スクウェア・エニックスから2021年7月27日に発売された、PS4/Nitendo Switch/PC(Epic Games Store)用ソフト「新すばらしきこのせかい」(Epic Games Store版は2021年9月29日に発売)。同作の開発スタッフへのメールインタビューを掲載する。

目次
  1. 野村哲也氏:クリエイティブプロデューサー&キャラクターデザイン
  2. 平野智彦氏:プロデューサー
  3. 神藤辰也氏:シリーズディレクター
  4. 伊藤寿恭氏:ディレクター
  5. 小林元氏:キャラクターデザイン
  6. 山下美樹氏:キャラクターデザイン

2007年にDSにて発売された「すばらしきこのせかい」(以下、「すばせか」)の続編となる本作が、2021年12月22日から2022年1月7日までの期間、PS4/Nintendo Switch版共にダウンロード版を対象とした50%オフセールを実施する。

「新すばらしきこのせかい」(以下、「新すばせか」)は、渋谷を舞台に主人公のリンドウが7日間の「死神ゲーム」に巻き込まれ、次々と襲い来るミッションをクリア出来ないと存在を消されてしまうというゲームに、仲間と共に立ち向かう物語。

野村哲也氏を中心に描かれる個性的なキャラクターと街並み、スタイリッシュな音楽、バトルでバッジを揃えながら自身を強化したりお金に換えていくというシステムなど、とにかく見どころが多い作品だけに、まずは一度遊んでほしい内容となっている。

本稿では、発売から5ヶ月が経った今だからこそ語れる、野村哲也氏をはじめとした「新すばせか」開発陣への【ネタバレあり】のインタビューを掲載! 未プレイの人は物語の展開的に楽しみを損なう内容にも触れられているので、念のため注意してほしい。

野村哲也氏:クリエイティブプロデューサー&キャラクターデザイン

――今回野村さんがご自身がデザインされたキャラクターの中で、一番お気に入りのキャラクターとその理由を、ぜひネタバレありきでお伺いできればと思います。

ショウカです。ストーリー上ヒロインぽく見えない様にデザインする必要があったのも面白かったです。またシナリオ上でも結構ストレートだと感じ悪い印象だったのですが、シナリオを変えず声優さんの演技で魅力的になる様に収録現場ではかなり細かな工夫を凝らしたので。結果他のヒロインにはない魅力を持つキャラクターになったかと思います。

――10年前の渋谷と今の渋谷で随分景色も流行も変わりましたが、そもそも「すばせか」の舞台から引き継ぐのではなく、「ほぼ現在の渋谷」に寄せようと思ったのはどうしてですか?

前作ファンの方々は当然ながら、やはり新規のプレイヤーとなる方々にも入って来て欲しかったので、今10年前の渋谷を描いても今ハイティーンの方々には別世界でリアリティがありません。ガラケーも今や見る機会は減っています。常に変化が早い渋谷の今を切り取る事こそ「すばせか」ですし、そこが面白いと思ってます。

また10年経って「新すばせか」を触れてみたらその時代の渋谷との変化が楽しめると思います。

――10年前の渋谷から現在の渋谷に変わって意識した点などをお伺いしたいです。

野村氏:意識と言うか、「すばせか」ならではの極端なパースの歪みの表現は10年経って立体化しても拘ってます。

――リンドウは等身大のイマドキの若者という感じで、主人公にしては珍しいキャラクターでしたが、リンドウのようなキャラクターを主人公にしようと思ったのは何故でしょう?

本作に限らず自分は主人公=プレイヤーであってほしいと思ってます。本来のRPG的なアバターキャラでなく、個性を持ったキャラクターであっても自分はずっとそう思って作っています。全然自分の性格や考え方と違っていても、主人公のどこかに自分を重ねて欲しいと。なのでより現代のリアルな世界をベースとした本作はより一層等身大のどこにでもいそうな若者にしました。

――前作で野村さんがデザインしたキャラクターの一部を今回は他の2名のデザイナーに任せていますが、アレンジにあたって野村さんから助言した点やこだわりの点などはありましたか?

ネクは本作も自分でデザインしてます。ビイトは自分の助言よりシナリオ的な指示が大きかったと思います。ビイト、ライムに関しては数体ラフを描いてもらって、その中から自分が組み合わせで指示したくらいです。シキはほぼ前作でイメージが出来てたので、すんなりデザインしてもらえたと思います。

――本作ではシキがデザインした“ガット・ネーロ”があちこちで登場して、いくつかは実際にグッズ化されましたが、野村さんが今後ぜひ商品化してほしいと思うようなにゃんタングッズはありますか?

