ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」を発売から3日にわたりプレイした上での、ファーストインプレッションをお届けする。

目次
  1. ゲーム史に名を刻む傑作であろうことは疑いようもない
  2. 「BotW」と「TotK」、それぞれの“祠”が持つ役割を考える
  3. 祠の謎解きがもたらす、“より深化した遊び”への導線
  4. 「TotK」は「BotWを超えるゲーム」なのか?

任天堂から2023年5月12日に発売されたNintendo Switch用タイトル「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下、「TotK」)。「ゼルダの伝説」シリーズは基本的に多くのタイトルが独立した世界設定、ストーリーとなっているが、本作は2017年に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、「BotW」)の直接的な続編だ。前作でハイラルの危機を救ったリンクの、新たな冒険が描かれる。

すでに本作をプレイしている方ならご存知のとおり、プレイ開始から3日程度では、本作の全容を把握することは不可能に近い。そしてプレイすればするほど、新たな一面が見えてきて、このゲームに対する認識は更新されていっている。

その上で、本稿ではまだ始まったばかりの冒険で感じたことを、少し焦点を絞って書いていこうと思う。ストーリーはもちろん、ゲームプレイに関しても序盤でわかることを除き、ネタバレは控えた内容となっているので、まだ「TotK」をプレイしていない人も、安心して読み進めてほしい。

ゲーム史に名を刻む傑作であろうことは疑いようもない

先にこれだけはハッキリさせておこう。「TotK」が「BotW」と並んで、ゲーム史に名を刻む傑作であり、“オープンワールド”に分類されるタイトルの最高傑作のひとつに数えられるであろうことは、作品の全容を把握し切れていない現段階でも疑いようがない。

前作「BotW」で構築されたハイラルの世界をベースにしながらも、空と地底にも広がったフィールドは、発見の連続だ。作品世界で経過した歳月や、ゲーム冒頭で起こる天変地異により、地上の様子も大きく変化。同じフィールドがもとになっているからこそ、その変化と散りばめられた新しい“遊び”の密度に、ひたすら圧倒される。まだ“風の神殿”を攻略したばかりだが、メインダンジョンとその先に待ち受けるボスとの戦いにも、度肝を抜かれた。

この世界を遊び尽くすために用意された特殊能力は、前作から一新。リンクの右腕に備わることになる“ウルトラハンド”や“スクラビルド”、“トーレルーフ”に“モドレコ”といった能力は、「こんなことが出来るかも?」といったプレイヤーの想像力をさまざまな形で刺激する。そして複数の能力を組み合わせることで、可能性はますます広がる。

前作の時点で、いわゆる正攻法とは思えない、ちょっとズルい攻略法すらも許容されてしまう自由度の高さには驚くべきものがあったが、「TotK」ではこれがさらなる飛躍を見せている。プレイヤーの想像力を徹底的に引き出すべく、綿密に構築されたチュートリアルステージ“始まりの空島”の時点で、多くのプレイヤーは本作の“底力”の一端を垣間見て、度肝を抜かれたのではないだろうか?

そんな中、地上――ハイラルの大地に降り立ってからの、フィールド探索と視界に入った祠(ほこら)での謎解きを交互に行いながら、マップの表示範囲を広げていくといった遊びの流れは、「BotW」と「TotK」を比較したとき、あまり変わっていない部分のひとつであるように感じるかもしれない。

一方で、この「フィールドと祠の関係」にまつわるちょっとした変化は、「BotW」が提案する遊びと、「TotK」が提案する遊びの間にある性質の違いが、顕著に現れている部分でもあるように思うのだ。

「BotW」と「TotK」、それぞれの“祠”が持つ役割を考える

「TotK」では祠の謎を解いてフィールドに戻ると、まさに先ほどまで頭をひねっていた謎解きの“解法”を活かせるオブジェクトや仕掛けが視界に入ることがよくある。祠の謎を解くことで、それまで素通りしていたモノの“使い方”に気づき、フィールドでの遊びにも広がりが生まれるのだ。この感覚は、「BotW」の祠ではあまり得られなかったものではないだろうか?

「BotW」の祠は、どちらかというとフィールドでも親しんできたシーカーストーンの能力の“応用編”のような謎解きが多かったと思う。能力のチュートリアルを兼ねた“始まりの台地”の祠など例外はあるものの、フィールドの探索中に「祠で学んだことを活かせるな」と感じることは「TotK」ほど多くはなかった。

これは「BotW」と「TotK」の祠の機能に優劣があるという話ではない。

「BotW」が傑作となった理由のひとつに、当時でも少なくないゲームに搭載されていた“物理エンジン”に、独自の“化学エンジン”をかけ合わせたことが挙げられる。「草木を燃やせば、上昇気流が発生する」、「気温によって一部の物体やアイテムが状態変化を起こす」、「鉄製の物体を繋げると、その間には電気が流れる」、「運動エネルギーを物体に蓄積させると、開放したとき、その物体を遠くまで飛ばすことができる」などなど。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」

いま挙げたもののうち一部は現実世界では再現できない“嘘の法則性”だが、プレイヤーの直感としてはすんなり受け入れられ、ゲーム内に登場しても違和感なく利用できるものばかりだ。フィールドにある、あらゆる物質に作用するこういった物理法則・化学法則を通して、プレイヤーとゲーム内に構築された世界が、影響を与え合う――その仕組みが「BotW」に“生きた世界”としての息吹を与えていた。

