アトラスが2022年8月25日に発売する、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC用ソフト「ソウルハッカーズ2」(PC版は2022年8月26日に発売)のプレイレポートをお届けする。
「真・女神転生」「ペルソナ」シリーズで知られるアトラスがおくる新作RPG「ソウルハッカーズ2」。「真・女神転生」シリーズのスピンオフシリーズとして1997年に発売された「デビルサマナー ソウルハッカーズ」の世界観を受け継ぎながら、まったく新しいRPGとして生まれ変わった作品だ。
本作の主人公となるのは、テクノロジーにより生まれた人智を超えた存在「Aion」のエージェントである「リンゴ」。Aionの予測によると、本作の世界は二人の人間の死をきっかけに終わりを迎えようとしており、それを食い止めるために、意思をもつ個体として「リンゴ」と「フィグ」という二人のエージェントが生み出される。しかし、保護対象の一人である世界最高のコンピュータエンジニア・恩田一郎はすでに殺され、残る保護対象であるデビルサマナー・アロウも死体となった状態で発見されてしまう。
リンゴはアロウが殺されてからさほどの時間が経っていないことに気づき、残留した魂を集める「ソウルハック」によってアロウを蘇生させることに成功。リンゴはアロウの任務に協力しながら、人間の隠された才能を開花させる力をもつ太古のエネルギー「コヴェナント」をめぐる騒動に身を投じていくことになる。
さすがは「ソウルハッカーズ」の名を冠するだけあり、ストーリー展開もなかなかハードで容赦がない。システム面は、「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズから受け継いだ要素も多いのだが、ストーリーの雰囲気はそのどちらとも大きく異なる。「世界の終末を防ぐ」という、RPGとしては非常にシンプルな大目的があるため感情移入がしやすい一方、キャラクターのパーソナリティに関わるエピソードは複雑でテーマ性が強く、分かりやすさと奥深さをうまく両立させている。
アトラス作品でおなじみの「悪魔」に代表されるオカルト的な要素に、SF的な舞台設定がうまくマッチしており、「ソウルハッカーズ」シリーズならではの世界観も味わうことができるだろう。
タイトルの「2」を見て、ナンバリングタイトルとして前作(「デビルサマナー ソウルハッカーズ」)の知識が必要になると思われる方もいるかもしれないが、本作では舞台にメインキャラクター、システムなどあらゆる要素が一新されているので、本作からプレイしてもまったく問題ない。一部のキャラクターや組織、用語は受け継がれているものの、しっかりとTIPSでのフォローが行われているので安心して欲しい。
仲魔たちによる一斉攻撃「サバト」が鍵を握るコマンドバトル
バトルシステムには、「真・女神転生」や「ペルソナ」シリーズと同様にターン制のコマンドバトルが採用されているが、本作独自の要素も多い。
もっとも特徴的なのが「スタック」と「サバト」。本作では、「真・女神転生」シリーズと同様に悪魔を仲魔として使役することができるが、敵の弱点をつく度にスタックが累積されていき、味方ターンの最後にカウントの数に応じた数の仲魔が召喚され、敵全体に大ダメージを与える「サバト」が発生する。弱点属性をつくことがバトルの鍵となるのは「真・女神転生」や「ペルソナ」シリーズとも共通した点だが、スタックとサバトが面白いのは「弱点をつくと必ず発動」「敵全体にダメージを与えられる」の2点。ほぼ毎ターン全体攻撃を行うことができるため、スタックによるダメージを想定して戦略を練っていく形になる。
例えば普通のコマンドRPGでは、複数の敵が出現した際には攻撃を集中させて敵の数を減らすメリットが大きいが、本作では敵の数を減らすと弱点をつける対象が減り、スタックが溜まりにくくなるデメリットも発生する。そのため、わざと攻撃をばらけさせて敵を残しつ、サバトで仕留めることで効率よく敵を倒すことが可能になる。
「追撃スキル」をもつ仲魔を編成していると、サバト発動時に一定確率で追撃が発生。 制限時間内にボタン入力を成功させることで追加効果を得られる。 |
弱点属性のスキルを自動で選択してくれる「アシスト」や、 倍速で通常攻撃を行う「オートアタック」などの便利な機能も存在。 |
また前作では仲魔を直接パーティメンバーとして戦わせる形式だったが、本作ではそれぞれのサマナーがもつ「COMP」に仲魔をセットして戦う、「ペルソナ」シリーズに近い形式に変更されている。キャラクターが使うスキルやパラメータ、耐性はセットしている仲魔によって変わるため、どの仲魔をセットしておくかはかなり戦闘に大きく影響する。
COMPには対応した属性のスキル威力を上昇させるなどの効果をもつ「魔晶」をセットすることもできる。ただ、魔晶をセットするには一定のパラメータ適正を満たす必要があり、キャラクターによっては条件を満たすのが難しいこともある。基本的に仲魔はどのキャラクターにもセットできるのだが、装備できる魔晶の関係上、キャラクターとの相性に近いものが発生するようになっている。
仲魔はサマナーたちと同様にレベルアップで成長していく。ただ、一定のレベルを超えると成長が一気に緩やかになり、新しいスキルも習得しなくなるため、一体の仲魔を育て続けるのは効率が悪い。スキルをすべて習得した状態が一つの育成完了の目安で、「ギフト」として魔晶などのアイテムを獲得可能。そこまでレベルが上がったら、別の悪魔の育成を進めるのが基本的な流れだ。
