スパイク・チュンソフトが12月12日に配信を予定しているPC(Steam)版「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録」(以下、「風来のシレン6」)。配信を記念して本作のディレクターとプロジェクトマネジャーを務める2人にインタビューを実施した。
「風来のシレン6」は、2024年1月にNintendo Switch版が発売されると、ユーザーからの高評価も獲得しシリーズ史上最速で国内累計出荷数20万本を突破したダンジョンRPG「風来のシレン」シリーズ最新作だ。
今回のインタビューでは、ディレクター・アートディレクターを担当する櫻井啓介氏とプロジェクトマネージャーを担当する篠崎秀行氏にお話を伺った。経験者に向けての細かな要素から今回初めてプレイされるユーザーまで幅広い内容をお聞きしてきたので、じっくりご覧いただきたい。
――Steam版も発売されるということで改めて、お二人は今回「風来のシレン6」でどんなお仕事を担当されていたのでしょうか。
櫻井氏:ディレクターとアートディレクターとテクニカルアートの三箇所をやっております。
ディレクターとしては、企画全体の方針を定める役割です。チーム全体で「これを作ろう!」ってなった際に意見が分かれた時の舵取り役ですね。その判断をメインにやっていました。あとはミニチュアっぽいようなアートの方針も受け持っていました。
篠崎氏:櫻井とかなり二分していまして、基本は役職通りスケジュールの管理などのプロジェクトマネージメントを行いました。他、元々プランナーということもありまして、企画に対してのサポートや意見をだしたりもしました。プ。あと今回、英語と繁体字版も同時で進行していたので、ここの翻訳に対してのマネジメント対応やデバッグ管理なども。そして、実は各種宣伝行動に関しての提案・確認・監修など、本作では幅広く作品に関わらせて頂きました。
――かなり近い立場で評判や反応をお見かけしたと思いますが、実際今回の手応えはいかがでしたか。
篠崎氏:今回「風来のシレン6」に関しては、私たちが思っていた以上に反響があって心から嬉しい限りです。また想定した部分が楽しく受け取っていただけたかなと、とても思っております。
――その想定した部分、狙っていた部分はどこだったのでしょうか。
櫻井氏:初めてプレイされる方にも遊びやすいようにというのは念頭に置きつつ、過去作のファンや経験者に向けてしっかり刺さる内容っていうのをまず第一に考えていたところが強いですね。やっぱり「風来のシレン」らしさを捨てないようにと。各方面からも“これぞシレン!!”という言葉が飛んでるなっていうのは実感してますね。
篠崎氏:どちらかというと難しいゲームである本シリーズを、ユーザー数を増やしたいから簡単にするっていうことは、ゲーム的にも簡単なことです。ですが、そこは求められてないんじゃないかというのは、すごく感じています。
そこを考えた結果、先ほど櫻井が申したように「風来のシレン」シリーズを遊んでいた方にまず楽しいと思っていただける作品にすることを一番気をつけて作りました。
――お話にも出ていた“風来のシレンらしさ”の核をお聞きしたいです!
篠崎氏:まず“「不思議のダンジョン」とは”というところですね。ターン制であるということ、ダンジョンは自動生成である、というこの二つは「不思議のダンジョン」という括りでは外せない要素だと考えています。
続いて、レベルや持ち物が倒れた時になくなる点。最近ではパーマデスとも言われてますが、この3点が「不思議のダンジョン 風来のシレン」という作品の大きな基本だと思っています。
さらにその「風来のシレン」の中でも大体2種類に分かれています。1つはいわゆる拠点型、もう1つは一筆書きでクリアできるタイプの2種類です。拠点型は武器や盾を持ち帰って強化して持ち込むことが楽しいという部分、一筆書き型は装備を整えずにダンジョンに挑んでその都度組み立てて遊んでいただく部分が強めに出ることが多いかな、と思います。
今作という意味でお話すると「風来のシレン6」は一筆書きの方に該当する、いわば原点回帰に当たります。このシリーズを細かく分解していくとそんな感じでしょうか。
――そんな14年ぶりの新作の今作ですが、いつから企画はスタートしていたのでしょうか?
