1万本以上のゲームを所持しているゲームコレクターの酒缶さんが、ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々にインタビューを行う連載企画「ゲームコレクター・酒缶のリコレクションアーカイブス」。第5回目は、プロフェットの岸本良久氏へのインタビューをお届けします。

今年の1月にニンテンドードリームで連載している「酒缶が訪う」で「熱血硬派くにおくん」の原作者・岸本良久さんに取材をしました。その時は、3DSの「熱血硬派くにおくんすぺしゃる」を軸にお話を伺ったので、くにおくんシリーズ中心に話をして頂いたのですが、取材の準備で岸本さんが関わったタイトルリストを作っていたときからずっと気になっていたタイトルがあったので、岸本さんに取材の依頼をさせていただきました。

今回のリコレクター:岸本良久氏

プロフェット代表取締役。くにおくんシリーズと「ダブルドラゴン」シリーズの生みの親。制作に関わったタイトルは「熱血硬派くにおくん」(AC、FC)、「ダブルドラゴン」(AC、FC)、「超兄貴~究極無敵銀河最強男~」(PS、SS)、「フィーア」(iOS、Android)、「熱血硬派くにおくんすぺしゃる」(3DS)など多数。

酒缶:岸本さんには今年、「熱血硬派くにおくんすぺしゃる」についてお伺いしているんですけど、今回は「超兄貴 ~究極無敵銀河最強男~」についてお伺いしたく思っています。

「超兄貴 ~究極無敵銀河最強男~」

1995年12月29日に日本コンピュータシステムがプレイステーション向けに発売した横スクロールシューティングゲーム。韋駄天と弁天は銀河を恐怖に震撼させる究極無敵銀河最強男を倒すために旅立つ。実写とCGが融合して何かが足された世界観が、唯一無二の雰囲気を醸し出している。2009年3月11日よりゲームアーカイブスで配信されている。

ゲームアーカイブス版
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0038npjj00252_000000000000000001.html

岸本氏(以下、敬称略):その前に、ようやく私の本ができまして。

酒缶:これはすごいですね。フランスのフロランさんが作られた本ですよね。この本はどういった経緯で作られたんですか?

岸本:この本を作ったフロランさんとは4年前にフランスの「Pix’n Love」という雑誌が「ダブルドラゴン」の特集をした時からの付き合いで、その後、クリエイターシリーズの第4弾として僕の本が作られました。僕が生まれた時から最近のことまで書いてあって、どのゲームができた時よりも、この本ができた時の方が一番嬉しかった。この本には僕の50年分が詰まっているので。「熱血硬派くにおくん」も「ダブルドラゴン」も1ソフトですけど、この本には僕のことが全部集約されていますから。僕はやっぱ、ゲーム業界でやってきてよかったのはこの本ができたことです。

酒缶:海外だと「熱血硬派くにおくん」よりも「ダブルドラゴン」の方がメジャーなんですか?

岸本:「くにおくん」は海外ではグラフィックを差し替えて「レゲネード」というタイトルで発売していますけど、「ダブルドラゴン」はそのまま発売していますので。

酒缶:元々、「熱血硬派くにおくん」があって、その後、「ダブルドラゴン」が誕生したんですよね?

岸本:元々は「くにおくん」を使ってスクロールゲームを作っていたんですけど、それを急遽やめて「ダブルドラゴン」に変えていきました。「くにおくん」は海外向けに発売する時にグラフィックを全て差し替えているので、結局、2本分作るような感じになってコストが掛かるので。

酒缶:「ダブルドラゴン」は、1作目はパンチボタンとキックボタンがあって、キャラクターが向いた方向にパンチやキックをしていましたけど、2作目では右ボタンでキャラクターの右側、左ボタンでキャラクターの左側を攻撃するという「くにおくん」タイプの操作に変わっていますけど、どうしてボタンを変えたんですか?

岸本:ちょっと試してしまったんですよね。2作目自体が、2として作ってなかったんですよ。1作目がすごく売れて世界中に筺体が出たので、1.5みたいな感じでROM交換用に作ったんですよ。安く短期間で作ろうということで、数か月で作って、ロケテストをしたらインカムが良かったので、2にしちゃおうという感じで。

酒缶:2はロム交換ということは、ハードのスペックは変わっていないと思うんですけど、世界がかなり広がったような気がするんですよ。演出というか、ステージによって背景が変わったり、ヘリコプターが出てきたり、乗り物が出てきたり…。

岸本:乗り物の設定は、実はデータイーストで作ったレーザーディスクゲームの「ロードブラスター」から設定を持ってきているところがあります。このゲームも「マッドマックス」に近い設定のゲームでした。

酒缶:続いて、「ダブルドラゴン3」ですが、アーケードでは、キャラクターがリー兄弟以外に3種類の兄弟がいて、3人まで同時にプレイできました。

岸本:3人プレイはインカムのためですね。アップライト筺体で3人までプレイすることができました。3は外注制作だったのですが、作った会社がゲームを作るのが初めてのところで……。

酒缶:1と2に対して3はスタッフも全然違ったんですね。

岸本:その頃は「WWFスーパースターズ」や「コンバットライブス」を作っていて社内ラインがいっぱいだったんです。

酒缶:それでも、3も新しい挑戦をしていますよね。アイテム課金……ですか?

岸本:そうですね。あれは当時世間から叩かれたんですよ。「ダブルドラゴン3」は海外版を先に作っていて、そこにアイテム課金を入れていたんですけど、日本国内で出す時にはアイテム課金を外しました。

酒缶:実際にはどのような形でアイテム課金を実現していたんですか?

