フリューが2021年6月24日に発売したPS4/Nintendo Switch用ソフト「Caligula2」。その発売から半年を迎えることを記念し、Gamer読者から募った質問についてプロデューサーの山中拓也氏へ伺うインタビューを実施した。

本作は、偶像殺し×現代病理がテーマの学園ジュブナイルRPGだ。自我を得たバーチャルアイドルが作りだした理想の世界に囚われた主人公(あなた)や仲間たちが、それぞれの理由で現実に戻るべく結成した「帰宅部」の物語を描いている。

2016年に発売したPS Vita向け「Caligula -カリギュラ-」を皮切りに、2018年6月には追加要素を加えた「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」、そして2021年6月24日に最新作「Caligula2」を発売。TVアニメ化やスピンオフノベルも展開し、独特の熱量を持つファンが集うシリーズへと発展した。

ここでは、そんな本作へ熱い気持ちを抱いているファンから届いた500件以上の質問を元に、時間の許す限り山中氏へさまざまな疑問をぶつけた。「カリギュラ」シリーズ全般のネタバレを含む内容となっているので、閲覧には十分注意してほしい。なお、本稿ではシリーズ全般を「カリギュラ」とし、「Caligula -カリギュラ-」を「無印」、「Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-」を「OD」、「Caligula2」を「2」としている。

「カリギュラ」という世界について

――本日はよろしくお願いします。まず「カリギュラ」を作り上げるまでの流れについて、詳しくお聞かせください。とくにキャラクターは非常に複雑な要素が絡み合っていますが、最初にキャラクターから作られるのでしょうか?

山中氏:全体でいえば、まずキャラクターが先です。「無印」で言えば、もちろん「バーチャルアイドルが人を閉じ込める世界の話にしましょう」という大きな舞台はありますが、その後はキャラクターを浮かべる作業から始まっていきます。

味方にこういうキャラクターがいる、こういう悩みやトラウマを抱えたキャラクターがいるというのをリストアップして「こんな悩みがあるなら、こんな性格になるだろうな」となんとなく考えます。そして「このキャラクターたちがどう話を進めていけば、どのような結末に辿り着くか」というプロットと呼べるほどでもない、ざっくりとしたイメージを頭の中で決めてからキャラクターに肉付けしていく……という順番ですね。

もう完全にキャラクターが主体です。ストーリーで「この時、こんな展開にしたほうが面白いだろう」と浮かんだとしても、キャラクターの性格に反した行動を取らせたくないので、その回し方ができるキャラクターがいなければ諦めています。それくらいキャラクターに出来ることしかしません。

――帰宅部と楽士は対のような構造になっていますが、これもあらかじめ考えられている部分なのでしょうか?

山中氏:しっかり対で考えているわけではありません。たとえばスイートPが抱えている「トランスヴェスティズム」……可愛い服を着たいという理想を抱える人が帰宅部側にいてもお話は作れますし、楽士側にいれば原作どおりのお話になります。同じ悩みでも、どこのポジションを取るかによってストーリーは別のものになりますから。

「カリギュラ」には、理想と現実という悩みを解決するためのベクトルがありますが、帰宅部側と楽士側に分けて「この悩みは帰宅部に、楽士側にはこの悩みを持っていこう」と最初から考えているのではありません。「こういう悩みを抱えている人間を描きたい」というのがあって、帰宅部側と楽士側のどちらに振り分けていこうか……みたいな感じからスタートしています。

それと「この悩みと対になるのは、この悩みだろう」と決め打ちしているわけではなくて、悩みを考えてキャラクターを作っていった後に「意外とこの悩みとこの悩みは対になるんじゃないだろうか?」と対になる要素が出てくるんです。悩みの中で共通する要素や反発する要素はどこかしらある。たとえば「無印」で美笛とイケPを対にするお話もできたでしょうが、ここではたまたま美笛とスイートPが対になるお話にしたというイメージですね。

もちろん「維弦とイケPは対にしたほうがキャラクターが立つだろうな」という考えはありつつも、キャラクターを作ってから「こことここは対応させると面白い話になりそう」と決めていくことが多いです。ただ「2」のドクトルとクランケだけは特例です。これは「ペア楽士を作ろう」とあらかじめイメージしていました。

――ではキャラクターの名前や花言葉などは、どのようなタイミングで決まるのでしょうか?

山中氏:登場人物の設定をあらかた決めたら、名前を考えます。不思議なもので名前を付けると、細かい設定の部分が更に浮かんでくるので、大きな設定→ネーミング→細かい設定みたいな順番です。

またネーミングに関しては楽器をモチーフにという遊びを入れていたんですが、続編が出るとか考えていなかったので一作目でめぼしい楽器モチーフをすべて使い果たしてしまいました。なので、「2」は少し変わった取り入れ方をしましたね。

たとえば一番難易度が高いのは小鳩の「鳩琴(きゅうきん)」で、オカリナのことです。本人のスケールと楽器としての哀愁がマッチしていてお気に入りなんですけどね。

劉都はそのまま音で「リュート」です。設定的にも新世代の子なので、モチーフの取り入れ方も現代的にキラキラしていいだろうと、訓ではなく音になってます。切子は「小切子(こきりこ)」で名字からつながる特殊パターンですね。

楽器がモチーフという縛りはありますが、音は馴染みやすくて可愛らしいものになるようにしたので、どの名前も気に入っています。

――名前といえば、楽士は本名と楽士としての名前はどちらが先なのでしょうか?

山中氏:楽士ネームです。本名は最後の最後ですね。自分の中で楽士の話をしっかり書くぞとテンションを上げるため、達磨の目じゃないですけど……そういうタイミングで決めます。

――花言葉はキャラクターにまつわるキーワードのようなものが先なのか、花そもののイメージが先なのか……みたいな順序はあるのでしょうか?