篠崎氏:だいたい2020年から2021年ぐらいにからスタートしたかなと思います。その前に今回ナンバリングという意味では14年ぶりと言わせていただいてますけども、この間何もしてなかったわけではなく、検討しては没になったりと、いろんなことがありました。その中で良い機会になったのは、「風来のシレン5plus」のSwitch版とSteam版の発売ですね。私たちが想定していたよりも大きな反響があったことが、新作を作る上でとても良い機会になったのは間違いありません。
――今回、久しぶりの新作ということもあり幅広い層から注目を得ていたと思います。その中で未経験者のユーザーに向けて気を付けていた部分はどこでしょうか。
櫻井氏:初心者に向けてという意味では、長らくシリーズを重ねて複雑化していた要素があったので、それらをカットしていくことから始めました。
先ほど原点回帰というお話にもありましたが、“初代からもう一段階ステップアップしたら”を軸に作りました。何度もリトライすることで、シナリオが解放され、旅仲間が増えて……というふうに少しずつ難易度が下がっていく、ダンジョンを突破できなくても要素が解放されて進行できる作りは初心者の救済になったんじゃないかなと思っています。
篠崎氏:とぐろ島の中でも色々な方向性を盛り込んでいて、ダンジョンを一発で解ける上級者の方には次のダンジョンがどんどん出てくるような作りになっています。一方で、なかなかクリアできずに倒れても次の目標となる“!”がマップに出るので、次はそこを目標に頑張ってみようかみたいな感じで、簡単な目標を持ってもらい最終的にボスにたどり着いてクリアに繋がれば達成感を得られる、という作りを目指しました。
――個人的な体感では、シリーズでは中階層くらいから見かけることの多い武器や盾を序盤から見かけました。これらも意図していたものでしょうか?
櫻井氏:序盤はカタナ、どうたぬきなどお馴染みではありますが、毎回同じものだけでは退屈なので振れ幅をどんどん広げたいなという思いから意図して行っています。
その点では今回、新機能で神器を用意しましたが、これも序盤にいい武器が出ても神器が出たらやっぱり乗り換えたいよねという選択肢を追加できたのは良かったかなと思っています。
――神器といえば部屋に入った瞬間の“キーン!”というSEがすごく印象的です。未識別が大半のなかで、ああいった要素は珍しいなと感じました。
櫻井氏:神器は、見た瞬間にテンションが上がるものっていうが大前提だったんです。確かに「風来のシレン」シリーズとしては、珍しい存在ではあるんですが、シレンだと武具の価値が分かる瞬間は遅いものが多いんです。だから早いものがあった方が面白いよねというところから来ています。
要するにテンションが上がるタイミングを作りたかったんです。プレイにおける気持ちの空白部分を埋めようみたいな思いから、あのSEと存在感のある見た目になりました。
――経験者に向けてはどのような挑戦状を用意されていましたか?
櫻井氏:実は難しい質問でして、今回はとくに初心者の方にも間口を広げているのもあって、始めからこれは無理だろうというのは作っていないんです。用意していたとぐろ島の神髄やその他の99Fダンジョンは、今までそういった難関ダンジョンをクリアした経験のある方々ならクリアできるだろうなという想定でした。ただそれだと満足しないだろうなと思っていたので、星の石モードや追加コンテンツとして超・神髄を配信して、高難易度は用意できたかなと思います。
篠崎氏:これは難しさに対してではなく、経験者に向けてという意味になりますが。今回ナンバリング作品も含めて色んな作品からモンスターを選定しました。反響の中にも久しぶりにプレイしますという方も多くいらっしゃって、そういったユーザーの方にも分かっていただけるような、どの作品をプレイされていても懐かしがっていただけるようなチョイスをしたつもりです。
もちろん、すべてがそうなってしまうと目新しさもなくなってしまうので、新しいモンスターももちろん用意しつつで。そういう意味では今作パコレプキンの登場が早かったですね。低階層で出現するパコレプキンに苦戦されている声は多く見かけたので、ある意味、そこが経験者に向けてでもありますし、初心者へのふるいになっていた部分かもしれません。
――追加コンテンツでは、コッパとアスカの使用に制限が設けられていましたが、この理由は?
篠崎氏:極端なお話をするとコッパでメインシナリオ選べたら、会話中にもう1人もコッパになってしまう問題をどうしようかってところからですね。加えて、コッパという特殊なキャラクターの面白さは、基本のシレンがあってこそだと思っています。なので、まずはシレンでクリアをしていただいてから別キャラでの楽しみ方に繋がればというスタンスもあって、御神木モードのみで使用できるキャラクターにしました。
櫻井氏:シレンを味わった後コッパやアスカ、竜海シレンだったり。このキャラだったらどうなんだろうというのを楽しんでもらいたいので、どのキャラクターも癖を強めに味付けしています。攻撃できないコッパだったり、会心の一撃が強力なアスカだったり。
――本編と追加コンテンツを通して意外な反応があった点はありますか?
篠崎氏:これ、難しいなあと思って考えていました。
――割と想定通りみたいなことなのでしょうか?