岸本:「ファンタジーゾーン」のショップみたいな画面になって、そこで体力を買ったり、武器を買ったりするんです。

酒缶:「ファンタジーゾーン」だと、ゲーム内のお金で買い物をしますけど。

岸本:それのリアルマネー版です。ちょっと早過ぎましたね。多分、あれが世の中で最初のアイテム課金だったと思います。

酒缶:ショップで武器を買うと普通にプレイするよりも強くなれたんですか?

岸本:武器を買わなくてもクリアできるようなバランスになっていました。体力回復は、コンティニューだと100%の回復になるんですけど、体力回復だと120%くらい増えるようにしていました。ただ、アイテム課金は邪道なんです。ちょっと反省しているんですけど、基本的にマネタイズと遊びとは全く関係ない世界なんですよ。当時、アイディアに詰まってやってしまったというところはあります。

酒缶:でも、新しいことを開拓していましたよね?

岸本:新しいことを考えるのは好きだったんですよ。世界中でこれは初めてなんだよ、ということばっかりやっていたので。ただ、早すぎましたね。もう20年遅らせておけば。

(bb(酒缶:)いやいやいやいや。でも、「ダブルドラゴン」シリーズは「3」までがアーケードで出ていましたけど、スーファミの「リターン・オブ・ダブルドラゴン」はどういう位置付けになるんですか?

岸本:「1」と「2」に対する番外編ですね。

酒缶:「リターン・オブ」までは岸本さんは開発に関わっているんですよね。

岸本:そうですね。ネオジオの「ダブルドラゴン」はテクノスジャパンを辞めていたので、この後は全部後輩が引き継いでいます。フリーになって最初にやったのは、「くにおたちの挽歌」。「くにおたちの挽歌」は外注の立場でやっていました。

酒缶:そして、「超兄貴~究極無敵銀河最強男~」の話になるんですけど、岸本さんはどういう役割だったんですか?

岸本:全体の取りまとめをやっていました。プロデューサーです。

酒缶:「超兄貴」はPCエンジンで2タイトルあり、その後スーパーファミコンで対戦格闘っぽいモノがありましたけど、そんな中でどういう形で「超兄貴」に関わるようになったんですか?

岸本:フリーの時に、他のフリーの連中を5人くらい抱えていて…。

酒缶:立ち場はフリーでも、チームがあったんですね。

岸本:当時、メサイヤの事業部長が知り合いで、いきなりうちに電話が掛かってきて、「超兄貴」をやってくれと言われて。

酒缶:なぜ岸本さんに話が来たんですか?

岸本:多分、ほら、汗臭いじゃないですか(笑)?そういう直感的なものだと思います。

酒缶:「熱血」から「超兄貴」に(笑)。

岸本:僕もこういったキレてる世界が好きだったので。

酒缶:元々、「超兄貴」は1作目は比較的まじめなシューティングゲームで2作目の「愛・超兄貴」からキレ始めていましたけど。

岸本:いや、その頃はまだですよね。やっぱり、自分のが一番キレてますよね。

酒缶:(笑)。これが一番キレているのは確かなんですけど…。

岸本:「シューティングで実写を使ってくれれば、あとは何をしてもいいから楽しく作ってくれ」と言われました。

酒缶:実写は最初から条件に入っていたんですね。

岸本:契約条件に入ってました。

酒缶:実写というのは、メサイヤの方に仕組んだ人がいたんですね(笑)。

岸本:それで、思いっきり楽しんで作りました。当時、こんな本が出ています。

酒缶:これはすごいですね。わんぱっくコミックから出ているというところもすごい(笑)。

岸本:ゲームは2万本くらいしか出ていないのに、この本は5万冊くらい売れているんです。

酒缶:本の方がインパクトがあったんですかね。ゲームには沢山実写のキャラクターが登場しますけど、撮影をする時にはどのポーズをどのように加工するか決めてからポーズを取ってもらっていたんですか?

岸本:企画マンが、絵コンテを起こしていました。絵コンテとはいってもラフなモノですけど。でも、撮影は大変でしたよ。撮影は5日間くらいかな。カメラから照明まで、全部自前でやりました。キャスティングも全部僕が決めたんですけど、サムソンとアドンの小沼さんは当時、全日本ボディビル選手権を9連覇していた人です。

酒缶:そんな連覇中の人を連れてきて大丈夫でした?

岸本:でも、交渉したらすぐにノッてくれたので。ボディビルの雑誌を見ていて、この人だけ、アドン・サムソンの骨格に似ていたんですよ。

酒缶:骨格から入ったんですね(笑)。他のキャラクターはどうやって決めたんですか?

岸本:敵キャラ役の太田さんは小沼さんのお弟子さんなんですよ。

酒缶:敵キャラというのはほとんどの敵ですよね。あと、ボスキャラもこの人でしたっけ?

岸本:そうです。で、韋駄天役は当時ジャパンアクションクラブにいた笠原さん。真田広之さんの若いころのイメージに近かったので選びました。

酒缶:弁天は?

岸本:弁天は、僕の地元のホームで軟派しました。

酒缶:えっ?

岸本:パッと見ていいなと思って、家の方までストーカーしたんですよ。

酒缶:(笑)えっ?

(インタビュー後編に続く。後編は来週10月21日に掲載予定です)

●プロフィール

酒缶(さけかん)/ゲームコレクター

1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ニンテンドードリームにて「酒缶が訪う」連載中。最新作は3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」。

■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
http://www.sakekan.com/

■twitterアカウント
http://twitter.com/sakekangame

■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
http://www.pubooks.jp/item/detail?id=386

※本連載のインタビューを受けていただける方を募集しております。ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々で、インタビューをお受けいただける方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。スケジュールや内容によってはお受けできない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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(C)NCS/extreme

※画面は開発中のものです。

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