8月21日~23日にわたって開催の「CEDEC2024」。ここでは、8月22日に行われたセッション「物語を最後まで楽しんでもらうために~『FINAL FANTASY XVI』におけるロアサポート機能開発」の内容をお届けする。
登壇者はスクウェア・エニックスより、青野百花氏と山口修二氏。本セッションでは、2023年6月に発売した「ファイナルファンタジーXVI」(以下、「FFXVI」)のロア(世界設定)の理解を深めるためのシステムを紹介した。
「FFXVI」では、プレイヤーが物語を把握しやすくするために、アクティブタイムロア・ヴィヴィアンレポート・ハルポクラテスの備忘録という3つのロアサポート機能を考案・実装している。本セッションでは、それらの機能の企画と実現までの流れを説明しつつ、「FFXVI」がどのような課題に直面し、それをいかに改善したかが説明された。
なお、本稿は比較的易しめな内容となっているので、「FFXVI」のファンでも楽しめる内容となっている。2024年9月には待望のPC版発売も控えており、これから「FFXVI」を楽しみたいと首を長くして待っている人たちにも、本作で行われた工夫について目を通してもらえれば幸いだ。
3つの機能でロアをサポート
そもそも「ロア」という用語に聞き覚えがない人もいるかもしれないが、ロアとは世界設定を指す用語だ。ゲームや小説などで世界設定や世界観を指して使われることが多い。
「FFXVI」には、人物相関図+世界情勢図をサポートするヴィヴィアンレポート、ゲーム内用語集をサポートするハルポクラテスの備忘録、キーワード関連UIをサポートするアクティブタイムロアという、3つのサポート機能がある。
「FFXVI」の開発が始まった頃はロアを説明するための要素は少なかったのだが、開発を進めていくうちに「専門用語が難しい」=「プレイヤーの体験を損ないかねない」となったという。
そこでプロデューサーの吉田直樹氏から「ロア用のUIがほしい」という要望があり、シナリオの前廣和豊氏から「概要がある」という話になり、ロアサポート機能を作ることになったそうだ。
ロアサポート機能のコンセプトは、とにかくメインストーリーを最後まで楽しんでほしいという一点に尽きたという。「FFXVI」を楽しむために必要なのは、地図や人物の説明、用語集などが挙げられ、これらの時系列を自然に伝えるのに参考にしたのは、アメダス(地域気象観測システム)だった。
他にも、相関図は物語と同様にクライヴ中心の同心円形式に、駒や地図は情勢解説動画にし、振り返れるようにした。
ハルポクラテスの備忘録は、当初はもう少しスタンダードな用語集を考えていたものの、実装するからにはプレイヤーに見てもらえるようにしないと、という前廣氏の一声によって、色々な仕掛けや見た目を錯誤することになったそうだ。
アクティブタイムロアは、いつでもロアをチェックできるようにワンタッチ起動に。こうしてメインストーリーを理解しやすいように、3機能でロアをフォローしている。
詳細仕様を詰める段階に
ロア機能の中身やコンテンツが決まり、必要な機能とリソースの規模が明確化されたことで、機能の設計をプログラマーと相談したり、UIの設計をアーティストと相談する段階へ。
特にアクティブタイムロアは、いつでも開けるのが特徴で、様々な状況に応じて適切なロア項目を表示したい、という希望があったため、区切りを指定できるようにする必要があった。しかし、2000以上の区切りになってしまったが、どのシーンも何を更新・表示すべきか考えて決めたいということで、自動化を断念することになってしまったという。
あらゆるプレイヤー状況に対応するには細かいデータが必要だったが、そこで活躍したのがデータベース管理を容易にできるNEXというエクセルの内製ツール。膨大なデータであっても1シートを見ただけで読み取れ、調整が簡単だった。
その他、ヴィヴィアンレポートのクオリティアップを目的としたデバッグ機能や、UIの実装、盤面アニメーションの調整、盤面機能のスクラップ&ビルドを行っていったが、複雑になりすぎてしまったため、時には便利さの取捨選択も必要だったという。一方、アクティブタイムロアはコンセプトが明確で作り直しが発生しづらく、試行錯誤が少なかったそうだ。
本来ならば、ゲームをリリースして終了のはずだったが、アップデートでインナーボイスという、人物相関図に心の声を表示させる機能の追加も入った。
苦労の甲斐もあって、リリース後にはトルガルの心の声でトルガルが大人気に。結果として物語の最後をむかえても長く楽しんでもらえるようになったと振り返った。
ロアサポート機能で物語を最後まで楽しんでもらうのはもちろんのこと、ロアに興味ないひとにどうアプローチするのかを工夫したという。ロアはゲームにとって重要で、サポートする機能をつけることでよりゲーム体験を高めることができる、とセッションを締めくくった。
(C) SQUARE ENIX
※画面は開発中のものです。
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