2026年9月4日にカプコンから発売されるPS5/Xbox Series X|S/Steam/Nintendo Switch 2用ソフト「鬼武者 Way of the Sword」(以下、「鬼武者WS」)。本稿では開発陣インタビュー&サウンド制作現場レポートをお届けする。
本作の奥深い魅力を紐解くべく、ディレクターを務める二瓶賢氏とプロデューサーの門脇章人氏への開発陣インタビューに加え、ゲームの臨場感を極限まで高めるサウンド制作スタジオ(音楽・フォーリー)見学ツアーの模様を一本の記事としてお届け。
主人公・宮本武蔵と、その宿敵・佐々木巌流の因縁や、緻密に再構築された実在の京都という舞台の裏側。そして、泥臭い試行錯誤から生み出されるこだわりの音づくりまで、多角的な視点から本作に込められたクリエイターたちの、並々ならぬ熱量を感じ取ってほしい。
少々長い記事となるが、ぜひ最後まで目を通してもらえれば幸いだ。

※記事中で使用しているゲーム画像は、今回のツアー時に撮影したものと、配信中の体験版にて撮影したものを併用しております。
武蔵の人間臭い表情やキャラクター同士の掛け合い、こだわりの「やられモーション」について
――武蔵の表情を作る上で心がけられたところや、三船敏郎さんという実在の方をモデルにするにあたって、他の架空のキャラクターと表情の差が出てしまうようなことがあったのかを教えてください。
二瓶氏:今回、「鬼武者WS」のキャラクターたちは、割と少人数で作ろうというのがコンセプトにあって、主要なキャラクターはみんな表情をちゃんとこだわって作っています。
武蔵は性格が野蛮さというか無頼漢的なところがあって、人間っぽさを作りたかったんですね。嫌なものは嫌、めんどくさい、みたいな。でも自分の天下無双を掲げるために何でもやっちゃう人間を作りたかったので、自然と表情が豊かになったというところはあるんですけれど。
技術的な部分で言えば、同じように主要なキャラクターはこだわって作っております。
――特に苦労された点などはありますか。
二瓶氏:作っている段階で色々な過程があったんですけれど、眉間のシワの動き方だったり、鼻の膨らみ、頬のシワの動きとかいうのは、ずっと磨き上げて作っていきました。
やっている芝居自体は最初のものから変わっていないんですけど、どんどん技術を詰めていきながら表情がより動き、シワの加減などもこだわって作って、最終的に魅力的な武蔵になったなという感じですね。

――武蔵は世界的に知名度があるということで選ばれたそうですが、今回、武蔵を三船さんとして主人公にしてみて海外の反応はいかがでしたか?
門脇氏:武蔵は良かったと思っています。今回はほぼ新規のIPに近い状態での勝負になるというところもあり、そこを底上げしてくれる存在として、やはり知っている人が主人公というのは大きいなと感じています。なので宮本武蔵を主人公にして正解だったなと感じています。
――武蔵と巌流など、キャラクター同士のやり取りに魅力を感じました。色々とやり取りを作る上で気をつけたことや、やっていくうちに面白くなってノリノリになって楽しかった点はありますか?
二瓶氏:掛け合いは大事にしていたので、「籠手女」「そんな言い方嫌いです」みたいなやり取りなども最初の段階で決まっていました。真面目な冒険活劇にはしたくなくて、人間らしさが出る人間同士のぶつかり合いみたいな、そういうところの掛け合いをしたかったので。
あと、これまでの「鬼武者」は、ゲーム中で雑魚敵は喋らなかったんですよね。高等幻魔みたいな頭がいい幻魔だけ喋っていたんですけど、今回キャラクター性や時代劇感というのも出しながら、喋りや掛け合いもキャッチーに感じてもらいたいというところから、雑魚敵も喋るというのを、かなり最初の段階から作っていまして。
僕の我儘でやってしまった結果、多言語化ですごい物量が増えて、現場には大変な思いをさせてしまったというのはあるんですが、声があるおかげで面白い幻魔たちができたなと感じています。
――一番よく出てくる雑魚敵に話しかけられて、えっ、てなりました。
二瓶氏:びっくりしますよね。これまでなかったですからね。
門脇氏:武蔵に「曲者」とか言ってきますが、曲者はお前だろって(笑)。でもキャラクター同士の強敵とのバトルでも、常に会話しながら剣戟をしているので、プレイヤーとしてはすごくテンションが上がりながら、プレイできると思います。僕自身もそんな感じでプレイしているので。

