スクウェア・エニックスが配信しているiOS/Android向けアプリ「VALKYRIE ANATOMIA -THE ORIGIN-(ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐)」の開発陣インタビューをお届け。本作がどのような経緯で、どのようなコンセプトで作られたのかを尋ねてきた。

北欧神話に登場する戦乙女を題材にしたRPG「ヴァルキリープロファイル(以下、VP)」。ここからはじまったヴァルキリーシリーズの最新作にして、その“始まりの物語(※)”を描くというコンセプトのもとで4月28日よりサービスが開始された、iOS/Android「ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐(以下、VA)」。

※作品間における物語の時系列は「ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐」→(「ヴァルキリープロファイル2 シルメリア」)→「ヴァルキリープロファイル」となる。

Gamerでは先日、VAのプレイレビューを掲載したが、今回はVAの開発陣へインタビューを行うことができたので、その模様を紹介していく。「ヴァルキリーアナトミア」はどのようにして制作され、また正式サービスへと至ったのか? その背景に迫ってみよう。

ヴァルキリーの魅力はそのままに

――まずはお二方の簡単な自己紹介からお願いいたします。

山岸氏:VAのプロデューサーを担当しています、山岸功典です。元々、「ヴァルキリー」シリーズや「スターオーシャン」シリーズのプロデューサーを担当しておりまして、今回はソーシャルゲームとしてヴァルキリーの新作を立ち上げさせていただくことになりました。

木村氏:アシスタントプロデューサーを担当しています、木村和道です。私はスクウェア・エニックスにデザイナーとして入社し、「ファイナルファンタジーXII」や「ファイナルファンタジーXIV」で3Dキャラクターモデルなどに携わってきました。今は山岸さんをはじめさまざまなプロデューサーの元で、開発プロデュースなどの仕事を学ばせていただいております。

左から山岸功典氏、木村和道氏

――ありがとうございます。でははじめにVAの特徴からお聞かせください。

山岸氏:本作はPSで発売されたVPを原題とするスマートフォン向けRPGです。VPは当時、あまり類似のない“横スクロールアクション+対戦格闘ゲーム”のようなシステムを取り入れたことで、ユーザーさんから多くの好評を受けることができました。

シリーズとしては、1999年にPS「ヴァルキリープロファイル」で戦乙女の3姉妹の次女・レナスの物語を、2006年にPS2「ヴァルキリープロファイル2 シルメリア」で三女・シルメリアの物語を描き、2008年にDS「ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者」で本筋から少し逸れたアウトサイドの物語を描いています。

――シリーズとしては、久しぶりの展開となりましたね。

山岸氏:シリーズの本筋を描く作品としては、約10年振りですね。ですが、ユーザーさんからはこれまでも「ヴァルキリーの新作は出ないの?」という声を多くいただいていましたので、3月に発売を迎えたPS4/PS3「スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-」の次のプロジェクトとして、水面下でプロジェクトを進めてきました。

VAはVPのゲームシステムを踏襲しつつ、戦闘システムの進化・再現をコンセプトとしています。もちろんソーシャルゲームですので、電車の中などの空いた時間にも手軽に遊べるよう最適化を施しました。つまり、VAはソーシャルゲームならではの手軽さと、コンシューマゲームのような遊び応えの両立を目指しているのです。

――シリーズ再始動のきっかけとなるような出来事はありましたか?

山岸氏:一つは私が次のタイトル開発に取り掛かろうとしていた段階で、社内で「強力なIPのタイトルをやってみては?」という意見が挙がってきたこと、もう一つは「VPってソーシャルゲームに向いているんじゃないか?」と考えたことですね。

そこから企画を練っていく最中にいくつかの手が浮かんできたので、「シリーズの魅力はそのままに、ソーシャルゲームに最適化したヴァルキリーの新作というのはどうでしょう?」と会社に提案し、開発へと踏み切りました。

――新作を作ることになってから、社内で反響はありましたか? おそらく御社にも「VPが好きで、スクエニに入社した!」という人がそれなりにいると思われるのですが。

山岸氏:「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」と比べると、ヴァルキリーシリーズのユーザーさんの母数はそれほど大きくはありませんが、昔から熱心なファンが多いんですよね。特にゲーム業界の関係者の方々といいますか、ゲーム制作に関わっている側にファンが多いようなんです。

社内では「ヴァルキリーの新作を作ります!」と大々的に公表していませんでしたが、正式発表から先はさまざまな人に「新作やるんだ!?」とお声掛けいただきました。

――では、ユーザーさんからの反響はいかがでしたか?

