2月に稼働1周年を迎え、多くのアーケードユーザーから注目されている、セガ・インタラクティブのアーケードゲーム「Wonderland Wars(ワンダーランドウォーズ)」の開発チームにインタビューを敢行! ワンダー部やWonderland LIBRARY、気になる公式大会にと、さまざまな内容を根掘り葉掘りに訊いてきた。
昨年2015年2月17日、MOBA系ストラテジーゲームとしてアミューズメント施設に投入された「Wonderland Wars(以下、WLW)」。稼働開始から早くも1年半が経過したが、個人的にはそれよりも10ヶ月前のこと、2015年4月11日に行われたロケテストからの付き合いとなるので、体感でいえばさらにもっとである。
WLWでは稼働開始から、新キャストや新カードの投入、フレンドマッチや舞闘会をはじめとしたオンラインイベント、全国大会の開催と、さまざまな展開が推し進められてきた。今年になってからは新たなユーザーコミュニティの場となる「ワンダー部」の発足をはじめ、ゲームの楽しみ方を広げるツールとして導入されたターミナル機「Wonderland LIBRARY」など、より大がかりな足場が築かれてきている印象だ。
そんなわけで今回は、1周年(約1年半)を振り返りながら、これまでの取り組みがどのような意図で行われてきたのかを尋ねるべく、WLWといったらこの方々、企画・広報のにしじまん氏と、ディレクター田勢氏(以下、D田勢)にインタビューを敢行した。WLWのこれまでとこれからをぜひとも見ていってほしい。
全国大会、Wonderland LIBRARY、そしてワンダー部と怒涛の展開
――まずはサービス開始から1周年(+半年)、おめでとうございます。
にしじまん氏&D田勢氏:ありがとうございます。
――サービス開始をしてみて、これまでいかがでしたか?
D田勢氏:WLWはこれまでのアーケードではあまり見られなかった「MOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)」というジャンルに挑戦したタイトルです。稼働から1年と半年ほどが経過しましたが、率直な感想としては、思った以上にプレイヤーの皆さま方に受け入れてもらうことができて、非常にうれしく思っています。
にしじまん氏:PCもスマートフォンもそうですが、場所を選ばず、基本プレイ無料のタイトルに対して、ゲームセンターに足を運んでもらい、さらにプレイごとにお金を払っていただきます。そのため、プレイヤーとなっていただく皆さまが費やすお金と時間に対して、どれだけの価値を感じてもらえるかを追求しなくてはなりません。使った以上の対価を十分に感じてもらえるよう、運営には特に気を付けてきました。
D田勢氏:初めて遊んだお客様が「100円を払ったのに、なにも分からなかった」で終えられてしまうのは一番ダメです。そのため、「画面にペンで線を書いたら弾が飛んでいく」という分かりやすいファーストインプレッションには、かなりの力を注ぎましたね。
――それでは、稼働開始後に注力された点はなんでしょう。
D田勢氏:そうですね、まずは協力対戦ゲームとしての環境を整えていくことに特に注力してきました。WLWでは定期的にキャスト(WLWにおけるプレイヤーキャラクターの呼称)を追加し、ゲームバランスの調整を行ってきましたので。
――MOBA系のバランス調整というのは大変難しそうですね。
D田勢氏:そうですね。戦略性をベースにした協力対戦ゲームなので、いろいろと特徴のあるキャストやカードの投入タイミングはもちろん、プレイヤーの皆さまに飽きられないよう、ゲーム内のイベントやバランス調整を滞りなく提供してきました。
――“走り続けた”といったところですね
