コナミデジタルエンタテインメントが2025年3月6日に発売するPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam/Windows/Epic Games Store)用ソフト「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統 一戦争」の先行プレイレポートをお届けする。
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本作はKONAMIのオリジナルRPG「幻想水滸伝(以下、幻水I)」「幻想水滸伝II(以下、幻水II)」の世界観とストーリーはそのままに、グラフィックやサウンド、ゲームシステムを進化させたリマスター版だ。
オリジナル1作目の発売は約30年前なので、初めて「幻想水滸伝」シリーズに触れるプレイヤーも少なくないだろう。本シリーズは、主に創世にまつわる絶大な力を秘めた「27の真の紋章」を中心に世界背景を共有するナンバリングタイトルと、並行世界「百万世界」を舞台とした計11のタイトルをリリース。基本的にRPGだが、一部テキストアドベンチャーやシミュレーションゲームなど異なるジャンルのタイトルも含むバラエティ豊かなシリーズだ。

「V」まで発売されたナンバリングタイトルの時系列でいえば「IV」が最も古い時代を描いていて、幅はあるが「I」「II」「III」「V」は比較的年代が近く、それぞれが独立した物語であるものの、関連する人物や年齢が変化した同一人物も多数登場する。今回のリマスター版で楽しめる「幻水I」と「幻水II」は舞台となる年代も地理上の地域も近いため、合わせてプレイするのにうってつけのタイトルといえる。
本作はどちらからでも好きなようにプレイできるが、出来事の順番としても「幻水I」が先で、「幻水I」のクリアデータによって「幻水II」の演出が変わる部分もある。よほどのことがない限り「幻水I」からのプレイがオススメだ。
なお、本稿はPS5の製品版相当のビルドでプレイしている。また、記事中にはネタバレになる箇所もあるため、予めご了承いただきたい。

既プレイヤーから新規プレイヤーへ、ちょっとだけ聞いてほしい
本来はストーリーの見どころやリマスター版の変更点を紹介すべきだが、まず「幻想水滸伝」シリーズや本作に初めて触れるプレイヤーへ、いわゆる自分語りをご容赦いただきたい。
本シリーズの特徴のひとつが、108人登場する宿星(=仲間)だ。彼らはバトルへの参加はもちろんだが、拠点での宿屋や倉庫、道具屋にも該当し、仲間にしないと各機能を使うことができない。テレポート(ファストトラベル)を使えるキャラクターなどメインストーリーを進めれば自動で仲間になるケースもあるが、大半は地道に勧誘する必要がある。


本作がゲームである以上、そして利便性に直結する以上、効率よく108人を仲間にすべく進めるようとするのは当然だ。オリジナル版の発売当時ならともかく、現代では攻略本やスマホ/ブラウザで有志のチャートなどを見ながら仲間を集めようとするのも自然な流れだろう。
そんな中、何かと時間のないゲーマー諸氏に大変な無理をお願いしているのは承知の上だ。それでも、もし初めてプレイするというのであれば1度目は効率度外視で、ただ自分の思うままにプレイしてほしいと思う。
というのも筆者はかなり昔に遊んだきりだが、どちらのストーリーも本作のプレイ前から鮮明に思い出せたほど心に刺さったからだ。そして当然、大きな戦いの中で救える命も、救えない命も、自分の選択が何をもたらすのかもすべてを把握してしまっている。知ってしまった以上、もう二度と心情的に選ぶことができない決断もある。我々のような既プレイヤーには不可能な、感情のままに選べる特権をぜひ大切にしてほしい。