山中氏:キャラクターの内面やお話がざっくり出来上がってから、花言葉をたくさん調べて「この花言葉はこの人に合う」とか「この花言葉を意識してもらえれば、キャラクターの魅力や別の見方に繋がりそう」とか考えながら、適する花言葉を探しにいきます。花言葉は1つの花に対して複数あるので、メインでこの花言葉だと思って設定したあと、別の花言葉の意味に「キャラクターをこう見たら面白いな」と思うものもありますね。似たような花言葉がある場合は特定の花に決めていきます。

それほど花言葉を意識してお話を作っているわけではないんですが、後々設定した花言葉をより深掘りしていくと奇跡的に合致する逸話がある場合もありますね。このキャラクターにこんな符号があるのは運命的だなと思う時もありますね。

たとえば茉莉絵はスノードロップなんですけど、アダムとイブがリンゴを食べて楽園を追放された時に、彼らを慰めるために天使がスノードロップを咲かせた……みたいな話があるんです。「2」の主人公の花のイメージはリンゴなんですけど、この逸話を知らないまま花言葉の「後悔」から設定したんですよ。前作から使っている茉莉絵の花と、今作のリンゴがリンクするなんて、運命的だなぁと思います。そういう自分でも驚く奇跡が「カリギュラ」ではよく起こりますね。

――コンポーザーの方々には、どの程度キャラクターの情報が届いているのでしょうか。

山中氏:「2」はクリア後の再戦で楽士の現実での姿や後悔について情報を見ることができますが、コンポーザーの方にはあれの1.5~2倍くらいの長文を渡しているイメージです。この人はこんな性格で、こうした生い立ちで……といったもののほか、こんな音楽にしたいとか、テンポ感とか、何番目のダンジョンで流れる……みたいなイメージを伝えると素晴らしい楽曲が出来上がってきます。「こういうギミックにしたら面白いと思う」とか「こういうモチーフを使ってくれたら合うと思う」みたいな粗方の指示は出しますけど、それをどう扱うかはコンポーザーさん次第です。直しは本当に最低限ですね。これは内面を言い過ぎだから少し抑えてくださいとか、その程度です。

――たとえば「ミス・コンダクタ」の歌詞の表現が件の悩みを思わせるのも、意図したギミックなのでしょうか?

山中氏:そうですね。楽曲についての細かい指示はしませんが、そういうギミックの提案は僕の方でもさせてもらっています。

――キャラクターデザインを担当しているおぐちさんとのやりとりは、どのような形なのでしょうか?

山中氏:おぐちくんはもっと自由なほうがいいので、いちおうテキストも渡すんですけど……そこに囚われ過ぎないでいてもらってます。彼は指示したとおりに描いてこないところが良い部分なので(笑)。僕が指示したものを直接描くよりも、おぐちくんなりに色々な要素を噛み砕いたものがちょうどいい。そうやって自由に広げてもらった世界を、自分の方で言語化して文学的な辻褄をあわせていくというスタイルが一番僕らに合っているような気がします。「2」ではおぐちくんとの付き合いも長くなっていたので、合宿のように僕の家で紙に色々と書きながら考えていきました。

――イラストや曲がシナリオに影響を与えることはあったのでしょうか?

山中氏:シナリオの大枠でいうとタイミングとしては難しいんですけど、「2」のフィールドトークは見た目のイメージも含まれていますから、そういう部分もあるかもしれません。具体的にどこというのは難しいですが、楽曲に関しても制作中ずっと聞いているので自然とイメージは含まれていると思います。

――キャラクター作りやストーリーで悩まれた部分はありますか?

山中氏:「無印」は作った原案を、シナリオ担当の里見さんに表現してもらうという座組でしたが、「2」はシナリオも自分ということで、独力で解決しなくてはいけない部分が結構ありましたね。とくに絶対に外してはいけないというプレッシャーがあったのはリグレットの本性が判明した後です。10ワードくらいで全プレイヤーに脱力感を与えなければいけなかったので、力は入りましたね。「この相手とはもう話しても無駄だ」と思わせる、生々しいどうしようもなさを表現しなきゃいけないので。この瞬間のために、今までの積み重ねがあるというシーンなのでここはすごく気を遣いました。香里有佐さんのお芝居も、何度も何度も納得のいくテイクを目指してやり直しましたね。

それから、吟は本作が「カリギュラ」の続編である以上、逃げずに描かなければいけないキャラクターだと思っていたので、悩みました。これをいかに現代的な感覚、かつ僕が男女どちらかに偏らず、寄り添い過ぎず、現実と理想のバランスをとってフラットな目線で描けるのかは大きな課題でした。

あとは設定上、劉都と件という頭がいいキャラクターを「頭がいい」という説得力を持って描かなければいけなかったところですね。劉都と件は賢く、強いと思わせなければいけない。「カリギュラ」のキャラクターは欠落している部分があって、それが愛嬌というか、抜けていても成立するんですけど……この2人は賢さゆえの悩みを抱えていたのでプレッシャーがありました。

そうした中でも、とくに思い入れがあるのはささらです。色々な作品で慈愛に満ちた、いわゆる“聖母”と称される完璧な女性キャラクターは多く見られますけど、僕はついつい「年若い女の子がそんな高い理想を背負うのは、ちょっと大変なのでは?」と考えてしまうんですよ。でも、80余年も生きている人の言葉であれば、慈愛に満ちるだけの説得力があっても不思議ではない。「この人はそれだけの経験をしてきたからこそ、すべてを許せているんだろうな」という「納得感のある聖母」を描きたかったんです。とはいえ僕自身がそこまで生きているわけではなく、経験としてはまだまだ足りなくて。想像を膨らませるしかないんですが。

「カリギュラ」を作り出した2015年にささらを描けたかというと、無理だったと思います。僕自身も年齢を重ねてきて、プレイヤーの皆さんと触れ合って生まれたキャラクターなので、社会的な時代性も含めて、ちょうど2021年ごろに楽しめる作品になっていたと思います。テーマ的には吟、キャラクターの説得力としては劉都やささらたちが難しかったですね。

――「無印」と「2」では、キャラクターが抱える病理の方向性に変化があるように感じます。理由があるのでしょうか?