――本作は特にやられモーションがすごい凝っているなと遊んでいて感じましたが、アイデアはどうやって出しているのでしょう。
二瓶氏:僕はカプコンで育ってずっとアクションを作ってきた人間なので、自然と出てきたんじゃないかなと思うんですけど、リアクションが気持ちよさを作るというのはすごい大事な役割なので、ダメージパターンなどは最初からある程度充実させておきたいというのはありました。
小・中・大(攻撃)の中でも右から食らったり左から食らったり、斬り上げの時と斬り下げの時とのバリエーション作りを武蔵でもやっていますし、敵も同じようにバリエーションを作って、斬った時のリアクションが気持ちいいように、意識・計算しながら作っているというのはあります。
――凝っているから、逆にあえてやられてみたいな、と思わせてくれますよね。
二瓶氏:そうですよね。色んなパターン見てみたいみたいな、楽しいなと思ってもらえればと思います。
棘丸という回転しながら攻撃してくる敵も、受け流して壁に刺さるとジタバタして動けない、みたいなモーションがあるんですが、そこで武蔵が攻撃ボタンを押すと真っ二つに斬るみたいな。そういうところも、こうやったら面白くなるかもというのはアイデアをみんなで出し合いながら作っていました。

――ちなみに一番見てほしい敵キャラと、一番苦労した、アイデアを絞ったとか技術的に難しかったというようなアクションはありますか?
二瓶氏:一番好きな敵は僕とプロデューサーでも違うと思いますが、プロデューサーの好きな敵はなんですか?
門脇氏:まだ言えないんです(笑)。まだまだ出ていない魅力的な敵がいるんですよ。
二瓶氏:僕もまだ言えないですね(笑)。僕らがこのボスめっちゃよくできているし、魅力的だなというボスも、ユーザーさんに届けられるのは、もう少し後になるかなという感じで。PVでもしかしたらあいつ出るかもという。
門脇氏:僕自身は強敵と繰り返し戦う、挑戦したくなるというところに一番の魅力を感じていますので、強敵というのは大事にしていきたいなと思っています。
今言える範囲の中で言ったら、やはり佐々木巌流は一番時間をかけて作った強敵ではあるので、複数回戦うことを想定しており、まだ知らない変化を遂げるので、そこは楽しみにしていてほしいです。
二瓶氏:ちなみに、僕も言える範囲であれば巌流と言いたかったんですけど(笑)。

狂気と妖艶さを併せ持つ宿敵・佐々木巌流と、武蔵との対比を描くアクションデザイン
――武蔵の宿敵となる佐々木巌流には、毒のある色気を感じたんですけれども、彼のコンセプトについてと、主人公である武蔵との対比をどのようにしようと思ったのかという点についてお伺いしたいです。
二瓶氏:武蔵と巌流はキーワードとしても青と赤というぐらい差別化をしたかったというところがあります。武蔵はいわゆる時代劇の主人公にしたかったので、宮本武蔵というキャラクターの野蛮さというイメージもあり、三船敏郎さんもそういうキャラクターと親和性があったので、野蛮さであったり山猿感というのをキーワードとして作りました。
巌流に関しては逆に天才肌で、練習しなくても剣がすごいうまい奴という感じで、だから余裕をかましているんですよね。余裕があるキャラクターであり、妖艶さ、色気というところも本当に大事にしています。
武蔵と巌流は、モーションアクターさんをオーディションしたのですが、その時に一人だけすごく妖艶な男性の役者さんがいて、この人だとなったんで、その人の動きがゲームに出ています。
ちなみに巌流は開発内でも女性の人気がすごい高くて、きっと発売してからもっと好きな人が増えてくれるんじゃないかと期待しているんですけれど、そういう意味ではどっちも色気があるとかではなく、対比がちゃんと出るような、時代劇的な野蛮さと色気のある巌流というのは意識して作りました。
――モーションアクターさんが先に決まって、声優さんは後から決まったのでしょうか。
二瓶氏:声優さんは後からです。声優さんの選び方に関しては、ストーリーラインを作った中で、狂気とかサイコパスというキャラクターを作りたかったので、そういうのを演じるのが得意な人がいいなというところで、今回岡本信彦さんを選びました。

