「桜色の夢を見て、僕は君に恋をする」レビュー:これぞ王道。どこか懐かしい、切なく優しい世界観のビジュアルノベルゲーム

プレイレビュー
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オペラハウスが7月31日にNintendo Switch/Steam向けタイトルとして発売した「桜色の夢を見て、僕は君に恋をする」のレビューをお届けする。

本作はオペラハウスによるビジュアルノベル。韓国のゲーム会社であるNBOXGAMESより発売された「桜の木の精霊をアイドルにする方法」(原題)をローカライズした作品だ。

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ローカライズは文字を日本語に訳しているだけでなく、キャラクターの名前を変えたり、CGをリファインしたりと日本に住んでいる我々がプレイしても違和感がないようにリファインされている。たとえばヒロインのチェリーとスーパーに行くシーンでは彼女の持っている豆腐のパッケージや値段が日本人に馴染み深いものとなっており、没入感が削がれることはない。

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とくに注目ポイントはキャラクターを演じている声優陣。水野朔さんや内山悠里菜さんなどの人気声優陣がキャラクターを担当しているが、なかでも重要なのがメインヒロインであるチェリーを演じている来栖りんさんだ。チェリーは歌がとても重要なキャラクターになるが、実際に来栖さんが素晴らしい歌声を披露している。チェリーが歌うのは重要なシーンなのでとても説得力があった。

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そんな「桜色の夢を見て、僕は君に恋をする」のストーリーは、母親を亡くして気力を失った主人公がかつて暮らしていた町へと戻ってきて、そこで桜の樹の精霊であるチェリーと出会うというものとなっている。人間とは異なるヒロインとの同居や学校への転入、学校での幼なじみとの再会、ライバルキャラの登場など、ライトノベルやギャルゲーでおなじみのシチュエーションが満載だ。

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ヒロインはチェリーのほかに、彼女と同じく精霊であるウォーティと主人公の幼なじみである高井由里が存在。また、主人公の住む家の大家であり、学校の担任教師でもある伊奈祥子や、おっとりした性格の折原結愛、明るくノリがいい草薙隼人といったキャラクターが登場して物語を盛り上げる。この作品のいいところは嫌な人間がひとりもいない優しい世界になっているところで、90年代の美少女ゲームを思い出すような雰囲気になっている。

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とてもいい意味で王道の展開を貫いた作品となっており、最後まで安心してプレイできる。テキストに関しても難しい言い回しは存在せず、すんなりと頭に入ってくる内容だ。ここで強調したいのは読みやすい文章ということであり、稚拙な文章ではないという点。文章の表現の幅は広く、その文章から状況を想像する余地がたくさんあって読み進めていくのがとても楽しい。“木を植えることは思い出を植えることと一緒”など思い出に残るフレーズも多い。

なお、ローカライズにあたり、単語レベルで適切かどうか気になる箇所はいくつかあったものの、意味が通じないわけではないので問題はなかった。

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物語は選択肢によって展開が変わる仕組み。ただ、どのヒロインの結末になるかについては終盤で分岐するので攻略に迷う必要はない。いちどエンディングを迎えるとチャプターセレクトが解禁されるので、ラストのチャプターを選んで選択肢を変えればOKだ。

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チャプターセレクト自体は便利だが、ゲーム内にテキストスキップ機能がないのは少し気になった。プレイ時間が3~4時間のゲームなのでスキップが無くてもさほど困らないものの、できればデフォルトの機能として実装してもらいたかったところだ。

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三者三様の魅力を持ったヒロインたち

本作の魅力はなんといっても3人のヒロイン。それぞれを一言で表わすと、チェリーはほんわかした雰囲気のおっちょこちょいな女の子、ウォーティはクールなツンデレ、由里は親しみやすい幼なじみといった感じでまったく違うタイプとなっている。分かりやすいキャラクター性ではあるものの、しっかりそれぞれがアイデンティティを持っており、物語を進めていくことで彼女たちのことが好きになっていく。

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チェリーは人の想いによって顕現した3位階精霊で、融合した人の魂に未練があると顕現できる存在。世話焼きな性格で母親を失った主人公の心の穴を埋めてくれる女の子だ。主人公との共同生活は王道なギャルゲー展開でほっこりするが、チェリーが妖精であるため現実世界の常識に疎いところも。そんな彼女の引き起こすトラブルも微笑ましい。

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未練によって顕現した存在ということで、ある程度はその正体が予想できるが、だからこそ主人公が魂への未練が無くなったときにチェリーはどうなるのか、物語の先が気になる作りになっている。

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ウォーティは精霊王に許しをもらえれば自由に顕現できる2位階精霊。人の未練から生まれたわけではない純粋な精霊だ。ほんわかとしたチェリーとは違い、ツンツンとして近寄り難く感じるが、主人公の家に来てからは人間の文化に興味津々な様子が見え隠れする。ケチャップが好きという一面もあり、とてもかわいらしい。最初こそチェリーを監視する立場として登場するウォーティだが、俗物っぽいところ、ポンコツっぽいところも多く、ギャグ要員の一面も覗かせるようになる。

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筆者としてもいちばんのお気に入りのキャラクターだが、ウォーティを選ぶということはチェリーは……。ウォーティのエンディングは手放しのハッピーエンドではないが、これからふたりで最高のハッピーエンドを探しに行く未来を想像できるようなもので、やはり彼女のことが好きになる。

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由里はチェリーやウォーティとは違って人間の女の子なのでファンタジー寄りの話とは異なり、現実的なストーリーとなっている。チェリーのおかげで学校に通えるようになった主人公がかつての幼なじみと再会し、ふたたび歩みを進めていくストーリーはチェリーやウォーティのストーリーに負けず劣らず素晴らしい。また、感情表現が豊かで、笑顔や照れた顏、ほっぺを膨らませた怒った顏など、多彩な表情を見せてくれるのも彼女の魅力だ。

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主人公自身が自分で前に進むことで新しい道が開けていき、自立していく。そして、そのとなりには幼なじみの由里がいる。そんな姿はリアリティもあってとても勇気付けられた。

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すべてのルートをクリアしたあとに振り返れば、どれもがいい結末であった。チェリーやウォーティ―のようなファンタジーのなかに救いがあるストーリーがあれば、一方で由里のような地に足が付いたようなストーリーもある。どちらが優れているというわけではなく、それぞれが主人公の選んだ結末として納得がいった。本作をクリアしたあとに背中を押されるプレイヤーも多いと思うので、ぜひプレイしてみて欲しい。

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1981年生まれ。東京都出身。2000年よりゲーム雑誌のアルバイトを経て、フリーライターとしての活動を開始する。アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームなどのジャンルを好み、オールタイムベストは「東京魔人學園剣風帖」。ほかに思い入れのあるゲームは「かまいたちの夜」「月姫」「CROSS†CHANNEL」「ひぐらしのなく頃に」「ダンガンロンパ」「カオスチャイルド」「ライフ イズ ストレンジ」「レイジングループ」など。 X(旧Twitter):https://twitter.com/kawapi YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCmN-juj7b73DGuIkRRh6U6A Twitch:https://www.twitch.tv/kawapi

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