山中氏:時代が進んで、精神の病などに対する理解も進んできましたから「無印」と同じトーンでやってもあまり意味がないだろうなと。皆さんがもう既によく知っているものをなぞることになると思っていたので、「2」ではもう少し本人しか分からないものとか、恵まれているからこそ辛いとか、僕らが想像しえない年老いてからの悩みとか、そういうものに踏み込んでいくのが「2」のバランスかなと考えていました。

「もっとグロいもの、闇の深いものを期待していたとか」と言われるんですけど、あえてそちらの方向には進まないというのは決めていました。人間の心の病や精神の部分を刺激的なエンタメとして扱う流れを加速させるのは「カリギュラ」がある意味として真逆になってしまうので、本作では避けたほうがいいかなと。そうしたものを扱った作品はたくさんありますから、そちらにお任せすればいいので。一方で、地味でエンタメ化しづらいというか「この作品しか寄り添ってくれなかった」みたいな想いを横に伸ばして拾っていくほうが「カリギュラ」としては存在する意味があるのかなと思いました。刺激を求める気持ちはよく分かるんですけど、それはほかの作品が満たしてくれるので「カリギュラ」は「カリギュラ」にしかできない役割を果たそうというところです

「カリギュラ」なりの目線でのジェンダーの話とか、死ぬ間際の人の話とかを描ける作品はそう多くはないでしょう。こうした設定と世界観を作れたのは一種の発明のひとつだと思うので、「カリギュラ」だからこそ扱えるテーマに優先度を置いたという感じです。理想と現実、アイドルとファンとか「偶像って人の身ではできないよね」と描くのは「カリギュラ」のテーマとして必要なことだと思いました。

「2」で帰宅部もクリア後に再戦した楽士も具体的な病理として書かずに、二つ名的にぼかしているのは実際に悩んでいる人がいるので具体的な部分は避けていこうという時代の変化への対応ですね。とくに楽士は帰宅部と同じ表現方法ではなく、帰宅部よりも長文で喋ることができたので、わざわざ特定の名づけは必要ないのかなと。

――「2」は「ネオンピンク」がイメージカラーとなっていましたが、何故ネオンなのでしょうか?

山中氏:もともと「カリギュラ」は白とピンクをメインカラーに置いています。タイトルロゴでいうと上の黒が現実、下のピンクが理想でありアイドルの象徴というイメージでした。「無印」のμのピンクは自然発生するピンクなんですが、リグレットのピンクは偽物なので人工物、作り物のネオンなんです。だからこそ「無印」で使っていたピンクよりも淡くて弱いし、ネオンは熱もない。だから本物のピンクに強さとしては勝てないけれど、ネオンには儚い美しさもあるじゃないですか。そうした中でネオンのピンクとしました。

それと移植ベースだった「OD」とは異なり、「2」はヒストリアさんと一から作っていったので、ライティングの表現も面白いことができるだろうと。ネオンのライトと、それが反射するガラスの破片もモチーフにしてみても面白いなと考えました。ガラスも人工物ですし、綺麗だけど壊れやすいという点で「2」のイメージにも合っていたなと思います。ちなみに、リグレットとの負けイベントに頑張れば勝てたのもヒストリアさんの遊び心です。

――「無印」は若手中心のキャスティングというお話がありましたが、「2」は幅広い方が出演されているかと思います。こちらはどんな理由で起用されたのでしょうか?

山中氏:一緒に仕事をしてみたい人、この人のそういう部分が見れたら嬉しい人、自分としてワクワクする人たちを選んだというのが大きいです。たとえば#QPの水瀬いのりさんは“ど真ん中”すぎて、あまり僕が選ぶようなタイプには思えないかもしれません。でも、あえて水瀬さんのような方に#QPというキャラクターを演じてもらう化学反応が絶対面白いと思ったんですよね。前から言っていますが、その方の得意な役とか、やりそうなイメージからはできるだけ外したい気持ちがあります。そのほうが追いかけていらっしゃるファンも嬉しいんじゃないかなと思うので。

僕がキャスティングする上でのヒントにしているのは、実際に一緒に演じている声優さんからの意見ですね。ご飯に行くとか、メッセージをやりとりしている時に「最近どの人の芝居が面白い?」みたいな話をするのが好きなんですよ。そこで「あの人のお芝居は面白いよ」とか「この人、山中さん好きだと思いますよ」と聞いたら、すぐサンプルボイスを聞きます。吟を演じてもらった市川蒼くんは、別の作品で一緒になった堀江瞬くんから「絶対に山中さんが好きな芝居」と聞いて起用した方ですね。見事に大好きでしたね。

余談ですが、世の中にアウトプットされているものは何度も録り直したテイクのうちの1つですし、多くはノイズとか間とかを埋めて整形されたものですよね。一方で、実際に一緒に芝居をしている人から「この人は、採用されていなかったけど、こういう面白いことをしようとしていたよ」みたいな、分かりやすい表現ではないかもしれないけど面白いチャレンジをする人なんだと現場の人から伝わってくると「じゃあ、僕の作品ではそうした部分をオミットせずに生かして提供していきたいな」と思うんです。そういう方と一緒にやりたいなと。

インディーズ的というか、そういうのを許される作品が「カリギュラ」なんだと思います。各々がやりたいことをやっても、1人の人間が監督しているので「うまいこと辻褄を合わせるから、好きな事をやっていいよ!」というスタンスが取れる。これはイラストにしても作曲にしても演技にしても、そうですね。

――「2」にはテレビアニメ「Caligula -カリギュラ-」を思わせる小ネタが散りばめられていましたが、ファンサービスなのでしょうか?

山中氏:アニメは「無印」を応援してくれた人がいたので実現したことですし、「カリギュラ」の世界観のうちのひとつだと思っています。それを「カリギュラ」のサーガのようなものから切り離すことはしたくなかったので、アニメも包括した世界にしたかったという思いからですね。アニメを見た方には、あの出来事を経ての今だと思ってもらえるといいなと。

「無印」からの繋がりではありますが、アニメの世界もきちんと存在したというものを含めるために小ネタを入れたというところです。地名はアニメの脚本会議で出したものを入れました。「2」での名前をどうしようと思った時、メビウスのリソースを流用するなら隣駅を使ったほうがいいのかなと。

彼の名前で入力した時の反応は、ブラフマンがメビウスのデータを閲覧した際に首謀者とか帰宅部の名前をいくらかサルベージできていたんでしょう。ブラフマンはリグレットにも「こういう人たちがメビウスの中心人物だった」というようなデータを共有していて、リグレットがその名前を聞いて「本当に?」と思った……みたいなイメージです。

――海外版が出ていますが、翻訳の際にどのような監修作業が行われたのでしょうか?

山中氏:僕が監修しているのではなく、フリュー内で英語が堪能なスタッフがざっくり見てくれているという感じです。なので、あとでプレイしてみると、誰にも説明してないよみたいなニュアンスが入っていてすごいなと思っています。たとえば二胡も、一人称としての“二胡”と、あの“二胡”を指している時と、今ここに存在している自分としての“二胡”がちょっと違っていて、すごく寄り添ってくれていますね。

楽曲/コンポーザーについて

――テーマソングの「Orbit」や「SINGI」は、ゲーム内では誰が作曲した設定なのでしょうか?