こんなに展開されるなら、もっとそれ想定でデザインしとけば良かったなと。女子高生のハンドメイドという事で商品ぽくないデザインをしてしまったので。逆ににゃんタン自体を少し綺麗にデザインし直したいです。

平野智彦氏:プロデューサー

――10年以上経っての「すばせか」の続編を出すにあたり、テレビアニメ化と続編の発売をほぼ同時期に重ねるにあたって大変だったことや今だから明かせる秘話をお伺いできればと思います。

新すばせかとすばせかアニメを同時期に合わせたいという意向は強くありました。実はコロナ禍にも関わらず、アニメ制作が順調に進んでいた関係もあり当初の予定より3ヶ月前倒しでの放送となりました。ゲーム側も出来るだけ前倒しで発売できるよう開発とも調整を行ったことが記憶に残っています。私が大変というよりは開発には無理をかけてしまったなという部分でしたね。

――実際にプレイをしてくださったファンから特に人気だったキャラクターや、皆さんが思っていた以上に発売後に人気が出たキャラクターなどがいたら、教えてください。

ファンの方から人気のあるキャラとしては、リンドウ/ナギ/ショウカ/ミナミモトといった序盤から登場するメンバーが良く見られるように感じます。中でもフレットは初見では明るい友達ポジションのキャラに見られがちではありますが、ストーリー進行に合わせて明るさ以外の魅力や、バックボーンが見えてくることでより強く共感出来るという理由で人気があがってきているように思いますね。

――「空を見上げたら そこにあるのは たくさんの空気」といったモトイ構文が素晴らしかったですが、一押しのモトイ構文はありますか?

私の中では「歩くとき 僕らの足は必ず 地面を踏んでるね」ですかね。競歩のルールで必ず左右どちらかの足が地面から離れないように歩くというものがあるのですが、ふと、それを思い出しましたね。

――音楽も前作も人気曲と新曲とのバランス感が良かったです。楽曲担当は引き続き石元丈晴氏ですが、楽曲関係での秘話などはありますか?

石元さんへは前作を超える曲をお願いしますという発注を行っていました。そこで石元さんから、「それならば曲のジャンルごとにより尖った方向性に伸ばしていくのはどうでしょうか?」とご提案を頂き、よりロックな曲や、よりメタルな曲が増えていった形です。実は石元さんの繋がりもあり、The BONEZの方々にも楽曲にご参加頂いていたりします。是非実際に聴いてみてパワーを感じて頂ければ幸いです。

神藤辰也氏:シリーズディレクター

――キャラクターデザイン、バトル、シナリオ、バッジ、ブランド、各キャラクターのサイキック、食事など、本当に様々な要素が詰め込まれたタイトルでしたが、こだわったところや意識したところはありますか?

様々な要素をすばらしきこのせかいの世界観の中で一貫性を持たせられるように、ストーリーラインをベースに各々を関連づけながら実装していきました。細かいテキストなども無駄なようで無駄ではない、アイテムひとつとっても世界を構成する要素として重要なものなので、できるかぎり掘り下げて考えています。

――前作から引き続き登場するキャラクターが多いですが、それでいて多分本作からプレイしても充分理解でき、前作もやってみたくなるだろう、という物語運びが素晴らしかったですが、ストーリーの匙加減で意識した点をお伺いしたいです。

前作から14年も経っていますので、さすがに前作を遊んだ前提の作品にするのは乱暴だろうと。新規の方にも十分に楽しんでいただけるよう、リンドウはじめツイスターズを中心にしたストーリーにする事は早々に決まっていました。先ずはツイスターズのドラマをしっかりと描いた上で、ファンの皆さんに強烈な印象を残しているミナミモトたち前作のキャラクターをどう配置していくか、リンドウを食ってしまわないか、などキャラクターイメージのパワーバランスに対しては非常に気を使いました。

――本編中では「河川擬人化」が流行っていましたね。重要な要素ではないもののストーリーの端々に絡んできて自然と楽しめる、非常に面白い設定でした。これはどなたの案だったのでしょう?

