スマートフォン向けRPG「メモリア~夢の旅人と双子の案内人~」をレビュー。フルオートなのに戦略性が高いバトルシステムや、独自の魅力を持った物語など、同作の持つ魅力を紹介する。
「メモリア~夢の旅人と双子の案内人~」は、ドワーフワークスからリリースされたスマートフォン向け思考型フルオートバトルRPG。スマートフォン向けのRPGでは気軽さが求められることから、実装されることの多い「フルオート機能」。AIがプレイヤーの代わりにあらゆる戦闘指示を行ってくれるので、文字通り、フルオートでバトルができるという機能だ。もちろん一般的な「フルオート機能」を使った場合、プレイヤーは「考える」ことも含めて何もする必要はない。にもかかわらず本作がうたうジャンル名は「思考型フルオートバトルRPG」。フルオートバトルなのに思考型とはどういうことか?
フルオートなのに奥深い戦略性!本作独自のバトルシステム
本作のバトルは、3つあるライン上に敵味方それぞれユニットを召喚し、お互いのリーダーユニット打倒を目指すというもの。一般的なゲームジャンルでいえば、ラインディフェンスゲームに近いかたちで、ユニット召喚にコストが必要だったり、コストが時間経過によって貯まったり…といった点も、一般的なラインディフェンスゲームとほぼ同様となっている。
ただ、一般的なラインディフェンスゲームと異なる点が、フルオートという点。どのユニットをどこに召喚するのかは自動的に処理される。もちろん、ユニットのスキル発動などもオート。プレイヤーは見ているだけ。バトルスピードを調整することはできるものの、バトルに影響を与えるような行動はできない。
では一体どこが「思考型」なのか?というと、その答えはバトルの直前に存在している。本作はバトルスタート前に、参戦メンバーの編成を行う。この時、敵がどのラインにどんなユニットを召喚するのかも、すべて開示される。もちろん、どの敵がどんな特性をもっているかもすべて開示。
プレイヤーは、開示された敵の情報に合わせて、自分のユニットの編成を行う。どのタイミングで、どのラインへ、どんなユニットを召喚するか…。基本的には敵のユニット召喚順と配置に合わせて迎撃するようなかたちで召喚するのが無難だろう。ただここに、「属性」の相性と「特性」がかかわってくる。
ユニットはそれぞれ「属性」が設定されており、「属性」同士の相性によって有利・不利が決まる。なので、できる限り有利な属性のユニットを配置したほうがいい。ただ、メンバーの編成状況によっては、有利な「属性」のユニットばかりではないということもある。そうした場合にどう編成するかが、頭の使いどころだ。
さらに編成へ関わってくる要素が、「特性」。「特性」はユニットが持つ特殊能力で、強力な必殺技を放つことができたり、他ユニットを回復したり…といった効果を持っている。とりわけ影響力が高いのは、バフ/デバフをかけるタイプの「特性」だろう。バフ/デバフ系の「特性」を持ったユニットが一体いるだけで、味方全体の全体の戦力が底上げできる。できれば優先的に召喚したい。一方、これが敵ユニットなら、敵全体の戦力が底上げされてしまう。となると、優先的に倒したい。では、そのためにどう編成すればいいのか?なんとも悩ましい…。
こんな風に、バトル前の時点で知恵を絞り、あれこれ戦略を考えるというのが本作のバトルの特徴。バトルそのものは確かにフルオートだが、バトル前に「思考」の醍醐味が詰め込まれている。なるほど、これは確かに「思考型フルオートバトル」だ。
実際にプレイしてみて、このバトルシステムは「スマートフォンでゲームを楽しむ」というスタイルとマッチしていると感じた。というのも、「考える」パートと「見守る」パートが完全に分割されているため、ゲームに向かい合う余裕がある時に編成を考えておき、そこまで余裕がない時にはバトルパートをフルオート進行させて結果だけを確認する…なんてプレイが可能になるから。最低限、「編成」を考える時間さえあれば楽しむことができる。
また、一度クリアして戦略の正しさが確認されたステージなら、「編成」で頭を使う必要がないという点もいい。素材アイテムなどを稼ぐための周回プレイの際には、既にクリアした編成と同じ内容でプレイすればいいのだ。スマートフォン向けRPGとしてどういう形が快適か、考え抜かれたシステムだと思う。
ストーリーも独特!意外な展開とユニークな見せ方が魅力