山中氏:僕の中での「Orbit」は、たとえばボーカルソフトの新製品がリリースした際に「こんなことができるよ」と作られた公式デモ曲みたいなイメージです。「SINGI」もリグレットが作ったとかではなく、この世に無数にあるバーチャドールの楽曲の中で、たまたまリグレットが共感して歌いたいと思った曲というイメージですね。

人生の中で自分のために曲が作られることってなくて、この世界に無数に存在するの曲と「これはまるで自分の人生を語っているような曲だ!」という出会いをすると思うんです。ネット上で誰かが作った「SINGI」に対して、リグレットが「これこそ自分のための曲だ!」と思って歌っていた……という感じで、作中の誰かが作ったというわけではないです。ゲームではたまたまそこにスポットが当たっていないだけで、リグレットはゲーム内で歌っている以上に色々な曲を歌っていて、この十数曲しか歌っていないということもありません。

――コンポーザーの振り分けはスムーズに決まったのでしょうか?

山中氏:「2」では僕が使いたいと提案する人に加えて、サウンド面のプロデュースを手伝ってくれたDECO*27から「この人はどう?」と提案してもらうという「無印」からの変化もありました。「無印」の発売から5年、作品の中でも時代が経過しているので、前回はニコニコ動画世代のコンポーザーさんを据えていましたが、今回はYouTubeで活躍している人を押さえようと。そこで、実際に現場で戦っているDECO*27の意見を聞いて、僕の中でも「ぜひ、この人を使いたい!」という討論をやりながら決めていきました。なかでもAyaseさんはDECO*27が提案してくれた候補の楽曲を聴いていく中でひときわ輝いていた方で、今回の方法だからこそご一緒できたんだと思います。パンドラをお願いしたいと強く思えたのは、実際に現場を知っているDECO*27の意見を聞いたからですね。

とくにコンシューマのゲームに起用される声優さんはネームバリューのある方が多いと思いますけど、今まさに世の中に流行しているものから影響を受けているようだともう遅いんですよ。すでに売れている人がコンテンツに採用されるよりも、今まさに伸びようとしている最中の、推すのが一番楽しい時期に出た作品のほうが思い入れも深くなると思うんです。そういう時期のほうがアーティストのモチベーションも高いし、ファンも嬉しいですよね。

今まさに羽ばたこうとしている人たちを押さえにいって、ちょうどその人たちが頑張るぞというタイミングに合わせるとなると、すでに市場に回っているものではなく、現場にいる人の意見を聞くとか、自分自身が現場で得た体験を信じて、ある程度の勇気をもって進めないといけない。僕らが作る作品がメジャーなゲームと同じことをやっていてはいけないと思うので、現場の意見とか僕自身の肌感を優先するようにしています。アーティストやキャストが盛り上がっていく坂道の、途中に出会う作品であるべきだなと。

――「2」のバトル中に流れる動画は、どのように作られたのでしょうか?

山中氏:今回は「ボカロPVの中で戦う」というコンセプトを掲げて、ヒストリアさんのデザイナーさんに提案してもらって決めていったものです。キャラクターのモチーフや、キャラクターから想起されるものを描いています。

たとえばドクトルとクランケに同じモチーフが登場するのは、彼らは「無印」でやっていなかったニコイチの楽士なので、モチーフも楽曲の雰囲気も近いからですね。

――リミックスはどういったイメージでお願いしているのでしょうか?

山中氏:「2」では、TeddyLoidさんに「元曲から暴れさせてくれ」とお願いしています。「本性を表すとこういう部分があるんだな」というものをTeddyさんの感覚で作ってもらった感じですね。あとは戦闘時点でテンションが上がるというのと、元の曲とのギャップを演出として楽しませてほしいというオーダーをしています。

――「SINGI」で“XXX”となっている部分は何と言っているのでしょうか?

山中氏:同韻でたくさんの言葉録りました。sasakure. UKさんが歌詞カードに載せなかった意向を汲んで、詳細は明かしませんが皆さんが聞こえたものがすべて正解なんだと思います。

――「xxxx/xx/xx」と「Distorted†Happiness」は、ゲーム内ではどちらが先に制作されたのでしょうか?

山中氏:ソーンの最新曲は「Distorted†Happiness」なので「xxxx/xx/xx」が先でしょうね。公開せずにボツ曲にしていたのは、自分が出すぎたからなのかもしれません。

キャラクターについて

――主人公の花言葉を教えてください。

山中氏:「無印」はヒーローにしたかったんです。理想に逃げて主人公をやりたいというか、そういう意味でジンジャーの花を使いました。花言葉は慕われるとか、カリスマ性を表現するものです。あとは「無駄なこと」というちょっと皮肉めいたものもいれつつ。

山中氏:「2」では皆さんに大きな選択をしてもらいたくて、花言葉に「後悔」「選択」などがあるリンゴを選びました。

――キャラクターの武器はどのように決められたのでしょうか?たとえば複数の候補などはあったのでしょうか。

山中氏:このキャラクターで、こういう性格で、こういう悩みを抱えているならこの武器だろうと僕の中でセットになっているような状態ですね。なので改めて聞かれると……どうして悩まなかったのかと悩んでしまうのですが(笑)。

劉都なら凡人の前に出て、敵の攻撃をかわして攻撃するならマインゴーシュだろうなと僕の中では確信めいたものがあって。小鳩は怒りを表現する寓意、アレゴリーというか……怒りを表すなら鉄球だろうなと。彼の怒りをぶつけるなら切れ味が鋭いものではないし、棍棒のような長物でもないし、重いものを上からぶつけるストレスの発散となると自然と鉄球なんですよ。二胡は“二胡”が得意だったフラフープなので、回してる姿が見たいな、これを武器にするなら大きいチャクラムだなとか。深い意味を持たせるというより、直接的に「これはこうだよね」なんですよ。

そこに作為的なものがあるとしたら「2」では主人公だけですね。ベタな話ですが、兵士が銃を好むのは自分で人を殺した感覚がないからと言いますよね。しかし今回は殺す可能性があったので、自分の手で殺せるように短めの武器にしようと考えていて、二丁拳銃から刃物になりました。皆さんが現実に持てる可能性のある武器がいいなと。

――そう聞くと、何の躊躇いもなく相手を傷つけられる銃を「無印」の主人公が携えていたのもより納得できる気がします。では、キャラクターの技名は誰が考えているのでしょうか?

