7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿では、23日に実施された講演「『Shadowverse: Worlds Beyond』二度目のDCG開発でゲームをリデザインする~遊びやすさと競技性の両立~」のレポートをお届けする。
講演者は、Cygamesの宮下尚之氏。「Shadowverse」および「Shadowverse: Worlds Beyond」のリードゲームデザイナーを担当されており、今回は「Shadowverse」を「Shadowverse: Worlds Beyond」へと一新させるにあたって行った試みについて解説した。


カード能力を複雑化するのではなくルールに奥行きを持たせる新たな試み
今回の講演では「Shadowverse」の遊び方やこれまでの歩みから振り返っていき、「Shadowverse: Worlds Beyond」へ至るまでの流れを事細かに説明していった。

「Shadowverse」は9年もの間、スマートフォンやPCで遊べるデジタルカードゲームとして親しまれ、RAGEでのeスポーツ展開も広く知られている。しかし、今後の展開を考えた際にアプリとしての技術的な限界が立ちはだかったそうで、新たな楽しみを提供し新規プレイヤーを再び取り込むために一新を決めたのだとか。

一新する際に課題とされたのは、「遊びやすさと競技性の両立」と「先行有利問題」の2点。「遊びやすさと競技性の両立」に関しては、「Shadowverse」はゲームが複雑化しており、カードテキストが長文で一目で理解しづらいものになってしまっていたそうだ。


この紹介の際にプロ同士の対戦を記録した参考映像が流れたのだが、何らかのカードゲームに触れたことがない限り、画面を見ただけでは何が起きているのか理解できる人は少ないのではないだろうかと思わされた。


「Shadowverse: Worlds Beyond」ではこのポイントへのアプローチを変え、カードの能力を複雑化させるのではなく根本のルールの部分を奥深くする選択を取ったそうだ。これによって、新規カードが追加される度に能力を覚えるユーザーの負担が減ったとのこと。



そんな奥深さを求めたルール部分での大きな変更が、自ターン中にダメージを受けず相手へ攻撃できる「超進化」と先行有利問題へのテコ入れとなる「エクストラPP」というふたつの新要素。

このエクストラPPは後攻のプレイヤーが任意タイミングでPP(※新たにカードを使用するためのプレイポイント)をプラス1できるシステムで、先攻と後攻に別れて交互に自ターンが来るカードゲームの特性上、先攻側のプレイヤーが有利になりがちな点に一石を投じるシステムだといえるだろう。

「Shadowverse」でもその点を是正すべくカードの進化が行えるタイミングを後攻の方が早くしたり、カード能力で後攻が有利になるものなどを出していたそうだが、カード能力での対策のため同じような能力のカードをリリースし続けなければならなくなり、やはりゲームが複雑になる原因になっていた部分があるようだった。

エクストラPPは当初、コスト0のカードとしての実装を想定していたのだとか。だが、コスト0のカードとしてしまうと特定のクラス(※作中に登場するエルフやウィッチといった特定のリーダーキャラクターの分類を指す)を強化しすぎてしまう。また、手札上限の9枚に引っ掛かりやすく自由度を下げてしまうので、システムとしての実装に決まったそうだ。



このほかにも、AIによるアドバイス機能やチュートリアルの充実など初心者に優しいサポート機能も紹介された。まだ「Shadowverse: Worlds Beyond」を遊んだことのない方や、「Shadowverse」から移行していない方はチェックしてみてはいかがだろうか。

新カードを実装するべくテストプレイもデジタル化
その後は、ルールの部分だけではなく、それ以外の「Shadowverse: Worlds Beyond」での変更点が紹介された。
「Shadowverse」では3ヶ月ごとに新たなカードパックをリリースする年4回の大型アップデートがあり、大型アップデートから2ヶ月後にアディショナルカードがリリースされる形式を取っていた。「Shadowverse: Worlds Beyond」では2ヶ月ごとの年6回の大型アップデートという形に変化。これには、ゲーム環境の流動性を高める狙いがあるそうだ。


このアップデート頻度を実現するためにテストプレイの効率化が急務となったそうだが、アナログカードゲームとしてテストしていた「Shadowverse」に対して、毎朝最新のアプリを自動作成するデジタルでのテストとすることで、1戦の時間が大幅に削減された模様。


なんとテストプレイの対戦数は約5倍になったそうで、「Shadowverse: Worlds Beyond」では「Shadowverse」以上により適したカードの実装方法を設計できたとのこと。即日のフィードバックまでもが可能となったことから、年6回の大型アップデートにも対応できるようになったと語られていた。




以上、「『Shadowverse: Worlds Beyond』二度目のDCG開発でゲームをリデザインする~遊びやすさと競技性の両立~」の模様をかいつまんでお届けした。人気作の裏側や、そこから一新するまでの苦労を知れる機会は中々無いと思われるので、ゲーム開発とは遠い分野でお仕事をしている方もぜひチェックしていただけると幸いだ。

なお、8月4日10時まで以下にてタイムシフト配信が実施されている。本稿で紹介しきれなかった部分もあるので、興味のある方はぜひご覧になってみてはいかがだろうか。
CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/
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