――動きがもちろん妖艶なんですけれど、声が乗ることで艶気も乗りましたよね。
二瓶氏:岡本さんの狂気的な声もそうなんですけど、収録する時にアニメっぽい声なのか映画的な方で行くのかを悩みまして、岡本さんはどちらもできる方だったので、微調整しながらアニメに行き過ぎない中での毒っぽさを見せつつ、狂気を演じてほしいという調整の中で出た声かなと思います。
門脇氏:岡本信彦さんにやってもらえてラッキーでしたね。
――岡本さんはカプコンさんの方からオファーをされたのですか。
門脇氏:そうです。
――こういう役は割とオーディションで決められることが多いと伺うものですから、珍しいですね。
門脇氏:武蔵の細谷佳正さんと巌流の岡本さんだけは、こちらから指名させていただきました。
――狂気を表現される声優さんは他にもいらっしゃいますが、岡本さんにピンポイントにお願いしたというのは、彼のどういうところに巌流との親和性があると感じたのでしょうか。
二瓶氏:岡本さんがいいなと思ったのは、ノーマルな喋り方も得意でありつつ、すごい狂ったキャラもできて、そこのコントラストを作りたかったんですよね。
巌流自体も最初はただの人間で、籠手を授かってどんどん狂気に落ちていくという描き方をしたかったので、声もそういう表現の幅ができる人が良かったんです。そこを考えた時に、ただの狂気が得意な人でもなく、そのコントラストを出せる声優さんとして、岡本さんがいいなとなりました。
――ちなみに、武蔵は力強く、巌流の方は滑らかな感じの動きですが、そういうアクションデザインの対比はどのように考えられたのでしょう。
二瓶氏:武蔵は自分が使うキャラクターなので、奇をてらった動きというのは基本のスタイルから外そうと思いました。達人らしさというのを意識しながら、振り終わった後に野蛮さというか、山猿感が出るような納刀の仕方だったりというのをバランスを考えて作っていたので、ゲームの遊びやすさという意味でも主人公として作りました。
逆に巌流というのはプレイするキャラではないので、工夫を色々入れたいというところでした。動きを作るには性格から考えなきゃいけないんですけど、巌流に関しては相手を少し騙して嘲笑うところもあったので、フェイント的な動きを必ず入れるように意識して作っていました。
プレイヤーがこう行こうと思ったらその反対側から斬る、みたいな。ステップも右に行こうと思ったら左に行くみたいに、キャラクター性、巌流らしさというところを意識しながらバトルデザインをしました。

――巌流は物語にどのような影響を及ぼすのかというのは、まだ言えないですか。
門脇氏:すみません、まだ言えないです。ただ、武蔵の籠手の中に女性がいるのに巌流の籠手の中にはいないのか、というのは、ちょっとヒントになりますね。一応、PVでも巌流の籠手の話は出ていますよね。
二瓶氏:そうそう、「話と違うじゃねえか」みたいなこと言ってるので。そこから予想をしておいていただければと。
――なるほど。では二人の因縁を盛り上げるために、ディレクション的なところで頑張ったところとか、そういうのを少しお伺いできればなと思ったんですけれども。
二瓶氏:僕の好きな趣味なども少し入っているんですけど、とあるヤンキーの映画がすごい好きなんです。主人公たちの悪っぽさがありながら、めちゃくちゃかっこいいというところで、総じて巌流や武蔵もヤンキーっぽさ……不良っぽさが少しありますね。インテリヤクザっていうのが一番近いのかもしれませんが、そういう要素を入れていて、まだ公開していないボスに関してもそういう要素が入っていたりします。少し極道っぽいイメージの雰囲気を持ったやつもいますね。