D田勢氏:稼働当初は全8キャストでしたが、現在は全21キャストとボリュームが膨らんでいます。キャストや新カードなどの新要素を対戦環境にうまく擦り合わせていくのには、苦心してきました。
にしじまん氏:キャストも稼働1年間は月1体のペースで追加を行った結果、現在は21キャストとなって、いろいろなキャストが登場しています。「もっと早く、次のキャストがほしい」という声も当然ありますが、「獲得したキャストを使いこむ前に、次のキャストが追加されている」という声もあり、今は1.5ヶ月~2ヶ月くらいを目途にキャスト追加を行っている状況ですね。
――月1だと、確かにそう感じてしまうかもしれませんね。環境を拡張するスピードとしては素晴しいのですが。では、WLWの特殊なデバイスについてはいかがでしょう。
D田勢氏:稼働開始から今まで、「シンプルで使いやすい」「初心者でも遊びやすい」などの意見を多くいただけました。見た目な特殊な印象を受けるかもしれませんが、入力はペンとレバーと少しのボタンですし、操作もタッチパネルにペンで書いた軌跡が攻撃になる仕組みなので、初めての人にも直観的に遊べてもらえた気がします。
開発中は操作がプレイヤーの皆さまに受け入れられるのかを不安に感じていましたが、良い意見をたくさんもらえたことで、「これにして良かった」と思えるようになりました。
――続いては、ユーザーコミュニティ「ワンダー部」を立ち上げた意図をお聞かせください。
にしじまん氏:ワンダー部は4月に立ち上げたプレイヤー交流のためのサービスです。WLWはチーム対戦のゲームとなるので、ゲームを活性化させるためにも、プレイヤー同士を繋げることは必然と考えていて、「人と人とを繋げる取り組み」としてスタートしました。
――コミュニティの必要性はいつ頃から感じていたのでしょうか。
にしじまん氏:もちろん、稼働前からです。ゲームなどのエンタメコンテンツでは、プレイヤー同士のつながりは必須ですよね。以前は専用サイトにログインをして、プレイヤー同士の情報発信や情報共有が主流だったと思います。そこへログインすると、攻略コラムやプレイ日記など、そのゲームに関する情報があふれていて、私自身も楽しませてもらっていました。
ただ、専用サイトだからこその濃い繋がりを感じる一方で、もっといろいろな人たちがいる場所がプレイヤー同士のコミュニケーションの場となれば、たくさんの人が接触し、参加するような場になるかも知れないという気持ちもありました。
――ワンダー部を発足するきっかけはありましたか?
にしじまん氏:以前は弊社で運営していたコミュニティサイト「it-tells」というものがあって、WLWは2,500人以上の規模のコミュニティがありました。そのit-tellsのサービスの終了の話が決まったときに、プレイヤー同士を繋げるサービスを考え直す機会になりました。
ワンダー部では、プレイヤーを繋げることに特化して、コミュニケーションの場は別のところを活用することで、プレイヤーコミュニティを広げていければなぁと思っています。
――別のところというと、Twitterですか?(※ワンダー部はTwitterアカウントと連動)
にしじまん氏:そうですね。日本ではTwitterの利用者数が断然多い上に、利用者の多くが普段からの生活で利用していますよね。繋がるきっかけはワンダー部ですが、そこから先の繋がりはTwitterを利用している。ワンダー部はコミュニティのハブとなり、活動の場はTwitterを利用していただくことで、普段の生活の中で自然にWLWの情報が流れてくる環境を目指しています。もちろんワンダー部をどんどん活用してもらえるように、いろいろなことを仕掛けていきますよ。
――ワンダー部は企画から実装まで短期間で進められたのですか?
