運に任せる過酷な体験の先にある達成感!懐かしのゲームブックを蘇らせる「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」プレビュー

プレイレビュー
0コメント 洋ナシ

インディーゲームデベロッパーのジギタリス出版が開発したアドベンチャーゲーム「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」が2026年7月9日にPC(Steam)向けに配信される。

本作は日本のインディークリエイター西村芳雄氏が開発した作品だ。同氏はこれまでカプコンやヴァニラウェアといった名だたる企業で長年ゲーム開発に携わってきたグラフィッカーで、背景美術などを手掛けてきた経歴がある。その華々しい経歴からか、多数の国内メディアからも注目を集めている作品となっている。

Steamのストアページでもニュースとして、同氏へのインタビューが大きく掲載されており、実力あるクリエイターが独立しインディーゲームに挑戦していることが分かる。

だが、1ユーザーとしては企業でのゲーム開発と個人では勝手が違う部分もあるのでは? と感じてしまう部分もあるだろう。だからこそ、実際どんなゲームなのか気になっている方も多いはずだ。

今回、本作の発売に先立ち完成したゲーム本編をプレイできることになった。この記事では「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」のその内容についてご紹介する。

次元の狭間でゲームブックに挑め!

「これは鉛筆とサイコロを武器に、剣と魔法の世界を旅するゲームである。君は物語の主人公となって、怪しげな魔女の住まう暗黒城へと冒険に出るのだ。」

このメッセージとともに起動されたゲームは、どうやら我々の住む世界と異世界を繋ぐ門のようなものらしい。ゲームの向こうには異世界が広がり、そこには見るからに魔法使いという風貌の老人がいた。

あなたは老人から一冊のゲームブック「暗黒城の魔女」を借り受ける。あなたはこの本を開き、剣と魔法の冒険へと旅立つこととなる。

運に任せる過酷な体験の先にある達成感!懐かしのゲームブックを蘇らせる「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」プレビューの画像

「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」はそんなファンタジーアドベンチャーゲームだ。

プレイヤーが挑む「暗黒城の魔女」、その舞台となるのはこの世界に魔法をもたらしたと言われる賢者ホルガーが最初に降り立った地、王国エリシング。この世界では魔法によって各国のパワーバランスが保たれており、宮廷魔術師の存在は非常に重要だ。だが、エリシングの宮廷魔術師のイヌボーグはその立場を利用して謀反を起こし、城を乗っ取ってしまった。

そんな危険な国に、2人の人物が足を踏み入れようとしている。1人はイヌボーグに育てられた青年、もう1人は記憶を失った魔法使いだ。運命と因縁に導かれた2人は、イヌボーグの野望に立ち向かう。

プレイヤーはこの2人の主人公、戦士ハヴェロックと魔法使いパネリのどちらかを選び、彼らとなって危険な冒険へと挑戦することとなる。まさに王道のファンタジーだ。

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ただ、わざわざゲームブックであることをアピールしているとおり、魔法の力で本の中に飛び込んで……というゲームでは当然ない。本作が目指しているのは往年のゲームブック体験の再現だ。ゲーム世界は文章と本の挿絵で描かれ、プレイヤーの分身となる主人公はキャラクターシートで表現される。もちろんデジタルゲームらしく一部のイラストが動いたり、イベントシーンにボイスアクトが収録されていたりするものの、基本は昔ながらのアナログゲーム、あるいはRPG・アドベンチャーゲームのような印象だ。

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もちろん根幹となるゲームシステムもゲームブックらしいもので、サイコロによる判定と選択肢によって進行。敵との戦闘はもちろん、プレイヤーの選択によって発生した事柄もダイスによってその結果が決まっていく。戦闘にてゲーム画面右に常に表示されているステータスがダイスの値にプラスされるところもそれっぽいところだ。また、プレイヤーの選択肢によって進むページが指定されて本をめくる演出が入るところもゲームブックらしい。

こうして、あの頃のゲームブック体験を現在に蘇らせようとしているのが「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」というわけだ。長年ゲーム開発に携わってきたグラフィッカーの手による作品だけあって、ゲームブックらしい雰囲気にこだわって作られていることが随所で感じられる。

運に任せる理不尽さ!この過酷さがゲームブックだ!

さて、このゲームでは往年のゲームブックにこだわっているからこそだろうが、ゲームシステム面に往年のゲームブックらしさが全面に押し出されており、あえて運任せで理不尽なところを際立たせている。

というのも本作はダイスの出目を安定させることが難しい作りになっているのだ。

まず、本作の戦闘システムは、プレイヤーと敵が6面ダイスを2つ振り、その合計にキャラクターのレベルを足した数値を行動値として比べる命中判定にて、その数値が多かった方が攻撃を行えるというものになっている。攻撃のダメージには攻撃側の攻撃力ステータスの数値から被ダメージ側の守備力ステータスが引かれた数値が適応される。素早さにしたがって順番に攻撃と命中判定を行うというようなシステムはなく、最初の判定に勝利した側が一方的に攻撃し、負けた側は何もできない仕様だ。

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つまり、命中判定に勝ち続ければ一切ダメージを追う危険はなく、逆に負け続ければダメージを食らうだけになってしまう。キャラクターを回復できる機会やアイテム、それを買うためのお金は有限であるため、できることなら1度も命中判定に負けたくないゲームシステムとなっている。