100万DL突破の体験版フィードバックから見えた、絶妙な「手応え」
――体験版からのフィードバックで、開発の方たちが想定されていた数字と、実際に遊んでくださった方の数字の差ですとか、想定通りだった点、国別の地域性などがあったらお伺いしたいです。
二瓶氏:ダウンロード数は、告知している段階で100万ダウンロードは超えています。
門脇氏:地域性というところでいうと、一閃は日本が成功率高い印象ですね。体験人数でいうとそんなに地域性の差はないんですけど、一閃の成功率は日本が若干高くて、あとは最後までクリアしているのも若干日本が高かったような気がします。
二瓶氏:ネットで情報をリサーチすると簡単という声が結構多いのですが、実は巌流を倒せなかった人が意外と多くて。詳しい数値は言えないのですが、声の大きさと実際のデータが結構ズレているのは感じました。
簡単という人もいれば、難しいという人もいるという、まさに僕らが目指しているちょうどいいところを突けている感じがしますね。
門脇氏:今回、難易度に関しては簡単とは言っていませんし、高難度ではないと言っていますけど、結局どっちやねんという感じではありますが(笑)、そういった意味ではいい感じにできたんじゃないかなという感触を、今のところは得ています。
――剣戟モードと活撃モードの割合はいかがでしたか。
門脇氏:剣戟が多かったと思います。
――では体験版で巌流を倒せなかった人達も、剣戟でトライして無理だったみたいな感じですかね。
門脇氏:はい。そうなりますね。

恐ろしい伝承の数々……実在の「京都」を舞台に選んだ理由とマップ構築の妙
――安井金比羅宮のボスですが、随分奇抜な縁の切り方をしていますよね。足が痛いという人に「足がなかったらもう痛くないですよね」とか、かなりエクストリームな感じでしたが、安井金比羅宮さん的には大丈夫なんですか?
二瓶氏:もちろん許可を取って確認しながら作っているので、そこは大丈夫です。安井金比羅宮にまずゲームとして使っていいかというところと、どういう内容かも伝えています。
――どんな反応でしたか?
二瓶氏:実際そういった縁切り縁結びの成就のさせ方として、違った方向で成就させるみたいなものが伝承になっていたりします。そういったところを「鬼武者WS」の世界観で落とし込んだという「鬼武者」としての味付けではあるんですけれど、例えば、嫌いな上司と縁を切りたいと願い事をすると上司が事故で亡くなるとか、そういった伝承がある神社さんなんですよ。縁切り縁結びで有名な神社さんです。
――なるほど。不勉強でした。
二瓶氏:あれをいきなり思いついたわけじゃなくて、実は本当にそういうエピソードがたくさん出てきていて、これはゲームとして扱うと、幻魔の仕業によって起きたんじゃないかと思いまして、これは親和性があるなと選んだんですよね。だから起点はもともとそういう伝承、恐ろしい話のほうです。
元々はもちろん縁切りだけではなく縁結びでもあるんで、色々な成就のさせ方もありますし、神社さん自体はもちろん良い場所として、悪いことだけの場所ではないです。
――安井金比羅宮の方はノリノリだったとか、渋々だったとか伺ってもいいですか。
門脇氏:渋られることはなかったですね。もともとゲームにもすごく精通している方だったので、「ゲームならいいんじゃない」という感じで見ていただきました。

――京都の宗教的な文化は世界にそこまで知られていないと思います。海外のプレイヤーにどこまで通じるかというのをお考えですか?
門脇氏:京都の伝承という部分では、海外の方に認知されていなくてもいいと割り切っています。どちらかというと、実際にゲームで京都を体験して、もし将来京都に行くことがあったら、「鬼武者WS」でやった場所だな、これゲームで体験したところと一緒だ、ここはゲームと違うなとか、追体験ができるきっかけになってくれればいいと、そこは割り切っていますね。
ちなみに京都をステージにしたいという提案をくれたのは二瓶なんですけど、有名スポットなのはもちろんのこと、京都をステージにしたい理由も、過去の京都の伝承だったりというのを全部聞いた上で、即決で「なら京都でやろう」と決めました。そこは海外に伝承自体は認知されていなくても、勝負できるんじゃないかなと思ったところですね。
――実在の京都をモデルにするにあたって、距離感はデフォルメしたものになっていると思うんですけど、実際に架空のマップを作るのと比べてどちらが大変だったでしょうか。
二瓶氏:架空のマップを作る方が楽だったなというのはあります。
とはいえ、現実にあるマップを使うからこその迫力とか没入感、自分が行った場所を体験できるという感覚って、やはりリアルに存在しているものだからこそ得られた体験なので、そこはやって良かったです。
デフォルメについて、最初は京都の街の実寸でやっていたんですけれど、歩くのがすごくしんどくて、基本的にギュッと半分ぐらいに圧縮したんです。でも建物も半分にすると、建物が迫力ないなとなったんです。清水寺などもそうなんですけれど。
なので歩く移動距離などは縮めているのですが、建物は実寸をイメージしていたりして、迫力がある大きさ、高さというのは、ゲームで遊びながらカスタマイズして作ったというのが苦労した点ですが、いいものができたかなと思っています。

