには「どうしてこんなことに……」と涙もでないほど愕然となり、刻一刻と迫る寿命にもヒヤヒヤさせられっぱなしでした。
そんな中、個人的な心の拠り所となったのはナディアの可愛らしさです。原因不明の病に侵されて外に出ることもままなりませんが、リュカを大切に想っていて、リュカもまた何を捨ててもナディアを守ろうとしています。途中からずっと「主人公と3人で家族になってくれ!!」と思わずにはいられませんでした。
マティス・クロード(CV:天﨑滉平)は、富裕区(シュディ)と呼ばれる一角に住む裕福な一族の少年です。共に暮らす執事のジャン(CV:高塚智人)以外とはなかなか会話にならないくらい気弱な人見知りですが、敬愛していた兄を殺した死刑執行人には強い復讐の念を抱いています。独自に死刑執行人を追っていましたが、共通の目的を持った主人公たちと合流します。
主人公はとある理由で、マティスのためにメイドとして働くことになります。さまざまな感情に折り合いをつけながら、もともとの読書好きを生かして前向きに頑張ろうとするマティスを近くで見守る優しい時間を過ごしますが……そこに衝撃の展開が待っています。徐々に嫌な予感が積み重なり「そんなわけがない、間違いであってくれ」と思いながら読み進めていくのも、なかなか辛いものがありました。
共通ルートではイヴとの意外な共通点も判明し、思わず笑ってしまう展開もぜひ見てほしい部分です。
シアン・ブロフィワーズ(CV:細谷佳正)は、リライバーという技術を完成させた天才科学者。この国になくてはならない絶対的な存在で、王族ですらシアンの機嫌を伺わなければならないほど。自身もリライバーで、すでに数十年もの時間を生きています。実はリライバーには金銭的な負担などのほか、恋愛感情といった強い感情ほど持ち越せないという制約もありますが、シアン自身は感情を不要と切り捨てています。
研究以外の一切を気にしないシアンのため、彼に次ぐ天才のダハト(CV:土岐隼一)が王族とのコミュニケーションや身の回りまでフォローしていました。しかしダハトの堪忍袋の緒が切れたため、主人公は成り行きで国の最重要人物たるシアンが最低限人間らしく生きられるよう世話をすることになります。そのうちに見えてくるのは、この国で長らく隠されてきたどす黒い闇。2人がどう関わっていくのか必見です!
最初は心配する周囲の人たちと同様「彼とうまくやっていけるの……?」と思いましたが、効率重視のシアンと余計な言動もなく控えめな主人公はかなり相性抜群。シアンの率直かつ嘘のない物言いは、主人公と共に強く心へ響きました。
アドルフ(CV:八代拓)は、主人公と同じ養護施設で育った兄のような存在。あまり人を寄せ付けず、ぶっきらぼうな言動が多いもの根は優しくて困った人を放っておけない青年です。自警団のリーダーであり、剣の腕前はイヴ同様かなりのもの。色々な事件でも率先して解決に乗り出し、不安によって過激化する住民から主人公を守ろうとしてくれます。
主人公をごく普通の少女として扱う数少ない相手で、妹のように大切に思われている……と感じているのは主人公だけ。アドルフはずいぶん前から主人公を特別に想っていて、その感情がつい溢れてしまう場面は非常に可愛らしくもあります。
そんなアドルフがずっと隠してきたのは、この国で生きていくしかない人間にとって非常に残酷な現実です。彼の絶望を思うとかける言葉もなく、主人公に傍にいてあげてほしいと思いましたが、そう単純な話ではないのが悲しいところ。「どうにか乗り越える道はないのか……!!」と祈りっぱなしでした。
主人公の自死を止め、この国に巣食う死の謎を暴くよう契約を持ちかけるアンクゥ(CV:興津和幸)。浮世離れした言動で、すべて分かったうえで煙に巻くような言い回しも目立ちますが……これには筆舌に尽くしがたい背景があります。
アンクゥについて語れる部分はあまりにも少ないのですが、彼が主人公を選んだのは偶然ではなく、どうしても主人公でなければいけませんでした。一方、別のルートでのアンクゥは、誰かを強く想う主人公を祝福しているような節もあり……。それに込められた言葉を失うほど複雑な感情と、アンクゥの壮絶な運命の行きつく先はぜひ、ゲームで確かめてほしい部分です。
主人公の辿り着く先は、多くの絶望が待ち受けています。もしかしたら、最初から絶望しかなかったのかもしれません。そんな中、キャラクターたちが足掻いて、苦しんで、やっと掴み取った一筋の救済は何物にも代えがたくありました。そして死がすぐ隣にあるからこそ、さまざまな形で貫く愛情に胸がいっぱいになります。すべてが手放しで幸せと呼べる結末とは言い難いですが、強く心に残る物語なのは間違いありません。
このほか、本作はゲームのトップ画面にいくつかの仕掛けがあります。いくつかのエンディングではドキっとするような演出があるので、こちらもお楽しみに。
(C)2021 IDEA FACTORY
コメントを投稿する
この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー