コーエーテクモゲームスが2025年3月21日に発売する「ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~」の先行プレイレポートをお届けする。
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「秘密」シリーズの3作目である「ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~」が2023年3月23日に発売されて以来、およそ2年ぶりに発売される「アトリエ」シリーズのコンシューマ向けゲーム「ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~(以下、ユミアのアトリエ)」。本作は“グローバルで受け入れられるRPGを作りたい”という意識のもとで開発されているのは、発表時のインタビューでもプロデューサーの細井順三氏が言及していた通りだ。
今回、発売に先駆けてゲームの序盤部分をプレイ。上記の発言の意味が汲み取れるだけの変化が感じられるとともに、その中でも随所に“アトリエらしさ”が見える作りとなっていた。

なお、基本的な仕組みの紹介などは台北ゲームショウ2025にて出展された試遊版のレポートにて言及しているので、ここでは割愛させていただく。
ストーリードリブンかつオープンフィールドならではの自由度も
かつて錬金術によって栄えたアラディス帝国。しかしながら、突如発生した謎の天変地異によって滅びの時を迎えたという。その数百年後、錬金術が禁忌となった時代に、秘境と化した、かつてのアラディス帝国があった大陸に本作の主人公であるユミア(CV:倉持若菜)が足を踏み入れたところから、本作の物語は幕を開ける。

基本的な進行は、ユミアがアラディス調査団に参加し、調査団員であるヴィクトル(CV:古川慎)、アイラ(CV:前田佳織里)、ルトガー(CV:福山潤)、ニーナ(CV:小松未可子)、レイニャ(CV:青山吉能)と行動を共にしながら、調査範囲を広げていくといったものになっている。
錬金術士であるユミアは、調査団に加わった段階では周囲の信頼を得られておらず、ヴィクトル、アイラが監視役として同行することになるのだが、ユミア自身がひたむきに行動していくことで大陸の調査が進み、徐々に団の中で存在感を示していく。


ここまでの説明からも感じ取れる部分があるかもしれないが、本作にはこれまでのシリーズ同様に拠点となるアトリエこそあるものの、従来の「アトリエ」シリーズのようなフラグによるゲーム進行というよりは、オープンフィールドの探索によって自然とストーリーが進行していく、シームレスな作りになっている。

上記によって、本作はいわゆるストーリードリブンなタイトルとして表現されているのだが、その上でオープンフィールドならではの自由度も担保されている。その一つがメインシナリオの随所でユミア自身に委ねられる選択肢であり、もう一つが各地方ごとに用意されている開拓任務だ。
前者はプレイヤー自身の行動を縛るものではないものの、例えば北に向かうか東に向かうかといった、次の行動への指針になっていく。

また、開拓任務は各地方のメインシナリオを一定量進めると開放されるもので、必ずしもゲーム進行に必要ではないものの、クリアすることでボーナスも発生するため、プレイする上でのモチベーションややりこみ要素にもつながっていく。本作ではファストトラベルも用意されているため、思い立った時に一度戻るといったことももちろん可能だ。

「アトリエ」ではおなじみの調合をはじめ、本作においては一つの軸に留まらない、いくつもの要素をやり込めるようになっているが、それらが良い意味でストレスにならない作りになっていて、これまでの「アトリエ」シリーズで人によっては感じるであろう義務感のようなものはかなり軽減されているのではないかと思う。
もちろん、メインシナリオを進める上でのお使いのようなことはあるのだが、逆にそこまで無くなってしまうと、探索して採取し、調合したアイテムをさまざまに活用していく、「アトリエ」シリーズならではのゲームの魅力が損なわれるので、そのあたりのバランス感がちょうど良く感じた。

調合のハードルは低くなり、略式調合はとても便利
そのバランス感を生み出している大きなポイントが本作の調合だ。「アトリエ」シリーズといえば調合システムの歴史でもあり、特に「アーランド」シリーズ以降はさまざまなシステムを試行錯誤していったように感じられるが、本作ではレシピを残響片と呼ばれるアイテムを用いて解放し、その後は基本的に何かしら材料を投入すれば、アイテムの調合自体はできるようになっている。

この“何かしら”が本作の調合におけるとても重要な要素になっており、複数用意されているアトラスコアをそれぞれ活性化させ、そこにどのような材料を投入するのかだけで発現する効果はさまざま。さらに、本作では効果、品質、特性が個別のアトラスコアになっており、好きなものから優先して上げることができる。突き詰めれば突き詰めるほどに遊びごたえがありそうな作りだ。
筆者は当初複数のアトラスコアに投入するのを忘れてしまっていたのだが、ぶっちゃけてしまうとそれだけでもアイテム自体の調合はできる(気づいたときはものすごく恥ずかしくなったのでプレイする際はお忘れなく……)。「アトリエ」シリーズにおいてはレシピに該当する材料を集めて調合するまでが一つのハードルになっていたことは間違いないのだが、本作ではそこを取っ払う代わりに出口の選択肢を増やすことで、調合システムとしてのやり応えにつなげている点がプレイヤーの間口を広げるのに一役買っているように感じる。

