オンラインにて8月23日~25日にわたって開催の「CEDEC2022」。ここでは、8月24日に行われたセッション「ELDEN RINGの大気表現 ―スカイボックス、およびボリューメトリックフォグを活用したアートの作り方―」の内容をお届けする。
登壇者はフロム・ソフトウェアより、佐藤秀憲氏と二ノ宮絵理華氏。このセッションは、「ELDEN RING」における大気表現について、解説を行うものとなっている。「ELDEN RING」の大気(空や霧)は、フォトリアル路線ではなく、絵画的なビジュアルになっており、そのビジュアルを表現するために用意された機能の説明と、アーティストによる制作事例を紹介する。
ビジュアルのコンセプトについて
大気表現とコンセプトの関連性についてだが、カメラアングルにもよるものの、空は画面に占める面積が広く、フォグは全体の色やグラデーション情報に影響を与える。つまりこれらの内容次第で画面のビジュアルが大きく変化する。ビジュアルコンセプトにあわせてフォグを調整する必要があるのだ。
なお、ここで貴重な開発初期のビジュアルコンセプトが公開された。
最初は現実の風景を参考に作っていたものの、開発初期のビジュアルは評判が良くなかった。その理由の最たるところは、「特徴がない」、「印象が弱い」、「色の情報が少ない」、「表現できるビジュアルの幅が狭い」、「ビジュアルの差別化ができていない」と言ったところが挙げられる。
また、天候による見た目の変化が少なかった。
これらの問題を改善するため、2つのコンセプトを決めたのだという。それが「絵画的なビジュアルにすること」と、「多彩な見た目にすること」。例えば、地球の環境では有り得ない色を許容したり、強い印象の絵作りをすることで独自のビジュアルを作ることを目指したのだ。また、天候によるビジュアルの変化も大きくした。スカイボックスやフォグの機能は、これらを実現するためにブラッシュアップされていくこととなる。
そしてコンセプトに従って絵作りをした結果、完成したビジュアルを紹介しよう。「ELDEN RING」のプレイヤーにはお馴染みの風景だが、初めて見る人はその多彩さに驚いてほしい。
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| プレイヤーが降り立つ地、リムグレイブ |
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| オープンフィールドの別の地域で、非常に彩度の高い赤を基準にしている |
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| ダンジョンのビジュアル。シアン系の色で空中に魔法のエフェクトを配置することで特徴を出している |
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| 彩度が低めで、「ダークソウル」シリーズと絵作りが似ているエリア。 彩度が高いエリアばかりでも単調になるため、メリハリが必要だ。 |
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| 地底エリア。紫をベースに宇宙や星空をイメージしたビジュアル。 |
ここの更に多彩な天候も取り入れて、天候の種類だけでも8つものバリエーションを作った。
スカイボックスについて
本稿のメインのひとつとなるのが、スカイボックスの機能だ。その名の通り、基本機能は大気の色や星、太陽、月、雲が描画される。また、1日を4段階に区切り(例外的に7段階で区切られている箇所もある)、時刻によってパラメータが変化したり、ノイズテクスチャを使ったUVの変形といった機能もあわせもつ。
まずは色のコントロール機能についてだが、太陽の方角とその逆方向に対して独自の色を設定可能。さらに任意の方角に別の色をブレンドすることや、明るさコントラストの調整が可能となっている。これは絵画的な空を作成する上で、色を自由に操作したいというところから必要な機能だった。
他にも、画面の端を暗くしたりといった機能もある。
更にフォグの色を取得するよう導入する以前は。天候や時刻によってフォグの色が大きく変化し、全てのパターンに対して最適な色に調整するのが難しかったが、あらゆる環境で自動的に色がフォグに馴染むようにしたかったという。他にもグローフィルターや露出逆補正といった機能もある。
だが、空が絵画的であることのデメリットもある。彩度の高い色が環境マップに反映されてしまい、彩度の高い光でライティングされてしまい、仕様上は正しくてもアート上は美しくないという現象が起こってしまう。この問題を解決するために、環境マップをキャプチャーする際に彩度の低い空に変更されるようにしたという。