となれば、キャラクターのレベリングをしっかり行って敵キャラクターとのレベル差を作って進もう……と思うだろう。あるいは装備品には固有スキルが設定されており、これを使えばさまざまなステータスを変更させたり、命中判定を無視して攻撃を行うことができるため、これを活用して危険を避けて進みたいと考えるはずだ。

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だが、このゲームは装備品に耐久度が存在し、武器なら装備して攻撃を行うたび、防具なら装備して攻撃を受けるたびに耐久度が目減りしていく。もちろん、これがゼロになれば装備品は失われてしまう。しかも装備品の固有スキル使用にこの耐久値を大量に消費するので、スキルは要所でしか使うことはできない。当然装備品を無限に手に入れることはできず、回復も先述したとおり限られた回数しか行えない。このゲームは基本的にレベリングができない仕様というわけだ。

ということは、このゲームでの敵との戦闘は運任せの厳しいものとなる。ダイスに嫌われ何もできずに死亡……なんてことが本当にしょっちゅう起こってくる。しかも終盤になればなるほど敵のレベル・ステータスは高くなるため、厳しさはより一層増してくる。これに加えてイベントでの選択でダイスの判定が入る場合もある。下手をすれば6分の1でしか成功しない判定なんてものも、当然存在する。

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本作にはいわゆる運命点・運命値といったダイスの出目に干渉するシステムは存在しない。ゆえに、ダイスの出目であらゆるリソースが削れ全てが崩壊していく理不尽さがこのゲームにはあるのだ。

装備品・アイテムリソースが底をつき、どうあってもクリアできなくなってしまう……なんてことも当然あり得る。本作のゲームオーバーである14Pには「冒険を一から始める」という選択肢も記されてあり、詰んでしまうことも想定されている。まさに往年のゲームブックらしい厳しさを再現しているというわけだ。

理不尽な未来は、知識と自由度の高い選択肢で乗り越えろ!

ではどうやってクリアするのか? この理不尽さに打ち勝つには、ゲームの知識を蓄えていくしかない。

どこに行けば装備品・アイテムが手に入るのか? 戦闘を避けられる選択肢はどれか? どの順序で城を回れば危険を回避できるのか? などなど、このゲームはゲームブックだからこそ、ダイス判定以外の部分は必ず同じことが起こる。ゲームの展開を理解していけば、理不尽な運任せを極力抑えることができるというわけだ。

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また、ゲームブックゆえにキーアイテムの存在が選択肢に仄めかされている場合もある。さまざまな情報をゲームオーバーを繰り返して収集していこう。本作には巧妙に隠されたイベントやパズル的な要素が数々ある。さまざまな情報やイベントで手に入ったアイテムがつながり、道がひらけていくのは楽しい。

さらに、本作はこの手のアナログゲームらしい自由度の高さもしっかり用意している。例えば鍵がかかった扉を強引に破壊して突破したり、戦闘を交渉で回避したり、キーアイテムを売却できたりと自由度の高い攻略が可能だ。もちろん、探索順なども完全に自由である。

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無茶な行動にはダイスによる判定やデメリットもある。だが隠されたイベントやパズルを全部解き明かすのはかなり大変だし、それらを全部回っていたらアイテムリソースが底を尽きる可能性だってある。イベントを無視、あるいは強硬手段で突破してゲームクリアを目指すことができるのは、本作の攻略という面でも非常に重要なのだ。

主人公2人の運命の行く末は?ダイスによる運任せを乗り越え見届けよう!

魔女イヌボーグの野望に立ち向かうため、さまざまな場所を訪れるうちに、この王国で起こった出来事や、プレイヤーの分身となる主人公ハヴェロックとパネリの過去、そして魔女イヌボーグの秘密も明らかになっていく。そして、先にも触れたがこのゲームブック「暗黒城の魔女」は異世界の本だ。当然、不思議なことも起こってくる。プレイヤーの選択が、この世界と2人の行く末を変えることになるだろう。

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筆者は6時間ほどでクリアしたが手に入れられなかったアイテムもあり、ゲームの全てを解き明かすとなれば10数時間は必要だろう。遊び応えのあるボリュームであり、挑みがいのあるアドベンチャーゲームを求める方にはおすすめできるゲームだ。

ただダイスによる運任せの理不尽さはかなりのもので、万人の口に合うゲームではない。だが、このオールドスクールなプレイングだからこそ感じられる達成感や楽しさは間違いなくある。

ゲーム画面から感じられる開発者がこだわって作り上げたこの雰囲気にビビッときた方ならば、このゲームに向いているだろう。ぜひ運命の理不尽さを乗り越え、この本の結末を見届けてほしい。

PCゲームの情報同人誌を作っていたところスカウトされ商業ライターデビュー。ゲームメディアを中心に執筆活動を行う。頻繁に自分は女子高生であると主張している。主な共著に『インディ・ゲーム名作選』(Pヴァイン、2021年)、『ゲーマーが本気で薦めるインディーゲーム200選』(星海社、2021年)、『インディ・ゲーム新世紀ディープ・ガイド ゲームの沼』(Pヴァイン、2022年)。

※画面は開発中のものです。

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