にしじまん氏:約1ヶ月くらいです。「Wonderland LIBRARY」が稼働を開始したころに、ワンダー部の立ち上げに欠かせないパートナーとなる、しくみ製作所さん(http://sikmi.com/)との出会いがありました。ワンダー部の元になるサービス(http://bondo.link/)をしくみ製作所さんがすでに行っていたこともあり、ゴールデンウィークを目標に急ピッチに進めることができました。
D田勢氏:ほんと、突貫でしたよね。
――既に5,000人以上が登録されていて、チーム活動も盛んに行われているようですね。
にしじまん氏:こちらの見られる範囲内では、ワンダー部に登録している皆さまは、WLWを熱心に遊んでくれているプレイヤー層ともいえます。サービス開始以降は「使い方が分からない」「これってSNS?」と思われていましたが、現在は少しずつ浸透してきて、皆さまに積極的に利用していただけている印象です。
――チームでの遊びとなるとフレンドマッチが挙げられますが、こちらは定期開催での運用が予定されているのでしょうか。
D田勢氏:フレンドマッチの需要はこちらも把握していますが、我々としてはゲームセンターにフラッと立ち寄って、1人でも気軽にプレイできる環境というのも大事だと考えていますので、今のところフレンドマッチに関してはイベントとして運用していきます。
――ほかにも、WLWでは店舗大会が活発的に行われている印象を受けます。
D田勢氏:やはり、WLWは協力対戦ゲームですので、人と人とが顔を合わせて戦う、チーム戦ならではの醍醐味も味わってほしいと思いますので、各店舗さんに協力していただいてます。
にしじまん氏:店舗大会を開くのに必要な台数が最低8台なので、この点は店舗さんのネックになってしまっていますが、導入していただけている店舗さんには、こちらとしても全力の支援を心掛けています。それに、今後はWonderland LIBRARYにより大会運営も気軽になるはずですので。
――では、4月に導入されました「Wonderland LIBRARY」についてお伺いします。こちらのターミナル機はどのような意図で導入を決められたのでしょう。
D田勢氏:WLWはマップに対する戦略が重要となります。なので、対戦画面を俯瞰できる視点や、自分がなぜ負けたのかをより分かりやすくするツールとして導入を決めました。
例えば昨年の全国大会では、各々の実機画面を分配用の機材を通して切り替えてモニターに出力していましたが、Wonderland LIBRARYを使用すれば、全画面を統括しながら、各画面にすばやく焦点を合わせることが可能です。
つまり、店舗大会を運営しやすくするためのツールとしても考えているわけですね。あと、先程から話しているコミュニティへのアプローチの一環という意味も含まれていますが。
にしじまん氏:店舗さんには多くの大会を開いていただいておりますが、中には機材や人材などの問題で、大会運営にまで手が回らないという店舗さんもまだまだあります。そこにWonderland LIBRARYが1台あれば、ギャラリー用の映像としてはもちろん、実況もしやすいでしょうし、参加者の目線を集めやすくもできます。ギャラリーにしても、実機画面を覗き込むより、対戦を観戦しやすいと思いますので。
――Wonderland LIBRARYの店舗への導入率はいかほどなのでしょうか。
にしじまん氏:公式サイトを見ていただけると実際に数えることもできますが、非常の多くの店舗さんに導入していただけています。本体の8台セットを導入している店舗さんに加え、4台セットを導入している店舗さんであっても多く入れていただいていますね。
――Wonderland LIBRARYの導入以降、リプレイを見ながら会話する方々をよく見かけるようになりました。
にしじまん氏:ゲームが上手い人って、結構親切に教えてくれるんですよね。ただ、教えられる側は、ゲーム中に後ろから「ここはこう!」「そこはそう!」と言われても、ほとんどの人は処理することができません。ですが、ゲームが終わった後にWonderland LIBRARYの前で説明を受けると、プレイが客観視できることで、分かりやすく、納得しやすいんです。
こういった機能がないと、実際に画面で見てみないと分かりづらいことが、他人にはさらに伝えづらくなります。結果的にプレイヤー間で“(戦略や状況を)知っている前提”の話題も多くなってしまうので、Wonderland LIBRARYにはWLW初心者のプレイングの向上はもとより、プレイヤー同士のコミュニケーションを円滑化するための役割も期待しています。