――建物などは実寸大とのことですが、あえて変えた場所とかはあるのですか?
二瓶氏:舞台のひとつとなる建仁寺には、双龍図という有名な2体の龍が描かれている天井があるんですけれど、あれは江戸時代初期にはなかったんですよ。けれどゲームの中ではちゃんと見られるようにしています。
もし江戸時代の再現ということにこだわるのであれば、あれはない方がいいのですが、僕らの逆のこだわりとして、ゲームでの体験と、実際に行ってみた時に同じものがあるという感動もしてほしかったので、「双龍図がないじゃん」とゲームの中で思われるよりは、当時なかったとしてもそれをやった方がお客さんに喜んでもらえると思い、色々とフィクションとリアルを差異化しながらやっていきました。
独自システム「受け流し」のブレイクスルーと、世界的名優・三船敏郎起用の舞台裏
――「鬼武者」というシリーズを久しぶりに出すにあたって、システムや手触りなどで、これで新しい「鬼武者」がいけると思ったブレイクスルーになったような瞬間を、思い出せる範囲でお聞かせ願えればと思います。
門脇氏:受け流しは独自性があって、すごくいいものだと思いましたね。僕自身どちらかというとカジュアルゲーマーですが、僕がやってみて受け流しの気持ちよさを感じて、「これめちゃくちゃいいやん」と。このアクションをみんなに味わってもらいたいなと、思ったのがきっかけですかね。
あと「高難度ではない」というのは最初から言っていましたので、この受け流しだけでも勝負ができるんじゃないかと思った記憶があります。それぐらい、あの受け流しが魅力的に感じたんですね。
――それは開発の中で大体何パーセントぐらい進んだ時ですか。
門脇氏:試作が上がった時なので、3年ぐらい前だったと思うのですが、何せもう6年半も開発しているので少し記憶が曖昧なんですけど、開発の中盤くらいです。最初はアクションの模索で2年ぐらい使っているんですよね。
――それほどまでに受け流しがハマったと。確かに気持ちいいですよね。
門脇氏:受け流しを体験できた時に、これはキャッチーで美味しいなと思いました。
あと一閃と、魂吸収がある。かつ崩し一閃というのもあって、崩し一閃も僕みたいなカジュアルゲーマーでも攻撃していれば出せる。そこにもちろん弾きなども加えて、これは勝負してみたいなと思えましたね。