山岸氏:シリーズとして間が空いていたことは実感していましたが、発表してみると意外なことに多くの反響をいただけました。

――VPをソーシャルゲームに落とし込むうえで考えたことはなんでしょう。

山岸氏:やはり元がコンシューマタイトルですので、システムであったり、ストーリーであったりと、VPへの思い入れが強いユーザーさんが大勢いると考えました。ですが、ソーシャルゲームはユーザー層も、ゲームの遊び方も、ビジネスモデルも異なっていますし、いってしまえばコンシューマにおける想定とは相反しています。

――そのうえでスマートフォンを選んだ理由とは?

山岸氏:前作から約10年以上たっている中、新作として届けるにあたっては、昔遊んでいただいたファンの方だけでなく、もっと多くの人に「ヴァルキリープロファイル」シリーズを体験してほしい、という思いがありスマートフォンで出そうと決めたのです。

ただ、そうはいってもインターフェースをはじめとして、ソーシャルゲームは“遊びごとのお約束”がことごとく違っていましたので、課題はたくさんありました。

――初めてヴァルキリーシリーズを遊ぶ人へのフックは、何か考えられましたか?

山岸氏:初めての人にはやはり、ゲームシステムが新鮮に映ること、そしてストーリー重視のゲームであることに、興味を持っていただるのではないかと考えました。

旧来のソーシャルゲームでは“万人受けする王道の物語”を多く見てきましたが、これまでのヴァルキリーシリーズは大人びた印象といいますか、暗い展開でお話を進めています。今回のVAでもそれを踏襲しているので、今であれば斬新に見てもらえるのではないかと思ったんです。

――確かに、良し悪しは別としても、ソーシャルゲームでは万人受けするストーリーに注力されているケースが多いですね。

山岸氏:その点、VAの物語は万人受けすることはないと思いますよ(笑)。また、VAではユーザー自身が主人公というわけではなく、主人公・レナスの物語となり、ユーザーさんには神の目の視点(3人称)で主人公・レナスの物語を俯瞰していただきます。ソーシャルゲームにおいては少数側に位置する作りかもしれませんが、これによって物語性を高くしようと考えました。

――配信開始からじつに10日間で累計100万ダウンロードを突破されましたが、そのときに手応えは感じられましたか?

山岸氏:我々が思っていた以上の反響でした。昔からのファンの方、はじめての方、幅広い年齢層も含めて、いろんな方にプレイいただいているなという実感が湧きましたね。

発表当時は「スマホゲーかよ!」といった声もそれなりに見られていたのですが、サービス開始後は「まあ、(ゲームが)ヴァルキリーしてるから、勘弁してやるか」的な感じになってくれましたので、一安心です(笑)。

木村氏:VAは昨今流行りの複数人で遊ぶゲームではなく、1人で淡々と遊ぶタイプのRPGです。

データを見ていると、攻略に躍起になってもらえている人から、細々とゲームを進めてもらえている人まで、それぞれのペースで遊んでもらえていることを実感しています。

もちろん、中にはものすごい速度で遊んでくれている人もいますが、今後のサービス運営にとって貴重なご意見などいただいており、それらを含めて今後の参考にさせてもらっているので、意見や感想はどんどん送っていただきたいです。

「物語はすべて藤沢さんにおまかせした」

――バトルで扱う3Dキャラクターモデルは木村さんが携わっている部分ですか?