――MOBA系の対戦は、動作に込められた意味を理解するのが難しいですからね。
D田勢氏:新しいキャストを使いたいとき、今まではまず自身で使ってみなければいけなかったところが、Wonderland LIBRARYのリプレイ機能を利用することで、手軽に上級者のプレイを参考にできるようになりました。立ち回りの研究としても役立っているかと思います。
――私もWonderland LIBRARYのリプレイのおかげで「リン」にキャラ変えできました。あと、個人的に嬉しかったのは「カード購入」ですね。
D田勢氏:カード購入については稼働開始から約1年経ったということで、後続のプレイヤーの皆さまのカードプールが乏しいこと、前々から「もうちょっとカードを引きたい!」という意見を受けていたことを踏まえ、搭載することを決めました。
にしじまん氏:こちらで見るところ、“その日、ゲームはしなかったけれども、Wonderland LIBRARYは利用した”という方々が、思っていたよりも多くいてくださっています。
D田勢氏:単純にカードの入手手段として利用していただけるのもありがたいのですが、「今日はついでに動画も見よう」とか、「やっぱり、ゲームもしていこう」とか、ゲームに触れてもらえる機会であり、足を運んでもらえるきっかけの一つになってくれればいいですね。
――続いて気になるのは公式全国大会についてですが、いかがですか。
にしじまん氏:全国大会は昨年も行いましたが、今年ももちろん開催する予定です。大会に関する詳細は後ほどとなりますが、イメージ的には昨年と同程度の規模で開催できると思います。
――今年の大会の見所はいかがでしょう。
D田勢氏:まず、前回大会のときよりもキャストが増えていますし、ゲームバランスの細部も異なっています。また、ソウルで召喚される巨人も新たに「強化唱」「回復陣」などが加えられているので、昨年とはまた違う対戦模様が見られるのではないかと期待しているところです。
――大会運営に関しては、昨年と違う点はありますか?
にしじまん氏:まず、ワンダー部を使おうかなと。現在は事前エントリーをワンダー部で済ませられるよう、その仕組みを構築している最中です。ワンダー部には、ゲームに実装するには時間や手間がかかるけれど、“あったらいいなの機能や遊び”を担ってもらいたいんですよ。
それから、もう一つ“別の切り口の大会”というのも考えています。
――別の切り口ですか? 大きくいうとどのようなものでしょう。
にしじまん氏:全国大会は個々人がチームを作って、その頂点を目指すものです。一方、構想中の大会に関してはもっと店舗に紐付くものとして、店舗に集まるプレイヤーたちによる代表戦のようなことができたらいいかなと。
ゲームセンターというのは昔から、お店ごとによって独自のコミュニティが形成されているものですし、大会運営に力を入れてくださっている店舗さんへも、もう一歩踏み込んだ施策を行いたいと考えています。
キャラクタートレンドの最前線は「暴言」「眼帯」にあり?
――ここからはゲーム面についてお伺いします。まずは今年頭から運用されていますイベント「舞闘会」の開催意図を訊かせてほしいのですが。
D田勢氏:MOBA系のゲームでは、キャストピック(※)からはじまる戦略性も醍醐味ですので、それを取り入れたのが舞闘会となります。プレイヤーの皆さまにより深いゲーム性を楽しんでもらえるものとして用意しました。舞闘会を通して、全体の戦略を考える機会を体験をしてもらえると嬉しいですね。
WLWをプレイしてくださっているプレイヤーの皆さまの中には、好きなキャストを自由に使いたいという人もたくさんいらっしゃいます。キャストピックの構成によっては、自分の使いたいキャラクターを選べないというケースも出てくることも多々ありますので、短期間でのイベントとして楽しんでいただける形で運営しています。
※キャストピックとは:対戦開始前、共通の場で全プレイヤーが順番にキャストを選んでいく形式のこと。舞闘会においては、味方同士で同一キャストを選択することができない。また、使用するキャストを敵味方が確認できることで、事前に戦術を練ったり、後からアンチキャストを被せるなど、キャスト選択の駆け引きも行われる。
――実装以後、プレイヤーからの反応はいかがですか?
にしじまん氏:普段からWLWをプレイしていただけているプレイヤーの皆さまには、結構遊んでもらえている印象です。期間中は「舞闘会があるなら、プレイしようかな」というきっかけ作りにも繋がっている気がします。
――約1週間の短期スパンでマッチングバランスを整えるのは、大変ではありませんか?
