2万字超の大ボリュームでお届けする、バイキングが全国稼働予定のアーケードゲーム「マジシャンズデッド(MAGICIANS DEAD)」のロングインタビュー(その2)!本稿では同社の代表取締役兼ディレクターの尾畑心一朗氏へ、詳しい対戦ゲームの内容、ロケテストで受けた意見、今後のサービスについて尋ねている。

目次
  1. コスト制の3vs3が生むチームバトルの駆け引き
  2. ロケテストを終えての感想、そのフィードバックとは
  3. 気になる稼働情報やフレンド機能は?
  4. 取材後記

先々週公開のプレイレポート、先週公開のロングインタビュー(1)に引き続き、本日は「マジシャンズデッド(以下、マジデ)」特集記事のラストを飾るロングインタビュー(2)を紹介。

今回は対戦ゲームとしての具体的な内容をフィーチャーしつつ、先日行われたロケテストの感想、そこから生まれたフィードバック、さらに今後の稼働情報に関する話などを伺っている。

アーケードゲーマー御用達のバイキングがおくる新機軸のゲーム性は、決して見逃していいものではない。

コスト制の3vs3が生むチームバトルの駆け引き

尾畑心一朗氏
尾畑心一朗氏

――まずはじめに、マジデが3vs3である理由をお聞かせ願えますか?

尾畑氏:それは、特に応えておきたい質問の一つです(笑)。

――これまで御社が携わったチーム対戦型アクションゲームは2vs2、もしくは4vs4でしたよね?

尾畑氏:その通りです。マジデで3vs3を選んだのにはもちろん理由がありますが、ゲームを発表するギリギリの段階まで「2vs2か……、3vs3か……」と悩み続けた部分でもあります。ぶっちゃけますが、ロケテストの1ヶ月前くらいまで延々と悩んでいました。

順に説明していきますが、まず1vs1は自分と相手だけなので、個人と個人のプレイヤースキルの差はあれど、魔法や超能力の組み合わせによる遊びの発展が生まれません。そのため、あらかじめ複数人参加型の対戦ゲームにすることだけは決めていました。

次に4vs4ですが、マジデではトラップを設置したり、オブジェクトを燃やしたり、ときには床を濡らしたりと、1人1人が個性的な連携アクションを狙えます。ですが、本作の場合は特に1人1人の能力の個性が強く、組み合わせの戦略が深くあるので、同時に4人もいると覚えきれない。組み合わせにしても4人もいれば、それぞれの要素はほとんどカバーできてしまうので、チームとしての計画性が注視されなくなると考えたんです。

水で炎を鎮火したり、
水に電撃を流して感電させたり、
竜巻のスキルに炎を重ねて、炎竜巻にすることも。

――では、悩まれたという2vs2についてはどのようなお考えでしたか。

尾畑氏:2vs2の利点はまず、相手キャラクターへ視点を向けるロックオンボタンの操作が1度の切り替えで済むので、非常に分かりやすいことが挙げられます。現状、マジデの3vs3におけるロックオンボタンは1つのため、相手1→相手2→相手3と順に切り替えていく仕組みを取っています。おそらく、最初は少し慣れる必要があるかもしれません。

しかし、2vs2は極論でいえば“1vs1が2つある状態”になりがちです。しかも、技術などの要因で“1vs2の状態”を作られてしまえば、それを切り抜けることはかなり難しい戦況になりやすいんです。このようなゲームデザインは過去に作ったこともあるのでアリではありますが、「マジシャンズデッド」ではマジデならではのアプローチをしたいのです。

――チーム対戦型アクションゲームをプレイしたことがあるユーザーであれば、誰しもが一度は経験する構図ですね。競技性としては優れていると思いますが。

尾畑氏:その点、3vs3では1vs2の構図は変わらず厳しいものの、人数の分だけカバーしやすいですし、2vs3になっても絶望的とまではいきません。また、ノーマークの1人が打開の一手を準備することもできますし、逆に2人に逆転の術を仕込ませ、1人で相手を引きつけることもできます。