独自性の光る「思考型フルオートバトル」だが、独自の魅力を持っているのはバトルシステムだけではない。ストーリーも独自の魅力を持っている。まず、その見せ方。スマートフォン向けRPGといえば、いわゆる「立ち絵」と呼ばれるキャラクターのバストアップ画像を使って、会話形式で見せることが多い。本作も「立ち絵」は使用しているのだが、メインはクォータービューで描かれたフィールド上にキャラクターを配置して行う、演劇スタイル。
しかも、このフィールドのつくりが凝っている。フィールドマップが作りこまれているのはもちろんだが、その外側にまで巨大な書籍などの造形物が配置されており、箱庭としての臨場感が高い。このフィールドマップだけでも世界観の魅力が伝わってくるレベルだ。
そして、肝心のストーリーも独特だ。本作の物語は、記憶喪失の少年、ユラが自分の記憶を取り戻すため、双子の案内人とともに夢の世界を冒険するというもの。夢の世界にはさまざまな記録が存在。この記録は、ひとつひとつが異世界のようなものなので、見方によっては夢の世界を舞台にした異世界冒険ものといえないこともない。ただ、実際にプレイすると、一般的な異世界冒険ものとは大きく違っていることが分かる。
まず本作の物語が描いているのは、夢の世界と現実世界の両方だ。夢の世界に入ったら、目的を達成するまで現実世界に戻れない…というかたちではなく、夜眠ったら夢の世界に入り、朝目が覚めたら現実の世界へ戻る…というかたち。ユラはこの両方の世界で記憶喪失であり、夢の世界では記憶を取り戻すために冒険し、現実世界では記憶喪失という壁に悩まされながらも、周囲の人間との関係を築いていく。
ゲームの場合、「バトル」や「冒険」といった異世界側で行われる要素が「遊びのメインディッシュ」になることが多い。このため、エンディングまで物語が異世界側で展開するということは少なくないように思う。この点、異世界側も現実世界側も両方描いていく本作は、ゲームよりも童話や、児童向けのファンタジーに近いように感じた。
また、物語の展開そのものも、いい意味でゲームのお約束にとらわれておらず、独自性がある。たとえば第一章で描かれる、勇者と魔王の物語。これは全体の流れとしては典型的な、選ばれた者にしか抜けない剣をめぐる物語だ。展開は、剣を抜いてしまった「ユーシャ」が、魔王の差し向けた魔物から村を守ったことをきっかけに、魔王城へ向けて旅立つ…というもの。
この第一章の物語は一見、よくある話でどこにも独自性がないように思える。しかし、細かく見ると、オリジナリティが高い。たとえば、そもそも「ユーシャ」はモフモフしたものが好きで、戦う気がない。このため、生き物の命を奪うことも嫌で、敵を倒すのではなくただ追い払うという術を磨いている。そして、魔王城へ旅立つのも魔王を倒すためではなく、まったく別の目的のため…なのだが、ここはおもしろいところなので是非自分の目で確認してほしい。
こんな風に、本作の物語はどこかで見たことがあるような題材だが、見た目にも内容的にも非常にオリジナリティが高い。その上で、語り口は軽妙かつコミカル。だから、プレイしていて自然に引き込まれ、楽しむことができる。
バトルもストーリーも楽しい!幅広いプレイヤーが楽しめるRPG
ここまで紹介してきた通り、本作はバトルもストーリーも独自性が高い上おもしろい、完成度の高いRPGだ。ストーリーも人を選ぶ内容ではないので、万人が楽しめる。スマートフォンを持つあらゆる人にオススメしたい。
ただ、一点だけ、筆者のわがままに近い要望がある。それは、バトルとストーリーを交互に進行できるようなUIの追加だ。本作は、バトルとストーリーが完全に分割されている。厳密にはバトルがストーリー進行を制限しているため、バトルを進めなければストーリーを進めることができなくなってしまうのだが、バトルクリアによってアンロックされているのであれば、その分のストーリーはバトルをプレイすることなく楽しめる。
ただ筆者は、バトル、ストーリーと交互に少しずつ進めたいと感じるタイプの人間だ。もちろん、バトルとストーリーを完全に分けることの利便性もわかる。スマートフォンでゲームをプレイする際には、今はバトルだけ楽しみたい、今はストーリーだけ楽しみたい、というシチュエーションが多い。ただ、個人的には交互に少しずつ進めたいと思うことも少なくないので、できればバトル終了後、「解放されたストーリーへ」というボタンがあると嬉しいと感じた。ただ先に書いた通り、これは筆者個人のわがままに近い要望なので、UIが実装されなくとも本作の評価が下がることはない。現時点で十分すぎるほど楽しいゲームだと思う。
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