あまたが2022年3月18日に発売する新作VRゲーム「オノゴロ物語 ~The Tale of Onogoro~」のプレイレポート及び、本作のディレクター兼プロデューサーを務める髙橋宏典氏へのインタビューをお届けする。
VRならではの体験で話題を呼び、世界各国のゲームイベントやVRイベントで数々の賞を受賞したVR脱出アドベンチャーゲーム「Last Labyrinth」。その開発チームが送る完全新作VRアクションアドベンチャーゲーム「オノゴロ物語~The Tale of Onogoro~」が発表された。
ここでは本作のプレイレポートと、プロデューサー兼ディレクターを務める髙橋宏典氏へのインタビューをお届けする。
「オノゴロ物語」とは?
舞台は日本によく似た平行世界。明治維新後、西洋文明の導入によって蒸気機関が普及し、古来から伝わる和風文化と融合したものとなっている。
プレイヤーは並行世界へとつながってしまったVRゲーマーで、カミ鎮めにその身を捧げる巫女・ハルとともに聖地・オノゴロ島に仕掛けられた謎を解き、眷属を倒して強大なカミたちを鎮めていく、というのが本作の内容だ。
以下で、そのプレイレポートをお届けする。
「オノゴロ物語」プレイレポート
ハルとともにカミたちを鎮めていく「オノゴロ物語」。「Last Labyrinth」のカティアは言葉が通じずに身振り手振りでコミュニケーションをしたが、ハルとは言葉が通じるのが特徴だ。謎解きで調べるべき場所やボスへの対処法などのヒントをくれるので、プレイしやすく感じた。
また、ハルはおしゃべりなキャラクターで、ヒント以外のこともたくさん話してくれるので、一緒に冒険をしていて楽しい。大人しいカティアと違って明るく快活だが、素直で優しい性格をしており、嫌味がない。もともと、最上位の巫女であるハルだが、現在は身体の一部と神具を奪われており、無力にされている状態なのだという。そのため、カティアと同様に自分の手で守り、救ってあげたくなる。
なお、「Last Labyrinth」についてはホラーではないと明言されているものの、ショッキングなシーンはあるので拒否反応を示してしまう人もいたかもしれない。「オノゴロ物語」はハルの身体の一部が敵に奪われているという設定はあるものの、そこまで刺激的な演出は無く、安心してプレイできると感じた。本作の舞台はモダンな設定で、背景は華やかで美しく、心が躍る。
ゲームプレイとしては、主人公が“陰陽銃”というものを両手に持っており、この銃を使って謎を解いたり敵と戦うという流れ。
なお、ハルは片足を鎖で要石(ヒヒイロ石)で拘束されているので自由に移動することができず、プレイヤーが陰陽銃で要石を操作して石ごとハルを移動させてあげることになる。
また、「Last Labyrinth」はプレイヤーが拘束されて動くことができなかったが、本作ではマップを自由に移動できるように。怪しい場所を調べ、陰陽銃でギミックを起動したりと謎解きの解き方がアクティブになっている。さらに敵とのバトルもあり、敵は“気”のようなものを放ってくるので物陰に隠れたりしながらダメージを受けないように戦う必要がある。ここもVRならではの迫力や戦略性があり、おもしろい。
主人公とハルは体力を共有しているため、彼女を気にかけながら戦うのも重要。置いてけぼりにしてひとりで戦っていると、ハルがターゲットにされてみるみる体力が減っていくので、ひとりにしないのが肝心だ。
ただ、遠くから狙ってくる敵もいるため、時にはハルから離れて単独で敵を撃破しなければいけないことも。慎重に進んでいけばいいだけではなく、プレイヤーの判断力が試されるようになっている。
最も注目なのはボスとの戦闘だ。今回のプレイでは最初のステージをプレイすることができたが、巨大な鳥のボスはハルを空高く連れ去ってしまう。そのまま地上に落とされるとダメージを食らうが、落下中にキャッチできれば無傷で戦いを再開できる。こういった特殊なアクションはハルがヒントをくれることもあり、正解方法が分かったときが楽しい。また、パターンが分かってしまえば対処はしやすいので、アクションゲームがニガテな人でも楽しめるのではないかと感じた。
今回プレイできたのは最初のステージだけだったが、それでも「Last Labyrinth」のようにVR空間でパートナーとの交流を深める楽しさや、世界の広がりを体験でき、2作目ならではの進化を感じることができた。この先にどんなステージがあり、どんなストーリーがあるのか気になり、早くも続きがプレイしたくなった。
「オノゴロ物語」ディレクター兼プロデューサー髙橋宏典さんインタビュー
――本作の企画はいつ頃から動き出したのでしょうか?