つまるところ、3vs3であれば1人1人のユーザーの動きに遊びの幅ができるわけで、複雑にならない範囲で、魔法や超能力を掛け合わせる戦略が楽しめると考えたわけです。ただ、ロックオンには慣れる必要があると(笑)。

――続いて、キャラクターのフォースセットの導入(※)の意図を教えてください。

尾畑氏:単純に戦術を選ぶ楽しさのほかに、ゲームセンターで1年や2年と長く遊んでもらいたいこと、新要素やカスタマイズを次々と導入していきたかったこと、その下地の意味もあります。「あのキャラクターに新しくこんな魔法が!?」をうまく提供できれば、既存のフォースセットとの組み合わせで、永遠に終わらない遊びを作れると思っていますので。

加えて、ユーザーさん同士がマッチング後に「私は電気使いです」「僕は電気使いです」「俺も電気なんだけど!?」とならないように、サブでほかの属性の魔法を使えるようにしたりと、いろいろな意味を含めてセレクトできる環境にしています。

※フォースセットとは:マジデではキャラクター毎に3つのフォースセット(2,000/2,500/3,500など)が存在し、それぞれのセットによって、使用できるスキルや体力・コスト(戦闘不能時に減少するチーム毎の勢力ゲージに影響)が異なる。コスト制の対戦ゲームをプレイしたことがある人は、想像しやすいだろう。

――対戦以外のゲームモードはありますか。

尾畑氏:対戦系のほかには、CPU相手に戦う「ミッション」がありますね。いきなり対戦は少し緊張するという人もいらっしゃるはずなので、ここで1人で敵と戦ってみたり、複数人で挑んでみてください。いわゆる共闘プレイですが、これは店内マッチングと全国マッチングに両対応する予定です。

――ミッションはどのような内容になりますか。

尾畑氏:単純に、相手チームがCPUになっているだけの疑似的な対戦だけではなく、ミッション専用の敵キャラクターとして、例えばギャングみたいな敵がウジャウジャと湧いたところを超能力で一掃するみたいな、ミッションならではの内容を考えている最中です。

――マジデでは3Dグラフィックに関する試行錯誤はありましたか?

尾畑氏:やはり、“マジデならではのグラフィック”を追求したいので大変です。ガンストの場合は実在の街をベースに“本当に渋谷に立っているような感じ”を目指していましたが、今回は魔法のファンタジーさと、超能力のSFさを鑑みて、双方の良さを取り入れようとしています。

ステージは全て「魔法使い・超能力者に縁がある場所」に分けていて、魔法使いであれば村や学校などのドッシリとしたファンタジーを目指していますし、逆に超能力者であれば都会のど真ん中やスラム街など、一転して近代的なロケーションを選出しています。

ただ、どちらにしても“マジデらしい場所”にしたいので、スタッフ一同でポストエフェクトなどのビジュアル効果を何度も、何度も、試行錯誤してきました。これに関しては今この瞬間も開発チーム内で進められていますし、おそらく稼働直前まで追求しつづけていくと思います。

――私はロケテストでプレイしましたが、対戦ステージには障害物だったり、高低差の起伏が大きくつけられている印象でした。

尾畑氏:先にガンストの話をしておきますが、あのゲームはステージの高低差が激しいものの、基本的にキャラクターが自由自在に飛び回れるようになっているので、戦術的面は別にしても、根本的にステージ毎の制限というものは薄まっています。

しかし、マジデでは一部のキャラクターやスキルを除いて自由に飛び回るというアクションができません。走ってジャンプしての戦いのため、ステージデザインは対戦に直接的な影響を与えます。そのため、ここは何回も作り直しつつ、練り込んでいる最中ですね。

――ステージは稼働開始時点で何種類ほどを予定されているのでしょう。

尾畑氏:まだ詳しくは言えないのですが、稼働時には十分な数を用意する予定です。

――場合にもよりますが、こういう対戦ゲームでは“戦いやすい公平なステージ”に集中する傾向が強いと思われますが、そこのところはいかがでしょう。

尾畑氏:最終的にユーザーさんが決めることですのでなんとも言えませんが、正直そうなる傾向は予想しています。個性的なステージもそれはそれで喜ばれますが、対戦ツールとしては慣れやすくて遊びやすい“自分たちが全力で戦える場所”として、自然と同じ場所を選ばれてしまうので。

――ステージ選択はどのような形式になりますか?