マグネキャッチやビタロック、アイスメーカーといったシーカーストーンの能力は、こうした「BotW」ならではの物理法則・化学法則の特性を、プレイヤーが能動的に活用するためにあった面が大きい。フィールドに自然と存在している法則を活用して、より複雑な謎解きを行うのだから、それがフィールドに戻ったときに活かす機会の比較的少ない“応用編”のようなものになるのは当然の流れだったのかもしれない。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」

祠の謎解きがもたらす、“より深化した遊び”への導線

では「TotK」はどうだろう? 本作に登場するウルトラハンドやスクラビルドといった“物体同士を組み合わせる”特殊能力は、組み合わせた結果として起こることを事前に想像するのが比較的難しい。そしてだからこそ、いろいろな試行錯誤が予想外の結果をもたらす楽しさがある。

本作のフィールドには、いたるところに古代の技術により生まれた物体が配置されているが、これらの活用方法もまた、作品世界に触れることで自然と身に付く類のものではなく、プレイヤーが能動的に掛け合わせることで初めて意味を成すものばかりだ。

また、天井を突き抜けることができるトーレルーフや、指定した物体の動きを過去に遡って巻き戻すモドレコは、作品世界に自然と存在している法則性を利用するというよりは、“法則を乱して遊ぶ”能力と言える。

言うなれば「TotK」でリンクが使用する能力は、「BotW」と同じ物理・化学法則の概念があることを前提としつつ、あらゆる場面でその“応用編”が求められるということだ。遊びの幅はさらに広がっているが、それを発想し、使いこなすハードルは前作よりも上がっている。

そして、あらゆる場面で求められるようになった応用的な遊び方を、プレイヤーに伝える役割を担っているのが本作における祠の謎解きなのだ。起動することで、それぞれに効果を発揮する古代技術の産物を組み合わせることで生まれる、新たな活用方法。そこに法則を乱す、捻じ曲げる能力も行使することで生まれる、さらなる相乗効果。いくつかの祠を攻略すれば、謎解きがそれらをひとつひとつ学べるものになっていると気付くだろう。

「TotK」の謎解きも、「BotW」と同様にズルい方法で解ける仕様は健在だが、多くの祠が“想定される解法”の応用で突破すべき謎が複数用意されているので、どこかの時点で“想定される解法”に気付きやすい。また、祠に入ったときに表示されるテーマのようなものが、解法のヒントにもなっていることに気付けば、やるべきことはある程度推察できるようになっている。

祠の謎解きで知見を得るほど、ハイラル全土の冒険で考えうる選択肢が、より幅広いものになる。そしてそれをプレイヤーに気付いてもらうための、「さっき祠で覚えたやり方を、いまから使ってみてくれ!」と言わんばかりの巧みな設計が、フィールドのいたるところに張り巡らされている。視界の隅に何かを見付けたときに「これをやってみよう」「あれが出来るかもしれない」といった想像が、より大きく膨らむようになる――。

「TotK」は、前作よりも高度な思考をプレイヤーに求めながらも、それをプレイヤーに丸投げしたりはしない。プレイヤーを導くための工夫が結果として、フィールドと祠を行き来するゲームプレイが、より綿密に絡み合う、深化した遊びへと繋がっていると言えるのではないだろうか。

「TotK」は「BotWを超えるゲーム」なのか?

上記を筆頭とした「TotK」のゲームデザインが、「BotW」の続編であるからこその選択だったことは考慮するべきだろう。また、「BotW」でも覚えやすいとは言えなかった操作系はさらに複雑さを増している。ボタン操作を誤入力せずにプレイするのは困難を極めると言っても言い過ぎではない。

「TotK」からプレイしても問題ないように、前作から引き続き登場する要素にも徹底した丁寧なチュートリアルがあるとはいえ、身に付けるべき知識も、操作方法も、本作だけでイチから覚えるのは、それなりに負担が大きいのではないかと思う。ストーリー的に前作からプレイ推奨なのとは別に、ゲームとしての構成要素の膨大さもまた前作「BotW」を先にプレイすべき理由のひとつとして挙げられるということだ。

それに「TotK」のフィールドは情報の密度があまりに高い。地上を探索していても、空にあるフィールドが視認できて、そこに昇る手段も用意されている。前作になかった洞窟や、地底に降りるための穴もある。いたるところに配置された遊べるモノやイベントは、物量も、バリエーションも多い。

ハイラルという世界の息吹を感じ、プレイヤー自身のペースで満喫したいのなら、「BotW」の物量のほうが丁度いい、心地いいと感じるかもしれない。これを理由に「TotKよりもBotWのほうが好き」という人がいても、おかしな話ではないだろう。

続編であることを前提としたゲームデザインや情報密度に加え、「BotW」があの作品世界をゼロから創り上げた偉業を鑑みられる必然性もあり、「TotK」が「BotWを超える作品」であるという評価は、少なくとも筆者には気軽に判断できるものではないと感じた。

このハイラルでの途方もない新たな冒険にひと段落がついたとき、ここまで書いてきた“ファーストインプレッション”のうち、どれだけの印象が覆るのだろう? 心からのワクワクを胸に、引き続きこのゲームを楽しんでいくつもりだ。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム

任天堂

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  • 発売日:2023年5月12日
  • 12歳以上対象

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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