木村氏:そうですね。自分が元々3D制作の業務をやっていたため「今回は3Dで動かしたい!」という想いが強かったんです。ゲームのコアな部分であるバトルを派手に見せることを想定したうえで、どうすれば効率的に作れるかという部分は過去の経験から把握していたので、開発者と何度も相談しながら今の形に創り上げていきました。

――次はBGMに関してです。シリーズファンにとってはいまだに、戦闘開始後に流れてくるあの「未確認神闘シンドローム(通常戦闘BGM)」がほぼ切り離せないのではと思いますが、今回はいくつか旧来のBGMを続投されましたね。

山岸氏:それはもう、企画当初から使うことを決めていました。VAを制作するといって桜庭統さんの元へ行ったときも、「昔のBGMをアレンジして使わせてください」とお願いし、桜庭さんにも一発でOKしてもらえました。

――チュートリアルのバトルでお馴染みのBGMが流れてきたときは、「おおっ!?」と思いました。

山岸氏:そう思ってもらおうと作ったんです。開発に楽曲が上がってきたときも「ヴァルキリーの曲だねー」と言われ、宣伝の担当者に素材を渡したときも「やっぱ、ヴァルキリーの曲だねー」と言われたりと、さまざまな場所で反応されましたので、これはイケると。

――やはり、BGMに対しての印象が強いシリーズなのでしょうか?

山岸氏:強いですね。特にヴァルキリーシリーズはストーリー重視のため、「あの場面」「あのバトル」など、みなさんシーンと楽曲が強く結びついていて、印象に焼き付いているみたいです。

当然、今回のVAでもサウンドはしっかりと制作しました。ソーシャルゲームではプレイ環境の問題もあってか、音をおざなりにすることも多くなりがちですが、ゲームというのはやはり音も含めて体験してほしいので、ぜひぜひBGMを聞きながら遊んでほしいです。

――それではストーリーについてですが、今回は“始まりの物語”を謳っておりますね。

山岸氏:VAはシリーズの原点回帰として、「VPまで戻そう」と考えました。VPではエインフェリアたちの物語に注力していましたが、VP2では戦乙女が物語の中心となっていたことで、エインフェリアたちの物語があまりフォーカスされず、ユーザーさんから「もっとエインフェリアたちのエピソードが見たかった」という要望を多くいただいたんです。

なので今回は、VPのように「エインフェリアが主軸の物語」を中心に進行していきます。VAは極端にいえば、主人公といえどレナスがいなくても物語が進行できます。タイトルに関していうと、元々が「プロファイル」で「分析」という意味だったのに対して、「アナトミア」で「解剖」。レナスそのものを大元から解析するという意味合いが含まれております。

コンセプトとしては物語の中心がありつつも、さまざまな登場人物たちが、それぞれの視点で物事を見ていく、アメリカのTVドラマ的な構成を意識しています。

――“始まりの物語”は企画段階で決めていたことでしょうか。

山岸氏:正直な話、使いやすかったんですよ(笑)。

――ぶっちゃけますね。しかし、先のお話でもよかったのでは?

山岸氏:いやー、シリーズものでいうと次はどうしてもアーリィ(3姉妹の長女)の話になってしまいますし、それではシリーズ3部作として完結してしまうと思ったので、あまりやりたくはありませんでした。もう一つは、“始まりの物語”にすることでお話の自由度を上げたかったんです。

――お話の自由度ですか。

山岸氏:はい、VAのシナリオは演劇や演出などで幅広く活躍されている藤沢文翁さんに頼みました。藤沢さんは北欧神話についての造詣が深い方で、ご自身でも北欧神話のヴァルキリーを題材とした「SOUND THEATRE(巷では最も派手な朗読劇と称されている)」を手掛けていらっしゃいます。

そして、その藤沢さんが我々のヴァルキリーシリーズが大好きだということで、今回の仕事を依頼させてもらいました。

――経歴を拝見させていただきましたが、実に多彩な方ですね。

山岸氏:藤沢さんにはより自由な発想で物語を作ってもらいたかったので、さまざまな設定のしがらみがあるシリーズ3作目よりも、まだ誰にも規定されていない、シリーズの始まりの物語を手掛けていただくほうがよいかなと考えたわけです。

神々などの設定については我々と藤沢さんで打ち合わせを行ってきましたが、エインフェリアに関しては自由に作ってくださいとお願いしています。

――藤沢さんは本当に、脚本家として作品のシナリオを仕上げてきたのですね。

山岸氏:それに藤沢さんのシナリオは3行くらいの短いセンテンスに事情が収められているので、非常に読みやすいんです。元々、演劇などの台詞を手掛けている方ですので、文章が端的でピッタリと当てはまります。

――正直、エインフェリアたちの物語を進めていると、不意に「やべっ、涙が……」ってなるほどVAのストーリーは魅力的です。

山岸氏:泣きそうになりますよね? ちゃんと泣けるようなストーリーを心がけて制作しました。もういっそ、電車の中で泣いていただくくらいの演出を真剣に考えました。

――VAの物語は、既にエンディングは用意されているのでしょうか?

