セクシュアルマイノリティの表現は何故必要で、ゲームではどう変化してきたのか【CEDEC2024】

CEDEC2024
0コメント 近藤智

2024年8月21日~23日にわたって開催された「CEDEC2024」。本稿では8月22日に実施されたセッション「ゲームとセクシュアルマイノリティの表現の過去と未来」のレポートをお届けする。

セクシュアルマイノリティの表現は何故必要で、ゲームではどう変化してきたのか【CEDEC2024】の画像

登壇者は東京藝術大学大学院 近藤銀河氏。セクシュアルマイノリティに対してどういった表現があったのか、これまでどのような流れがあったのか、それらの表現を支えるものとしてどのような理論があったのか、そしてゲームスタディーズまで講演していく。

19世紀半ばに性科学や精神分析が登場し、現代的なセクシャリティ、個人のアイデンティティと結びついたような形でゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーといった概念が発展していく。当時は犯罪のように扱われた存在を、そうではないとする役割もあった。

同性愛のカルチャーが発達する中、1969年にアメリカで起きたストール・ウォール・インの反乱が大きな転換となる。いつどこでも起こり得た背景もあり、70年代はさまざまな解放運動が始まった。そうした中で個人や少人数で制作する出版物「Zine」が発展し、ゲイなどに限定した病とされたエイズの重要性を広める「エイズアクティビズム」により同性愛、トランスジェンダーなどを含むLGBTセクシャルマイノリティの運動の中で表現との結びつきが強まり、コミュニティも団結していく。

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では、何故「表現されること」が必要なのか。LGBTQ小説アンソロジー「How Beautiful the Ordinary」の序文では、まだ若い読者へ「本のページの中に自分の反射を見出すこと」について語られている。多くのセクシャルマイノリティの若者にとって、自分の鏡となるような創作が社会と自己をつなぐような重要なものになるという。自分を投影できる、自分と同じようなマイノリティが出てくる作品に触れることで、客として受け入れられていると感じられ、人生の捉え方も大きく変化するなど、近藤氏は自身の経験も交えて語る。

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とくにゲームは設定されたルールへプレイヤーが向き合う遊びで、没入感をもってマイノリティの経験を得られるのもゲームの特性のひとつ。エイズアクティビズムの中で生まれた「Caper in the Castro」から始まり、現在インディーゲームでは「2064: Read Only Memories」「VA-11 HALL-A ヴァルハラ」など個人の性質に結び付いた興味深い作品が多い。時代設定やゲームの表現手法としても、ノスタルジックな作品も多いと近藤氏は語る。

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一方、AAAタイトル「Fallout シリーズ」「The Elder Scrolls V: Skyrim」などでのセクシャルマイノリティの表現は選択肢やロールプレイと強く結びつき、自由度の一環として広まっている。直近で高い評価を受けた「バルダーズ・ゲート3」は多くのキャラクターと恋愛関係になれるが、性的な描写をする際に俳優の安全を守るインティマシー・コーディネーターを起用。キャラクターメイキングの際にノンバイナリーの代名詞「they/them」を選べるケースや、翻訳ではまだ「彼ら」と訳される場合も少なくないが「彼の人(かのひと)」とするケースも増えてきているそうだ。

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「Mass Effect 2」や「サイバーパンク2077」では同性のみ恋愛関係に発展できるキャラクターが登場し、「The Last of Us Part II」では主人公が明確にレズビアンとして描かれた。近藤氏は1997年に発売された「フロントミッションオルタナティヴ」は批判的な例を内包しつつも、時代を考えれば偏見や差別にも向き合った作品だとアピールする。ただし、こうした例はまだあまり多くない。

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同性愛者が特定の操作や選択肢でのみ出てくる、オプションのような扱いを皮肉的に表す「Gay button」といった概念がある。これはゲームに限らず映画「スター・ウォーズ」「アベンジャーズ」でも問題となり、小さな表現であれば検閲をすり抜け当事者に届く可能性があるという面もあるが、隠そうと思えば隠せてしまうということもである。またセクシャルマイノリティの存在がいわゆるネタバレとなり、当事者がアクセスしにくくなるケースもある。

また、現実では多くの差別や歴史があるという背景には触れず、同性愛やトランスジェンダーに対する差別がない、良くも悪くも理想的かつ楽園のような物語として描かれる作品も多い。当事者にとって差別がない理想的な世界もひとつの願望ではあるが、自分たちの世界や歴史が無視されているように感じられる点や、現在のゲーム業界が西洋中心的であるゆえの問題も感じられるという。

近藤氏が今後ゲームメーカーに期待する点の1つは歴史の描き方で、架空の世界で同性愛がどのような状況なのか、どのような扱われ方をしてきたのかが存在することでより深みのある表現ができると指摘。さらに単一のキャラクターに代表させるのではなく、複数登場してコミュニティの広がりを見せることが重要だと語る。

最後にクイア・ゲーム・スタディーズに関する動向を紹介し、ゲームに直接活かせるというような話ではないが、こうした議論を知ってもらうことでゲームの可能性について考えてもらえればと語る。SF、ファンタジー、ミリタリー的なゲームを作るにあたりリサーチ調査行う、専門家に話を聞くのと同様に、セクシュアルマイノリティについても一個人ではなく背景にある歴史やコミュニティの広がり、厚みを表現することも大切だと訴えた。

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CEDEC2024公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2024/

趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

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