山中氏:現実的にはすべて僕です。ゲーム内では、実際にキャラクターが技名を叫んでいるわけではありませんけど、彼らの中で「この技はこれ」とこっそり名付けているんだと思います。それこそ「MOTHER2」のように、自分の好きなものを名付けているようなイメージですね。吟はマーベル、小鳩はそういうのがどうでもいいので感覚、劉都は哲学用語、二胡は響きですね。ゲームクリエイター人生、たくさんのネーミングをしてきましたけど、そんな中でも僕の最高傑作は「ふるぼっコンボ」と「ふるぼっこぼっコンボ」です。思いついたときに震えました。

――ゲーム内でのリグレットの外見は、どのような意図でデザインされているのでしょうか?

山中氏:彼女の姿は、僕たちの現実でいえば「歌ってみた」の動画などで歌い手さんが自分のアイコンとして表現している美化したアバターですね。それには少なからず自身の理想や、こう見せたいというキャラクター像などが詰まっていると思うんです。そうした自分自身をより良く見せたい、こういうキャラクターでいきたいといった願望が反映されたものがあのビジュアルです。

ここにブラフマンの「もっと女神のように見せよう」などのプロデュースが入ってくるような。顔とか外見にはリグレットの理想、衣装や雰囲気はブラフマンのプロデュースといったイメージですね。天使の輪は少し皮肉というか、自分が偽物であるという表現です。

彼女の武器は、ブラフマンが用意した防衛システムです。子供に防犯ブザーを持たせるイメージの最上級があれなんだと思います。

――特殊な姿ではない楽士のアバターは、現実の姿に近いのでしょうか?

山中氏:そもそも鏡で見た自分と、携帯のインカメラで見る自分と、客観的に想像した自分って、どれも別の像になると思うんです。そして皆、無意識に“ちょっといい自分”になっている。これはもう、そういうものなので。ですから、皆そのぐらいのバイアスはかかってると思います。パンドラとか見た目にこだわりのない人は、ある程度は現実に近い雰囲気だと思います。

――「2」の楽士は、どのような関係性だったのでしょうか?

山中氏:「無印」よりビジネスライクですよね。「無印」より「2」の人たちのほうが、やりたいことが定まっているんです。といっても「無印」の人たちが悪かったわけではなく、「2」は彼らの犯した失敗が分かっているからこそ、ベクトルが定まっているだけなんです。ですから組織としては最低限で、仲間意識を持つことに意味を感じていませんし、自分にやりたいことがあるから他人と関わることへの優先度が低いんです。

件はブラフマンの補佐役として、各々と連絡を取るような立場でした。ブラフマンは人物を表面的にしか見れないので、こういうことが得意ではないでしょうし。あくまで駒として扱うためですけど、ほかの楽士を観察している時間も長いし、それぞれの目的もある程度把握しているので愛称をつけているイメージですね。件自身も弱さを持っている人なので、それぞれの楽士がどんな弱さを持っているのか理解していますし、どこを突けば誰が動くかも分かっている。だから重要なことをムーくんに教えなかったり、パンドラはいないだろうからそもそも言わないとか、取捨選択ができたんだと思います。

――「2」のWIREで身長の話題が出ましたが、リドゥでのものでしょうか?

山中氏:基本的にリドゥでの身長です。公式イラストは見栄えによって縮尺などに調整がかかる場合もあるので、そちらの比較ではなくテキストが正しいものだと考えていただければ。

――楽士の身長もぜひ伺いたいです。

マキナ 180cm
パンドラ 169cm
ムーくん 165cm
#QP 161cm
ドクトル 179cm
クランケ 157cm
件 155cm
ブラフマン 178cm
リグレット 169cm

――「2」の男性主人公の制服の構造が知りたいです。

各シーンの意図について

※ここより物語の核心に触れるネタバレを含みます。

――ゲーム開始直後、選択によってはリグレットが悩んでいるような様子を見せますが、どのような意図で入れたのでしょうか?

山中氏:理由はどうあれ、彼女なりに思い悩むことはあるでしょうね。でも「きっと壮大な悩みを抱えているんだ」とか「悲劇のヒロインに違いない」とか思うこと自体、ある意味で理想の押し付けになってしまっているわけで、すべてわかったとにあのシーンを見るとなんともいえない顔になっちゃいますよね。

リグレットとしては、何も間違ってないんですよね。「あなたには何も分かりません」というのは、本当にそう思っている。それがリグレットを演じるうえで許された表現だったというだけで、言葉を選ばずに言えば「あんたなんかに分かるわけないでしょ」くらいのことは思ってるイメージです。

――キィがリドゥに行く時、μはミクロメビウスについて何をどの程度教えていたのでしょうか?

山中氏:あの調子だと、μはポジティブに語っていてあまり教えきれてないんでしょうね。あとは茉莉絵とあの世界を誰にも知られず、そっとしておきたい気持ちで内緒にしておいたのもあるんじゃないかなと思います。それが悪用されているとはつゆ知らずで。

――リドゥの世界で駅と施設が直結なのは、リグレットがそうしたのでしょうか?

山中氏:もしかしたら、そうかもしれませんね。すべての施設が線路で繋がっている設定なんですけど、それも完全にものぐさの考え方ですし。ベッドの周りに物を全部置くみたいな考え方なので、彼女にもそういうデタラメさはあると思います。

――キィがμを「母」と呼んでいるのでは何故でしょうか?

山中氏:単純に言うなら、たとえばボーカロイドで双子という設定で売り出されている製品もありますよね。これと同様に、キィのプロダクト自体が「μの娘」という設定なんです。だからキィもμを母だと思っているし、μもキィを娘だと思っているんです。

それだけでは夢がないので、ロマンチックな言い方をすれば、μを愛している制作者がμとの愛の確認を経てから作ったものだとすれば……という。だから娘なんだと思いますよ。

――男性のバーチャドールはいるのでしょうか?

山中氏:きっといると思います。キィやμなど以外にも製作する会社はあると思うので。

――ブラフマンが冒頭に「この時が来た」という反応を見せたのは、キィの到来を予見していたのでしょうか?

山中氏:反逆者が来るという可能性も頭の隅にあったかもしれませんが、ブラフマンはμや関係者を出来損ないだと思っているので、リグレットのほうが素晴らしいと見せつける機会だと本気で思っています。

――パンドラの植物園に、彼女の推しがいたのは偶然ですか?

山中氏:偶然です。かわいそうですね。

――吟がムーくんに対し、あそこまで怒りを抱いたのは何故でしょうか?

