2026年9月4日にカプコンから発売されるPS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/PC(Steam)用ソフト「鬼武者 Way of the Sword」(以下、「鬼武者WS」)。本稿ではネタバレを避けつつのフルレビューをお届けする。
長きにわたる沈黙を破り、ついに世に放たれる「鬼武者WS」。先行試遊の段階から、圧倒的なグラフィックと空間を支配する音響、そして泥臭い剣戟アクションで筆者の心を鷲掴みにした本作だが、今回ついにエンディングまでの道のりを完走することができた。

筆者はアクションゲームというジャンルをこよなく愛しながらも、悲しいかな、プレイヤーとしての腕前は決して高くはない、いわゆる下手の横好きである。そのため、本作のプレイにおいては、物語や世界観をじっくりと堪能しつつ、無理なくアクションを楽しめるであろう難易度「活劇」を選択して、過酷な死闘に臨んだ。

本稿は、その「活劇」にてエンディングを迎えたひとりのゲーマーによる、魂を揺さぶられた体験のすべてを書き綴ったフルレビューである。
本作が放つ恐るべき引力と、時間を忘れて没頭してしまうほどの圧倒的な面白さを伝えていきたい。
三船敏郎さんの魂が宿る宮本武蔵。泥臭くも豊かな感情表現が生む圧倒的な主人公像
本作を語る上でまず外すことができないのが、世界的名優である三船敏郎さんのフェイスモデルを起用した主人公・宮本武蔵の存在感である。最新鋭のグラフィックエンジンによって現代のゲーム機に蘇ったその顔立ちは、単に「似ている」という次元を遥かに超越していた。

ゲームプレイを通して筆者が最も驚かされたのは、武蔵が見せる表情の圧倒的な豊かさである。
これまでのアクションゲームの主人公といえば、どこかクールで感情を表に出さない、あるいは常に怒りに満ちているといった、ある種の記号的なキャラクター造形がなされることが多かった。
しかし、本作の武蔵は違う。幻魔という得体の知れない化け物を前にして露骨に嫌そうな顔をし、面倒くさそうに刀に手をかけ、あるいは強敵との死闘の中で泥と血に塗れながら、歯を食いしばって必死の形相を見せる。

眉間のシワの寄り方、口元のわずかな歪み、そして眼光の鋭さ。そのひとつひとつに、天下無双を夢見ながらも決して綺麗事では生きていけない、人間・宮本武蔵の泥臭い生き様が刻み込まれているのだ。
ムービーシーンのみならず、リアルタイムのプレイアブルな場面においても彼の豊かな感情表現は途切れることがなく、プレイヤーはまるで彼と一心同体になったかのような深い没入感を味わうことになる。

三船敏郎さんという希代のアクターの顔を借りるだけでなく、その顔にふさわしい人間臭さを徹底的に追求した開発陣の執念には、ただただ感嘆するほかない。

妖艶なる毒に溺れる。登場回を重ねるごとに狂気に堕ちゆく宿敵・佐々木巌流
泥臭く野性味あふれる武蔵と完全なる対極に位置し、本作の物語を強烈に牽引していくのが、武蔵の宿敵となる佐々木巌流である。彼は本作において、単なる一度きりのボスキャラクターではなく、武蔵の前に幾度となく立ちはだかる最大の壁として描かれている。

物語の中で、プレイヤーは武蔵としてこの巌流と幾重にも刃を交える。最初は天才肌で常に余裕の笑みを浮かべ、武蔵を見下すような態度をとっていた彼だが、戦いを重ね、物語が進行していくにつれて、その内面には明確な変化が訪れる。
武蔵に対する異常な執着、己の剣に対する狂気的なまでの矜持、己の分身たる幻魔が蠢く京都の闇に当てられたかのように、彼は少しずつ、確実に人としての常軌を逸していくのだ。
その狂気に堕ちていく様が、言葉を失うほどに妖艶で美しいのである。乱れた髪、狂気を孕んだ瞳、嘲笑と絶望が入り混じったような声音。彼が画面に登場するたびに空気が張り詰め、一種の背徳的な高揚感がプレイヤーの全身を包み込む。

