2018年12月6日、スクウェア・エニックスより発売になるPS4用ソフト「ラスト レムナント リマスタード」。その開発に携わった、オリジナル版「ラスト レムナント」(以下、ラスレム)のディレクター高井浩氏、アートプロデューサーの直良有祐氏、リマスター版のディレクター坂本幸一郎氏へのインタビューの模様をお届けする。
目次
10年経ってついにPS機種での発売―その経緯と10年が経過してしまった理由は?
――10年経ってついにPS機種での発売ですが、まずは現在のお気持ちについてお伺いできればと思います。
高井氏:嬉しいですね。ただ、ただ、嬉しいです。
坂本氏:それだけですか!?
高井氏:本当に嬉しいので(笑)。
直良氏:僕は、一度作ったものにまた手を入れられる機会があまりなかったので、それが新鮮でした。あと「ようやく卒業できますね」という感じです。
坂本氏:僕は、Xbox 360版の「ラスレム」の開発当時は別のプロジェクトに関わっていたため一個人として「ラスレム」を遊んでいて、これは本当に良い作品だと感じたので、PSハードに移植されないのはもったいないと思っていました。ようやくPSハードでのリリースが実現したので、嬉しいです。
直良氏:僕らが坂本くんに御礼を言わないといけないところですね。
高井氏:そういうことになりますよね、ありがとうございます。
――PS3では出せなかった理由をお伺いできればと思います。
高井氏:PS3版の工数を見積もった時に、思いのほか大きな工数が出てしまい、現場で「いいから黙ってやらせて」というレベルじゃなく、経営判断を仰がざるを得なくなってしまったんですよ。「今、色んなところも大変なのに、それだけの工数抱えられても」と、当時の経営層が判断しまして。
なので、後ろ髪を引かれつつも、気が付けば僕は「FINAL FANTASY XIV」という足の長いMMORPGに片足を突っ込むどころか両足を突っ込んでしまい、直良は「FINAL FANTASY XV」っていう、これまた足の長いプロジェクトに足をつっこんでしまい、なかなか手を出す余裕もなくなってしまいました。
仮に移植という形で社内のスタッフが手を挙げてくれるなら、僕らから余計なオーダーをする気もないので、気持ちよくやってもらいたいなぁ、というのはずっと言い続けていたんですけれど。
直良氏:気持ちだけずっと残ったまま、チームは散開しちゃって。
――PS3で想像以上の工数がかかってしまった理由は何だったのでしょうか?
直良氏:乗せ換える作業は実際に色々やっていたんですけれど、どこまでやるのか、解消するのか、というのがあったんですね。
Xbox 360版でやれなかったことがいっぱいあったので、そこまで消化したいじゃないですか。商品として競争力を高めるために、PC版でやったことをPS3でやろうとして見積もりを出すと、どんどんタスクが積まれていっちゃうんですよね。
高井氏:そうなんですよね。工数がかかる以上、発売時期は当然後ろにいってしまいますし、既にPC版を見てしまった人たちはPC版と同等以上じゃないと納得してもらえないとなった時に、やはりこれはどうにもならないという感じでした。
直良氏:あの時、実際に人月表を見て「ギャー!」ってなってたもんね。
高井氏:そうですね(笑)。
――PS4で出すことになった経緯をお伺いできればと思います。
坂本氏:今申し上げた通り、PS3版はこういった理由によって、眠ったままになってしまいました。ですが、某雑誌のランキングにずっと残っていたり、ユーザーの期待度というのはとても高いと思っていたので、いつか移植が出来れば、とチャンスを伺っていました。それで社内的に何度かその話はしていたんですけれども、今回ようやく会社からゴーが出たんです。
――今になって会社から許可が下りたのは、発売10周年だからですか?
坂本氏:実は、10周年はまったくの偶然なんですよ。なので、うまく10周年に乗れてラッキー、みたいな(笑)。
一同:(爆笑)
坂本氏:僕の所属している部署が、過去の作品の移植やリマスター的なものもいくつか手掛けているところでして、私自身「FINAL FANTASY IX」のスマートフォン版やSteam版への移植を担当しました。今は「LEFT ALIVE」というタイトルにも関わっているのですが、引き続き移植もやってほしいという話がありました。
それで僕自身「ラスレム」を移植したい、という気持ちがあったので、移植をやるなら「ラスレム」をやりたい、と。許可が下りた理由は…恐らくはそういう実績などから、OKが出たのではないかと思います。
――元々「ラスレム」はSteam版での評価も高かったですが、そういった面も許可が下りた理由のひとつにはなっているのでしょうか。
坂本氏:そうですね。Xbox 360版の時も、Steam版の時でも、とにかくプレイした人は、ほぼ皆さん「面白い」って言ってくれていたんですよ。移植をすることでユーザーの方が喜ぶだろうというのは、色んなリサーチから想像できる状況でした。それらのユーザーさんの声や、過去のデータというのは、非常に重要だったと思います。
――PS4で出すという発表後、ユーザーの皆さんの反応はいかがでしたか?
高井氏:ツイッターのトレンドに入っていましたよね。
直良氏:あれは、ちょっと嬉しかったです。
坂本氏:本当に、10年待っていただけていたんだな、というのを感じましたね。
高井氏:この10年の間にゲーム自体を卒業しちゃっている方も多いと思うんですけれど、待ってくれている人がそれだけいたのは嬉しいですよね。今の時代にこういうタイプのゲームは、もうないですしね(笑)。
――言わせて頂くと、10年前からなかったですよ(笑)。
一同:(爆笑)。
直良氏:高井さん、また自分が何作ったのか覚えていないの?