山中氏:吟は現実と戦ってきた人間なんです。持っているもので何とかするしかないし、見せ方を変えるとか、周りの空気を読みながら苦労をしてきました。自分がジェンダー的にふわついているからと悩んで歩みを止めた人間ではなく、それはそれとして現実だからと折り合いをつけて、色々な試行錯誤をして、それでもどうにもならなくて、そんな中でも自分ができる仕事に就いて……と生きてきたんです。

ムーくんはそこをショートカットして、周りをイエスマンで固めて、肯定される状態にしている。自分の思い通りになって、周りに甘えて生きている人間が嫌いなんです。とにかく嫌いなもののモデルケースとしてムーくんが完璧だったんですよ。吟の嫌いなものを集めたらムーくんになるくらい、吟からすると「すごく嫌いな人間」だった。

吟としては、性別で悩んでいるからってそこを突いてくる人は別にそうでもないんです。それはすでに経験しているし、そういうものだと自分も自覚している。だから対応する楽士としてジェンダーに対して古いとか差別的だとか、偏見のある人では満たせないんですよね。もう人間としてとにかく嫌い、みたいなタイプでないと吟は動かないんです。

――学園祭でキィがコーヒーを「懐かしい」と感じたのはどうしてでしょうか?

山中氏:彼女の制作者疑惑のある人といえばコーヒーの香りですよね。

――楯節学園・別棟でマキナと二胡が遭遇した時、何を話していたのでしょうか?

山中氏:二胡はあの時点で現実に気付きかけていました。だから飛んでいるマキナを見て当然のものと思えず、驚くとか、何かリアクションをしてしまったんでしょうね。普通は飛んでいるマキナを見ても「あ、飛んでるな」と思うだけなので。マキナは二胡を帰宅部と認識しているわけではありませんでしたが、何か知っているのかも……という状況です。

――クランケのセリフで「生」と「死」だけ漢字なのは何故でしょうか?

山中氏:強く意識しているからだと思います。クランケは外界との接触もなく、年齢の割に幼さがあるという表現としてひらがなを使っているんですけど、彼女の中で強く何度も繰り返したモチーフだからこそ解像度が高いのでしょうね。

――「水口茉莉絵」と「井手口真莉愛」の響きが似ているのは偶然ですか?

山中氏:似ているのは意図的で、井手口真莉愛の時点で水口茉莉絵を想起させてほしいなという気持ちもあります。ドクトルが水口茉莉絵の名前を覚えていたのは、井手口真莉愛と響きが似ているからじゃないでしょうか。どんな患者がいたとか、普通はあまり覚えていませんよね。ドクトルの中で、2人の名前の響きが似ていたのは意味があることだと思います。

名前といえば、人見という名字の「人」と「見」を合わせた「俔」という漢字があるんですけど、何かをなぞる、真似る、例えるなどの意味があるんです。ブラフマンは自分の姿を偽っている、リグレットは女神を騙っているという意味というところで「人見」という名字にしたんですけど、そこに気付いている人がいてすごいと思いました。

――茉莉絵を「殺す」と選択した後、本当に現実へ戻れたのでしょうか?

山中氏:僕は帰れたんだと思います。ただ各々、残るものはあるでしょうし、また会おうと言ったかどうかは分からないですね。ゲーム的なところでは、本当はゲームオーバーにしようと思っていたけれどやめました。

――ウィキッドの所業が明確になるのは「殺さない」を選んだ場合ですが、これは選択と後悔を体験させるためでしょうか?

山中氏:それもありますね。どちらを選んでも「これでよかったのかな」と、何かが引っかかるように作っています。片方が100%正解という選択肢だったら、そもそも用意する必要もありませんから。茉莉絵を殺さなかったとしても、どちらにせよ何かしら未来への課題、解決しないものは残ります。

ただ選択の結果、確実な正解も保証もないけれど、なんとなく未来に期待してもいいのかなというのが本作の結末です。たとえ「殺さない」を選んでも茉莉絵の状態は「無印」と何も変わっていません。でも、この「2」を経てお見舞いに来てくれる人が増えたし、劉都が医者になってどうにかしてくれるかもしれない。そうした“かもしれない”を得たのが救いのひとつなんじゃないかと思います。劉都が医者になって……というのもまったくの絵空事ではなく、実際に2021年には山中教授で有名なIPS細胞によって、脊髄損傷治療が行われているんですよ。2016年では見られなかった希望ですよね。5年の歳月に意味はあったんです。

――「二胡」から見た「一織」はどんな存在だったのでしょうか?

山中氏:これはもう想像するしかないんですけど、一織がそう言うのであれば二胡は本当に良い子だったんでしょうね。だから「もっと自信を持ってほしいな」とか「もっと明るくなれば、きっと皆も受け入れてくれるのに」とか思っていたんじゃないでしょうか。

そして一織が二胡の悪口を一切言わなかったのは、二胡が自分の明るさを持って「もっとこうしたらいいよ!」と押しつけをしなかったんでしょうね。おそらく二胡なりに一織の個性みたいなものを尊重して付き合ってくれたからこそ、強い憎悪を抱くこともなかったし、反発することもなかった。だからその分「ちょっとラッキー」と思ってしまった自分をひどく醜いと感じるようになって、あそこまでの自己否定に繋がってしまったんだろうなと。茉莉絵に対しての選択も含めて、どんどん自己評価が下がってしまったんだと思います

――キィトレインにあった二胡のスケッチブックは、どのような思いで持ち込まれたのでしょうか?

山中氏:二胡と一織は趣味がほぼ反対で、二胡はアウトドアで少女漫画、一織はインドアで絵を描くことや少年漫画やホラーが好き……といった感じなんですよ。インドアの趣味のひとつとしてスケッチブックが置かれたんだと思います。

――一織が二胡のままでいるのを選んだのは何故でしょうか?

山中氏:色々な理由があると思いますけど、一度やり始めたことだからとか、「二胡」として出会った人の前では「二胡」をやり通すとか、「二胡」として青春をおくるのが弔いというか、彼女のためになると思っていたとか、「二胡」の姿で高校生活を送ってあげたいとか……色々な思いがあると思います。

――件は自分が倒されるのは想定内だと考えていたようですが、もしトドメを刺されていたら目的が果たせないのではないでしょうか?

山中氏:ダメですね。ただ茉莉絵の件で人殺しはしない集団だと分かっているので、負ける姿さえ見せればOKだろうと。

――吟が小鳩に対して「小鳩さん」「小鳩先輩」と呼び方が変わるのはどのような心境なのでしょうか?