彼との戦闘は回を追うごとに熾烈さを極めていくが、同時に「もっと彼の狂気に触れたい」「もっと彼のエキセントリックな剣術を見たい」という危険な欲求に駆り立てられてしまう。
これほどまでにプレイヤーの感情をかき乱し、強烈な引力を持ったライバルキャラクターは、ゲーム史においても極めて稀有な存在だと言えるだろう。
剣戟が語る敵の性格と、クスッと笑える幻魔たちのコミカルな魅力
もちろん、巌流との幾度にも渡る激闘以外にも、プレイヤーの心を躍らせる魅力的な幻魔たちとの死闘が多数待ち受けている。本作は「鬼武者」の名を冠するだけあり、敵である幻魔の魅力の掘り下げにも並々ならぬ力が注がれているのだ。
特筆すべきは、敵ながら剣と剣を交えることによって、なんとなく「その敵の性格」のようなものが見えてくる点である。荒々しく力任せに武器を振るう者、狡猾にフェイントを織り交ぜてくる者など、刃を交え、その剣戟のリズムを感じ取ることで敵の個性が浮かび上がってくるから面白い。戦闘が単なる作業ではなく、命懸けの対話になっているのだ。

くわえて、道中を徘徊する雑魚幻魔たちも非常によく喋り、プレイヤーを楽しませてくれる。
異形の化け物の分際で、人間の武蔵に向かって「曲者!」などという言葉を放ちながら襲いかかってくるため、思わず画面に向かって「いや、お前が曲者だろ」と内心で裏手ツッコミを入れたくなるような、クスッと笑えるコミカルさも持ち合わせている。
血生臭い死闘が続く本作において、こうした人間味(?)あふれる幻魔たちの存在は、絶妙なユーモアとなっていた。

「簡単でもない。高難易度でもない」絶妙な塩梅がもたらす極上の高揚感
本作の核心であり、筆者が最も魂を揺さぶられたのが、極限まで磨き上げられたバトルシステムと、その緻密な難易度調整である。
前述の通り、筆者はアクションが苦手なため、迷わず難易度「活劇」を選択した。物語の序盤は、正直なところ「雑魚敵は適当に斬っていれば余裕」「ボスクラスの敵でも、せいぜい3~4回リトライして動きを見れば、大抵はなんとか勝てる」という、ある種の慢心があった。

その慢心を生み出した理由こそが、本作が用意した見事なアクションの導線にある。
ゲームを進めていくと、スキルツリーから様々な能力を習得していくことになるのだが、その中でも特筆すべきが「弾き」の存在である。PS5版であれば、L1ボタンでしっかりとガードを固めつつ、敵の攻撃が当たる瞬間に合わせて×ボタンを押すだけという極めて簡単な操作で、「カキン、カキン!」と小気味よく敵の連撃を弾き返すことができるのだ。

アクションゲームは好きだが決して上手くはない筆者レベルのプレイヤーであっても、この簡単操作が生み出す爽快感は格別である。
ここに、敵の攻撃の軌道を紙一重で逸らす「受け流し」や、「鬼武者」シリーズ最大の醍醐味である必殺のカウンター「一閃」が流れるように組み合わさっていく。強大なボスを相手に15分ほどこれらのアクションを次々と叩き込んでいるだけで、「私、もしかしてすごく上手くなっているのでは……!?」という、全能感にも似た心地よい錯覚を存分に味わうことができるのも、本作の計り知れない魅力となっている。

ところが、物語が中盤から終盤へと差し掛かるにつれ、その自惚れは完膚なきまでに打ち砕かれる。
徐々に敵の配置はいやらしくなり、大量の雑魚敵に四方を囲まれてタコ殴りにされる絶望的なシチュエーションが増加。加えて、単なる雑魚とは呼べないような強力な個体が出現し始め、少しでも気を抜けば道中の名もなき敵の攻撃で為す術もなく死に絶えるシーンが頻発するようになった。
各エリアの最奥で待ち受ける強敵やボスたちの凶悪さも跳ね上がり、序盤は数回で勝てていたボス戦も、気がつけば5回、6回とリトライを重ねる死闘へと変貌していく。

それでも、不思議とコントローラーを投げ出してしまうような理不尽さは微塵も感じなかった。それは序盤に培った「弾き」や「一閃」による絶対的な爽快感が身体に残っているからだ。
「あの時のように動ければ必ず勝てる」という確信があるため、負けるたびに敵の動きのタイミングが脳と身体に刻み込まれ、やがて指先が勝手に反応するようになっていく。幾度目かの挑戦でついにボスの体力を削り切り、トドメの一撃を深々と叩き込んだ瞬間に訪れる圧倒的な高揚感は、紛れもなく自分自身の確かな成長の実感であった。