――開発チームが違うとは思うのですが、和風のゲームだと以前「祇(くにつがみ)」が出ていたんですが、そこから例えば美術面などで培ったものを今回の「鬼武者WS」に活かしたりはしましたか。
二瓶氏:「祇(くにつがみ)」のチームメンバーと部署も違うというのもあり、制作物を交換し合ったりというのは、基本的にはなかったです。各々が別ラインで動いていましたし。
ただ、和をモチーフにしていたところが似ていたので、妖怪的なデザインがはたから見ると親和性があり、何かコミュニケーションを取っていたのかなとたまにインタビューで聞かれることもあるんですが、実際は別で動いていたという感じです。
門脇氏:お互い刺激し合うぐらいの関係性かなという感じですね。
――三船さんを主人公にされたということで、海外的な反応についてより詳しくお伺いしたいです。
門脇氏:反響としては日本よりも、海外の方が大きかったです。
――意外ですね。どういった反応でしたか。
門脇氏:やはり古き時代劇の三船敏郎さんって海外ではすごく有名で、もともと日本の時代劇、黒澤明監督の映画などが有名で、そこで演じておられたので、ファンの方がすごく多いんです。もともと情報として知っていたんですけど、やはりそういった方々がたくさんいる印象です。
ただ、三船敏郎さんを起用した理由というのは海外人気の高さではなく、今回カプコンが新規で作る宮本武蔵に、パンチが欲しかったんですよね。野性味溢れるキャラクターを作るにあたって、そこで三船さんを起用したというのが一番大きな理由なんです。でも聞いていた通り、海外でもすごく人気があるんだなと思っています。
――三船さんを使うにあたって、三船さんサイドから注文であったり、これだけはやめてほしいとか何かあったのでしょうか。
門脇氏:フェイシャルを作る上で何度も監修いただいているんですけど、そこで気に入っていただいていて、ドラマ部分では事細かく脚本を全部見てくださいとか、そういったことはしなかったです。
どちらかというと映像ですべてお見せしていまして、全身が鬼に変わったり、こういった剣戟になり、敵が真っ二つに切れちゃいますとか、そういった説明はしているんですけれど、全部の脚本をお見せはしていないですね。ただ、絵的なところは全部監修を受けているという感じです。

――本作を楽しみにしているプレイヤーに三船敏郎さんが出演している作品や映画等でこれを見ておいてほしいとか、これを見ていると面白いよという作品を挙げるとしたら何かありますか?
二瓶氏:特定の作品から真似しているというのは一切ないので、どちらかというと三船さんの映画をもし見ている方だったら、これ三船さんっぽいなという要素を物語の序盤に入れていますので、ぜひ楽しみにしてもらえたらなと思います。
三船さんの作品としては、僕は「椿三十郎」という映画が好きなので、そうした三船さんが戦う剣のやり取りというのはいいなと思ってもらえるんじゃないかなと思っています。
門脇氏:僕は剣戟じゃないんですけど、「羅生門」が今回の宮本武蔵のキャラクター性というところにも近しい部分があるんじゃないかなと思っています。野性味溢れる感、ワイルドさいうのは感じていて、お話としてもすごく面白い個性的な作品なので、予習にもいいと思いますし、終わった後に観てもいい感じですね。
――ありがとうございました。

空間全体で「京都」を感じさせる立体音響の魔法
次にお届けするのは、サウンド系のツアーレポートだ。ツアーの幕開けとして、オーディオディレクターから、本作における3Dオーディオの目的と活用方法について、実機プレイを交えた解説が行われた。
本作の3Dオーディオは単に上から音を鳴らすことを目的としているわけではないという。開発陣が目指したのは、京都という世界をよりリアルに感じさせること、幻魔などの異質な存在を際立たせること、そして戦闘の迫力やプレイしやすさを向上させることであり、高さ方向の表現は、そのための手段として活用されているのだ。

デモンストレーションでは清水寺へ向かうステージが披露され、木々のざわめきや風、カラスの鳴き声などの環境音が立体的に配置されている様子が確認できた。これらは実際に京都で収録された音源を使用しており、上から音を鳴らすことよりもその場所にいると没入できることを重視し、上方を含めた空間全体を感じさせることで京都の空気感やスケールを表現しているという。

また、本作では空間のどこで音が鳴っているかを定義する「オブジェクトベースオーディオ」を採用しているため、PS5の3Dオーディオや他の立体音響フォーマットでも自然な定位と立体感で再生可能となっているのが大きな特徴だ。
こうしたリアルな空間全体の構築は、幻魔との戦闘における効果音などの派手な部分をより際立たせる役割も果たしている。
たとえば、斜め上の方向から門を叩いて壊そうとする敵の音が正確な位置から聞こえてくるため、プレイヤーは視線を向ける前に音で敵の位置を把握でき、自然な注意誘導へと繋がっている。
巌流などのボス戦においても、飛び上がる攻撃など効果的な場面に絞って高さ方向の音を活用することで、敵の位置や攻撃方向が分かりやすくなり、プレイアビリティの向上や上下のダイナミズムを強調した格好よさを生み出しているのだ。