尾畑氏:ステージはマッチング時に、全参加者が各自で好きな場所を選択して、そこで選ばれた中からさらに抽選で決まる仕組みを考えています。

――全員の意見からの抽選式というのはとても面白い案ですね。マップ構造を熟知して、一部に特化して、抽選で勝って、試合に勝っても戦術になりそうですし。

尾畑氏:それでも最終的には1つか2つに絞られていっちゃうのかなあ……と。まあ、一番悲しむのは「あんなに苦労したのに……ほかのステージが全然選ばれない!!」という気持ちになってしまうステージデザイナーなんですけれど(笑)。

ゴーストタウン
セント・ルーズベリー学園

ロケテストを終えての感想、そのフィードバックとは

――5月・6月に行われたロケテストですが、こちらを終えての感想をいただけますか。

尾畑氏:ロケテストで一番心配していたことは、「こんなの面白くない」「魔法を使っている気にならない」「レバーとボタンのほうがいい」などの意見が出てくることでした。この辺りはゲームデザインの根底にあるコンセプトなので、それが受け入れられなかったとしたら、非常に残念な気持ちになってしまいますし、バイキングの姿勢として恐らくペンディング(保留)にしたと思います。

プレイヤーに喜ばれないと思われる作品は、世に出しません。

――各地ではアンケートも実施されていましたよね。反応はいかがでしたか。

尾畑氏:嬉しいことに、ユーザーさんからは大変多くの高評価をいただくことができまして、僕たち一同、胸を撫で下ろす気分です。また、これまで全国で商談会も行っていましたが、オペレーターの方々に対して、自分たちがうまくマジデの魅力が伝えられるかも不安だったんです。でも、大半の方々がプレイしたうえで「これは面白い!」「普通に遊べる!」と言ってくれて、本当に嬉しいかぎりです。

――そのほか、意見としてはどのようなもの目につきましたか?

尾畑氏:そうですね、斬新な操作方法が面白いという意見が一番でしたが、ゲームとして純粋に面白いと評価してくださる方も非常に多かったです。

――つまり、大成功と言っても?

尾畑氏:これまでやってきたことの手応えはありましたね。あと、こんなこと言うと笑われるかもしれませんが、カプコン在職中の頃から自分の作っているタイトル、他者が作っているタイトルなど、さまざまなタイトルを含めて、“ゲームを作っている開発者が、制作中のタイトルを「面白い!」と言いながらずーっと遊んでいたら、そのタイトルは絶対に面白くなります”。

――そうなのですか? 非常に興味深いお話です。

尾畑氏:そういうタイトルは大概売れています。僕の知っている範囲で人気を誇っているタイトルは大体はそうでした。ただ、僕らもそうですが、開発初期段階のゲームって面白くないんですよ。「これ、大丈夫?」っていいながら作っているくらいです。

でも、ある程度の要素をちゃんと積み重ねていき、仕様を吟味して、バランスを精査していくと、開発後期にはちゃんと狙った形になってきて、ゲームとして面白くなってくるんです。で、そうなるといつも誰かがずーっと遊んでるんですよ、そのゲームを。

僕も「ちょっと、はよ仕事せえや!」って言うんですけど、「もうちょっとチェックしないといけないので」と返されたり(笑)。でもそうやって「これ面白いなー」と言いながら開発陣が遊びほうけているタイトルというのは、やはりリリースされてからも人気になるんです。

――ガンストもそのような流じだったのでしょうか。

尾畑氏:ガンストもそうでしたね。開発の序盤までの頃はやはりゲームとしては全然面白くなかったのですが、マスターアップの3ヶ月前くらいの頃から、5人や6人どころじゃ済まない数のスタッフたちがずーっと遊んでいましたよ(笑)。「なんかコレ、面白いんですけどー」って。当たり前だと思いましたけど(笑)。

