「SFプロトタイピング展」は、羽田イノベーションシティに新設されたスタジオ「HANGER-B」のこけら落としとして開催。Sci-fiからバックキャストされた実践的プロトタイピングの体験型展覧会となっており、PROTOTYPEによる二輪型MRシミュレーターや、モータースポーツをデジタル化し世界を変えるプロジェクトの概念試作展示、YAMAHAによる世界初公開のライディングシミュレーターの展示などが行われている。

“Sci-fiからバックキャストされた実践的プロトタイピング”という説明が、少し難しく感じてしまうかもしれないが、空想科学SFの世界を現代のテクノロジーで再現した試作モデルという意味合いが近いだろうか。現代の最先端技術と未来の技術の狭間を展覧会として楽しめる、と考えると、少し近しい存在として映るのではないだろうか。

会場に足を踏み入れると、まずは次世代モータースポーツの形を想像した概念試作「FUTURE RACE」が展示。“スピードを競うだけではないモータースポーツがあるのではないだろうか?”をコンセプトにしたアート作品だ。

未来ではジェンダー・フリーで楽しめるEVモーターサイクルをベースに、ライダーの相棒となるドローンがレースをサポート。刻々と変化する情報は、ライダーが装着するMRゴーグル(Mixed Reality Goggles)に表示されるようになるという。会場では、バイクのモデリングや、ドローン、ゴーグルのレプリカも展示されている。

次に目に付くのは、PROTOTYPEと造形作家・池内啓人氏によるコックピット作品「TYPE00R」。これは2004年にPROTOTYPEの創業のきっかけとなった、「鉄騎コックピット」のリビルドプロダクトになる。

「鉄騎」は、カプコンがXbox向けに発売したゲーム作品で、奥行き26センチ、横幅88センチにもなる巨大専用コントローラーを使用する。40個以上のボタン、3つのフッドペダル、2本のスティックとシフトレバーという前代未聞の操作体型はゲーマーの間では語り草になっているが、その「鉄騎」コックピットを、現代の世界観で徹底的に構築したのが「TYPE00R」だ。複数のボタン、操作のためのスティックなどはそのままに、細部まで細かくアレンジが施されている。

ヤマハ発動機が“人とマシンが共響するパーソナルモビリティ”を目指した概念検証実験EVモデル「MOTOROiD」の展示も。一般的にバイクはサポートが無いと倒れてしまうものだが、AMCESというバランス制御技術を備え、自立することが可能なのだとか。また、AIによる画像認識でマシンがオーナーを認識して歩み寄ってくるなど、まるで本物のパートナーのように振る舞う次世代の電動バイクだ。

転倒することがなくなればヘルメットの形も変わるのでは? ということでデザインされたギア。

また、ヤマハ発動機が実際の研究・開発で使用しているというライディングシミュレーター「MOTOLATOR」も展示されている。モーターサイクルの開発で想定すべき多種多様な環境をデザインラボで再現するため、ハンドルやシート、ボディ幅、タンク位置などを可変することが可能で、このシミュレーター1台で様々な環境を実験することができるという。本シミュレーターは、世界に1台しか存在しない非常に貴重なもので、一般公開されるのはこれが初。またとない機会なので、ぜひチェックしてほしい。

バーチャルとリアルが融合するガレージをテーマに様々なガジェットも展示。

本展覧会、最大の目玉となっていたのがPROTOTYPEが開発するバイクシミュレーター「GODSPEED」だ。実車の「YAMAHA R1M」に跨り、ヘッドセットマウントディスプレイ「Varjo XR-3」を使用して、最高峰のVRモーターサイクルを体験することができる。

VRを用いたシミュレーターには様々なものが存在するが、本シミュレーター最大の特徴は「Varjo XR-3」が取り込むカメラ画像とグリーンバックのCGをリアルタイムに合成し、限りなく現実に近い映像体験が楽しめる点だ。

例えばVRコンテンツなどでは、自身の手などはアバターとしてCGで表現されることが多いが、このシミュレーターでは実際の映像を合成しているため、自分自身がそのままVR世界に入り込むことができる。最初に展示されている「FUTURE RACE」の世界の一端を感じられるものとなっており、このシミュレーターを体験するためだけに来場してもお釣りがくると感じるほどの満足感だった。

そのほか、「TYPE00R」の制作にも関わった池内啓人氏がデザインするヘッドセットも展示。既製品のプラモデルや工業製品のパーツを組み合わせたサイバーパンク感溢れる作品の数々は必見だ。

「SFプロトタイピング展」は、4月30日まで日時指定入場制で開催中だ。入場料は無料となっており、事前に予約をしておけば、誰でも少し先の未来に触れることができる。SFやメカニックなどに興味がある人は、ぜひチェックしてほしい。

「SFプロトタイピング展」実施概要

イベント名:SFプロトタイピング展
開催日:2022年4月9日(土)~30日(土)
会場名:羽田イノベーションシティ ZONE-K [HANGER-B]
アクセス:144-0041 東京都大田区羽田空港1丁目1番4号 京浜急行電鉄空港線・東京モノレール「天空橋」直結
入場無料:日時指定予約制

PROTOTYPE Inc.公式サイト
https://www.proto-type.jp/

予約サイト
https://sfprototyping.peatix.com/

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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