髙橋氏:構想自体は前からあったのですが、実際に動き出したのは「Last Labyrinth」発売後になります。「Last Labyrinth」を制作してVRゲームのノウハウも出来たので、パートナーと協力してゲームを進めていく作品の2作目に挑戦することになりました。
――前作「Last Labyrinth」の反響はいかがでしたか?
髙橋氏:良くも悪くもインパクトのある内容だったので、海外のユーザーさんを含めて話題にしていただきました。好きな人はとことんハマってくれたようです。今回は前回ほど刺激的ではなく、プレイしやすくなっていると思います。
――今回、「Last Labyrinth」の続編を作るというアイディアは無かったのでしょうか?
髙橋氏:無いですね。謎解きの部屋を増やして作ることはできますが、それが求められてる続編だとは思いませんでした。やはり違う体験を届けたかったです。
――「Last Labyrinth」は主人公が身動きが取れない状況でしたが、「オノゴロ物語」では主人公が自由に動けるようになっています。この違いを作った理由を教えて下さい。
髙橋氏:「Last Labyrinth」は2019年に発売しましたが、企画は2016年頃から動いていました。その頃はVR酔いの課題などもあり、各プラットフォーマーも座ってプレイすることを推奨していることが多かったので、座った状況で遊べるように設計しました。ただ、現在はOculus Questのようにワイヤレスのヘッドセットもあり、VRユーザーの数も増えてきたので、今の主流に合うようなゲームの設計にしました。
――前作は陰惨な部屋が舞台でしたが、本作はハイカラな大正になっています。大正を選んだ理由を教えて下さい。
髙橋氏:チーム内でコンペをして採用になったのが和風の世界でした。ほかのアイディアには西洋ファンタジーのようなものもありましたね。
――「オノゴロ物語」の設定を見ると、日本だけでなく中国の世界観も混ざっているように感じます。
髙橋氏:そうですね。“気”なども登場します。ただ、ベースとしては日本古来のものに、文明開化で入ってきた蒸気機関などの西洋文化が混ざったものになります。
――シンプルな構造だった「Last Labyrinth」に比べると、「オノゴロ物語」はステージを作るのが大変そうですね。
髙橋氏:そうですね。今も実感しています(笑)。ひとつのマップに入るコンテンツ量が「Last Labyrinth」とぜんぜん違って、かなり濃いので大変です。
――キャラクターについて教えて下さい。ハルは、カミ鎮めに身を捧げる巫女ということですが、どのような女の子なのでしょうか?
髙橋氏:「Last Labyrinth」のカティアと違って普通にしゃべる女の子です。カミ鎮めの巫女として普段は厳しい修行をしており、今回のような事件が起きたときは実働部隊として前線に赴くことになります。今は体の一部と弓を奪われてしまっていますが、できる範囲で諦めずに頑張っています。
――ハルの声優は南條愛乃さんが担当していますが、これはあまたさんが企画・プロデュースした「劇場版 ファイナルファンタジー XIV 光のお父さん」で南條さんが出演されていた縁もあるのでしょうか。
髙橋氏:その縁もありますが、南條さんがすごく役の幅が広い方で、気丈な少女の芝居もできるのでお願いしました。気丈なだけでなく、可愛さがあるところもポイントです。ハルは結構グイグイ来るところがあり、VRの性質上、プレイヤーは彼女の声を一方的に聞き続けることになります。そのため、嫌われないようなキャラクターを作ることが大事でした。南條さんはグイグイ来ながらも可愛くみせるというハルのキャラクターを見事に演じてくれましたね。
――主人公はVRをプレイしていたユーザーということですが、主人公=プレイヤーなのでしょうか?