――それでは、今回のマジデではいかがでしょう。

尾畑氏:今の段階でもその手応えはあります。僕たちが実装するボリュームはまだまだ大量なので、稼働日に向けて残りの分をきっちりとつぎ込んでいくことに力を入れていきたいです。

――ロケテストで人気の足掛かりは作れましたかね。

尾畑氏:それが、マジデはゲーム作品として第1作目ですので、これから稼働日に照準を合わせて、さらにユーザーさんへの認知度を上げていくことこそが次のターンだと考えています。

これから「このゲームを遊んでみたい」と思ってもらうためのイベントやキャンペーンは継続的に行っていきますが、パブリッシャーとしてそういったプロモーションが重要なことを痛感している最中です。

――ちなみに、ロケテストのアンケートで耳が痛い意見などは届きましたか。

尾畑氏:あります。その類の意見は細かい部分への指摘として多くいただけました。例えば、チュートリアルが挙げられます。マジデのチュートリアルは僕らとしては丁寧に作って、多少プレイ時間が長くとも、終わるころに操作方法が分かってもらえる仕組みを目指しました。それは確かに満たされていたのですが、「キャラクターの選択」に問題がありまして。

――どのような問題なのでしょう?

尾畑氏:チュートリアルでは、ユーザーさんに自由にキャラクターを選んでもらっていました。ただ、チュートリアルということで操作方法はもとより、使える魔法も全キャラクターで統一していたんです。つまり、シヴァン以外を選んだ人以外は「そのキャラクターでは、実際には使えない魔法を使わされていた」ことになってしまったんですよ。

※キャラクター1が使える魔法「A」、キャラクター2が使える魔法「B」、チュートリアルで使わされる魔法「A」としたとき、チュートリアルでキャラクター2を使用しても、本来使える魔法「B」が使えず、強制的に魔法「A」を使わされてしまった。その結果、後の全国対戦で「えっ? こんな魔法さっき使ってないんだけど!?」というケースが生まれてしまったらしい。

――なるほど、私はシヴァンでチュートリアルをこなしたので、全然気が付きませんでした。

尾畑氏:シヴァンでプレイした方は多いとは思いますが、これに関しては僕らとしても「確かに、これじゃあ分かんないよね……」と感じましたね。僕らが懇切丁寧だと勝手に思っていたことと、ユーザーさんが実際に遊んだときに感じることの齟齬を実感しましたので、今はチュートリアルのキャラクターを固定にするなど、全部作り直しています。

――続いて、私個人のロケテストバージョンへの感想をいくつか述べても構いませんか?

尾畑氏:あ、どうぞ言ってください。

――まず、左手が痛かったんです。

尾畑氏:???。

――プレイ中は右手が空中、左手にグリップコントローラーでしたが、慣れていないからか物を握っている左手に無意識に力が入ってしまい、プレイ終了後に左手が痺れました。次のプレイからは程よく力を抜けたので問題ありませんでしたが、最初の感想が「左手が痛いゲーム」になってしまって(笑)。

尾畑氏:あー、なるほど。

――あと、右手の定位置が思っていた以上に高めでした。

尾畑氏:それがですね、手の位置があまりに低すぎると筐体のセンサーを覆ってしまって、反応できなくなるんです。何度も調整していますが、画面中央の中心点を踏まえると、画面上部には手を高めに上げる必要も出てきます。各自で調整できるキャリブレーション機能も考えてはいますが、キャリブレーションという行為自体がマニアックなので、目下検討中です。

――手をかざしてない間、移動速度が上昇することに気付けると、合間合間にそれこそ手抜きして休めるんですけどね。最初のうちは必死で気付かずで。

尾畑氏:対戦では手をセンサーにかざしていると魔法や超能力を使えますが、手をかざしていないとキャラクターの移動速度が大幅にアップします。ゲーム的にも手を上げる・上げないのメリット・デメリットとして設計している部分でしたが、少し分かりづらかったようなので、今後は手をかざしていないときのメリットを増やすなど、身体的な疲労も軽減していきたいです。