にしじまん氏:キャストピックの性質上、複数のキャストの腕を求められるケースも多々あるので、マッチングやピックしたキャストなどにより、普段のマッチングよりも荒いマッチングになってしまいますが、普段と違った戦いが楽しめるきっかけと思っていただけたらと考えています。
これを2週間といった中期スパンにすると、対戦環境が次第に成熟してしまうので、気軽さとしても1週間くらいがちょうどよいかと思っています。
D田勢氏:舞闘会では「注目度」というレーティングで計っていますが、マッチング人数を集めるとなると、既存のマスターランクに関してはどうしても幅を広く取らざるを得ませんでした。
ただ、短期間だからこそ集中してプレイしていただけますし、積み重ねを適用しては全国対戦と変わりがないので、そういう点も含めて別物としてプレイしてもらえればと思います。
あと、普段の全国対戦ではあまり見られないチーム構成を見られるのも面白いところですよ。舞闘会ならでは的なキャスト構成もよく見られますからね
――個人的には参加にちょっと尻込みしていました。
D田勢氏:できればあまり難しく考えずに、気軽に遊んでもらいたいですね。負けてもランクが下がるわけではありませんので。それこそイベントとして試しに1回参加してみてください。
――しかし、最低4キャストは使えないと厳しいのでは?
にしじまん氏:普段使っているキャストに加えて、1~2キャストほど使ったことがあれば十分だと思います。ときには自分の希望キャストが全て味方に選択されてしまうこともありますが、そういうときは、使ってみたかったキャストを選んでみるでもいいと思いますよ。
――皆さん、私っぽい人とやるときは美猴とリンは空けておいてください。
D田勢氏:「舞闘会」を通して、プレイヤーの皆さまにはさまざまなキャストを使用していく機会を設けてもらえればと考えています。MOBAでは複数のキャラクターを使用できること自体が、面白さの一つともいえますので。
にしじまん氏:それから、舞闘会に入る前にはカスタマイズでの装備確認を怠らないでくださいね(笑)。
――舞闘会のサブタイトル「夜想曲」「夢想曲」とか、単語のストックはまだあるのですか?
にしじまん氏:運営担当は「大丈夫です!」って言っていますが、心配しているんですよ(笑)。
D田勢氏:まだまだ引き出しはあるようなので、最近は僕らも“何を出してくるのか”を楽しむことにしました。
――期待しております。ではもう一つ、「ヴィラン襲来」についても同様に伺わせてください。
D田勢氏:「ヴィラン襲来」は対戦ではない、純粋な協力モードとなります。元々、修練場というCOM戦の協力モードがありましたが、こちらはステージ数の関係で、マッチングもステージ毎に別々で行われるので、毎回誰かと協力プレイができるわけではなかったんです。
その点、ヴィラン襲来はイベントということで人の集まりもいいですし、チーム全員で一丸となって1つの目標に向かっていく、協力プレイならではの楽しみ方があります。マップを含めてレギュレーションの取り方次第で、攻略法もガラッと変わりますので。
――ゲームにおいて「日本人は協力プレイが大好き」はもはや定説ですしね。
D田勢氏:対戦の気晴らしにってわけではありませんが、皆さまには思い思いに楽しんでもらえています。あと、ヴィラン襲来はマッチング幅も広いので、AAクラスの人とDクラスの人が一緒になったりなど、普段あまりマッチングしない人との繋がりも楽しんでみてください。
にしじまん氏:高ランクの人が「俺がこいつらを引っ張ってやるぜー!」みたいな状況ですよね。それと、ヴィラン襲来こそ新しいキャストを触ってみる機会として利用してもらいたいですね。
――しかし、イベントごとに新しいヴィランを作るのって、大変じゃないんですか?