山中氏:ゲームやアニメは一人称や呼び方が決まっていて、呼称表もしっかりあるんですが、本来それってちょっと不自然というか……。もちろんシナリオライターさんが混乱しますから呼称表を作る必要はあると思うんですけど、その場のノリで「さん」とか「先輩」とか、それこそ呼び捨てって普通にあることだと思うんです。

僕はそれをやるほうがリアルだと思っていて、そうした一人称や二人称、呼び名のブレは生きていたら普通にあるんじゃないかなと。それをやりたかった足掻きとして、アニメでは美笛が鳴子に最初はタメ口を使ってます。それは相手が先輩だと気づいてない設定があるんですが、状況に応じて呼び方はブレるよねというところで、そんなに気にしなくていいんじゃないと思ってます。

――バトル終了後、吟とキィが「ヘイ、キィ~」と会話している時の「トッテモサイコウデス」はどんな心境なのでしょうか。

山中氏:それは「Hey Siri」というノリで、2人で遊んでいるんだと思います。

――マキナはリグレットについて、どこまで分かっていたのでしょうか?

山中氏:何も分かってないでしょうね。自分に力を与えてくれたし、バーチャドールという死とは無縁の存在であることなど、彼が崇拝するようなポイントがたくさんあったから慕っていたのだと思います。

――アストラルシンドロームの対策について、実際どのようなことが行われていたのでしょうか?

山中氏:ブラフマンが表向きにアナウンスしている「永続的な楽園を作ろう」みたいな目的は嘘なので、そんなに後先を考えているとは思えませんよね。リグレットの力をさらに高めて、現実にも影響力を高めてやろうというのが目標ですから、楽士が現実でどうなっていようがブラフマン的には意味はありません。

劉都はブラフマンやリグレットに対して、壮大な目的と緻密な計算があると思い過ぎな部分があるんですよ。彼は巨大な思惑あってこそだと考えて、どんな企みをしているのか見てみたいと考えている。こんなことをする人は、きっと自分すら想像がつかないような強い組織があって、目的があって……と思い込んでいて、その考えが盲点になっていて、惑わされているんです。彼が自分で言っていた「こんなしょうもないこと」とは思ってもみなかったということですね。

――「エピメテウスの塔」の内部は、誰かが意図したものなのでしょうか?

山中氏:ブラフマンのプロデュースです。ブラフマンがリグレットを神様にしたかったんでしょうね。神をまつる塔なので。

――ブラフマンはリグレットのために、具体的に何をしていたのでしょうか?

山中氏:1人のアーティスを売り出すために行うプロデュースの行動を、ほぼ全部やっていたという感じです。たとえばSNSプラットフォームを使ったプロモーションも自腹で回していたでしょうし、「こういう振る舞いをしたらファンに喜ばれる」といったアドバイスもしていたでしょうし、インフルエンサーへの売り込みもしたでしょうし、やれることは全部ですね。地道な人間なので。

――「何をした」ではなく「何もかもをやった」なんですね。

山中氏:それが“愛”だと思っているんです。最近、エーリッヒ・フロムの「愛するということ」という本を読んだんですけど、ここで勉強してすごく納得したことがありました。人は愛を求めるときに、見た目とか振る舞いとか「愛されるための努力」「嫌われないための努力」は自然とするんですよ。しかし「愛することに技術がある」と思っている人は、とても少ない。愛とは自然発生するもので、愛をそのままぶつければ伝わると思っている。本当は「愛すること」にも技術が必要で、それを間違えると「支配」「洗脳」になってしまう。相手をありのままの形で愛するためには、努力と研究が必要だというようなことが書かれているんです。

自分でブラフマンというキャラクターを作り上げておいてなんですが、それを読んで「ああ、これを間違えていたんだな」と気付きました。サディズムとマゾヒズムのような関係性でも愛は成立しませんし、相手の意志やありのままを受け入れて、その状態で一体化して高みを目指すのが愛の正しい形なんだと。それを目指せなかった存在がブラフマンなんです。愛していれば愛が勝手に伝わるものだと思い込んでいるのが、そもそもの間違いなんですよね。リグレット本人が意図せぬ状況に物事をどんどん追い込んでしまった。

こう客観的に見れば、ブラフマンの行動はどこまでも間違いだったと思うんです。でも当事者として考えれば、それでも彼が父親としてリグレットへの愛を止められなかったのも理解できるというか。演じて下さった子安武人さんが公式サイトのキャストコメントでネタバレを繰り返してしまったのも、彼のそういったところをどうしても言いたくなってしまったんでしょうね。僕も「2」を作り上げて以降「はじめてのおつかい」みたいな番組を見ると泣けてしまって。我が子という存在は、世の中の条理不条理とか関係なく、誰よりも優先したくなる。想像だけでもそうなってしまうので、似たような立場になったうえでブラフマンを否定できる人は少ないのかなと思います。

――ブラフマンの設定はどのように生まれたのでしょうか?

山中氏:前作との繋がりを感じさせたかったのと、前作の繋がりを直接的なものではなく、前作を愛している人であるほどミスリードしてしまうものにしたかったんです。コンポーザーがキャラクターに紐づいていて、コンポーザーが一緒であれば人物も一緒だろうと考えるのはカリギュラ偏差値の高い人の考え方です。たまたまだとは絶対に思わない。そこが前作をプレイした人と、プレイしていない人の世界を大きく変えるものになっています。

すべてを「もしかしたら……」と思いながらプレイする人と、知らないままプレイする人では「2」の見え方が全然違うものになります。そうした「楽士とコンポーザーは紐づいている」という前提の中で、曲自体は作ったと騙ることもできるという盲点。カリギュラを知っているからこそ産まれるそうした思い込みを崩しにかかるギミックがやりたかったんです。

時折、ネット上でも人の作品を自分が作ったと発言してしまう方もいますよね。ブラフマンもクリエイターへの愛はないし、自分が作ったといえば勝手にソーンだと思ってもらえるし、それが自分の目的にすごく有利に働く。「なんて楽なものだろう、ありがたがって馬鹿らしいな」と思っているでしょうね。

人の名を騙るという行為は、作品に対しての愛着とか、いかに人生を語ったものであるとか、労力がかかっているのかとか、そうした部分に興味のない人には分からないんですよね。パンドラと切子の関係もですけど、アイドルに興味のない人には、そこに何故人生をかけてしまうのか、自分の稼ぎの大半を費やしてしまうのか全然分からない。無理解とは、そういうものを遠ざけてしまうんです。ブラフマンは完全にそういうタイプですね。

――ソーンはどうなったのでしょうか。

山中氏:行方不明です。生死は分かりません。これまでの登場人物、とくに帰宅部に関しては、その後を語るつもりはあまりないので……皆さんがプレイして、こうなってるだろうと感じたことがすべて正解だと思います。

……というのを徹底するのであれば、前作のエンディング後の絵はいらなかったんですよ。今回それをやめたのは、僕が前作それを徹底しきれてなかった反省からです。見れたら嬉しいものだとは思うんですけど、コンセプトとしては甘かった。なので「2」は皆さんの想像にお任せしています。幸せになっているのか、不幸になっているのかは分かりません。それでも、一緒に最後まで旅してきた皆さんなら、帰宅部の皆がちょっとが幸せになったんだろうなと思えるんじゃないでしょうか。それで十分かなと思います。

――リグレットはリドゥの死が現実の死に直結すると知ってたのでしょうか?