なお、カットシーン自体はチャンネルベースで制作されているものの、7.1.4チャンネル環境で作られているため、上方からの高さ方向の演出も積極的に取り入れられているとのことだった。
日本らしさと感情の揺らぎを表現する音楽づくり
続いて、ミュージックディレクターより、本作の音楽コンセプトについての解説と楽曲の試聴が行われた。
江戸時代初期に突如出没する幻魔というダークな世界観を表現するため、本作の音楽はオーケストラを軸に、水琴窟、唄、琴や尺八、篠笛、といった和楽器を中心とした民族楽器を使用している。さらに、繊細さや独特なテクスチャーパッド、シンセサイザーなどの電子楽器を交えることで、地獄のおぞましい世界を描き出しているのだ。

音楽づくりにおいて特に重視されているのが、音楽そのもので表現する「日本らしさ」である。単に和楽器を取り入れるだけでなく、メロディーや和声、曲の流れなどにも徹底的にこだわっているという。和楽器やオーケストラの収録は国内で行われ、演奏者が持つノリやグルーヴ、息遣いといった特有の音楽らしさを余すことなく取り入れている。
また、静寂な空間を作ることでドラマティックな場面とのコントラストを生み出し、物語から生まれる感情の揺らぎを音楽で演出している点も見逃せない。物語全体でのコントラストだけでなく、1曲の中でのコントラストも意識されており、ボス戦では敵のキャラクター性を考慮したキーサウンドを入れると同時に、武蔵が敵に対峙した際の「相手を探るような気持ち」までもが音で表現されている。

試聴セッションでは、3つの楽曲が披露された。まず、物語全体を包括し、武蔵の葛藤や成長などを表現した「メインテーマ曲」。
この楽曲には、江戸時代の日本庭園にあった地中の甕に水滴が落ちる音を楽しむ水琴窟のような音が取り入れられており、鬼の世界への繋がりや地獄の階層を連想させる侘び寂びを感じさせた。造語による歌唱には意味が込められており、鬼の悲しみや心の叫びを表現しているという。

次に披露された「巌流」は、感情の起伏が激しい武芸者である彼との因縁を見事に表現しており、三味線や琴の熱を帯びた収録風景の映像とともに紹介された。


最後に、人々に危害を加える狡猾な鬼「羅掌願」が流された。極楽浄土を思わせる綺麗な花畑で戦うというシチュエーションと、おぞましい鬼とのミスマッチ感がBGMの端々から演出されており、尺八と琴の映像とともにその独特な世界観を見せつけた。


開発の裏側に迫る質疑応答、そしてフォーリーステージへ
セッションの最後には質疑応答の時間が設けられた。メインテーマの冒頭で鳴る水滴の音について問われると、金属的な響きを含む水滴の音は実際に録音されたものを使用しており、素材重視で最も良い音を採用していることが明かされた。
また、カットシーンとインゲームでのオーディオ方式の違いについては、インゲームで移動する音源はその時々のゲームの計算で場所から鳴らす「オブジェクトベース」が効果的である一方、演出が固定されているムービーシーンでは「チャンネルベース」でしっかりと音を出すという明確な使い分けがなされているとの回答があった。
ゲーム制作と楽曲制作のタイミングについても、開発状況は都度異なるため、動く画面を見てから作れる時もあれば設定資料から作り始める時もあり、最終的にはゲームの動きに合わせて映像を見ながら少しずつ調整を重ねて作り上げられているという、現場ならではの苦労とこだわりが語られた。
こうしてミキシングスタジオでの濃厚なデモンストレーションと解説は終了し、一行は刀がぶつかるチャンバラ音などの効果音実演を見るべく、次なるフォーリーステージへと移動していった。

なお、フォーリーとは、映像に合わせて実際に様々な部材を用いて音を出し、それを収録して効果音を作成する伝統的な手法である。
荒々しい刀の音と、日用品から生まれる大槌の重厚感
フォーリー見学ツアーの前半の実演において披露されたのは、主人公・武蔵の刀による受け流しと弾きの音、そして鬼の武具である大槌の動作音である。
本作の刀の音は、手段を選ばず力づくで勝利をもぎ取る武蔵の荒々しさを表現するため、あえて澄んだ綺麗な音ではなく、ダーティーで粗暴な音がコンセプトとして掲げられている。
開発初期には綺麗な音も検証されたが最終的に見直され、鉄工所にオーダーメイドで発注した音叉のように音が伸びる専用の音響効果刀と、ギザギザのついた鉄骨を組み合わせることで、独自の荒々しい受け流し音が作り出された。