――あと、ガード(防御行動)がないゲームデザインにされていますよね。

尾畑氏:はい、そうです。高低差や障害物を利用したり、ジャンプで避けていくのが基本動作となります。あとは箱や車を超能力で掴んで、それを盾にするのもいいです。

――個人的に、クラリスのバスター・ソーサラー(3,500コスト)の「アグニスブルーマ(スキルフォース1:炎の扇状の飛び道具)」。あれが見た瞬間に「あっ、無理、避け方すら分からない」と感じてしまったので、気になっていたんです。

尾畑氏:これもロケテストでは分かりづらかったのですが、誘導性のある飛び道具や格闘攻撃は“すべて横ジャンプで回避”できる設計なんです。でも、初めてプレイする人には“普通の横ジャンプ”にしか見えていなかったようで、これも見た目で分かりやすいものにしたりと改良予定です。射撃戦の駆け引きは「横ジャンプで避ける」「横ジャンプ読みでAIM(照準を定める)」なので。

――あと、先程仰られたようにロックオンが難しかったです。

尾畑氏:当初はチーム内でもロックオンボタンを2つ作るなどの意見があったのですが、3D対戦に指向性のあるロックオンを導入すると、体感的で押したボタンの向きと、ロックオンしたいキャラクターの位置が合致しないんですよね。「右押したのに、なんで上のキャラにロックオン!?」とかです。そんな体感のズレに悩んだために、前述したループ形式を採用しています。

――あと、最初のうちは壁走りの操作に難儀しました(※ジャンプ中に壁に向かってレバーを入れっぱなし、これで壁面を自在に駆け回れる)。

尾畑氏:壁走りですが、当初は通常移動しているだけで自動的に壁走りになるよう設計していたんですよ。しかし、後ろに移動しながら攻撃するケースなどが問題でした。引き撃ちしながら壁にぶつかると、意図せず壁走りになってしまい、攻撃の機会がいきなり中断されてしまったんです。

ほかにも対戦中に「壁まで行きたいだけで、壁を登りたいわけではない」というケースが多々生まれてしまうと思ったので、壁走りは自動ではなく、任意の操作にしています。

――あと、体力や残弾の視認性が若干悪いようにも思えました。

尾畑氏:インターフェースに関しては現在追求中ですね。一つ、ロケテストでは画面中央左側に「残弾ゲージ」、画面中央下部に「操作ガイド(手の形をガイドするアイコン、下記画像参照)」と分かれていましたが、今後は操作ガイドの部分に残弾ゲージを合わせて、視覚情報をまとめていこうと考えています。体力に関しては、やはり数値だけでなくゲージもあるといいですか?

――あくまで私個人としてですが、そうですね。残り体力によって色合いが変化するゲージなどは、危険な印象が分かりやすくていいですね。

尾畑氏:なるほど、検討してみます。

やり込めば別として、初心者はゲージ類に目移りしてしまう。

――まだまだあって恐縮ですが、操作の“手の形”が計3種(+α)になった理由はありますか?

尾畑氏:手の形をあの3種にするまでに、1年かかりました(笑)。これはモーションセンサーの仕様も大きいのですが、例えばユーザーさんが「パー」を出しても、センサーが認識する「パー」は似ても似つかない読み取りになっています。ですので、プログラム上は「ギリギリ、パーと呼べなくもない手の形」まで含めてパーであると認識させています。

こういった流れで、センサーができるだけ間違わないよう、かつ認識の差別化が図れたのが3種であり、数々のボツになった手の形の生き残りでもあるんです。これ(人差し指と親指を立てる形)も、ロケテストの2ヶ月前に「これならいけるのでは!?」と発見したくらいですから。

――つまり、4種目の手の形(4種目の魔法)が実装される可能性は低いと?

尾畑氏:低いですね。その理由は機器的なものだけではなく、単純に「4つの魔法を使える状況」というのがゲームとして複雑になるからです。操作を覚えるのもより難しくなってしまうので、ゲームデザインとして3つの基本操作を使って遊ぶことを維持していきます。

――あと、コンパネに一つだけある格闘ボタンは必要なものでしたか。

尾畑氏:当初、あのボタンは無かったんです。JAEPOで発表したときも格闘攻撃はモーションセンサーによる手の動きで操作していました。それでも良かったといえば良かったのですが、手で格闘攻撃を表現すると、実際の手をどのように動かすのかが問題になってきてしまって。

――モニターに向かってグーとかですか?