全体の大きなストーリー進行などは、自分を含めメインスタッフでゲーム進行と合わせて決めていっていますが、ストーリーの面白さ、演出面に関してはシナリオの石橋(※石橋明子氏)に一任していました。あたかも本当にありそうな、現実世界との境界が曖昧になるような感覚、すばせかならではのワードチョイスは石橋ならではだなと、シナリオを読んで思っていました。

――お気に入りのキャラクターとその理由をお願いいたします。また、実際にプレイをしてくださったファンから特に人気だったキャラクターや、皆さんが思っていた以上に発売後に人気が出たキャラクターなどがいたら、教えてください。

どのキャラクターもキャラを立たせてあるので、人それぞれにお気に入りはあるかと思いますが、私の場合はやはりリンドウですね。リンドウの性格はどことなく自分にも似ていまして、無意識に共感してしまっている部分があります。あとモトイ! 彼のポエムはもっと聞きたかったですね。

――では、ぜひお気に入りのモトイ構文を教えてください!

「涙とは身体の中にあった水だよ」
もうこれ全部台無しですよね色々と(笑)。ひどい(笑)。

伊藤寿恭氏:ディレクター

――キャラクターデザイン、バトル、シナリオ、バッジ、ブランド、各キャラクターのサイキック、食事など、伊藤さんが特にこだわった部分を教えてください。

今回も舞台は渋谷というリアルな街でしたので、大冒険的なRPGではできない、友達と一緒にいつもの街でブラブラする日常的な感覚が表現できればいいなと思いました。歩きながら軽い会話イベントが入ったり、飲食店で、テーブルを囲んで一人ずつ注文したりなど、ゲームシステムでもキャラクターへの愛着が湧くような目線の低さを意識しました。

――特にバトルは、前作が「DSの良さを最高に活かした」ものとなっていましたが、今回は「Switch/PS4ならではの良さが活きる」バトルになっていましたが、「すばせか」らしさのために意識した点はどこですか?

「すばせか」のバトルは、ゲームデザインが「尖っている」「中毒性がある」を両立し、誰もが「俺(私)って上手い!」と思える事が重要だと思っています。今回、コントローラーにて、それらを突き詰めた結果、ボタンを思いっきり活かしてパーティーごと操作するものにたどり着きました。旧作とは全然違うもののようでいて、触ると「すばせか」らしいと感じて頂けるのではないかと思います。

――難易度設定とレベルの効果であまりバトルに詰まらないように出来ているとは思いますが、「この組み合わせなら大抵どんなバトルもいける!」というようなオススメのバッジの組み合わせはありますか?

特にこれ!というのはないのですが、スクランブルバトル1位報酬の「信号のアンサンブル」が発動するバッジは、デザインを担当していただいたB-SIDE LABELさんの絵も可愛いですし、やり込みでも使えるのでオススメです。ただ、ベストの組み合わせが人によって違うというバランスを目指したつもりなので、皆さんが気に入ったバッジがあればそれが正解だと思います(笑)。

――ご自身の好きなキャラクターとその理由をお願いいたします!

個人的には、「ナギ」が、気に入ってます。彼女のツッコミはいつも芯を食っていて笑ってしまいます。ずっと一貫しているキャラでありながら、ストーリーが進むほど印象が変わっていくのが素敵です。Tシャツの文字は、地味にバトルで色々変化しているのですが、特にラスボス中の文字が好きです。

――お気に入りのモトイ構文はありますか?

ぜんぶ好きですが(笑)、「洗った物は 晴れた日に 干せば乾くよ」の突き抜け方は、もう「でしょうね……」としかいいようがなく、ああ、(シナリオの)石橋は天才だなぁとしみじみ思いました(笑)。

小林元氏:キャラクターデザイン

――ご自身がデザインされたキャラクターの中で、一番お気に入りのキャラクターは誰ですか? ぜひネタバレありエピソードも交えて教えていただきたいです。

お気に入りキャラクターはフレットです。理由は、最初にデザインして苦労したから、という理由と、一見コミュ力が高くて誰とでも仲良くなれそうなのに、本当は人と向き合うのが苦手、という内面的な所で共感できる部分があったからでしょうか。カノンさんのおかげで本来の自分を取り戻す事が出来るのですが、あのエピソードは泣けますね。

――発売前は公開できなかったキャラクターも小林さんがデザインを担当されていますが、前作から10年以上経って新たにデザイン面で意識した点などを教えてください。

自分が担当した所謂ネタバレキャラはビイトです。シナリオ上、ネクと間違われる事になる為、どうしても以前のイメージから離れることになるので、その点でデザインは少し苦労しました。前作から引き続き登場するキャラの中で一番見た目に変化があったキャラクターじゃないでしょうか。その他の前作組に関しては基本的に山下がデザインを担当しましたが、こちらからはキャラ毎にこういう特徴は残した方がよいんじゃないか、等のアドバイスをさせて頂きました。前作から10年経っているので、服装などは今のファッションを参考に、且つ、前作からイメージが大きく変わらないように意識しながらデザインを進めました。

――野村さん、小林さん、山下さんの3名でキャラクターデザインを担当されましたが、恐らく言われないと3名でデザインしているということが解らないほど世界観がしっかりしていました。そういった「すばせか」ならではの世界観を3名でどのように共有したのでしょう?

