2024年3月20日にいよいよ発売となるPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)用ソフト「Alone in the Dark」のプレイレポートをお届けする。
「Alone in the Dark」は、1992年に発売された同名タイトルのリブート版だ。レビューの前に、まずは古典ホラーゲームの名作としてカルト的人気を誇るオリジナル版について簡単に紹介しておこう。
オリジナルの「アローン・イン・ザ・ダーク」は、「デルセト」という屋敷を舞台にしたホラーアドベンチャー。デルセトの主人であるジェレミー・ハートウッドは自殺しており、プレイヤーは私立探偵のエドワード・カーンビー、ジェレミーの姪のエミリー・ハートウッドというふたりの主人公のいずれかを操作し、異形の怪物たちを撃退しながら狂気に満ちた屋敷の謎を解き明かしていく。
特筆すべきは初代「バイオハザード」にも取り入れられた、キャラクターの動きに合わせて固定カメラの映像が切り替わっていく3D表現だ。もっとも当時はまだ3Dの黎明期で、ポリゴンでのキャラの造形が非常に荒く、操作性もいまひとつであった。現代の視点から見るといろいろ難点が目立つことだろう。
しかし、2D全盛の時代にあって本作の3D表現は非常に斬新かつ画期的で、以降のゲームに与えた影響は決して小さくはなかった。パズル的な仕掛けの数々、プレイヤーの意表を突くドッキリ演出、クトゥルフ神話をベースとしたダークな世界観などホラーゲームでおなじみの要素も踏まえられており、“3Dサバイバルホラーの原点”とも言われるなどゲームの歴史に燦然とその名を残している。
もちろん、シリーズ化もされていて、カーンビーが少女の誘拐事件を捜査する「アローン・イン・ザ・ダーク2」、アメリカ西部を舞台にした「アローン・イン・ザ・ダーク3」など5つもの作品が作られている。
原典を大胆に再構築、予測のつかない恐怖の数々がプレイヤーを襲う
さて、リメイク版となる本作「Alone in the Dark」だが、オリジナル版をベースにゲームシステムやストーリーを再構築。原典の持つダークな雰囲気はそのままに、新しい魅力を持つ作品になっているのだ。
エドワード・カーンビー、エミリー・ハートウッドのどちらかを操作してデルセト屋敷に侵入するという基本要素はオリジナル版とまったく同じだが、今作ではデルセトは精神病棟の名前で、ジェレミー・ハートウッドはその患者となっている。しかも、ゲームの開始時点でジェレミーは自殺しておらず、エミリーのもとに不可思議な手紙が届いたことから彼の安否を確かめるべく、カーンビーとともにデルセトに向かうことになるのだ。
ことに目を引くのが、現実の世界と異形の怪物たちがうごめいている異世界を行き来する展開。オリジナル版ではデルセト屋敷だけが舞台となっていたが、今作では屋敷内の部屋から出たと思ったら、見知らぬ街や木々の生い茂る山中、霧のたちこめる港などのさまざまな場所に飛ばされたり、また屋敷に戻ってきたりする。途中で入手できる手記やメモなどから飛ばされた先がどんな場所なのかはある程度見当がつくが、それでも唐突感は否めず、プレイヤーは主人公と同様、わけがわからぬままゲームを進めていくことになる。


この異世界は誰かの記憶の中なのか、それとも主人公自身が狂気に冒されつつあるのか。突然異世界に移ったと思ったら目の前にモンスターの群れがいて、あっさり殺されてしまったり、当初は安全かと思われた屋敷の中でもモンスターに襲われたりと、予測不能の事態の連続に筆者も大いに困惑させられた。こういった意表を突く展開の数々が先の読めない恐怖と緊張感を生み出しており、本作ならではの魅力となっている。
さらに面白いのが、カーンビーとエミリーのどちらでプレイしているかによって、同じ場面でも出会うキャラクターが違っていたり会話内容が変化したりすること。それぞれ固有のカットシーンが用意されており、ジェレミーを探す過程でふたりの隠されていた背景も明らかになっていくなど、カーンビーとエミリーの両方をプレイすることで物語の全貌が見えてくる仕組みになっているのだ。