尾畑氏:仮にグーでやると、何もないところをパンチすることになります。それって、無反動の空振り動作になるので気持ち悪いんですよ。ほかにも手を水平に動かすチョップのような動きを考えましたが、キャラクターの動きを連動させようとすると、全員チョップ攻撃になってしまいます。

かといって、指の形の変化だけで格闘を出しても、いまいちピンとこない。プレイヤーがやっていることと、キャラクターがやっていることが連動しないのが、どうもイマイチで。

――確かに、魔法や超能力と比べて、格闘となると身体的なアクションになりますものね。体感的にもイマイチなのは想像できます。

尾畑氏:結局、格闘は“何かボタンを叩かないとイメージに合わない”という理由で、格闘ボタンにしました。やはり、モノを叩いて格闘を出すというのが落ち着くようです。

――最後に、ロケテストで一番人気のキャラクターは誰でしたか?

尾畑氏:もう、断トツでクラリスです。描いてくださったあきまんさん自身も「かわいい!」って言ってるくらいの人気ですね。あと、リプルもですね。やはり美少女キャラが強い。

魔法使い「クラリス」

――自分も全国対戦はクラリスのバスター・ソーサラーにしました。超楽しかったです。ちなみに社内で一番強い人はどなたになるのでしょう?

尾畑氏:うーん、そうですね。プログラムを担当しているスタッフ2名でしょうか。彼らはちゃんと当てる、ちゃんと逃げる、強い行動をひたすら繰り返すと、ゲームバランスの調整やデバッグには非常に役立つ人材ですが、ほんとムカつくんですよね(笑)。

一例を挙げると、超能力者側に電気使いの「アイス」という女性キャラクターがいます。彼女は電撃ムチ「スパークロッド」を手の動きに合わせて振り回すスキルを持っているのですが、このムチがロケテスト直前までむちゃくちゃ強くて、「常時攻撃判定を出しながら接近+ムチに射撃を跳ね返す効果」の性能で、しかも無限に使えたんです。

――聞いているだけでも、環境の破壊者になることが想像できます。

尾畑氏:だからその当時は社内で遊んでいると、彼らを含めて全員アイスを選んでいましたね。対戦スタートの直後から、3人のアイスが全員ムチを振り回しながら詰め寄ってくるんです。そしてこちらは何もできずに端へと追いつめられる。当然、ロケテスト前に修正しました。

ただ、相手の射撃を跳ね返すスキルは自分でやってても気持ちよかったので、後々復活させようかとは考えています。あくまで無制限に使えるのがまずかっただけなので。

気になる稼働情報やフレンド機能は?

――マジデの稼働開始時期はいつごろを予定されていますか。

尾畑氏:現状は今冬を予定していますが、冬休みの前にはなんとかしたいところです。

――プレイ料金に関しては100円1クレジット、200円3クレジットでしょうか。

尾畑氏:そうですね。そのうえで対戦が1クレジット、ミッションが1クレジットを想定していますが、詳しくはこれから詰めていきます。

――全国対戦では一度キャラクターを選んだら、その後は変えられない仕様のままですか?

尾畑氏:今のところはそうなります。

――キャラクターやプレイヤーデータに関するカスタマイズ要素は予定されていますか。

尾畑氏:キャラクターの衣装はもちろん、さまざまな画面上のデコレーションも変えられるようにしますし、勝利ポーズなどの演出やボイス、チャット用のメッセージにくわえて、ゲーム中のセレクト画面も変えられたりと満載です。それらをゲーム内ポイントで購入してもらい、各々でカスタマイズしていただく予定です。

――課金要素というのはあるのでしょうか。

尾畑氏:今のところ予定はありません。基本的にゲームをプレイしてもらい、それによって手に入るゲーム内ポイントだけで楽しめるようにします。

――連動WEBサイトも運営されるようですが、どのようなことができるのでしょう。

尾畑氏:連動サイトではNESiCAのプレイヤーデータを読み込んで、コスチュームやデコレーションなどを設定できるほか、フレンドやグループを設定することもできます。

――フレンドはサイト上で検索したり、友人同士で教え合う形式ですか?