篠崎氏:そうですね。基本的には、だいたい想定通りなのが正直なところです。
強いていえば、フロアにいられるターンが少ないという沈黙の神髄というダンジョンについてですね。稼ぎにくくて難しいという方もいらっしゃれば、稼がずに突き進む方もいらっしゃって、そういう方々にとってはとぐろ島の神髄と何が違うんだろうみたいなことを書かれてたりしました(笑)。
正直ちょっとびっくりしたというか、プレイの仕方が真反対なので、こういうところも「風来のシレン」らしさではあるんですけど、ここまで真っ二つになるんだなと。
――チュートリアルでボスを倒してすぐにエンディングへ、なんていうのも想定内だったんでしょうか。
櫻井氏:クリアできるようには組んでいましたが、発売開始からあまりに早く突破者が現れてしまったので、あれには驚きました(笑)。もうちょっと持つかなと。実は倒せるらしい……みたいな感じで噂になってくれないかなって正直思ってたんですが、あっさりでした。
――でも、そのあともしっかり用意されていましたね。
篠崎氏:そうなんです。実はシナリオを書き始める前から私があれをやりたいというコアな部分として提案しておりまして。チュートリアルとしては、あそこで倒れて、道具がなくなって、レベルが1になって、と仕組みの説明に最適な流れなんですよね。けれど経験者には必要のない部分ですし、逆に挑戦するユーザーもいるでしょうから、そこで倒せてしまったら面白いよなというのはずっと思っていました。
実は、それが14年の企画の中でいろいろ考えてた中の一つではあります。この案が出た時にシナリオの担当との話をしたら、承諾していただいて実装するに至ったんですけど、クリアしてしまった世界線と、回り道してクリアした世界線と結局つじつまが合わないといけないという部分がありまして。シナリオの担当は気安く受けてしまったと言っておりましたね。もちろん、そのあと改めて謝りました(笑)。
実例が出たあと、やってみようかな一とプレイされるユーザーも結構いらっしゃったみたいで、そういう風に連鎖反応が起きたという意味では、それも意外な反応かもしれないですね。
――もし次回作があるとしたら、どんな要素を盛り込みたいですか?
篠崎氏:「不思議のダンジョン」という作品って、同じような仕組みで作るので過去のボツネタを使うこともあり、次回作に盛り込めるかもしれない要素は多くあります。ある種、ボツの分だけストックが増えていくという仕組みなので。これといってお話するのは難しいんですが(笑)。
ただ、その時のハードウェアの特性と通信環境で出来ることが増えたらなと思っています。例えば、外出先はスマホでプレイして、帰宅したらコンシューマーでというように、環境を問わず続きがプレイできるように出来たらと思っています。お金や技術も必要なので難しいとは思ってますが、ゲームとして携帯しながらもコンシューマーでも腰を据えてという、この二極性を違和感なくできるタイトルなのを昔から感じていますので、もし可能になったら楽しんでいただけるんじゃないかなと。
――「風来のシレン」と携帯性の親和性は確かに高いと感じます。とくに長大なダンジョンを攻略している際などに。
櫻井氏:経験者なら肌感でプレイの長さが分かりますが、それでもやはりどこかで休憩したいタイミングとかはあるので、そういうのも今回Switchを先に選んだきっかけでもあります。実際、ダンジョンが長いのは課題ですね。なので、今回は25階層を基本に難関は50階層とし、さらにやり込みたい人向けに99階層をという作りに繋がっています。
――最後にシリーズファンやユーザーに向けてメッセージをお願いします。
櫻井氏:「風来のシレン6」を楽しんでいただけて、何よりだなと思っています。売上が好評だったこともあり、今年一年細かいアップデートや追加コンテンツの配信などを通して「風来のシレン」というタイトルが一段階上がったなと自分も感じています。購入していただいた方々、本当ありがとうございます。
12日はSteam版も配信され、画面共有しながら手軽に楽しみを共有できるようになると思いますので、プレイを楽しんでいただけたらと思います。
篠崎氏:本当に皆さんに購入していただき、遊んでいただいたりしたことが、この「風来のシレン」シリーズが続いていく何よりのエネルギーだと思っております。Steam版を待っていた方は、本当にお待たせいたしました。
Steam版はPCという環境から、より配信しやすい環境が整っていますので、「初めて配信してみよう」なんて方はぜひSteam版「風来のシレン6」を遊んでいただければと思います。
また、今後も公式パラレルプレイは展開していきたいと考えております。楽しんでいただける内容を日々検討中です。ちなみに、パラレルプレイや風来救助は、Steam版とSwitch版のクロスプレイも楽しめます。好きなハードで引き続き「風来のシレン6」を楽しんでいただけると嬉しいです。
今回はインタビューありがとうございました。
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