山岸氏:それは、内緒です(笑)その点もふくめて、楽しんでいただければと思ってます。当然、物語の大筋については既に考えてあります。

ただ、オープニングで示唆した「レナスは何者なのか?」といった伏線、そこに関わってくるエインフェリアたち、物語の中心となるヴァルハラ再建、その他諸々をどのように絡ませていくのかの細かなディティールはこれからです。

木村氏:ストーリーの区切りをつけて、ユーザーさんが納得しやすい物語にはしていきます。

山岸氏:ここもアメリカのTVドラマと同じく、ユーザーさんからの反応を伺って、「人気が出たからシーズン2!」みたいな展開がなきにしもあらずなので……(笑)。

――ちなみに、現状でシナリオ消化率はいかほどでしょう?

木村氏:どうでしょう、半分もいっていないのかも。それでも、難易度に詰まらずサクサク遊べたというユーザーであっても、結構な長時間は遊べるゲームボリュームになっていますので、やり応えはかなりのものだと思います。

――そういえば、VAではキャラクターボイスの担当が一新されましたね。

山岸氏:みなさんに「ええっ、キャラクターボイスが一新!?」と言われていますが、一新といってもレナスとオーディンの2人だけなのですけどね。

――それほど冬馬由美さんのレナス、池田秀一さんのオーディンの印象が強いのではないでしょうか? 私なんかもその1人ですので。

山岸氏:そうなんですよね。ではまずレナスからですが、彼女は今回、年齢の違うレナスではなく、“世代の違うレナス(CV:沢城みゆきさん)”をイメージしたキャラクター作りにしています。VPよりもさらに前の世界ということで、VPの頃とは違うということをより印象付けたかったのです。

――では、オーディンに関してはいかがでしょう? 髪型も角刈りからロングヘアーになって、ずいぶんと若々しい印象になりました。

山岸氏:今回は物語上、より若いオーディンにしたかったことがあります。若いとはいえ、後のアース神族最高神オーディン様なので、神の持つ威厳や存在感を演じきれるとなると配役が限られてきますので、ここは山寺宏一さんにしようと決めたわけです

――私はプレイ中、レナスとオーディンの若々しさといいますか、それゆえの未熟さを描くためにCV変更に踏み切ったという印象を受けましたが、当たっていたのでしょうか?

山岸氏:そうなんですよ。レナスがまだ何かになりきれていない、オーディンもまだ未熟である、そういう風に描きたかったことがきっかけです。

――VPのレナスは“デキる管理職”みたいでしたが、VAのレナスは“部下に振り回される管理職”みたいですよね。

木村氏:VAのサイドストーリーをプレイしているユーザーさんであれば分かるかと思いますが、今回のレナスはエインフェリアたちにすっごい振り回されているんで(笑)。

山岸氏:新入社員みたいになってるよね(笑)。

――このレナスが、あのレナスに成長するのかと考えると、中々感慨深いものはありますが。

難し過ぎたのは、最初のイベントクエスト……

――ここからはゲーム面について伺わせてください。まず企画段階では、ゲーム全体をどのような形にしようと考えておりましたか?

山岸氏:当初は「神界」と「地上界」という2つの世界の構造が、ソーシャルゲームらしくできるのではないかと考えたことが始まりです。VPではレナスが地上界でエインフェリアを集めて、彼ら彼女らを神界に送るじゃないですか? それをソーシャルゲームに組み込もうかと。

――シリーズファンであれば、イメージしやすそうですね。

山岸氏:ただ、VPをそのままソーシャルゲームに落とし込むだけでは難し過ぎたんです。例えば、VPには横スクロールアクションがあったじゃないですか? あれも制作初期の段階に作って搭載してみたことがあるんですよ。

※VPはダンジョン攻略中、移動・ジャンプ・ダッシュ、晶石のギミックなどを使って謎解きに挑む、本格的なアクションゲームの側面が強かった。

――見当はつきますが、感想はいかがでしたか?

