KEMCOの新作RPG「アルファディア ネオ」をレビュー。生命に宿るエネルギー「エナジ」をめぐる王道RPG。戦略的なバトルや王道ファンタジーど真ん中のストーリーなど、その魅力を紹介する。

目次
  1. 隕石によって生み出された破滅と再生!そして戦乱へ
  2. このターンは何をすべきか?戦略性が求められるバトル
  3. 王道ファンタジーのスケール感とテンポの良さを両立
  4. 壮大な冒険の旅をテンポよく快適に味わえる!魅力的な一作

「アルファディア ネオ」は、KEMCOからリリースされたスマートフォン向けRPG。2DRPGを定期的にリリースする同社の新作RPGは「アルファディア」シリーズの最新作。既存の「アルファディア」シリーズと同様、「エナジ」と呼ばれる不思議な力をめぐる物語が展開する。一部、これまでのシリーズにも登場していたと思われるキャラクターも存在するが、基本的にキャラクターは一新。なのでシリーズ作ではあるが、既存作を未体験であっても、十分プレイ可能だ。

隕石によって生み出された破滅と再生!そして戦乱へ

本作の舞台は、巨大隕石「オメガディア」の衝突によって一度は文明が滅ぼされた惑星「オルデン」。しかし、隕石が破滅と同時に新たな力「エナジ」を人類にもたらしたことで、人類は再び新たな文明を築くことに成功する。しかし、繁栄の一方で「エナジ」をめぐる戦いも勃発していた。本作の主人公の一人、スフレはそんな戦いによって自らの国、シュトルーデル王国を失った亡国の王女だ。

逃避行中のスフレはあるとき、洞窟の壁に埋められていた一人の青年を発見する。彼こそが本作の主人公、アルト。記憶喪失だったため、付近の村に引き取られたアルトは、数年後、ひょんなことからスフレと再会。このことがきっかけで、「エナジ」をめぐる冒険へと旅立つことになる。

このターンは何をすべきか?戦略性が求められるバトル

ゲームの流れは、KEMCOの他の2DRPG作品と同様、フィールドマップや街、ダンジョンなどを探索してストーリーを進めていくというもの。フィールドマップやダンジョンでは敵とのランダムエンカウントが発生し、バトルへと切り替わる。

バトルはサイドビューのターン制コマンド入力型。キャラクターのターンが回ってきた際に、通常攻撃や本作における魔法攻撃である「エナジ技」、あるいは物理系の必殺技といえる「スキル」などといったコマンドを選択する。RPGとして比較的オーソドックスなスタイルだが、ここに奥深い戦略性をもたらしているのが「スタイル」と「読身術」。

「スタイル」は、キャラクターが得意とする戦闘スタイルを定めたもの。「スタイル」によって近接攻撃が得意だったり、回復が得意だったり、サポートが得意だったりと特性が変化する。一般的なRPGでいえば、職業といえるだろう。ただ、職業と大きく異なる点が、1キャラクター3つまで「スタイル」を持つことができ、さらに戦闘中自由に切り替えられるということ。防御力が高く物理攻撃が効きづらい敵が現れたら、「スタイル」を切り替えて魔法で攻撃…といった戦い方ができるわけだ。

この「スタイル」をさらに奥深くしているのが「読身術」。これは、戦闘中に敵が次のターンで誰を狙い、どんな攻撃をしてくるのかがわかるという能力。攻撃内容だけでなく、誰を狙ってくるかまでわかるため、HPが少ないキャラクターが狙われていたら優先的に回復しておくだとか、バフをかけて攻撃に耐えられるようにしておくだとかいったことが可能。

「スタイル」の変更はターンを消費しない上、キャラクターの特性のみならず、装備や隊列まで切り替えることができる。このため「読身術」と「スタイル」変更を組み合わせ効果的に活用できれば、有利な状況を作りやすい。

ただその一方で、本作のボス戦では1回の攻撃で受けるダメージが大きいので、ちょっとしたミスが大きな失敗につながることも少なくない。これがおもしろい!ヒリヒリとした状況で「どのコマンドを選ぶのがベストか?」を考えることには、スリリングな楽しさがある。本作は紛れもないRPGだが、この楽しさはターン制ストラテジーゲームに近いものを感じた。

もちろん、こうした戦略性が要求されるのはボス戦に限られており、ザコ敵相手のバトルはテンポよく進む。オート機能もあるので、レベル上げや金策を目的としたバトルも苦にならない。ボス戦におけるスリリングな戦略性と、テンポよく快適なザコ戦という切り分けは、RPGを定期的にリリースし続けているKEMCOならではの職人芸といえるだろう。