尾畑氏:いえ、マジデではゲームプレイ中にフレンド申請を送ることができます。対戦後のリザルト画面から「連携がよかった人」「すごく強かった人」などに気軽にフレンドが送れる仕組みなんです。それらの承認に関しては連動サイトの領分となりますが。

――コンシューマでは当たり前の機能かもしれませんが、アーケードゲームでプレイ中にフレンドが送れるのは、もしかして業界初の試みになるのでは?

尾畑氏:そうなりますね。あと声優さんやプロゲーマー、コスプレイヤーの方などに公式でプレイしてもらい、そういう方々と対戦したり、フレンドになってもらったりと、日々のプレイで一喜一憂してもらうことも考えていますね。

――人気のある人には、それこそ1万単位でフレンドが集まってしまうこともあるのでは? そもそものフレンド枠はどれくらいを予定しているのでしょう。

尾畑氏:どうしようかなーって(笑)。全プレイヤーを無制限にしてはサーバーの負荷が凄まじいことになってしまうので……。こちらでお願いした公式プレイヤーのアカウントだけ限定的に増枠するなど、サーバーと相談しつつ検証していきます。

――では、もう一方のグループに関してはいかがでしょう。

尾畑氏:グループはゲーム内で優先的なマッチングが組めるシステムですが、マジデでは計3グループまで登録できるようにします。

――つまり、3グループあるとどうなるのでしょう?

尾畑氏:3グループあれば、「友達専用グループ」「ネットの知り合いグループ」「大会用グループ」など、プレイスタイルに合わせてグルーピングすることができるわけです。これをそれぞれのプレイヤーが自由に設定することで、さまざまなコミュニティの中でより気軽に遊べるようになると考えました。

――しかし、プレイ時間を合わせてゲームセンターで遊ぶとなると、しめし合わせなどがちょっと大変ではないでしょうか。

尾畑氏:そのためのシステムとして、プレイ中や連動サイトではコンシューマハードの機能のように「今、~~さんがマジデを遊んでいます」と通知が出るようにします。あとはゲーム上で優先マッチを選んでくれれば、同じグループのプレイヤーと優先的にマッチングすることが可能です。また、通知をOFFにする機能もモバイルサイトで対応します。

――ローカルもしくは全国対戦のマッチングでは、グループと野良は分けられますか?

尾畑氏:優先マッチングを組んでいるチームは、「バースト(同じ店内でチームを組むこと)」や「野良」とはマッチングしにくくなるようにする予定です。知り合い同士で組んでいるチームと野良で集まったチームでは、どうしても前者が有利になりがちですので。

同時に、プレイヤーの強さの指標となる値を設けて、対戦相手との強弱のバランスを保っていきたいと考えています。この辺りは、稼働開始後の実際の稼働数を見てから、改めて調整していきたいポイントでもありますが。

――現時点で想定している強さの指標とはどのようなものでしょう? 例えばポイントだったり、英数字のランクだったりとありますが。

尾畑氏:指標はキャラクター毎で分けられています。例えば、ずっとシヴァンで遊んでいる人ならシヴァンのランクはSですが、時々しか遊んでいないドスのランクはAなど、キャラクター毎のやり込みを可視化していく予定です。

超能力者「シヴァン」

――それと、先日のセレモニーイベントではMr.マリックさんと嗣永桃子さんを起用されていましたが、マジデでは今後どのようなプロモーション戦略を狙っていますか。

尾畑氏:今まさにチーム内で色々なアイディアが出てきていて、盛り上がっている最中です。今後は夏休みから秋口にかけてさまざまなプロモーション展開を考えています。イベントやキャンペーン、あとはニコニコ生放送などですね。これらにはゲームプレイヤーに近い層へのアプローチとして声優さん、ゲーム実況者さん、あと公式でコスプレイヤーさんを立ち上げることも考えています。

――稼働開始までに第2回ロケテストは予定されていますか。

尾畑氏:ロケテストという形ではなく、僕らが実際に全国のゲームセンターを回って、体験会をやろうかなと考えています。どれくらいの店舗様にご協力いただけるかはまだ分からないところですが、やはりゲームセンターにはそのエリアごとのコミュニティがあると思うので、そういった方々に訴求していければと思っています。

――先の長い話かとも思いますが、全国での稼働開始以降、ゲームコンテンツではどのような拡張を想定していますか?

