2025年5月5日、東京・すみだトリフォニーホールにて「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」の発売を記念したオーケストラコンサート「Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Remaster」が開催された。
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本公演は3月6日に発売した「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」と、新たな108星の物語となるモバイルゲーム「幻想水滸伝 STAR LEAP」を取り上げたコンサート。「幻想水滸伝I(以下、幻水I)」「幻想水滸伝II(以下、幻水II)」のサウンドを手掛けた東野美紀さんもゲストに迎え、約4時間半にわたり3部構成でファンに届けた。


複数の楽曲を1つの作品としてまとめる「連作交響詩」ならではのゲーム追体験
ゲームのオーケストラコンサートといえば、基本的に「ゲーム内の楽曲をオーケストラアレンジで楽しめる」「映像などの演出と合わせてゲームを追体験していく」といったものだろう。時にはストーリーをなぞるように、時には印象的なバトルやイベントシーンをピックアップしながら、ゲームの思い出にどっぷりと浸ることができる。

本公演もそうした点こそ変わらないが、1曲ずつ順番に演奏するといったスタイルではなく、特定の人物や出来事にフォーカスした複数の楽曲のまとまりを1つの曲としている。また、ただ時系列や関連する楽曲をメドレー形式にしているのではなく、例えばイベントシーンの曲の次にバトル曲、バトル曲の次に勝利リザルトの曲、フィールドからダンジョンの曲、ボスバトルからその直後のイベントシーンなど、まさにゲームで体験した瞬間そのものがシームレスに届けられていくのが特徴的だ。
公演中に使用された映像も、その楽曲が使用されたシーンを抽出しただけではない。該当人物との思い出を過去から現在まで思い返したり、その出来事が起きるまでのやり取りを遡ったりしていて、ゲーム内の思い出をより多角的に見つめられたのもポイントのひとつ。
共通する登場キャラクターも少なくない「幻水I」と「幻水II」では両作品を横断した映像もあり、より深くゲーム内の歴史や時間の流れを感じることができたのもファンには嬉しいところ。これらの演出の数々がプレイヤーの感情を大きく揺さぶり、手に汗握る緊迫した空気や涙なしには語れない別れの悲痛さ、強敵を打ち倒した際の高揚感などをゲームさながらに感じることができたように思う。

第1部:連作交響詩「門の紋章戦争」
「第1曲:プロローグ」では「幻水I」の主人公が赤月帝国の皇帝に謁見し、父であるテオ・マクドールの出征に代わり帝国に仕えだしたところを描く。帝都グレッグミンスターで印象的な「王宮の調べ」「帝国よ永遠」「美しき黄金の都」をはじめ、レックナートに出会うべく魔術師の塔へ向かう道中に流れる「飛べ!ブラック」「黒い森」などが物語の序盤を思い起こさせる。

「第2曲:オデッサ」では、解放軍を率いるオデッサとの出会いを振り返る。壮大なフィールド曲「大草原の小さなキャラ」から清風山などダンジョンで流れる「遥かなる山」を経て帝国の所業を知り、レナンカンプなど街で流れる「ロックロックランド」から「緊迫のテーマ~アンサンブル編」「悲しみのテーマ~アンサンブル編」が主人公の経験したいくつもの出会いと別れを表現。キルキスらエルフと出会う「神秘の森」や「絶望のテーマ」から、戦争イベントやクワンダ・ロスマンとの一騎打ち「激突!」「一触即発」が後に待つ過酷な運命を予感させる。

「第3曲:グレミオ」に登場するのは、主人公が解放軍を率いるリーダーとして成長していく姿に一抹の寂しさを感じるグレミオだ。ミルイヒ・オッペンハイマーといえばの曲「ナルシーのテーマ」「ゴージャス・スカーレティシア」や「悲しみのテーマ~ギター編」で、プレイヤーは主人公と共にグレミオの強い覚悟を思い知る。そして父との避けられない戦いが迫る中、パーンがテオに一騎打ちを申し出る。
「第4曲:テオ・マクドール」は、絶対的なテオの軍を打ち倒す切り札となる火炎槍を求めるところから始まる。キーロフの音楽「踊る少女」から一騎打ちを乗り越え、ビクトールの因縁の相手ネクロードと出会う「集いし戦士たち」へ。アレンジの異なる「緊迫のテーマ~インパクト編」から、変化する空模様が印象的なネクロードの居城で流れる「パッサカリア」で、いよいよ物語はクライマックスへ。

「終曲:テッドとぼっちゃん」で辿るのはゲーム序盤に描かれた親友テッドとの他愛ないやりとりや突然の別れ、そして再会だ。300年前の世界で流れる「失われた日々」、まだ過酷な運命を知らずにいた頃を思い出させる「メインテーマアレンジ~ギター編」、すべてに決着をつけるべく解放軍の進行を表現した「出陣のテーマ」「幻想の世界へ」「最強の敵」「緊迫のテーマ~Tama-dator」から、戦いの終わりと鎮魂を感じさせる「Avertuneiro Antes Lance Mao~戦いは終わった~」で締めくくられる。

第2部:「幻想水滸伝 STAR LEAP」より&東野さんの生演奏も
第2部では、早くも「幻想水滸伝 STAR LEAP」の楽曲を演奏。3月に配信された「幻想水滸伝Live」でもその一端が垣間見えたが、本作では「幻想水滸伝」らしいサウンドにこだわり、生演奏をベースとした楽曲が現時点で100曲以上も予定されている。曲の中には尺八や箏のような和楽器を取り入れたものもあるようだ。

