「東方アルカディアレコード」をレビュー。「東方Project」公認の二次創作スマートフォンゲームで、シリーズおなじみの弾幕と世界観を取り入れた横スクロールアクション。その魅力を紹介する。
「東方アルカディアレコード」は、Damo Gamesからリリースされたスマーフォン向け横スクロールアクションゲーム。タイトルの「東方」という言葉が示す通り、本作は「東方Project」公認で作られた二次創作作品で、シリーズでおなじみ弾幕要素はもちろん、博麗霊夢や霧雨魔理沙といったキャラクターたちも登場する。「東方Project(以下、東方)」シリーズはもともと同人ゲームとしてスタートしたが、今では幅広い分野で人気を獲得。もはやコンテンツというよりジャンルといった方がいいレベルで認知されている。このため本作は、弾幕シューティングとしての「東方」が好きな人、博麗霊夢や霧雨魔理沙といったキャラが好きな人、楽曲が好きな人、はたまたキャラの外見は見たことがあるけど世界観は知らなかった…という人まで幅広く興味を持っているのではないだろうか。このレビューでは、そんな注目作である本作の内容を詳しく紹介したい。
ランアクション×弾幕!難しそうなのにクリアできちゃうゲーム性
同人ゲームとしての「東方」といえば、ゲームジャンルは縦スクロールの弾幕シューティングだ。自分のキャラクターを操作し、画面を埋め尽くす弾幕をかいくぐりながら敵を倒していく。一方、本作は横スクロールアクションをメインに、スマートフォン向けRPGのスタイルでまとめた作品となっている。
本作でメインとなっているモードは「冒険」。ステージをクリアし、ストーリーを進めていくモードだ。各ステージは一般的なスマートフォン向けRPGのように会話パートとゲームパートで構成されている。会話パートはなんとフルボイス!そしてゲームパートが、横スクロールアクションとなっている。
横スクロールアクションのゲーム性は、いわゆるランアクションがベース。ジャンプをメインアクションとし、障害物を回避しながら先へ進んでいくというスタイルだ。ただし本作はここに、弾幕シューティング要素が負荷されている。プレイヤーは障害物に加えて弾幕を避けなければならない。また、プレイヤーの操作するキャラクターも弾を放つことができ、敵キャラクターを倒すことが可能だ。
操作方法は2種類用意されている。ひとつはボタンタップで行うスタイル。上ボタンでジャンプ、下ボタンで足場からの下降が行える。ジャンプは2段ジャンプまで可能。また、ジャンプ中に下ボタンを押すと急降下が可能だ。ふたつめのスタイルは、フリック操作。上フリックでジャンプを行い、下フリックで足場からの下降。なお、どちらのスタイルでもスクロールやショットの発射はオートとなっている。
プレイヤーの立ち回りの基本は足場から足場へと移動し、弾や障害物を回避すること。マップには高さの異なる足場が用意されており、敵キャラクターや障害物も各足場に対して出現する。そこでジャンプや下降を駆使して、敵や障害物が存在しない足場を目指す。…と、これだけだと既存の一般的なランアクションと変わらないように思うかもしれない。しかし、本作のプレイ感は一般的なランアクションとは異なるものに仕上がっている。では何が、本作ならではのプレイ感を与えているのか?もちろんそれは、弾幕だ。
一般的なランアクションゲームでは基本的に、障害物や敵がある足場の高さに合わせて直線的に出現する。このため、プレイヤーとしてはどの足場に逃げればいいのか把握しやすい。しかし、本作で登場する弾幕は違う。弾幕シューティングゲームをプレイしたことのある人ならご存じの通り、弾幕は複雑な模様を描いて飛んでくる。回避するためには弾幕の軌道をしっかり確認し、回避ルートを見抜かなければならない。