ちなみに筆者は当時「幻水I」のプレイ1回目は散々な結果を招き、2回目はとある男だけがついぞ首を縦に振らず、3回目にしてやっと108人を仲間にすることができた。その後「幻水II」もプレイ1回目は多くの犠牲を払い、ひとまず色々な要素が納得できる結果になったのは3回目だ。しかし、とある点で思うことがあり「幻水I」で108人を仲間にしないセーブデータを作り、もう1度「幻水II」もやり直した……という経緯がある。
本作を最大限楽しむのに、ここまで周回しなくてはならないということは一切ない。ただ、こうまでしたくなるほど「幻想水滸伝」シリーズには何ものにも代え難い魅力がある。詳細は後述するが当時に比べてはるかにスピーディに遊びやすくなっているので、一プレイヤーとしても出来る限りまっさらな気持ちで楽しんでほしいと強く願っている。
主人公の元に集う108の宿星と「真の紋章」が織りなす群像劇
それでは改めて、本作を紹介していこう。「幻水I」の舞台は、かつて民から敬愛された“黄金の皇帝”は見る影もなく、人々が腐敗した役人や重税に苦しめられている赤月帝国だ。そんな皇帝に忠誠を誓う帝国五将軍の1人、テオ・マクドールの息子である主人公は、親友のテッドから27の真の紋章のひとつ「ソウルイーター」を託されたことで運命が大きく動き出す。
紋章を狙う帝国の宮廷魔術師・ウィンディによって追われる身となった主人公は、やがて帝国からの解放運動を行うオデッサ・シルバーバーグと出会う。帝国の圧政を目にした主人公は彼女との出会いをきっかけに、帝国全土を巻き込んだ戦いに身を投じることになる……。
「幻水II」は、そこから3年後の物語だ。舞台は、絶えず国境戦争が続いているジョウストン都市同盟と、それに対するハイランド王国。5都市1騎士団で構成されたジョウストン都市同盟は、赤月帝国ともたびたび争いを繰り広げていた相手で「幻水I」でも何度か目にすることになる。そうした二つの勢力でついに休戦協定が結ばれ、ようやく不毛な戦争は終わりを迎える――はずだった。
そんなハイランド王国の少年兵部隊・ユニコーン隊の一員だった、主人公と幼馴染のジョウイ。やっと主人公の義姉・ナナミの待つ故郷へ帰れると思った矢先、部隊が謎の襲撃を受ける。それは休戦協定をよしとしないハイランド王国の“狂皇子”ルカ・ブライトが、ジョウストン都市同盟の仕業に見せかけた凶行だった。
命からがら逃げだした主人公たちだったが、尽くしたはずの祖国にスパイ容疑をかけられて戻れなくなってしまう。なりゆきで都市同盟に身を置くことになるが、そこで目の当たりにしたのはルカがすべてを焼き尽くす様だった。そして逃亡の最中に、主人公は「始まりの紋章」が分かれた「輝く盾の紋章」、ジョウイも同様に「黒き刃の紋章」を継承。都市同盟の中心だったミューズ市の陥落から本格化する戦争を前に、2人を待つ運命も加速していく。
状況こそ異なるが、どちらも描いているのは歴史を揺るがす激しい戦いだ。戦場に渦巻くのは悲しみや怒りだけでなく、忠誠、野心、思慕、友情……さまざまなヒトの想いが生まれては消えてゆく。主人公はそんな多くの人々の願いや祈りを背負い、戦わなくてはならない。たとえ、どんな犠牲を払おうと、どんな相手が立ち塞がろうとも、立ち止まることは許されないのだ。この戦いの果てに主人公、ひいてはプレイヤーは一体何を見て、何を感じるのか。ぜひ、自分の手で確かめてほしい。

こうした壮大なストーリーを盛り上げるのが、数多くの登場キャラクターだ。ストーリーを進めていくだけでも多数の出会いが待っているが、前述のとおり大半の仲間は地道に集めていくことになる。タイミングよく話しかければいいだけでなく、バトルやミニゲームで勝利したり、必要なアイテムを提供したりするほか、特定の仲間を連れていくケースも多い。
仲間に加える条件を整えるのは苦労もあるが、メインストーリーへ直接関わらないキャラクターは多くを語られることがない。だからこそ、そのわずかなやりとりで垣間見える特有の背景に想像をかき立てられるのも、本作のもつ魅力のひとつだろう。「幻水II」では仲間から手紙が届く「目安箱」という要素があるので、さらに想像して楽しめるのも嬉しいポイントだ。

その真骨頂を発揮するのが、個人的にはエンドロールだと思う。ここでは仲間に加えたキャラクターたちが、戦いが終わった後にどうしたのかが語られる。詳細には程遠いたった一言だが、戦いの末に取り戻した日常へと戻っていくような瞬間がたまらなく愛おしい。なお本作ではクリアデータを読み込めば、このエンドロールや重要なイベントシーンを手軽に見直すことができる。


新たなシステムで遊びやすく!スタリオンの有用性も健在
本作のバトルは最大6人を編成して挑む、ターン制のオーソドックスなコマンドバトルだ。時には軍勢を率いて戦う「戦争モード」や、一対一で戦う「一騎打ち」も発生し、ストーリーの没入感を高めてくれる。
フィールドもダンジョンもランダムエンカウントで、強さに差があるほど多くの経験値が入るため低レベルで加入したキャラクターも一気に引き上げやすい。スキルや魔法に相当する「紋章」や、特定のキャラクター同士で使用できる協力攻撃などを駆使し、勝利を目指そう。
リマスター版ではより見やすくUIが一新され、ボタンひとつで切り替えられるオートバトルや倍速バトル(2倍)も搭載。ダンジョンや街中の移動はダッシュが可能で、好みに応じて選べるボタン配置も3パターン用意されている。難易度も「Easy」「Normal」「Hard(ゲーム開始以降変更不可)」から選べるので、よりプレイスタイルに合わせて楽しめるようになっていた。
ちなみに、Easyを試したところ「レベル上げを一切しなくても余裕で楽勝!」というノリはなかった。歯ごたえを求めるなら別だが、ストーリーをほどよく楽しみたいのであれば最初からEasyで遊んでしまってもいいだろう(※「イベントタイマーの停止」機能も追加が発表された)。

