7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。本稿では23日に行われた「『ゲーム音楽の著作権買取』は何が問題なのか?~JASRAC理事と作曲家が正面から語る~」のレポートをお届けする。

これまでは、ただゲームを遊んだりサントラを聞いたりするだけのプレイヤーにとってゲーム音楽の著作権問題はほぼ無縁のものだった。しかし、熱心なファンや有志で演奏会を開こうとした人なら、一般的な音楽をJASRACなどの事業者が管理する一方で、ゲーム音楽の多くは自社管理であること、「ドラゴンクエスト」の楽曲はJASRACに信託されていること、日本ファルコムが掲げる「ファルコム音楽フリー宣言」などの事例を耳にしたことがあるかもしれない。
だが、誰もが手軽にゲームの配信を行えるようになった今、ゲーム音楽を含む著作物への理解は不可欠だ。本セッションでも触れられたが、今年5月に「ファイナルファンタジーXIV」が音楽著作権をJASRACへ信託すると発表。これにより、JASRACと許諾契約を結んでいない一部SNSなどへの動画投稿は、従来と対応を変える必要が生じた。大きな問題になるケースは稀かもしれないが、もはや「知らなかった」では済まない時代になりつつある。本セッションは、まさに過渡期にあるゲーム音楽の著作権について理解を深める絶好の機会となった。
本セッションには、JASRAC理事でありミュージシャン/作詞・作曲家のエンドウ.氏と、長年ゲーム会社に在籍し、発注側と受注側の双方を経験した作曲家の酒井省吾氏が登壇。一般的な音楽では、何らかの用途で使用された場合にJASRACなどを通じて著作権使用料が分配される。それに対してゲーム業界は、著作権が会社に帰属する「職務著作」となっている状況が多い。
酒井氏はフリーランスとなってから、企業側がゲーム音楽に関する権利を全て買い取るという契約内容に不均衡を感じるようになったと話す。とはいえ「職務著作」は自社の社員でなければ成立せず、正当な法人のやり方のひとつであり、良い悪いという話ではないとエンドウ.氏。著作権が大切な財産だからこそ、譲渡や相続が可能なのだと話す。
また、著作者だけが持つことができる「著作者人格権」は譲渡できず、公表権、氏名表示権、同一性保持権を含んでいる。これにより大きなトラブルに発展したケースもあるほど強い権利のため、企業側から提示される契約書には「著作者人格権を行使しない」と明記されていることが多い。ただし裁判ではそれが無効となる事例もあるため、効力があるかどうかはケースバイケースだという。


企業がゲーム音楽の買い取りを行う理由について、両氏は全てを自社でコントロールしておきたいことや、JASRACなどを経由すると管理手数料が引かれるためではないかとの見解を示す。これを解決する手段として、JASRACには「委嘱制度」がある。通常であれば企業側がJASRACに利用の手続きを取らなくてはならないが、音楽クリエイターとゲーム会社が合意して制度を利用した場合、ゲーム用途で利用する際は著作権使用料を免除できるという仕組みだ。
この制度を利用すればゲーム音楽のコンサートが開催された場合や、YouTubeなどJASRACが利用許諾契約を締結している動画投稿サービスで再生された場合など、ゲームに直接関連しない使用料はクリエイターへ還元されるというわけだ。
ただし、この制度はまだまだ多くのゲームメーカーに浸透していない。酒井氏は企業側の視点として、内部の横並びが崩れることを避けているからではないかと背景を推測する。社内にはグラフィッカーやプログラマーなどが存在する中、サウンド関連だけ印税を受け取れる状況は不公平になってしまう。
これに対しエンドウ.氏は、世界的にクリエイターファーストの流れがある中、印税のインフラが整っている音楽業界から先行して進めてもいいのではとコメント。またJASRACなどに登録しない場合、海外からの使用料を回収できない。ゲーム本体の規模と比べれば微々たるものかもしれないが、輸出産業としての機会損失になっていると説明した。
これに関連して、ドイツの著作権法には「ベストセラー条項」というものがある。著作物の需要が増加し、価値の不均衡が生じた際に適正な報酬が受け取れるよう交渉したり、契約の見直しを行ったりするというものだ。他方でアメリカは産業を発展させるため、著作権を制限する傾向が顕著であるという。両氏は、日本もヨーロッパのようにクリエイターや芸術を守る方向になってほしいと願いながら講演を締めくくった。
なお、各講演は8月4日(月)10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。
CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/
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