シェーダーはアーティストが担当し、内製のエディタを使用しているが、メリットはディレクターの要望を素早く実装できることや、ユニークな表現を作ることに適していることが挙げられる。だが、デメリットとしてプログラマー作成のものより品質が低く、GPU負荷の最適化が甘くなりやすい点があるものの、「ELDEN RING」ではこれらのデメリットを妥協することにした。
ボリュームメトリックフォグについて
次に大気散乱について解説していこう。大気散乱とは大気を構成する微小な粒子に光があたり、経路が変化する現象を言う。光が粒子を通り抜ける時にどう吸収され、散乱するかという挙動を踏まえ、Raymarchingと呼ばれるところで処理をしている。
これを踏まえ、ボリュームメトリックフォグで表現可能となった効果はいくつかあるが、その中でもアーティストから好評だったのは、日向と日陰で異なる色を設定できるものだったという。
また好評だった点の2つ目は、壁に対して斜めの情報を入れることができるライトシャフトだったそうだ。
だが、ボリュームメトリックフォグの当初の実装ではシーン一律表現のみで、高低差があるなどシチュエーションによっては物足りない部分もあり、アーティストが自由に配置可能なローカルフォグの機能を導入することとなった。それが、配置式フォグボリュームだ。
配置式フォグボリュームでは領域ごとに色設定が可能で、グローバルフォグの設定と同期し濃度や粗密も設定できる。パラメーターだけで、これらのフォグを表現することができる。
具体例として、ハイトマップ無効時と友好時の画像を挙げよう。
配置式フォグボリュームは、シーンの重要度に応じてアーティストが調整可能だ。複数のボリュームを組み合わせて絵作りをしたくても、負荷が高すぎてたくさん置けないという問題があったが、ボリューム単位のチューニングではなく一律に影響する負荷対策を導入することでパフォーマンスの対策を行った。
大気散乱現象をシミュレーションし効果的な表現を得られるボリュームメトリックフォグ、負荷が軽く調整がシンプルだが局所的な細かい調節ができないシーン一律にかかるグローバルフォグ、アーティストが自由にカスタマイズ可能だが負荷が大きく重要度に応じたチューニングが必要な配置式フォグボリューム。この3点が重要となる。
実際のアーティストによる活用事例
ここからは実例を紹介していこう。まずは本作の絵作りの基準となっているリムグレイブからで、ここではスカイボックスやフォグの機能がほぼ全て活用されている。
まずはスカイボックス初期の状態から、雲を追加した。雲に対して色の調整、大気の色を緑色に調整し、大気などにビネット効果放射状のグラデーションを追加している。
次にグローバルフォグのみの黄金樹の周囲だが、縦の情報量が少なく、中景~遠景の奥行がないという問題点が挙げられたため、ここに配置式フォグボリュームを追加。これにより崖の単調さが改善、橋を目立たせることもできた。アーティストが思う場所にフォグを配置できたので、手動で微調整することができた。
だが、次は右奥の崖が単調だという問題が出てきたため、書割の雲を配置。配置式フォグボリュームを利用する選択肢もあったものの、雲のできる表現には解像度が足りなかったため、書割での対応となったとのことだ。このように配置式フォグボリュームには高い解像度を設定しにくいという問題があり、特にPS4やXbox OneではGPU負荷が高かったこともあり、詳細なディティールを表現しなければならないケースでは書割表現を使うことになった。
更に、黄金樹が直線的すぎて周囲から浮いている、黄金樹周辺の情報量が足りないということで、光のエフェクトを追加し、フォグカラーによるブレンド量を調整して、ついにリムグレイブのビジュアルが完成した。
そのほかの実例に関しては、スライドメインでお届けしよう。
・湖のリエーニエ
・ストームヴィル城
・シーフラ河
・崩れゆくファルム・アズラ
最後に佐藤氏と二ノ宮氏は、「今後の大気表現の目標」として、タイトル方針にあわせた絵作りをしたいこと(このセッションでの手法はあくまで「ELDEN RING」に最適化されたものであること)、アーティストが手動で調整していたため改善したいこと、そして3Dテクスチャの作成やより高度なアニメーションの制御等、フォグをより自由にカスタマイズできるようにしたいことを挙げて、本セッションを締めくくった。
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