ここで既プレイヤーが気になるのは「ダッシュ実装で、スタリオンってどうなるの?」という点ではないだろうか。初めて本作に触れるプレイヤーへ簡単に説明すると、従来はスタリオンというキャラクターをパーティへ編成した状態でないとダッシュ移動ができない仕組みになっていた。
筆者も非常に気になったが、フィールドの移動速度アップや戦闘から確実に逃げられるという性能はそのままに、彼を仲間に加えると倍速バトル(4倍)が可能になったので仲間に加える意味は十分ある。
この倍速バトルは仲間にさえすればパーティ編成には関係なく利用できるが、街中やダンジョンで常時ダッシュできるようになるとフィールドの移動速度もやや気になったので、これまでと変わらず「少しでも早く移動してプレイ時間を短縮したい!」という場合に重宝するだろう。

新機能でとくに便利だったのがログ機能だ。直近の会話を辿れるだけでなく、気になった会話はピン留めしておくことができる。現代のゲームは目的地や、やるべきことがリスト化されて表示されることも多いが、本作にはそういった機能はない。
そのため、仲間集めに奔走していると「そういえば次にどこへ行くんだっけ?」とか「あのキャラクターが仲間になるために提示してきた条件って何だっけ?」と少々混乱しやすい。覚えておきたい会話は、どんどんピン留めして残しておこう。

街中や拠点では全体マップを確認でき、とくに拠点では施設のアイコン表示で場所が分かりやすくなった。ダンジョンや拠点など「旅の封印球」がある場所ではオートセーブが実行され、ダンジョンで強力な敵と戦う直前などにうっかりセーブを忘れても助かるようになっている。

さまざまな点で使い勝手は改善されているが、どうしても装備品や所持品、倉庫といったインベントリ周りや、紋章の付け外しなど現代の感覚では使いにくい部分も少なからず存在する。ひとまずパーティに編成したキャラクター同士であれば装備を交換して使いまわし可能で、倉庫の機能「はがす」なども駆使すればどうにかやりくりできるので、めげずに頑張ってみてほしい。

一番手っ取り早いのはパーティを編成するたびに古い装備を売り払いながら更新する方法だが、使うキャラクターが増えるほどポッチ(通貨)の消費が激しくなるのが難点だ。パッケージ版の早期封入特典またはダウンロード版の予約特典(3月5日23時59分まで)で手に入る57300ポッチ、経験値やポッチが増加する幸運の封印球&金運の封印球があるとより快適に進められるだろう。
「幻想水滸伝」シリーズが再び歩みだす、確実な第一歩に
フィールドやドットアニメーション、効果や演出なども含めてグラフィックが向上し、「幻水I」はオリジナル版でキャラクターデザインを手がけた河野純子氏がすべてのキャラクターを新たに描き下ろしている。フィールドサウンドも新たに環境音が加わり、バトルサウンドも高音質化したことで臨場感や没入感が高まっている。
また、ゲームのクリア有無に関わらず自由に聞けるサウンドモードも搭載し、ゲームの発売と同時に旧サウンドトラック未収録の音源やケルティックなどのアレンジCDをリマスタリング収録した新オリジナルサウンドトラックも発売する。個人的に「幻想水滸伝」のサウンドは当時から本当に素晴らしく、多種多様なアレンジCDも最高と思っていたので、こうした展開は非常に嬉しいところ。
名前入力画面などで流れる「始まりのテーマ」のワクワク感、クリア後ほど涙なしには聞けない「回想」、バトルサウンドの中でもとくにファンの評価が高い「Gothic Neclord」、戦いに疲れた心に染みるアンネリーバンドの「Orizzonte」、エピローグを盛り上げる「La passione commuove la storia ~情熱は歴史を動かす~」などは、ついついゲームを始める前に聞き入ってしまった。

ケルティックベースのゲームBGM自体はそこまで珍しくもないと思うが、現在に至るまでケルティックのアレンジCDを出してくるゲームタイトルはそう多くないだろう。古楽器などによるアコースティックアレンジCD「Orrizonte」の曲も本作の雰囲気によく合ったアレンジなので、気になったプレイヤーはこれらが収録されたオリジナルサウンドトラックをぜひチェックしてほしい。
そして、このオリジナルサウンドトラックには本編とアレンジ以外に、ある楽曲も収録されている。「幻水I」と「幻水II」で語られていない物語をオリジナルキャラクター、ハルモニア神聖国から来た人物・ナッシュの視点で楽しめるテキストアドベンチャー「幻想水滸外伝」のサウンドだ。そう、後のナンバリングタイトルにも加わっているあのナッシュが初登場する作品だ。
リマスター版の発売を目前に、既プレイヤーは本作が楽しみであると同時に「『幻想水滸外伝』も遊びたいんだけど?!」と少々落ち着かない気持ちにもなっているのではないだろうか。こうした気持ちのファンは決して少なくないと信じているので、本作を第一歩として今後ぜひ「幻想水滸外伝」もプレイしやすい形で蘇ることを願っている。

(C)Konami Digital Entertainment
※画面は開発中のものです。
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