その上で、本作では調合の比重は必ずしも高くはなっていないので、とりあえず探索を進めながら必要に応じて調合して……という流れでも十分に進行できる。とはいえ、やっぱり調合しておきたい局面もあり、そうした時にはおまかせで調合することも可能。カスタマイズもできるので、必要に応じて活用していこう。

また、「アトリエ」シリーズといえば、調合のためにアトリエとマップを往復するというのが常だった。特に探索周りのアイテムが無くなった時などはひと手間増えるなあという感覚も正直あった。そんなストレスを一気に解消してくれるのが、フィールド上で行うことができる「略式調合」の存在だ。
本作ではユミアが銃杖を用いて遠距離の材料にアクセスしたり、ジップラインを用いてショートカットしたりと、さまざまなアクションが用意されている。また、移動範囲が広くなればなるほど、回復のアイテムなども自ずと必要になってくる。そんな探索する上で有用なアイテムたちを、資材を用いればすぐに作り出せるというのは、実際にプレイしてみると本当に便利なシステムだと感じさせられた。

同じく資材を用いて行う要素が「ハウジング」。以前の記事でも言及した通り、基本的にはカタログによって簡単に作ることができる一方、こだわりたい人にとっては床一つ、壁一つからいくらでもふくらませることができる要素となっている。
ハウジングエリアは各地方で複数存在しているので、それぞれどのようにするかはプレイヤーの個性が表れてきそうだが、調合をできるようにしたり、コンテナに採取した材料を集めたりといった実用的な部分でも役に立つので、エリアを見つけたらとりあえず活用するのがオススメだ。

アクションの拡張はスキルツリーと連動する部分も
本作のバトルについては前衛と後衛を含めた6人のパーティキャラクターを自在に切り替えていく、「アトリエ」シリーズならではのアプローチはありながら、仕組みそのものはアクションへの比重が高まったシステムとなっている。
その一つがキャラクターによってバトルスタイルや固有能力が異なってくること。筆者は今回のプレイではその要素を十分に楽しんだとは言えないものの、異なるキャラクターを扱った時の攻撃方法の変化などは素直に楽しめたし、実際に切り替えながらのバトルをしていくうちに馴染んでくるものにはなってくるだろう。

また、敵をブレイク後に弱点属性のアイテムで攻撃すると発動する「フレンドアクション」は、バトル上の戦略においても重要な要素となってくるため、予め調合でアイテムを作って装備させておきたいところ(弱点属性のアイテムがないと純粋にもったいない)。こちらは逆に従来のコマンドバトルにも通じるような、組み合わせの妙を楽しめる仕組みとなっている。

そのほかの要素で確かめられたのは、敵の攻撃を回避したタイミングに仲間と交代することで、敵が一時的にブレイクするなどの恩恵がある「ジャストカウンター」。こうした遊びはテクニカルな部分も出てくるところではあるが、上手く決まった時は気持ちいいのでぜひ試してみてほしい。

なお、本作では成長要素としてレベルアップのほかにスキルツリーが用意されている。上述のフレンドアクションやジャストカウンターもこちらで解放される要素だが、戦闘のみならず調合、探索における要素の解放にもつながる部分なので、フィールド探索やクエスト報酬などを通じてスキルポイントを獲得したら、積極的に振り分けていこう。

ユミアたちの表情や仕草にもぜひ注目してほしい!
前回の台北ゲームショウ試遊版では見えなかった部分を中心に一通り触れていったが、最後にネタバレになるので言及しづらいキャラクターごとのバックボーンにも言及しておく。
錬金術士であった母の真意と、なぜ錬金術が禁忌となったのかを追い求めるユミアをはじめ、メインキャラクターはそれぞれ何らかのバックボーンや調査団への参加理由を持っている。それ自体は実際のプレイで確かめてみてほしいところではあるのだが、一つ言えるのはそこにその人の人生がにじみ出ているということだ。

そうした人間らしさみたいなものが随所で表現されているように感じられていて、その中でも注目してほしいのがキャラクターの表情だ。本作では喜怒哀楽を分かりやすく表現するというよりは、複雑な心境だったり、ちょっとすねた態度だったりが表情の中に表れているように思う。

その一方でユミアのいわゆるアホ毛だったり、レイニャの耳や尻尾だったりといった、特徴的な部分の動きはコミカルで面白い。本編の展開はどうしてもシリアスになってしまうが、キャラクタークエストではキャラクターのギャップが見える瞬間もあるので、ぜひチェックしてみてほしい。

また、本作では冒頭にチュートリアルとしてゲーム内で楽しめるギミックをある程度体験できるのだが、筆者はそこで学んだ銃杖を使ったギミックを完全に忘れてしまい、とある場所の探索中に右往左往してしまった。そうした意味でも本作では従来の「アトリエ」シリーズにはないギミックがたくさん用意されているので、筆者の二の舞にはならないよう言い含めて、プレイレポートを締めたいと思う。

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※画面は開発中のものです。
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