続く大槌の音作りでは、現実には存在しない特殊なテクノロジー感を引き出すため、響きや音量を増幅させるスーツケースを土台にし、その上に壊れたドラムのキックペダルやドアノブ、さらにはインパクトの瞬間のために工事現場で使われる単管クランプを組み合わせて演技が行われ、独特の重厚な金属音を表現したそうだ。


試行錯誤の連続!フォーリーにおける部材選びのこだわり
後半の質疑応答では、フォーリー制作のさらに深いこだわりに焦点が当てられた。
大槌の音作りで使用された「壊れたドラムペダル」についての質問が出ると、開発陣は、壊れた部品特有のガタガタとした鳴り具合が音作りにおいて非常に重要であり、フォーリーで使用する部材は一点物になることが多いと語った。
スーツケースという土台に行き着くまでの過程についても、最初はただのケースや木箱などを試すなど、とにかく様々な素材を実際に鳴らして録音を繰り返すという、面白くも泥臭い試行錯誤のプロセスが明かされた。
また、効果音の多くは自作で収録するスタンスをとっているものの、どうしても物理的に収録できない音に関してはシンセサイザーや既存の素材を活用し、柔軟に制作しているという。
作られた音が完成基準に達しているかどうかの判断は、各担当者の感覚や過去の「鬼武者」シリーズの経験則を踏まえつつ、オーディオディレクターを中心に現在のゲームのスタイルにマッチしているかをすり合わせてクオリティを上げているとのことだ。
特に今作で苦労したのは、実演でも触れられた刀の音やヒット音であり、過去作のインパクトを残しつつも、より作り込んだ音にすることで斬り込み続ける気持ちよさを追求して最後まで調整されたことが強調された。

次世代へ受け継がれる思考回路と、チームで築き上げる世界観
こうしたユニークな音作りのノウハウを、後進に継承することについても言及された。
現場ではフォーリーアーティストが常に制作を見守っており、どのような部材を使うかという表面的な知識だけでなく、目的の音を出すためにどの種類の素材を使えば近道になるかという、根本的な思考回路やアイデアの出し方が若手へと受け継がれているという。
スタジオには木材の破片や構造物の破壊音を表現するための将棋盤などの木製部材も置かれており、和の世界観を表現するためにこれらも実際に製品版の収録で使用されたものになるとのことだ。
さらに、サウンドチームとディレクターやプロデューサーとの間で意見の齟齬が生じた際の対応については、基本的にはサウンド側から先に音を提案し、そこから目指す方向性についてしっかりと話し合い意識統一を図るという制作フローが明かされた。
ツアーの最後には、武器や環境音だけでなく、幻魔の鳴き声にもフォーリーの技術が活かされていることが語られた。例えば、ゴムを捻るような音を加工することでモンスターの喉が鳴るような不気味な質感を表現しており、声優のボイス素材にそうしたフォーリー音をテクスチャーとして加えることで、幻魔の独自の世界観を構築しているという。

開発陣へのインタビューとサウンド制作現場の双方から見えてきたのは、「鬼武者WS」が単なるシリーズの踏襲にとどまらず、かつてない没入感とアクション体験を生み出そうとする妥協なき姿勢である。
実在のレジェンド俳優をモデルにした人間味あふれるキャラクター描写や、試行錯誤の末に生み出された受け流しの絶妙な手応え。さらに、それらのアクションを空間全体で際立たせる3Dオーディオと、日用品すら活用して生み出されるフォーリーの生きた響きが、見事な相乗効果を生んでいることが伺えた。
視覚と聴覚、そして手触りのすべてが徹底的に磨き上げられた本作。現世と幻魔が交錯する京都を舞台に、一体どのような死闘が我々を待ち受けているのか、今から大きな期待を寄せて待ちたい。
(C)CAPCOM
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