D田勢氏:彼らにはそれなりに手がかかっているので、けっこう……(笑)。ちょっと悩みどころではあります。
――次はキャストについてですが、一番新しいところで「ヴァイス」の反響はいかがでしたか。
D田勢氏:実装当初からかなり使われていますね。新キャストとしての“目新しさ”や“環境”という部分もありますが、彼女の戦い方は既存のキャストと比べると特殊で、いってしまえばピーキー寄りです。それに合わせるかのようにキャラクター性もかなりピーキーに振っていたので、人を選ぶかなと思っていたのですが、キャラ人気に引っ張られて使用率が高騰した印象です。この人気っぷりは本当に予想外でした。
にしじまん氏:ヴァイスは言葉は乱暴ですし、眼帯をしているしで、いわゆる王道じゃないじゃないですか? 王道な美少女キャラならそれこそサンドリヨンとか、ミクサとか、リトル・アリスだと思うんですよ。それなのに、ビックリするくらいの反響をいただけたのには驚きでした。
今の世の中的には、こういうジャンルがありなのかな、と。女性キャラクターのトレンドを追い切れていませんでした(笑)。
――キャラ愛ですか。確かに実装当初はヴァイスを見かけない日がありませんでした。
にしじまん氏:WLWプレイヤーの皆さまはキャラ愛が強いんですよね。中には“1人のキャストを使い続けることこそが美徳”と言わんばかりにキャラ愛で遊んでくださっている人もいて、対戦環境に関わらず、一択で遊んでいるプレイヤーの皆さまというのも結構いると思っています。
――それでいうと、本日写真を撮っている私の同行者もその口ですね。
撮影担当(ささみ):金髪よりも銀髪、アシェンプテル一択です。
にしじまん氏:いろいろあったでしょう、辛い時代も(笑)。
――現状、キャラクター使用率に関してはいかがでしょう? ワンダー部のキャストランキングですと、「ミクサ」と「リトル・アリス」が多い印象ですが。
にしじまん氏:プレイしていると実感できるかと思いますが、「ミクサ」「リトル・アリス」が2強となっていますね。この2キャストはランクに関わらず、万遍なく使用されています。
D田勢氏:使用者の多い少ないはありますが、それほど偏っていないです。WLWにはまったく使われないというキャストがいませんので。
にしじまん氏:温羅のような特徴的なキャラクター性を持つ男性キャストであっても、絶対数は少ないながら確実に使用層がいますからね。
D田勢氏:でも、女性キャストを魅力的に思ってもらえるのは、WLWの企画当初からのコンセプトですので、世界観を含めて興味を持っていただけること自体は狙い通りといえます。愛されているキャストが多いのは、我々としては本当に嬉しいかぎりです。
――それでは、追加カードについてはいかがでしょうか。新規のカードを追加する際に考えることなど、ひとつお聞かせください。
D田勢氏:大きくはキャストや特殊能力、巨人などで新しい遊び方や立ち回りを提供していきたいこと、もう一つは定期的なスパンで提供していくことを意識しています。最近はキャスト専用カードをはじめ、「このキャストには、こういったカードが合うだろう」と指向性を付けたものもありますが、既存カードの上位互換といいますか、選択肢自体が変わらないようなカードは、あまり多くしないようにと心掛けています。
――稼働後、人気になるであろうカードの傾向は予想通りでしたか?