開発陣が繰り返し語っていた「簡単でもない。高難易度でもない」という言葉の真意を、クリアした今ならば痛いほどによく理解できる。
何時間も同じボスに足止めされるような途方もない難易度ではないが、適当にボタンを連打していれば勝てるような生ぬるい調整でも決してない。「嫌になるほど難しくはないが、決して簡単ではない」という、プレイヤーのモチベーションを最高潮に保ち続ける絶妙な塩梅に仕上がっているのだ。
この手応えを難易度「活劇」で感じたとなると、難易度「剣戟」はアクションに絶対の自信を持っているプレイヤーであっても、なかなかに初見突破は困難を極める極上の歯応えになっていることだろう。
少数精鋭のNPCたちが織りなす濃厚なドラマと、紫式部の虜になる喜び
血で血を洗う死闘の連続の中で、プレイヤーの心に深い物語性を与えてくれるのが、京都の各所で出会うNPCたちの存在である。本作に登場するNPCの数は決して多くはない。その分、一人ひとりの心情や背景が異常なほどの解像度で深く掘り下げられており、物語への没入感を飛躍的に高めている。
その筆頭が、武蔵の篭手の中に宿る「静御前」とのやり取りである。
最初は姿を持たない声として武蔵を導く彼女だが、ともに死線を潜り抜け、道中で様々な会話を交わしていく中で、少しずつ二人の間に確かな信頼関係が築かれていく。野蛮な武蔵と、芯の強さを持つ静御前。この奇妙な相棒関係が徐々に変化し、やがて互いがかけがえのない存在となっていく過程の描写は非常に丁寧で、胸を熱くさせるものがあった。

また、冥界と現世を行き来する伝説を持つ小野篁(おのの たかむら)は、その恐ろしげな逸話とは裏腹に、底抜けの豪快さで武蔵を導き、物語に力強い推進力を与えてくれる。

かぶきおどりの踊り手である出雲阿国も忘れてはならない。彼女は武蔵に対して素直になれない「捻くれた可愛さ」を見せ、血生臭い死闘が続く本作において、一時の華やかさと心休まるユーモアをもたらす極上のエッセンスとなっている。

個人的に筆者の心を完全に撃ち抜いたのが、武蔵を平然と使いっ走りにする文豪「紫式部」の登場である。平安時代の装束に身を包みながら、アンニュイな雰囲気の眼鏡をかけ、ひときわ色っぽい唇を艶めかせる彼女のキャラクターデザインは、初見で脳裏に焼き付くほどの強烈なインパクトを持っていた。

天下無双を目指すはずの武蔵が、彼女の知性と謎めいた色香に完全にペースを握られ、あれこれと顎で使われる図はシュールでありながらも愛らしく、筆者自身も彼女の魅力にすっかりメロメロになり、「次は何を依頼されるのだろう」とウキウキしながらクエストをこなしてしまったほどだ。

緻密なマップ設計と、日本史の浪漫が息づくサブクエストの妙
紫式部らに依頼されるお使いをはじめとしたサブクエストの充実ぶりも、本作を語る上で欠かせない。本作のマップ構成は非常に巧みで、ゲームの進行に合わせて新たなエリアが解放されていくだけでなく、これまでに行ったエリアに再度戻って、改めて探索を行う場面が多数用意されている。

物語の進行や時間の経過、あるいは幻魔の侵食度合いによって、かつて訪れたはずの場所の風景がガラリと変貌している。
敵の出現場所そのものが大きく変わるわけではないが、ストーリーが進むにつれてより強力で凶悪な上位の雑魚敵が徘徊するようになり、かつての安全圏が危険地帯へと変貌する。
緻密に作り込まれた京都という舞台を余すところなく活かしきり、脅威度を増した敵の存在と共に、その土地の新たな表情を何度もプレイヤーに刻み込んでくれる。この秀逸なレベルデザインは見事の一言に尽きる。

このレベルデザインのみならず、京都という古くからある都の性質を活かし、日本史や日本神話にまつわるエピソードがふんだんに盛り込まれたクエストの数々も、歴史ファンや伝承好きのプレイヤーにはたまらないご褒美となっている。
かつての武将の無念を晴らすものや、古の神々の遺物に関わるものなど、単なるお使いにとどまらない重厚な物語性を秘めたサブクエスト群は、本編に勝るとも劣らない濃密な時間を提供してくれた。