デルセトで暮らしている奇妙な住人たちの存在も見逃せない。オリジナル版の登場人物はカーンビーとエミリーのふたりだけだったが、今作は精神病棟が舞台だけあって一癖も二癖もある怪しげなキャラクターが多数登場。「アローン・イン・ザ・ダーク2」に登場したグレース・ソーンダースと同じ名前の少女もそのひとりで、随所で現れてカーンビーとエミリーを翻弄する物語の鍵を握る存在となっている。
このようにストーリー面で大幅な改変がなされているが、原典へのオマージュもしっかり盛り込まれている。オリジナルのシリーズはクトゥルフやブードゥーなどが題材となっていたが、これは本作も同じでラヴクラフト作品を思わせる退廃的かつ陰鬱とした雰囲気の中でストーリーが進行していく。プロローグでのカエルのアップをはじめ、オリジナル版をプレイしたことがある人なら「おっ」となるシーンも随所にあり、原典へのリスペクトを十分に感じられることだろう。
ちなみに、シナリオを担当したのはホラーゲームの傑作と名高い「Amnesia」や「SOMA」の脚本を手掛けたことで知られるMikael Hedberg(ミカエル・ヘドベルグ)氏。プレイヤーの精神を削るような心理的ホラーの名手だけに、このタイプのホラーが好きな人にはたまらないのではないだろうか。


スリリングだが難しすぎない絶妙の難易度の戦闘
続いて、本作のプレイフィールについて述べていく。ゲーム画像を見ての通りカメラ視点はビハインドビューが採用されており、最近のゲームに慣れている人なら違和感なくプレイできるだろう。
クトゥルフ神話を題材にしているだけあって、敵となるモンスターはいずれも闇を感じさせる禍々しい姿をしたクリーチャーで不気味な唸り声を上げながら迫ってくる。地中に潜って姿を隠すものや鳥のように空中を飛ぶものもおり、いずれもクトゥルフならではの得体の知れなさを持つ奇怪な造形になっている。


気になる戦闘部分だが、プレイヤーキャラクターのカーンビーとエミリーは普通の人間にすぎず、能力の強化などの要素もない。モンスターの攻撃を何発か受けただけで、あっという間に体力が減ってピンチになってしまうため、ときにはモンスターに見つからないようにスニーキングしたりバトルを避けて一気に駆け抜けたりと、状況に応じた慎重なプレイが求められる。
おもな攻撃手段は拳銃で、ゲームを進めていくとショットガンやマシンガンといった、より強力な武器も使用できるようになる。ステージ内のあちこちにあるスコップ、鉄パイプ、手斧などを入手することで近接攻撃を仕掛けることも可能。当初は敵に接近された際に切り抜けるための緊急避難的な武器かと思っていたのだが意外と威力があり、かなり重宝した。ただし、何回か使用するとすぐに壊れてしまうため無駄遣いは禁物だ。


落ちているブロックや火炎ビンを投げつけて敵の気を引いたりダメージを与えたりすることも可能。特に、火炎ビンはかなり強力で有効活用したいところだが、これらを手に持っている間は銃弾や回復アイテムなどを拾うことも、扉を開けたりすることもできず、動きもスローになるなどのデメリットがある。必然的にモンスターに奇襲されると後手を踏むことになるので、いったんこれらを持たずに先に進んで敵の位置を確認しておくといった臨機応変さが必要だろう。ちなみに、オリジナル版と同じく酒が回復アイテムになっている。
このように限られたリソースを活用しながら難所を突破していくというサバイバルホラーの醍醐味を楽しめる本作だが、決して難しすぎず誰でも楽しめる絶妙の難易度になっているのがうれしいところ。筆者は標準の難易度である「スタンダード」でプレイしたのだが、入手できる銃弾や近接武器は比較的多めで、少し無駄遣いをした箇所もあったものの手詰まりになることはほとんどなく、割とスムーズに進めることができた。