D田勢氏:いえ、これは稼働当初にまで遡る話ですが、最初はレベル5やレアリティの高いSRのように、“分かりやすいカード”がしばらくの間は使われるだろうと考えていたんです。
ところがふたを開けてみると、「レベル1・3で初動を制するのが大事」といった、戦略を求める構成が主流になっていて、WLWプレイヤーのゲームに対するリテラシーの高さに驚きました。対戦環境が「レベル1のこの瞬間に、この数値が必要だから、デメリットに目をつむって、このカードを装備する」みたいな考えにたどり着くまで、非常に早かったです。
この1年半、プレイヤーの皆さまの口からよく挙がっていたのは「兵士1確ライン(※敵兵士をドローショット1発で倒せる構成)」ですが、これを代表するように、皆さまの装備が一様に似通ってしまうことはなるべく避けていきたいところです。
――最近ですと「蓬莱の玉の枝」が大人気でしたね。私もチケット全投入で確保しました。
にしじまん氏:一時期よりは減ってきているように思います。キャストによっては兵士1確を優先したりと、キャストによって選択肢が出てきていますね。この辺りは使えるカードが増えてきたことにより、徐々に自分好みのアレンジが生まれてきている印象です。
――もう一つ、ソウルに関してはいかがでしょう。
D田勢氏:ソウルはステータス上昇、特殊能力、巨人召喚と、対戦に与える影響が大きいので、皆さま厳選されている印象ですね。選択肢としてはどのソウルを使っても同価値になるような調整を心掛けていますが。
にしじまん氏:現在はネットによる情報交換で「誰々が何々を強いって言ってた」から一気に広がり、対戦環境に一躍ブームが到来するようなケースがよくあります。元々のスペック、対戦環境でのバランス以外の流行も気にしていきたいですね。
「4コマうぉーず」、筆者のイチオシです。
――WLWの開発チームの顔ぶれは、企画当初から変わってきているのでしょうか。
D田勢氏:人員の入れ替えは当然ありますが、大幅に減ったとか、増えたということはないですね。最初からいる人もまだまだ多く在籍しています。
――開発スキルも向上していそうですし、キャスト1体を作るのも大分早くなったのでは?
D田勢氏:いやー、そうでもないんですよ。3Dモデルなどのモノ作りは早くなっているかもしれませんが、それ以上に“新キャストを作ること”自体に頭を捻らなければいけなくなっているので。現行のラインナップに新キャストを加える際は、新しい何かを工夫しなければなりません。
例えば、作ったキャストが「フックと変わらないね」と思われたら、そういうキャストは出すこと自体に意味がありません。やはり、新キャストならではの立ち回りや特徴を付加してあげたいです。そのうえで、キャスト間のバランスや導入以後の対戦環境の変化も考慮しなくてはならないので、キャストを追加するたびに難問になってきています。
にしじまん氏:キャスト追加は本当に大変そうですね。新たなキャストが加わるだけでも、既存との組み合わせによって戦略が累乗式に増えていっていきますから。
――ただ、その組み合わせこそがMOBAの楽しみであり、醍醐味なんですよね。
にしじまん氏&D田勢氏:その通りです!(※お二人、すごくハモっていました)
D田勢氏:組み合わせの数だけ、プレイヤーの皆さまには選択肢が与えられると思うので、これらの問題にめげず、これからも頑張って作っていきます。
――それではこの1年、ゲームのバランス調整で注意してきたことはなんでしょう。
D田勢氏:前提として「~~に寄せていこう」「~~な特徴をつけよう」と意味を持たせて調整してきましたが、それと同じくらい、プレイヤーの皆さまからのフィードバックを大切にしています。実際のプレイの動向などを計りつつ、総合的に判断してきました。
「データだけだと騒がれるような数字は出ていないのに、実際のプレイ環境ではそんなこともない」みたいな事例もいくつかありました。バックボーンとしてのデータは確かに重要ではありますが、それだけでは見えないこともたくさんあります。
上級者と初心者とでは、キャストの強みの引き出し方もまったく異なりますので、さまざまなプレイヤーの皆さまが使うことを想定しなくてはなりません。印象的な意味での強い弱いや、「こっちのランク帯だとそうだけど、そっちのランク帯だとそうじゃない」なども含めて、一つの事例だけで判断しないようにし、環境全体に気を配っています。
――直近で全国大会を控えていますが、ゲームの展開や拡張は並行して進められますか?
にしじまん氏:そうですね、昨年と同じく、大会があるからといってゲームのサポートを止めることはありません。大会は大会、ゲームはゲームと進めていきます。
――多くは言えないと思いますが、大きなバージョンアップの節目となる「Ver.2.0」構想などは考えられていますか?