ここで披露されたのは、まず中村佳穂さんが歌う主題歌「カンパニュラ」のオーケストラアレンジバージョン。レコーディングの様子が「幻想水滸伝Live」でも公開されていたが、オーケストラではまた違う味わいが感じられただろう。
また「幻想水滸伝 STAR LEAP」では「幻水II」のトラン共和国へ向かう途中に遭遇する敵キャラクター「ランラン」「リンリン」「テンテン」が登場し、彼女たちのオリジナル楽曲が複数あるという。ここでは「三華繚乱!乱凛天」として、中華的なイメージを強く内包したサウンドが届けられる。
このほか本拠地やグレッグミンスターなどの街、フィールド曲、バトル曲も演奏。オリエンタルで民族音楽的な空気に西洋風のサウンドが融合した「幻想水滸伝」らしいサウンドであるのはもちろん、昼夜の変化があり、街の曲は夜になるとドラムやベースなども加わりムードのあるジャジーな音楽に切り替わるのも聞きどころだ。


さらに東野さんが「幻水II」から「月夜のテーマ~Symphonic Poem from 幻想水滸伝 Special Arrange~」を生演奏。穏やかながら、力強いピアノの音色が会場を包み込んでいた。

第3部:連作交響詩「デュナン統一戦争」
第3部は全7楽章で構成され、主人公とジョウイの物語を交互に描いていく。異なる立場で葛藤する2人を表現すべくステージ上の配置にもこだわっていて、バイオリンソロを2人起用し、通常であれば隣にいることが多い1stバイオリンと2ndバイオリンを指揮者を挟んで配置。これにより主人公とジョウイの対比を、音楽的にもより一層強めたそうだ。

「第1曲:プロローグ」ではハイランド王国からの裏切りにあい、離れ離れになった主人公とジョウイが再び故郷のキャロの街にたどり着くまでを振り返る。「オープニングBGM」から「敵襲」、「幻水II」を象徴する名曲「回想」、ビクトールとフリックが拠点とする砦のBGM「働かざる者食うべからず」、故郷にたどり着くも再び追われる「郷愁」「救出」から、ナナミを含めた3人の運命が動き出していく。

「第2曲:過ぎた日々」は主人公が輝く盾の紋章、ジョウイが黒き刃の紋章を手にし、異なる道を歩み始めるところから始まる。アナベルの治める街・ミューズの「あの丘に登ろう」、捕らえられた2人が牢の中から月を見上げる「月夜のテーマ」、ジョウイの策略で陥落したグリンヒルの「囚われた街」「母への祈り」、ルカ・ブライトを象徴する「邪悪なる者」などが演奏される。

「第3曲:ジョウイ」では数々の功績から、ルカに皇女ジルとの婚姻を願うジョウイの決意が垣間見える。獣の紋章を思わせる「生け贄の祝祭」、ハイランド軍の重厚な進軍を感じる「緊迫」「戦争」「王者の行進」、アガレス・ブライトを暗殺する「儀式」へ。「第4曲:天魁星」は多くの仲間と出会い、やがてルカと対決する主人公を表現。ワールドマップで流れる曲の1つ「もっと遠くへ」、グレッグミンスターの「さらに栄えし美しき黄金の都」で思い出す広大な旅路の果てに、ありとあらゆる手段を駆使してなお壮絶だったルカとの戦いを「追いつめる」「Mad Luca」が想起させる。

「第5曲:黒き刃の紋章」「第6曲:輝く盾の紋章」では立場が大きく異なってしまった2人が再び出逢い、戦争が終結するまでを表現。「回想~ストリングスバージョン~」から、マチルダ騎士団のゴルドーの手によりさらなる犠牲が生まれた際の「怒りの鉄拳」「悲しみのレクイエム」、皇都ルルノイエを舞台に最後の戦いを繰り広げる「迷宮~PENPE2」「強敵出現」「対決の時」「銀狼」から、「La passione commuove la storia ~情熱は歴史を動かす~」で戦いはひとつのエピローグを迎える。

「終曲:始まりの紋章」は、平穏を取り戻したその先の物語。犠牲になった人々を悼むような「Chant~あなたと出会い生をうけ、あなたを失い死を知った~」、ラストを飾るのに相応しい壮大な「エンディングマーチ ~我らは常にいつならん(108人のその後)~Coda/勝利」で本公演は一度幕を閉じる。

鳴りやまない万雷の拍手の中で始まったのは、プレイヤー人気も高い「Gothic Neclord」だ。これまで静かに奏でられていたギターやピアノが激しくかき鳴らされ、登場キャラクターにとってもプレイヤーにとっても長きにわたる因縁の戦いを彩る。さらに東野さんも登場し、ピアノの連弾で「Orizzonte」などを届けた。


演奏楽曲の紹介や全4曲のピアノ楽譜、「幻想水滸伝 STAR LEAP」の制作チームを交えたスペシャルインタビューも収録した公演パンフレットをはじめ、イベントビジュアルを使用したグッズもオンラインショップで販売中だ。詳細は公式サイト(https://metroberry.jp/Suikoden2025/ )で確認してほしい。
(C)Konami Digital Entertainment
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