やはり前作が存在していて「基本的には同じ路線で行く」というのが決まっていたので、イメージを合わせる上ではそれが大きかったと思います。山下は合流した時点でかなりすばせかを研究していてぱっと見違和感ないデザインを作れるレベルでしたので、僕の方からは細かなポイントなどを伝えるくらいでした。後はゲームに落とし込む段階で、自分の方でイラストを描く際に体型やバランスを少し調整したりするので、更に統一感が出ているのだと思います。

――小林さんの今の絵柄はあまり「すばせか」寄りではないかと思いますが、「新すばせか」発売にあたって絵柄で苦労された部分はありますか? また、「新すばせか」の発表から現在までに様々な「新すばせか」のイラストを担当・公開されていますが、描きやすいキャラ、難しいキャラなどはいますか?

すばせかタッチで絵を描くのは久々だったので、感覚を思い出すのに苦労しました。デザイン作業の初期は野村からも「絵が違う」とツッコミがあったりして、思い出すために結構数を描きました。描きやすいのはやっぱり自分でデザインしたフレットやススキチ、シイバとかでしょうか。後は前作から大きくイメージが変わっていない、カリヤ、ウヅキあたりも描きやすいですね。難しいのはリンドウ、ショウカ、成長したネクとか、野村のデザインしたキャラが多いですね。自分の中には無いキャラクター造形だったりするので、その絶妙なニュアンスを再現するのが難しかったです。

――小林さんが思う「すばせか」らしさとは、どのようなものですか?

自分は「その時代の若者たちの文化」が感じられる所じゃないかと思います。その時代の悩み、考え方や、ファッション、サブカルチャーなどが世界観やシナリオ、キャラデザインなどに表れている所がすばせからしさを作り上げているのではないでしょうか。後、石元さんのサウンドも外せないですね!

山下美樹氏:キャラクターデザイン

――ご自身がデザインされた「新すばせか」からの新キャラクターの中で、一番お気に入りのキャラクターは誰ですか?

一番はやっぱりナギなんですけど、アヤノとカノンもお気に入りです。二人共デザインのベースは小林で衣装などが私の担当です。アヤノは当初クールな美容家という設定だったので、体のパーツを強調したり、柄ジャケットや高いヒールで威圧感を出したりしました。普段はクールなのにショウカにだけ甘々になるのがとてもかわいいんです…!

――特にナギは、まず絵だけで見た印象と、実際にゲームをプレイしてからとで、印象が180度変わるキャラクターでした。改めてナギの印象や作成秘話などをお伺いしたいです。

ナギはヒロインとの差別化のために、ユニークなキャラになるようチーム内で話し合いながらデザインしました。しぐさや表情にもクセが出るように考えたのですが、いざシナリオを読んでみると想像以上に活発で常識人だったので驚きましたね。あと、ブーツを描くのがけっこう大変で、なぜ見切れる部分をこんなデザインにしたのかと少し後悔しました……。

――ミナミモトやココなど、前作から引き続き登場するキャラクターの多くを山下さんがデザインされましたが、アレンジをされるにあたって意識した点や楽しかった点、大変だった点などをお伺いしたいです。

ミナミモトは一番最初に着手したキャラでとにかく苦労しました……! 逆にカリヤとヤシロあたりは慣れてきた頃だったので、似合いそうな衣装を色々妄想するのが楽しかったです。カリヤの胸の苺ワッペンは心臓のイメージで、前作の肋骨モチーフと関連付けるようにしてみました。

――山下さんが思う「すばせか」らしさとは、どのようなものですか?

渋谷の雑踏のなかで、自分の着たいものを好きなように着て、好きなように表現しているイメージでしょうか……。他の人がどう思おうと、自分はこれが好きというのを貫いていて、そしてそういう仲間は実はたくさんいるんだよということを気付かせてくれる作品なんじゃないかと思います。

新すばらしきこのせかい

スクウェア・エニックス

PS4ダウンロード

  • 発売日:2021年7月27日
  • 12歳以上対象

新すばらしきこのせかい

スクウェア・エニックス

Switchダウンロード

  • 発売日:2021年7月27日
  • 12歳以上対象

新すばらしきこのせかい

スクウェア・エニックス

PCダウンロード

  • 発売日:2021年9月29日
  • 12歳以上対象
  • Epic Games Store

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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