D田勢氏:まあ、アーケードゲームですので、バージョンアップは皆さまに期待してもらえるところですので、しっかりと考えたうえで進めていきたいですね。
――続いて、WLWのマルチメディア展開の手応えはいかがでしょう。個人的にはプレイヤーズサイトの「4コマうぉーず」が大好きです。
D田勢氏:キャラクター性が垣間見えるコンテンツは、実際にプレイヤーの皆さまからの反応も非常に良いです。
にしじまん氏:前回大会の物販でもキャラクターグッズの人気が高く、大勢の方々に並んでもらうことができました。キャラクター関連以外でも、昨年発売されたサントラは高く評価していただけております。ゲームの外への展開も積極的に行っていきたいと思っていますので、ご興味のある業者さんがいらっしゃれば、お声掛けいただければと思います。(笑)
それから、プレイヤーの皆さまの自主的な活動を応援したいですね。ゲームの外への展開は、プレイヤーの皆さまやその周りにいる方々に楽しんでいただける場や機会が重要なので、そういった意味では、同人活動であったり、ファン自身が創作側として楽しんでいただけるような環境づくりも考えていきたいです。
ワンダー部ではイラスト活動も活発に行われていまして、ガチガチに書き込んだ絵から、鉛筆で気ままに描いた絵まで、さまざまなイラストを積極的に情報共有しています。ゲームだけでなく、創作活動やそれに付随するコミュニティで、WLWを楽しんでいる人たちを繋げていきたいですね。そういた部分にこそ、ワンダー部が光ります。
――あまり明るい話ではありませんが、先日、WLWプレイヤーの不正プレイに対してアカウント停止処分が行われたことがTwitterにて報告されましたが、この対応に至るまでにどのような議論があったのか、お伺いしてもよろしいですか?
にしじまん氏:アーケードゲームはやはり“コミュニティありき”であるということです。チームメンバーや対戦相手がいて、協力対戦ゲームとして成立します。自分だけでなく、そのゲームではオンラインで繋がっているほかのプレイヤーも一緒に楽しんでいるということを忘れないでほしいです。マッチングした人に対する礼儀というか、モラルを持って楽しんでいただきたいです。
WLWでは、一部のプレイヤーの行いが健全にゲームを遊んでいる人の妨げになる事例が起きていました。4vs4のゲームでは1人がゲームを中断するだけで戦況が傾きますし、それでは残りの7人もゲームを楽しめなくなります。プレイ環境の雰囲気については稼働時から課題としてきたことで、何か起きたら、何か対応しなければいけないと常々考えていました。
かといって、実際に処分を下すことは、なるべくならやりたくないことです。これまではプレイデータの解析やプレイヤーの皆さまからの声も参考にして、該当者へは警告文を送らせていただいています。多くはそれで改善するケースがほとんどでしたが、今回に限っては警告以降も改善が見られないということで、アカウント停止処分という形を取らせていただきました。
――ちなみに、ここ数ヶ月で新規プレイヤーの増加傾向はありましたか?
にしじまん氏:新規プレイヤーの数は増えましたね。WLWの場合は4月にWonderland LIBRARYが稼働を開始したことを含め、4月下旬~5月にかけてゲームセンターの中の話題が豊富だった影響もあると思います。
――いろいろと興味深いお話をありがとうございました。最後に、あと半年後の2周年に向けての意気込みを一言ずつ、お願いいたします。
にしじまん氏:「Wonderland Wars」は稼働開始から1年半が経ちましたが、これから先は全国大会をはじめ、プレイヤーの皆さま自身がもっと目立つような展開を進めていきます。それはプレイもそうですが、WLWを通じてのコミュニティであったり、創作活動であったりもそうです。WLWをより楽しんでもらえるような工夫を凝らしていきます。
D田勢氏:今後もWLWでは、常に新しい何かであったり、プレイヤーの皆さまにとって気になるコンテンツを随時投入していきます。バランスやシステムについても、プレイヤーの皆さまが飽きないようなスパンで改善していきますので、ぜひ期待していてください。