山岸氏:電車の中で遊べるようなゲームではありませんでした。元々、ドット単位で乗る・乗れない、ギリギリでジャンプする・しないといったシビアな操作を要求されることも多々あったので、「スマートフォンでこれは、いくらなんでも苦だろう」と感じましたね。

あのゲームバランスも当時であったからできましたが、今プレイしてみろと言われても、自分は投げてしまいそうですし。そのため、アクション要素に関しては現在ゲームに搭載されている通り、簡易的に遊べるすごろく形式にしました。

――戦闘システムは忠実に、アクション面は削ぎ落としつつと考えたわけですか。一方、戦闘システムの再現度は非常に高いですが、苦労したことはありましたか?

山岸氏:戦闘はあらかじめVPのシステムを想定していましたが、この辺りは開発チームが特に優秀でした。制作の初期段階から手を付けていましたし、攻撃パターンを揃えて、徹底的にバランスを整えていましたので。

ただ、当初は攻撃ボタンの配置位置を“キャラクターの位置”にしようと考えていました。画面上のキャラクターを直接タップして動かそうとしていたんです。ところが位置関係の把握だったり、攻撃に行くキャラクターが動いてしまったりで、これがもう大変で。

仮に画面上にボタンを固定するとしても、キャラクター上にボタン表示が残ってしまうのは嫌でしたし、端末によってはタッチ範囲も狭くなってしまうので、結局ボツにしました。

――ピュリファイアタックの演出についてはいかがでしょう? スマートで使いやすい反面、シリーズファンにはちょっぴり寂しくも感じられましたが。

木村氏:従来の演出のままだと、みなさん「長い……」と感じられるかと思ったので、ゲーム性を重視するため、より手軽に扱えるよう、短いながらも派手な演出として設計しています。

開発中に必殺技の口上や大魔法の詠唱があったらいいなと考えたこともありましたが、ソーシャルゲームであれほどの長い演出は、1回見たら大抵スキップされるだろうと思ったので。

――確かに……。それと、VAのオート戦闘ってすごい便利ですよね? コンボに至ってはお手本にもできるくらいです。

山岸氏:ソーシャルゲームだと、どうしても操作がプレイ環境に左右されますので、機能的に必須でした。でも、こういったシステムって普通は弱くなるじゃないですか? それなのにプログラマーが力を注いでしまったおかげで、とても強いんですよね。プレイ中は「これ、俺よりもつええじゃねえか!」って思いましたもの。もちろん、マニュアルのほうが細かい点で有利ですので、場面場面で使い分けてほしいです。

――VAに関しては「AP」の概念も斬新だと感じています。いわゆるスタミナ制と呼ばれるシステムの中でも見かけない仕様ですよね。

木村氏:APに関しては初期段階から仕様を固めていました。元々、ユーザーがアクションをすることで、何かフィードバックを得たり、何かを消費してもらうようにしたかったからです。

VAではクエスト中に「探索をする or しない」が要になります。探索をすればアイテムが手に入りますが、かといって探索をせずともクリアすることはできる。AP消費のジレンマを感じてほしかったんです。でも、ゲーム後半は消費が激しくなりすぎたので、これらを上手く緩和できるように「秘石」の配布も進めています。

――課金通貨の「秘石」ですが、VAではどのような課金バランスを想定していたのでしょう? 個人的には「必須とまではいかない」くらいで練られているのかなと。

山岸氏:わりと緩やかにしていますね。秘石自体、ストーリーを進めるだけで入手できるようにしてありますし、そんなに焦って進めるでもなければ、秘石を溜めていただくのもアリです。もちろん、ガツガツ遊びたいと人はそれなりのプレイスタイルで楽しんでもらえればいいと思います。

――ガチャも武器ガチャだけに絞られていますね。

山岸氏:キャラクターはストーリーを進めたり、イベントを進めたりで入手できるようにしました。

――よろしければサービス開始後の初のイベントについてもお伺いしたいのですが。あれ、めちゃくちゃ難しかったですよね……? どのような想定だったのでしょう……?