またある程度育った仲魔同士で「悪魔合体」を行うことで、より強い悪魔を生み出すこともできる。合体で生まれる悪魔は、合体元の悪魔がもつスキルの中から任意のものを選択できる(一部スキルを除く)ため、育成が完了した仲魔同士を合体させるとより効果的だ。育成が終わりセットした仲魔を切り替えると、パーティ全体のバランスが崩れがちなので、悪魔合体を活用して必要なスキルを残しつつ、パーティ全体の戦闘力を引き上げていくのが重要になる。
またゲームをある程度進めると、リンゴが「コマンダースキル」を発動できるようになる。
コマンダースキルは一定ターンごとに発動できる特殊なスキル。通常のスキルと異なりMPは消費されないが、発動可能になるまでのターン数は戦闘が終わっても引き継がれるため、ある程度使用に制限がある。戦闘中に装備中の仲魔を交換できる「コンバート」、弱点をついた際、スタックされる仲魔が増える「スタック最適化」、味方ターン開始時、低確率で消費MPを半減する「MP最適化」、味方ターン開始時、低確率で発動し味方全体のHPを3行動の間少し回復する「リカバリー」などの様々な効果が存在。
中でも「コンバート」は、1ターンのクールタイムで使用可能となるため、かなりの頻度で発動可能で、弱点をつける仲魔をセットしていない際などにかなり重宝する。1ターンに発動できるのは1種類までという制限はあるものの、ゲームを進めるにつれ発動できるコマンダースキルの数も増えていくため、切り札のように温存する形ではなく、必要だと思った場面で惜しまずに活用していける要素となっている。
ダンジョン内の「悪魔探索」で悪魔と契約
本作では、ダンジョンや街の中を自由に移動する探索パートの要素も豊富だ。
ダンジョン内ではシンボルエンカウント方式でバトルに突入するが、ダンジョン内で行う斬りつけのアクションによって敵をダウンさせられる。ダウンした状態の敵に接触すると、一定確率で敵全体にダメージを与えるボーナスアタックが発生する。
また「悪魔探索」として、ダンジョン内に仲魔になった悪魔が登場する。仲魔に話し掛けると、HPやMPの回復、アイテムの獲得に加え、他の悪魔との契約が発生することもある。本作では新しい悪魔との契約はこの悪魔探索によって行う形となるため、ダンジョンで仲魔を見つけたら欠かさず話し掛けておこう。
ダンジョンの中には、「ソウルマトリクス」と呼ばれる仲間のサマナーたちの記憶を具現化したエリアも登場。
本作ではリンゴと仲間の間の関係性の深さあらわす「ソウルレベル」が設定されており、ソウルレベルが一定数に達すると各エリアを区切る「ゲート」が解放でき、ソウルマトリクスのより深い層に潜れるようになる。ゲートを解放すると、サマナー固有のスキルである「サマナースキル」を獲得できる。サマナースキルは一度習得すれば永続的に効果を発揮する優秀なスキルなので、いろいろなキャラクターのソウルレベルを上げたくなる。
街の中では、「セーフハウス」が拠点となる。セーフハウスでは、休憩してHP・MPを回復するほかに、ミール(食事)をとり様々なボーナスを得ることもできる。ミールはコンビニや自販機、外食など街中に点在するスポットで購入できる。
それ以外には、ソウルレベルが上昇するパーソナルイベントが発生する「Barヘイズルーン」、サマナーが装備するアクセサリーを購入可能な「Zafiro」、街の人々からの依頼を受注できる「Clubクレティシャス」など様々な施設が存在。
とくに重要度が高いのは、サマナーたちがもつCOMPを改造できる「COMP SMITH」。パラメータアップだけではなく、消費MPを軽減する、新たなコマンダースキルを追加するなどその効果の幅は広く、一度改造すればその後は永続的に効果が発揮されるのも嬉しい。ただし改造にはお金に加えて様々な種類の素材が要求されるため、どの項目を選択するかは慎重に選ぶ必要もあると感じた。
バトルの項目でも触れた悪魔合体は、「シルク・ドゥ・業魔殿」にて行う。合体にはプレイヤーが任意の2体を選択するものの他にも、作成可能な中で強力な悪魔の候補をリストアップしてくれるオススメ合体や、未入手や一定レベルなど設定した条件に合致した候補の悪魔だけの一覧を表示する検索合体などいくつかの方式があり、使い勝手が良い。
一部の特殊な悪魔を合体で生み出すには「特殊合体」を行う必要があるが、3体分の中から引き継ぐスキルを選べることもあり、非常に強力だ。
またある程度ゲームを進めると魔晶交換屋も利用可能に。仲魔が増えてくると、ギフトとしてすでに使用用途があまりない魔晶が手に入るようになるのだが、魔晶交換屋で魔砂に変換することで、他の魔晶と交換できるようになる。魔晶はいくら集めてもメリットがあるので、いろいろな悪魔を仲魔にしてギフトを入手したくなる。
全体としては、ベースとなる部分は近年の「真・女神転生」と「ペルソナ」シリーズの要素を受け継ぎつつ、スタックにコマンダースキル、COMPといった本作独自の要素を盛り込み、また異なるゲーム体験ができるようになったという印象を受ける。
アトラス作品らしい骨太なバランスも健在で、筆者はノーマルの難易度でプレイしていたが、序盤でも油断するとザコ戦で全滅の可能性がある。悪魔合体やCOMP改造などありとあらゆる要素を利用する必要があり、しっかりとした歯ごたえのあるRPGを求める人にとくにオススメしたい作品だ。