王道ファンタジーのスケール感とテンポの良さを両立

ザコ戦やレベル上げのテンポのみならず、本作はマップの探索やイベントについてもテンポよく進んでいく。それでいて、王道ファンタジーの持つスケール感はしっかり楽しめる。その理由のひとつは、本作の表現がが2Dドット絵表現だからだろう。

表現が写実的だと、演出ひとつとっても、細かいところまで作りこまれていないと違和感が発生してしまう。となると、イベントひとつとっても、描くのにそれなりのボリュームが必要だ。しかし本作はドット絵によるディフォルメが効いているので、細部が省略されていても違和感はない。なので、王道ファンタジーの壮大さが損なわれることなく味わえるのだ。

そして、より大きな理由が、イベント表現の巧みさ。本作のイベントシーンは、キャラクターのセリフの応酬によってストーリーが進行していく。こうしたイベントシーン自体は大半のRPGで見られるものだが、本作はその見せ方がうまい。少ないセリフで的確にキャラクター性、現在の状況、次にやるべきことを見せていく。

たとえば冒頭、スフレによってアルトが発見されるシーン。原因不明の出来事によって壁が崩れ、中から人間(アルト)が出てくる。これに対してスフレの従者であるヴァンは警戒。その一方でスフレは、状況に驚きながらもアルトを心配し、を保護しようと言い出す。セリフはさほど多くないが、博愛的なスフレと、忠実な従者としてのヴァン、主人公ではあるが謎に満ちた存在であるアルトというキャラクター性、そして2人の関係性などが伝わってくる。

さらに、プレイヤーのツッコミへのフォローになっている点が秀逸だと感じた。壁から人間が出てくるなんて事態、どう考えたって普通じゃない。助けようと思う人もいるだろうが、警戒して近づかないようにする人間も少なくないだろう。ヴァンが忠実な従者だが、もしここで警戒を口にせず、ストレートにアルトを助けていたら、プレイヤーとしては「おいおい」とツッコミたくなるところだ。

本作のイベント表現ではこんな風に、「お約束としてはわかるけど、普通に考えたらそこはそんな行動しないよね」という点を丁寧にフォローしている。このため、各イベントが自然なものに思え、結果として王道ファンタジーとしての世界観に説得力が生まれていると感じた。

またイベントを通してキャラクター性がしっかり描かれているので、感情移入もスムーズ。たとえば主人公であるアルトにしても、いきなり冒険の旅に出るのではなく、スフレに救出されてから再会するまでの村でのひと時がイベントで描かれている。このため、各キャラクターの考え方、行動に無理がなく、自然と感情移入できるのだ。ちなみに個人的には、途中で仲間になるカーロがお気に入り。カーロは一見、うだつの上がらない中年に見えて、実は…というキャラクター。実力を発揮したときのカッコよさもさることながら、酒浸りだったり、子ども好きで面倒見がよかったりなど、人間味を強く感じさせる点が心に響いた。

こうした魅力ある描写を丁寧に行いつつも、セリフがそれほど多くない。ということはつまり、見せるべきところと削るべきところが的確に取捨選択できているということだろう。これもまた、職人芸だなあと感じた点だ。

壮大な冒険の旅をテンポよく快適に味わえる!魅力的な一作

本作のビジュアルは、部分的に3DCGの技術を使っているように思われる。しかし、あくまで2Dのピクセルアートスタイルにまとめられているため、ド派手なビジュアル表現に圧倒されるような体験はない。しかし「スタイル」「読身術」を使ったスリリングで戦略的なバトルと、丁寧に描かれた王道ファンタジーストーリーは、RPGの醍醐味と言える楽しさを十分に味わわせてくれた。しかも、テンポよく。

本作のようなスマートフォン向けゲームは、隙間時間に遊ばれることが多い。だからこそ、テンポのよさというのは重要だ。また、スマートフォン向けということを抜きにしても、ゲームに動画にWEBコミックに…と娯楽が溢れている今、短時間でもゲームをプレイしたという満足感が味わえるのは魅力的だと思う。KEMCOのRPGファンはもちろん、8BIT時代、16BIT時代のレトロなRPGが好きだった人、そして、最近のフリーゲーム系のRPGが好き人など、幅広いRPGファンにオススメできる一本だ。

アルファディア ネオ

KEMCO

iOSアプリiOS

  • 配信日:2022年3月10日
  • 価格:860円(税込)

    アルファディア ネオ

    KEMCO

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2022年3月10日
    • 価格:860円(税込)

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