山岸氏:いやー、あんなに難しいとは……、思ってなかったんです……。(一同笑)

――なるほど、あの時はみんなのゴールデンウィークの使い方を試されているのかと思いました。

木村氏:一応、ゴールデンウィークを使ってガッツリとプレイしたユーザーさんであれば、クリアできる内容でした。ただ、サービス3日目にあれは、そもそもやり過ぎだったんです。

山岸氏:テストプレイ自体はさまざまな形で行っていたのですが、いざ蓋を開けてみたら難し過ぎたんです。

――つまり、あれがVAのイベントで要求されるボーダーラインということではないのですね?

山岸氏:それはありません。ソーシャルゲームではユーザーさんの進行度が、ユーザーさん単位でバラバラすぎるために、詰め切れていなかっただけです。「これくらいなら、丁度いいかな?」と調整した結果、難し過ぎる内容になっていたんです。申し訳ありません。

――それでは、今後のイベントクエストはどのような塩梅に?

木村氏:今後はかなりユーザーライクにしていくつもりです!

――では一方で、通常のストーリーはどのようなレベルデザインを想定していたのでしょう? 個人的には「多少レベル上げが必要なのかも」と感じています。

木村氏:大体ですが、7~8時間程度の進行度合であれば誰でも進めるように作っています。ただし、その先はレベルや武器、オーブであったりと、何かしら考えてプレイしてもらうようにしていますので、そういった意見は想定通りですね。

――全てを手軽に遊んでもらうだけではなく、歯ごたえのあるゲームとして受け取って欲しい、そういうことでしょうか?

木村氏:そうなります。しかし、あくまでも難しいと感じてもらう部分は、“ゲームにおける初期段階の壁”なので、難しくて進めないという人はサイドストーリーやイベントを活用してみてください。

今回のVAは、いろいろな方法で打開できるような作りを心がけているので、プレイの幅はこれからもしっかりと用意していきます。

山岸氏:オーブの組み合わせを考えるだけでも結構変わりますので、試行錯誤してもらいたいですね。極端な話、戦闘も全てマニュアルで操作していけば、ある程度はプレイングで打開してもらえるはずですから。

木村氏:ユーザーさんから「ちょっとヒントが足りない」とは言われてしまっていますが。

――私も、そのコメントの思うところには共感できます(笑)。

山岸氏:怪我の功名とまではいえませんが、だからかVAではユーザー間での攻略コミュニティがかなり活発なんですよね。

木村氏:ユーザー同士でそれぞれ攻略し合ってもらえることは、ありがたい話です。

――先日、やり込みコンテンツの代名詞「セラフィックゲート」も解放されましたが、VAではどのようなコンセプトで作られましたか?

山岸氏:セラフィックゲートの名前は最初から使うことを決めていました。そして、セラフィックゲートって難しいものじゃないですか? これまでもこの名前はゲーム本編をやりきった人用のコンテンツとして設計してきましたので、VAでもそれなりのものとして調整しています。

木村氏:しかし、我々の思っていた以上のスピードで一番難しい深層をクリアした人たちもいて、「こんなに早いスピードでゲームを進めているんだ!?」と驚きましたよ。

――信じられない、早すぎます……。

木村氏:あそこではオーブにさまざまなスキルがランダムで付属するようになっているので、中には周回をはじめている人たちも出てきているくらいです。「あのオーブに、あのスキルが付くまで、俺は掘る」と熱が入っているようですね。

最初は神界転送でキャラクターがいなくなる予定だった?

――続いては「神界転送」について聞いておきたいのですが、私は最初この文字を見たとき、「えっ、キャラクターいなくなるの……?」って不安になってしまいました。

山岸氏:みなさん、そう思われたみたいですね。ただ、企画段階ではエインフェリアは本当にいなくなる予定だったのですが(笑)。

――それは、大参事が目に見えるかのようです……。

山岸氏:当初、「神界転送なんだから、キャラいなくなればいいじゃん」って開発に言ったら、「そんなことしたら絶対にダメです!」「時間かけて育てたキャラがいなくなったら、絶対に怒られますよ!」ってみんなに怒られちゃって。

ほかにもエインフェリアを神界転送したら、VPのときのように戦争してもらって、1~2時間ほど経ったら「死にました」とアナウンスがきて、どこかのダンジョンで魂になっているから、ユーザーにそれを探してもらう……なんて案もありました。

木村氏:戦いに勝ったらアーティファクトを盗んでくる、なんてのもありましたね。

山岸氏:最終的には現行の通り、育てたキャラクター同士による非同期型PvPにしています。これならキャラクターの育て甲斐があるかなと思ったので。

――PvPに関しては、最初から非同期型を想定していたのですか?