髙橋氏:そうですね。主人公=プレイヤー自身となります。ハルとのコミュニケーションは首を振って肯定か否定か伝えることと、手をつないで交流することになります。プレイヤー自身が陰陽銃を使ってを謎を解いたり、敵と戦ったりします。
――バトルパートに関しては、どのような操作になるのか教えてください。
髙橋氏:プレイヤーが陰陽銃を使って敵を倒していくことになります。プレイヤーとハルは体力が共通なのでハルを守りながら戦うのが基本になります。また、体力が減るとハルと手をつなぐことができ、回復することができます。これはデザイナーから、「よりハルとのつながりを感じるようなシステムにしたい」と提案されて実装したものです。
――本作にはハルと協力してフィールドの謎を解くパートと、巨大生物カミと戦うパートのふたつが存在しますが、作るのはどちらが大変でしたか?
髙橋氏:「Last Labyrinth」はアイディアを削ぎ落としてシンプルな内容にしましたが、それでも謎解きパートを作るのは大変でした。今回の「オノゴロ物語」は外の世界が舞台でマップも広いので単純に作業量が多いですね。プレイヤーのみなさんからするとステージごとに形式が変わって楽しいと思いますが、作る側からすると大変です(苦笑)。謎解きに関しても広いエリアで行なわれるので、「Last Labyrinth」よりも大変です。また、ボス戦もそれぞれの特徴が異なり、個別に作らなければいけないプログラムが多いです。
――謎解きパートに関して「Last Labyrinth」との違いなどを教えて下さい。
髙橋氏:段階的に歯応えのあるものになってきます。「Last Labyrinth」はゲームの設計上、脳トレ的なものも入っていましたが、そういうものはないのでプレイしやすいのではないかと思います。バトルに関してもアクションではありますが、アドベンチャー要素を強くしており、パターンを覚えれば勝てるような難度にしています。
――本作はVR作品ということで、VRだからこそこだわって作り込んだ部分はありますか?
髙橋氏:キャラクターは360度見渡せますし、フィールドもいろいろなところを調べられるようにしています。そのため、ストーリーを進めるのに関係のないところを調べても楽しめるようにしています。和風の世界観はあまりないので、そこにも注目してもらいたいですね。
――VR全体についてもお聞かせ下さい。2021年はメタバースの年とも言われていましたが、高橋さんの印象はいかがですか?
髙橋氏:VRはもともとポテンシャルがあると思っていましたが、各デバイスの出荷台数の推移などをみるとプラットフォームとして定着しているように感じます。このままVRへの投資が続けば今以上の展開になるのではないでしょうか。
自分個人としてはXRのデバイスもあるなかで、ARもVRも区別がないようなデバイスが普及していくのではないかと思っています。VRのように没入できるモードもあるし、ARのように現実のようにオーバーレイするようなモードもあるようなデバイスですね。そういった部分で、まだまだ伸びてくるのではないかと思っていますし、そこに対してのコンテンツは必要になるので、我々としても挑戦していきたいですね。
――「Last Labyrinth」「オノゴロ物語」に続く第3弾もパートナーといっしょに冒険していくような作品になりそうでしょうか?
髙橋氏:なるかもしれないし、ならないかもしれません。今は第2弾の「オノゴロ物語」に注力していますので、ぜひ今後の情報にも注目していただければと思います。
――ありがとうございました。