そして、ランアクションと弾幕の魅力の融合している点がジャンプ&下降を使った回避だろう。弾幕シューティングゲームの場合、基本的にプレイヤーは自分の想定する回避ルート通りに動かすことができる。…もちろん繊細な操作が必要なので、現実的に回避ルート通りに動かせるかというと難しい。ただ、少なくともアナログスティックや十字キーなどによってダイレクトな移動が可能だ。しかし、ランアクションである本作はそうではない。なにしろ上下方向の移動はジャンプと下降。ジャンプにせよ下降にせよ、重力の影響があるため、意図した位置=高さに留まり続けることはできない。なので、弾幕を回避するためには、弾幕の軌道だけでなくジャンプや下降の軌道までしっかり把握しなければならないのだ。
なんか難しそう…と思うかもしれないが、実際プレイするとプレイヤーキャラクターのHPや敵の攻撃力がバランスよく調整されているので、それほど難しくはない。筆者はこの、「思ったほど難しくない」というのが、まさに弾幕シューティングゲームの楽しさだと感じた。弾幕シューティングゲームも、画面を覆いつくすほどの弾幕から非常に難易度が高そうに見える。しかし実際プレイすると、自機の判定が非常に小さく設定されているため、見た目ほどは難しくない。このため「あんなのに難しそうだったのにクリアできたぞ!?気持ちイイ~」という感覚が味わえる。本作の楽しさもこれに近い。ジャンプや下降を駆使して複雑な弾幕をしのぎ切った時、絶妙な気持ちよさが味わえるのだ。
本作は弾幕シューティングゲームではない。しかし、この弾幕回避の楽しさからは「東方」らしさを感じることができた。加えてBGM!同人音楽サークルの楽曲が収録されており、いずれも聴いているだけで「東方」を強く感じさせる仕上がりだ。このため筆者は、ゲーム性は違えど「東方」の作品をプレイしているんだなという感覚を味わえた。
キャラクター同士の掛け合いが楽しい!本作からでも楽しめる一作
ゲーム性の楽しさもさることながら、「東方」のファンとしては博麗霊夢や霧雨魔理沙といったキャラクターたちがフルボイスで掛け合いを見せる会話シーンも魅力だろう。ちなみに本作のストーリーは、気が付くと幻想郷にいて幻想郷の状況を記していた主人公=プレイヤーの周りで様々な事件が起きていく…というもの。ただ話の筋を楽しむよりも、基本的には霊夢や魔理沙、レミリアにチルノなど幻想郷のキャラクターたちが繰り広げる賑やかなやりとりを楽しむのがメインといえるだろう。
ちなみに筆者はこれまで、弾幕シューティングとしての楽しさに惹かれて「東方」をプレイしてきたファンだ。なので申し訳ないことだが、これまでキャラクターにはそれほど強い興味を持っていなかった。だが、今は違う。本作をプレイしてその魅力に気づいた。特にチルノがいい。3章でのやりとりには腹を抱えて笑わせてもらった。筆者のようなこれまでキャラクターと縁がなかったファンでも楽しいと思えるのだから、これまで「東方」に触れておらず、本作から入るというファンでもきっと楽しめるに違いない。
なお、一見難しく見えてもプレイしてみると思ったほど難しくないと書いたが、そうだとしても難しそうに見えるという人もいるだろう。特に、筆者とは逆に、弾幕シューティングとしてではなくキャラクター中心に触れてきた「東方」のファンであれば、「自分にプレイできるかな」と不安に思うかもしれない。だが安心してほしい。まず本作は、スマートフォン向けRPGのスタイルを取り入れているためキャラクターの育成機能がついている。たとえ難しく感じるステージであっても、キャラクターを強化すれば難易度を下げることが可能だ。
加えて本作には、オート機能もついている。キャラクターたちが自動的に弾幕を避け、敵を倒しクリアしてくれるという機能だ。機能をオンにすれば、後は眺めているだけでOK。この機能を使えば、会話やストーリー中心に楽しむことができる。また、ゲーム性を楽しみたいというプレイヤーでも、素材アイテム獲得のための周回プレイを行う場合には積極的に活用したい機能だ。
今回プレイしてみて、本作は様々なファンの要望をくみ取り、それぞれにあった楽しみ方でプレイできるように作られていると感じた。「東方」のファンはもちろん、キャラはなんとなく見たことがある…という人まで、本作をきっかけに是非一度「東方」の世界に触れてみてほしい。