尾畑氏:基本はゲームモード、キャラクター、ステージだと思いますが、そのうえでオンライン大会や、ユーザー同士が2つの陣営に分かれて実装コンテンツを決めるイベントなど、そういうことも両立していきたいですね。

――稼働時はゲームとしての完成度はどれくらいになるのでしょうか。

尾畑氏:稼働後は“ユーザーさんと育てていく”ことが重要で、例えば人間の「生まれる前の10ヶ月(稼働前)」と「生まれてからの10ヶ月(稼働後)」のようにまったく違ってきます。無事にアーケードに出てからは、ユーザーさんと一緒に成長していくターンだと考えていますので。

――なるほど、稼働前と後では拡張内容もガラッと変わりそうですものね。

尾畑氏:こちらとしてもあんなこと、こんなことをいろいろと用意しておきますが、それにどんなカラーを付けていくのかは、すべてユーザーさんと一緒にやっていきたいです。

――さて、今年に入ってからはもはやありきたりな質問かと存じますが、VRに関してはいかがでしょう? 「マジデVR」は実に親和性の高い題材に思えるのですが。

尾畑氏:今年はよく聞かれますし、「何故やらないの?」と言われていますね、その質問(笑)。それには弊社が現状アーケードに注力しているので、VRの技術研究を進めていないことが挙げられます。もしもVRをやるとなるとコンシューマが主流になってしまいますので、研究はしていきますが、商品化は別物として考えていこうかなと。

――今年見られたゲームタイトルの中では、最も優れた組み合わせに感じられますので(笑)。

尾畑氏:ほんと、ピッタリですよね。僕もそう思います(笑)。

――ちなみに、マジデのコンシューマ移植は考えられていますか?

尾畑氏:現状、予定はありませんね。アーケードのみでの提供となります。

――その一言で俄然気合が入る層というのは確実にいるので、ありがたいです。それでは非常に長いインタビューとなってしまい恐縮ですが、最後にこれから「マジシャンズデッド」を遊ぶであろう人たちへの一言をお願いします。

尾畑氏:「マジシャンズデッド」は、この手で超能力や魔法を出せる興奮を味わえる、そしてその能力で仲間と戦うという、まったく新しいコンセプトで生まれた対戦アクションゲームなので、期待していてください。

ときどき「ガンストが“手”になっただけでは?」と言われますが、実際に遊んでいただければ、全然そういう内容ではないことが分かってもらえるはずです。まったく新しいチーム対戦型アクションゲームとして楽しんでいただけるはずなので、稼働後にゲームセンターで見かけた際は、ぜひ一回でいいので遊んでみてください。

取材後記

今回は尾畑氏へ話を伺うため、東京・東新宿にあるバイキング本社を尋ねた。入り口から土足厳禁な社内には個人的には非常に好感であったが、それを置いておくにしても広々としたワンフロアにはパーテーションなどが一切なく、風通しも良さそう。フロアのど真ん中にドドーンと勢揃いしている「マジシャンズデッド」の筐体列も話に聞いた通り。

また、筆者が取材で伺った時間帯には、開発陣が何かの会議を進めている場面も見られた。柔らかそうなソファとカーペットに座り、まるでみんなで家の中にいるかのようにテーブルを囲い、難しそうな話をしている。尾畑氏を筆頭に、熱く、厳しく、ほどよくリラックスして仕事に打ち込める環境が、類を見ない斬新なクリエイティブの切り口に繋がっているのかもしれない。

そんな風に思えたのが、私が見たバイキングという企業であった。今冬を目途に送り出されるマジデの展開には、マジで期待しておくべきかもしれない。

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※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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