もちろん、やたら銃を撃ちまくるなどの適当なプレイをしていたら、すぐにアイテムが足りなくなるという事態に陥る。近接武器や火炎ビンなども活用して弾丸や回復アイテムの節約につとめるなど、それなりのテクニックは当然求められるが、こうした基本さえ踏まえていればさほど苦戦することはないはずだ。
多数の敵が出現したりする難所も何度かトライ&エラーを繰り返せば、おのずと突破できるようになっており、アクションやガンシューティングがあまり得意ではない筆者でもコントローラーを投げ出したくなるような場面はほとんどなかった。アクションに自信があってシビアなバトルを楽しみたいという人は、最初から難易度「ハード」でプレイしてもいいだろう。

歯応えのある謎解きも豊富な古典ホラーの魅力を踏襲した良作
豊富な謎解き要素も本作の魅力のひとつだ。絵合わせのようなパズルの数々、金庫の番号を示した暗号の解読、ギミックを作動させることで先に進めるようになる遺跡のようなステージなど、歯応えがある謎解きが満載。筆者の頭が固いということもあるのだろうが、解いたときに解放感を覚えるほど悪戦苦闘したものもあったりした。モンスターとのバトルよりもこちらの方がハマるという人もけっこういるのではないだろうか。
本作の舞台であるデルセトの構造もなかなか入り組んでいるが、道中でマップを入手することが可能で、未探索の箇所や解放された箇所などが確認できるようになるので、迷ったりする心配はほとんどない。一方、異世界はマップが表示されない箇所がほとんど。手探りで進んでいかなければならず、かなり不安をかきたてられたが、マップの構造が比較的単純で、どこに行くべきか分からず右往左往するようなことはさほどなかった。こうした部分でも難しすぎず、かといって簡単でもない絶妙の難易度になっており、制作陣のこだわりを感じさせた。
プレイヤーを誘導するためのペイントが血痕になっているのも面白い。この手の要素はプレイヤーの没入感を削ぐという意見も少なくないが、本作の場合はゲームの雰囲気を損ねておらず、むしろ「この先に何が?」というスリルをかきたてる要素になっており、なかなかよいアイディアだと感じられた。もちろん、オプションメニューでこうしたサポート要素を無効にすることも可能になっているので、よりハードなプレイが好みという人はこちらで挑戦するといいだろう。



細かいところまで作り込まれた良作だが、少々気になった点もあった。そのひとつがゲーム画面の暗さだ。冒頭で携帯ライトを入手できるのだが、光量がかなり少なく、場所によってはほとんど周囲が見えない暗闇状態でのプレイを強いられた。どこから何が出現するのかわからず、緊張感が増すという効果もあるのだが、何も見えないゆえのストレスも大きく、個人的にはもう少し見やすくしてほしかったところだ。
カーンビーでのプレイとエミリーでのプレイが、かなりの部分で謎解きの要素が同じという点ももったいなく感じた要素だ。もちろん、それぞれ特有のパートもあるのだが、序盤から中盤にかけての基本的な進め方はまったく同じで、せっかく2周できるのだから主人公ごとに異なるルートをもう少し用意してほしかったと個人的には思う。

とはいえ、総合的に見ればホラーゲームとして満足のいくレベルに達しており、プレイする価値は大いにある。見ていて痛くなるようなゴアシーンがほとんどないというのも大きな特徴で、スリルやサスペンスは好きだが、血が飛び散ったり身体が欠損したりするショッキングなスプラッター描写は苦手という人でも安心してプレイできるだろう。
サバイバルホラーの古典的名作をリブートした本作。オリジナル版を知らなくても十分楽しめるので、本作ならではのジワジワと迫りくる心理的恐怖をぜひ体験してみてほしい。


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