静寂と熱狂のコントラスト。息詰まる環境音と血沸き肉躍るボス戦BGMの秀逸さ
本作の没入感を語る上で、もう一つ欠かせないのが音響と音楽のコントラストである。
道中の探索においては、BGMは極力抑えられており、風の音や遠くで響く不気味な物音といった環境音がメインとなっている。この静寂こそが、いつどこから幻魔が襲いかかってくるか分からないヒリヒリとした緊張感を増幅させているのだ。

その分、エリアの最奥で待ち受ける強大なボス幻魔との死闘において、突如として流れ出す熱を帯びたBGMの秀逸さが際立っている。
静まり返った道中から一転、激しくもドラマチックな旋律が鳴り響く瞬間、プレイヤーのアドレナリンは一気に沸点へと達する。強敵との絶望的な戦いを極限まで盛り上げるこの音楽の力と、敵の連撃を弾き返した際の小気味よい金属音が混ざり合うことで、本作の剣戟はもはやひとつの暴力的な芸術へと昇華されているのである。

謎に包まれた成長上限がもたらす緊張感と、底無しに広がる剣戟の愉悦
もうひとつ特筆すべきは、本作における絶妙な成長上限のコントロールである。
一度目のプレイでは、どれだけ経験値を稼いでもスキルツリーをすべて解放することはできない。「一閃」や「弾き」、あるいは「鬼の武具」などの根幹となるアクションの強化には一定の上限が設けられているのだ。

難易度「活劇」であろうと「剣戟」であろうと、ある一定のラインからはスキルツリーの強化に頼り切ることはできない。中盤以降は、純粋なプレイヤースキルの向上と、刀や装束、篭手といった武具の地道な強化のみで死闘を乗り切らなければならないのだ。
これにより、どれだけ寄り道をして経験値を稼いでも、圧倒的な力で敵を蹂躙するいわゆる「俺TUEEEE!」状態には陥らず、常に適度な緊張感と死闘の歯応えを保ち続けるようコントロールされているのである。この緻密に計算されたレベルデザインの塩梅には舌を巻く思いだ。
もちろん、刀や装束などの武具を強化していくことで、敵へ与えるダメージを増やし、自身が受ける被ダメージを大幅に減らすことができる救済措置もしっかりと機能している。裏を返せば、アクションに絶対の自信を持つ「やり込み勢」ならば、あえてこれらの武具強化すら一切行わずに初期状態のまま進める、といった縛りプレイに挑むのも面白そうだ。プレイスタイル次第で、剣戟の愉悦はどこまでも底なしに広がっていくのである。

現世と幻魔の境界線を斬り裂き、自らの腕で掴み取る歓喜の物語
圧倒的な表情を見せる武蔵と、妖艶な狂気を放つ巌流の対比。
「活劇」という難易度でありながら、プレイヤー自身の成長を強烈に実感させる極上のアクションバランス。そして、魅力的なNPCたちと、歴史の闇が息づく京都を骨の髄までしゃぶり尽くせるゲームデザイン。

「鬼武者 Way of the Sword」は、グラフィック、サウンド、アクション、シナリオのすべてが高い次元で融合し、プレイヤーの感情を直接揺さぶる体験として昇華された、アクションゲームの新たな金字塔である。

ちなみに、今回のプレイにおけるクリア時間は、サブクエストを半分以上残した状態でありながら、難易度「活劇」でほぼ25時間であった。もしすべてのクエストを回収して隅々まで探索を尽くせば、おそらくプレイ時間は30時間を優に超える特大のボリュームになっている。
これがもし上位難易度である「剣戟」でのプレイとなれば、ボスとの死闘に費やすリトライの時間も必然的に増え、さらに長く深く、この狂気の京都に没入することになるはずだ。

実のところ、物語の最後を締めくくるラスボス戦においては、筆者は撃破するまでにたっぷりと2時間もの時間を費やすこととなった。幾度となくゲームオーバーを繰り返し、「一番下の難易度である活劇でさえ、これほどの厳しさなのか……!」と、コントローラーを握る手が震えたほどである。
とはいえ、幾度となく絶望を味わい、泥にまみれながらも、自らのプレイヤースキルでその強大な敵を打ち倒した瞬間のあの歓喜は、間違いなく一生の記憶に残る宝物となった。
難易度「活劇」でのクリアを果たした後、筆者の手元には深い疲労感と、それ以上の凄まじい充足感が残っていた。そして今、筆者は難易度を「剣戟」へと引き上げ、再びあの狂気と血に彩られた京都の死闘へと身を投じている。
それだけの抗いがたい魅力と毒が、このゲームには確かに宿っているのである。

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