パシフィコ横浜 会議センターにて開催中の「CEDEC 2011」において、9月7日、「『基本無料』時代のマネタイズと事業戦略 ~ウェブ×オンラインゲーム×ゲーム、プロの頭の中にあるものは~」の講演が行われた。

目次
  1. RED STONEは契約金500万円から月商4億円に!?
  2. 成功の要因はいかに早く準備するか
  3. 日本はモバイルにおける価値をアピールすべき
  4. 失敗から学んで成功を生み出す
  5. 大手企業のブランド力はソーシャルゲームにおいても大きな武器
  6. 苦い失敗談も語る
  7. マネタイズ成功の秘訣
  8. 今後の事業戦略について

本講演においては、CEDEC 2011運営委員会の鶴谷武親氏の進行のもと、オンラインゲームの視点としてAiming代表取締役社長の椎葉忠志氏、ウェブの視点としてゆめみ代表取締役社長の深田浩嗣氏、(コンソール)ゲームの視点としてDropWave代表取締役社長の本城嘉太郎氏がそれぞれ登壇し、議論を展開した。本稿ではその中から特に興味深かった点について紹介する。

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(左から)鶴谷武親氏、本城嘉太郎氏、深田浩嗣氏、椎葉忠志氏

RED STONEは契約金500万円から月商4億円に!?

自身の来歴について語った椎葉氏は、鶴谷氏よりゲームオン在籍時に担当し、成功した「RED STONE」の月商について聞かれると、最高で月商約4.2億、年間でも33億を記録していたという。しかも、契約金は500万円、プロモーション費用も800万で展開し、それだけの成功を収めたといい、会場も驚きを隠せないようだった。

また、自身の現在の立ち位置はプロデューサーであり、その定義として「マーケットを見てその時一番売れるコンテンツを考える」ことがプロデューサーの仕事であると語った。

成功の要因はいかに早く準備するか

そして近年最大の成功、そしてその要因について聞かれた椎葉氏は、ONE-UP在籍時のヒット作「ブラウザ三国志」を挙げ、その成功要因としてどこよりも早く準備をしたという点を挙げた。

今でこそソーシャルアプリというジャンルは定着したが、当時はまだ椎葉氏本人もそのジャンルについて注視していなかったという。そんな中、「ブラウザ三国志」では「パソコンの中のすき間の時間で遊べるゲームを作る」ということを意識して作った結果が、ちょうど世の中のニーズとマッチし、成功を生んだという解釈を述べた。

しかし鶴谷氏はその答えに満足せず、さらに開発チームのアイデアのなかでチェックするところについて質問。すると、椎葉氏からは以下の2つの答えが返ってきた。

1.年単位でも遊べること

どういうことかといえば、ゲームデザインにおいて、完結してしまうのではなく、繰り返して遊べるデザインが必要であると語った。そしてその要素を課金の対象とすることが可能となるのでマネタイズを意識する必要もあまりなくなる。実際に「ブラウザ三国志」では、カード合成がそれに当たるという。

2.マーケットとターゲットに適切か

近年、家庭用ゲームタイトルなどはターゲットがコアになりがちだが、ゲームタイトルを開発する際にはどういうユーザーがゲームを遊んでいるかというところに立脚し、どういう遊び方、どういう時間の使い方という点について考える必要があるという。

日本はモバイルにおける価値をアピールすべき

深田氏は、今年ゆめみとして米国のチェックイン系アプリ「MyTown」の日本でのローカライゼーションが決定したことを大きな進歩として挙げ、その際に気づいたこととして、日本でのモバイルの環境というのは、他の国では全然当たり前のことではないと述べた。

実際、モバイル、そしてスマートフォンの海外での普及率はまだまだ低く、日本のサービスの面白さ、ワールドワイドでの価値を見たときに、やりようによっては価値をアピールするチャンスではないかと主張。そして、まだ日本国内ではその点に気づいている人は少なく、同社が「MyTown」というビッグタイトルを獲得するに至ったのではないかと語った。

失敗から学んで成功を生み出す

本城氏は、オンラインゲームを作るためにゲーム業界に入って以降、さまざまな紆余曲折や失敗はあったというが、諦めずにネットワークサービスやマネタイズを研究し、「わんこのお部屋」で一定の成功を修めたという。その成功の要因として挙げられるのがユーザー同士が競い合えるイベントを作り、また、ギャンブル性の高いシステムを導入したことを挙げ、それらは研究の結果、生み出したものだと述べた。

大手企業のブランド力はソーシャルゲームにおいても大きな武器

鶴谷氏が展開のスピード以外でソーシャルゲーム市場で勝てる要素について質問すると、椎葉氏は大きい会社の場合、ブランド名はユーザーに認知されている分、大きな武器になると語った。しかし、それを活かすためにはスピードを早めること、また、同時にどうしても意思決定が遅くなりがちななかで自分たちで仲間を募って新しいことをやっていくことが必要ではないかと述べていた。

Aimingでも、来年に向けてスマートフォン対応のゲームタイトルを10タイトル用意しているという。そういった行動の早さが成功を生む要因となっているようだ。

苦い失敗談も語る

続いて失敗談について聞かれると、椎葉氏は、ONE-UP在籍時に5000万かけて開発中止したタイトルがあることを暴露。そのゲームはサッカーを題材としたブラウザゲームだったそうだが、ジャンルそのものが難しく、また、ゲーム性のみでは勝負できないと判断し、中止を決めたという。そして、ウェブブラウザゲーム全般も今後厳しくなっていくだろうという見解も示した。

また、昨年ソーシャルゲームに進出したものの、失敗し撤退を余儀なくされた深田氏は、その理由を「遅かった」と述べた。すでに醸成されている市場に切りこむことの難しさを感じさせる一言だった。

マネタイズ成功の秘訣

マネタイズの成功に必要なものを鶴谷氏が問うと、面白いことに三者三様の答えが返ってきた。

まず椎葉氏が挙げたのは以下の3つ。

  • 繰り返し遊べること
  • 友達づき合いにお金を出してもらう
  • 値付けは高めに

特に目を引くのが3つの値付けは高めにという点だ。椎葉氏は、アイテム課金のゲームにおいては、他タイトルとの価格競争がないことに言及し、価格設定を高くすることで非課金ユーザーでも遊べるようにしているという。もちろん、課金する側にとってもお金を払うことで効果のあるゲームデザインにすることも大事だと述べた。無料のユーザーに無理を強いることは最悪と考えた上での判断であるとのことだ。

また、深田氏は欲求や感情の揺さぶりなど心理面における要因を、本城氏はゲームの面白い要素に課金が入っており、また、継続して遊びたいと思えることと、ゲーム性を重視した回答が得られた。

今後の事業戦略について

最後に、今後の事業戦略に話が及ぶと、椎葉氏は、オンラインゲーム市場は、一層スマートフォン端末で遊べるものがメインになっていくだろうと指摘、自社でコアからカジュアルまで多数のタイトルを展開していくことに触れた上で、それらを遊ぶユーザー・ターゲットを考えていく必要があると述べた。

深田氏は、オフラインでの人間の行動がオンラインに影響を及ぼしている事に触れ、オフラインをどのようにオンラインに持っていくか、そして、その中でモバイルの価値を意識したマーケットで勝負していくかを考え、ソーシャルゲームのノウハウがそれ以外で急速に求められていくだろうと語った。

そして、本城氏は、スマートフォンの普及により、これから、全ての人がオンラインゲームを遊べる環境に近づいていくだろうと述べ、スマートフォン市場に向け、世界に向けゲームコンテンツを展開していきたいと抱負を述べた。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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