木村氏:やはり、ユーザーさんには自分の時間があると思いますので、「送っただけで、勝手に戦闘して、勝手に帰ってくる」、そんな非同期型のシステムが合うだろうと考えました。

ただし、現状ではマッチングの問題で、神格が上位になればなるほどランキングで不利になる事態になってしまったので、この点に関しては改善を進めている最中です。今後は神格が上位の人が、ランキングでも上位になれるようなシステムにするつもりです。

――神界転送のとき、鍵を必要とするのがちょっと面倒に感じるのですが。

木村氏:その部分は、開発でもいろいろと議論をしてきた部分です。神界転送を行うと、その間は経験値ボーナスが入るようになっていますので、そのボーナスのために意図的に難易度を上げています。今後はランキング報酬をいろいろと変更していきますので、魅力的な賞品がある際に注力してもらえればと考えています。

――逆に無制限で行えると、1時間ごとに操作しなければいけない、作業的なゲームに捉えられてしまうかもしれませんね。

山岸氏:そうです。いつでもどこでもできるようになると、ウェイトタイプのいわゆる“待ちゲー”になってしまうので、1日中ずーっと気にしなくてはいけなくなりますから。

木村氏:制限無しの作業的に使われてしまうと、我々としてもユーザーさんとしても、良質なコンテンツになりませんからね。

――さて、これまでもいくつか挙げられましたが、今後の課題点は見つかっていますか?

山岸氏:やはり、先程のイベントクエストの件が課題になりました。あとは細かいところを除けば、ほぼほぼ想定通りの反応をいただけている気がします。

木村氏:その細かい部分に関しては、これまでユーザーさんからもいろいろと意見をいただいてますので、それらを踏まえて反映していこうと考えています。

――ちなみに今後のコンテンツ拡張や、コラボレーションなどは考えられていますか?

山岸氏:いくつかのイベントはすでに予定していますが、コラボレーションに関しては現段階では何も決まっていません。

――色の違う世界観をもつ他作品とのコラボもありなのでしょうか?

木村氏:ゲーム性としては特に問題ありませんので、ある程度ゲームが成熟した後であれば、何かしらのアプローチも考えたいですね。

山岸氏:一番まずいのはユーザーさんからの「コラボで世界観が崩れた!」という反応ですが、最悪セラフィックゲートにキャラクターを放流するのも手ですね。あそこだったら何が起きてもよさそうですし(笑)。

――期待しておきます。さて、本日は貴重なお話をありがとうございました。最後にゲームを遊んでいるユーザーさん方へのメッセージをお願いいたします。

山岸氏:「ヴァルキリーアナトミア」は、シリーズ最初の作品「ヴァルキリープロファイル」を踏襲した戦闘システムのままに、順当に進化した3Dバトルが楽しめます。また、コンシューマゲームのようなやり応えで遊べるソーシャルゲームとなっておりますので、ぜひぜひ遊んでみてください! それが一番伝えたいコメントです。

木村氏:ゲームが遊びづらいと感じたら、すぐにお問い合わせください。現在もさまざまなユーザーさんからの意見・要望が多く届いておりますが、ちゃんと目を通しています。中にはすぐに反応することが難しい問題もありますが、“ユーザーさんがより遊びやすいように”をこれからも目指していきますので、ご意見は遠慮なく伝えてくださるとうれしいです。

VALKYRIE ANATOMIA -THE ORIGIN-

スクウェア・エニックス

iOSアプリiOS

  • 配信日:2016年4月28日
  • 価格:基本無料

    VALKYRIE ANATOMIA -THE ORIGIN-

    スクウェア・エニックス

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2016年4月28日
    • 価格:基本無料

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      クリエイター
      山岸功典桜庭統藤沢文翁
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