山中氏:リグレットだけは死んでも死にません。ブラフマンがそういう形で作ったので、実際に死なないと分かっているうえで、あの態度です。説明が足りない部分があったかと思うので、そこは申し訳ありません。

――バーチャドールを人間として描いたのはどうしてですか?

山中氏:それでいうと切子とパンドラの話は、完全に罠ですよね。いかにパンドラの悩みを“しょうもないもの”と思う人が多いというか……。同じシチュエーションになった人、アイドルなど自分以外の存在にすごく依存や傾倒したという経験がない人にはなかなか理解されにくい。今はアイドルを推すということもベーシックですから、それが直接刺さる人にはそのまま刺さってくれたら有難いです。一方で共感できない人でも何かに期待するというか、何かに勝手に理想を抱くという感覚を「2」のプレイ中で実際に体験してもらいましょうと。だから2番目のダンジョンで彼女たちに出会うんです。ここは「2」でやりたかったギミックの1つです。

「カリギュラ」は各々が人生で経験してきたものによって刺さるもの、刺さらないものがあるのは良いところであり、弱いところでもあります。そこで、茉莉絵と一緒に過ごした経験があの選択の難しさになるとか、切子とパンドラを経由しているからこそゲーム全般を通じてリグレットへ抱いていた感情へのカウンターになるというか、そういう要素を作りたかったんです。ただの一人の楽士とのやりとりのようで、あれは「2」そのものの縮図を先んじて描いています。

作品とお客様の関係性もそうで、当時の規模の作品としては「カリギュラ」は多くの支持をいただけました。それに応えるために自分なりに頑張ってきたつもりだったんですけど、予算や会社、状況などからすべてのプレイヤーの皆さんの要望を満たすことはできません。自分なりには限界まで頑張ったし、出来ることはやったつもりですけど、失望したり、怒りを覚えたお客様もいらっしゃる。アイドルとファンという形とは違いますが、理想を作る側と、現実的に遊ぶ側という関係性はなんて難しいんだろうと実際に感じました。

「カリギュラ」は組織的に作っているわけではありませんし、すべての要素の不平不満は自分が受け止めるものだと思っているのですが、ここで「ああ、これは人間には無理だ」と。自分が「カリギュラ」を作る人生の中でもそれを感じていたので、だからこそ「2」のあの結論になったというか。

僕自身が「カリギュラ」を通して、アイドルとファンではないけれど、作る人間とプレイする人間という関係性で感じた部分がラストの結論にはすごく詰まっています。僕はμではありませんけれど、やれるところまでやったもののやはり1つの作品で全員を楽しませるのは現実的には不可能じゃないですか。そういった清濁も頭の中で切り替えなきゃいけないんですけど、1人の人間としては抱えきれないなと感じたのが「2」に繋がっています。それでも、創り続けるしかないんだなというところも含めて。

今後の展開について

――「OD」の楽士ルート相当のものは今後登場するのでしょうか?

山中氏:まず、劉都、吟、切子あたりがいて楽士ルートのあの立ち回りはできないでしょうね。キィの主人公との一体化にも、そうした可能性を防ぐ効果がありますし。僕自身も、裏切りがテンプレートやルーティンになってしまうのは危険だなと思っています。

ごく単純に、前回は裏切りが効果的な作品だから選択肢として入れられたんです。「2」で裏切りを入れても、同じような効果が得られたかなというと、少し違うと思います。配置されている登場人物としても、前作のようなインパクトを与えられるわけでもない。すでに「人を裏切るというのは、こういうことなんだ」と表現できたので、好評だと分かっていても「2」でそれに倣う必要はないのかなと。裏切りの余地を残すためにストーリーの密度を下げるとか、次の展開のために何かを残すということはしていないので、まず入らないと思います。それより一本の作品としてのストーリーの完成度を優先しました。

――アニメや小説など、メディアミックスの予定はありますか?

山中氏:ないのでいつでもお声掛けください!

――「2」のセルフカバーアルバムは発売しますか?

山中氏:サウンドトラックの売れ行きが好調なので、そろそろお話ができそう……という段階です。具体的にはまだ何も決まっていませんが、関係者全員が利益が出ると思えればいけるでしょうね。声優さんには事前に「こういうことをやるかもしれません」とお伝えはしています。

――楽譜を発売する予定はありますか?

山中氏:出して売れると判断されれば出ていると思うので、皆さんが力強く言っていただければ実現するのかもしれません。フリューはゲーム会社なので、それ以外の分野は他社さんに頼るしかありません。

他社さんが動くかどうかは、やはり「売れるか」といったところになるので……それは「カリギュラ」がインディーズっぽいゲームだからこそ表現できる部分がある一方、大きな会社さんであれば当然やるようなことができないのはデメリットのひとつですね。小さなものを推す場合は、こうした禍福は避けられません。普段そうしたアイテムが出るジャンルにいらっしゃる方は、その幸福を噛み締めていただければと思います。

――「2」イメージのウィキッドの絵が見たいです。

山中氏:いいですね。実現させるとして、グッズとして作るのは可能かもしれませんが……売れるのであれば僕が作るしかないとか、そういう感じです。「お前が金出して作れ!」というお声がたくさんあったら考えます。

――デビルマンモーとブラフマンモーは一体何だったんでしょうか?

山中氏:何でもないです。

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機種
PS4SwitchPC
プラットフォーム
パッケージダウンロード
会社
フリューヒストリア
シリーズ
Caligula
ジャンル
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公式サイト
https://www.cs.furyu.jp/caligula2/
  • セガ特集ページ
  • セール情報
  • Figgy
  • プリコネR特集

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