高井氏:(笑)。いや、今ってユーザビリティがどんどん親切で、優しく、簡単に、躓かない、誰でも最後まで遊べる、っていうのがあるんですけれど、そういう観点からいくと「ラスレム」は真っ向勝負ではありますよね。今のトレンドとは違いますが、逆にその点を評価してくだされば、とは思います。
「ラスレム」は当時チャレンジをしすぎた作品だった
――皆さんにとって、「ラスレム」とは、どういう作品でしょうか。
高井氏:チャレンジでしたね。ゲーム的にも、よくあるRPGにしない、という目標で作っていましたし、取り巻く環境とかハードウェアも、10年前当時の次世代機(※PS3やXbox 360)と言われるものに変わった瞬間で、かつエンジンって呼ばれるものでゲームを作るという。
それまではフルスクラッチといって、全部自分たちで作るという文化だったんですが、「ラスレム」はこれまでとは違う文化で作成してみよう、と初めて舵を切った作品だったんです。一度にチャレンジをしすぎて、何故もう少しバラさなかったのか、とは今になって本当に思いますけどね。「もっと作りやすいゲームにすればよかった、なんで全部初挑戦だったんだろう」って思いますもん(笑)。
――でも、だからこそ「ラスレム」をプレイした人には、それだけ突き刺さったんだと思いますよ。ただ、ハードルは高かったですよね。
高井氏:色んな意味で、チャレンジしすぎました(笑)。
直良氏:スタッフにも鼻息荒いやつらが多かったので、みんな「あれもやろうぜ、これもやろうぜ」と、がっついていたんですよね。
僕らアートのほうは、最初は一枚のポリゴンがなんでデコボコに見えるんだろう、みたいな、そんなところから始まって、本当に手探りでした。エンジン文化も初めてだったし、海外のエンジン開発メーカーとやりとりをしながら作るというのも初挑戦だったし、そのエンジン自体に日本語版がなかったので、このボタンはなんだろうっていうのを、1ヶ月くらい黙々とさわっていたりしました。
エンジンもあの頃はまだだいぶアバウトで、「こういうことをしたいんだけど、どうしたらいいんだろう」と問い合わせると、「それは難しいから、そっちで全部作っちゃったほうがいいんじゃないかな」と、回答になっていないものが返ってきたこともありました(笑)。
しかも日本の場合はキャラクターを一体一体起こして、それを大量に作るという制作方法に対して、海外のゲームはNPCとか重要度の低いキャラクターのモデルのデータをひとつにまとめて作るんですよ。設計思想が、日本とは全然違うんですよね。
高井氏:そういうことがわからないまま、手を出しちゃってたんですよね。
直良氏:そういう手探り感で作ったのがXbox 360版で、PC版を作っている頃にはスタッフもだいぶエンジンでの開発に慣れました。なので後から振り返ると、もっと他のやり方はあったかなぁと思う部分はありますね。そういった心残りのある作品が、こういう形で日の目を見させていただけるのは、本当にありがとうございます、という気持ちです。
――今回のリマスターは、PC版をベースにされているということでよろしいんでしょうか?
坂本氏:そうですね。PC版のみの乱殺マニアクスモード(※クリア後に出現する超高難易度モード)とかも収録されていますよ。
――ちなみに私はXbox 360版もPC版もプレイしていて、PC版でのみラッシュがいつの間にか「クリムゾンフレア」っていう禁忌術法を覚えたんですけれど、これの修得方法がまったくわからなくて。
高井氏:出現条件までは覚えていないなぁ。結構複雑な条件だった気がするけど・・・。PC版に関してはスタッフがかなり好きにやっていたんで、バトルの前廣(※前廣和豊氏。現在は「FFXIV」のシナリオセクション・マネージャー)あたりが適当なことやった可能性も高いですけれど(笑)。
直良氏:前廣あたりっぽいなぁ。PC版のあとに攻略本を出していないので、情報の精査ができていないんですよね。あとで聞いたら、前廣が「ごめん、俺」って言いそうですね(笑)。
高井氏:「違うよ!」って言う可能性もありますけどね。
坂本氏:そうですね。細かく説明すると複雑な条件となってしまうんですが。よく習得できましたね(笑)。
――クエストの追加はありますか?
坂本氏:そこはあえてしていません。
直良氏:元のボリュームがね…(笑)。
坂本氏:元のボリュームももちろんそうなんですけど、Xbox 360版で出るモンスターがPC版では出ないとか細かい部分が色々調整されていて、僕は最初はXbox 360版の通りにするのが正解なんじゃないかと思っていました。PC版で変えられている部分をよくよく調べてみると、すごいバランスが考えられているんですよね。
これで下手に追加すると、色んなところに破綻が出るんじゃないかと思い、新しいクエストを追加しないほうがいい、と最終的に判断しました。
――出現モンスター然り、先程のクリムゾンフレア然りで、PC版は攻略本がないので、Xbox 360版との変更部分が当時はよくわからなかったんです。リマスターにあたって、PC版準拠の攻略本はでませんか?
坂本氏:現時点では未定です。
高井氏:PC版は、Xbox 360版で気がかりだったところを全部直しちゃっているんですよ。しかもそれで色々バランスが取れてしまったが故に、PC版でしか出てこないものなどが多数生まれてしまったんですよね。
直良氏:あと、データ保全がねぇ(笑)。
坂本氏:そうなんですよね、それにも泣かされました。
直良氏:掘り返すと、「あれどうなってんの、これどうなってんの」ってなりますからね。
坂本氏:一部は、マスターを出した後に直した形跡があったりとかするんで(笑)。
高井氏:昔の開発は、マスターを出しても「どうせ戻ってくるだろう」と思っている節があるんですよ(笑)。だから戻ってきた時に直しておこう、みたいな空気があったんですが、それが戻ってこなかった時は、そのまま製品になっちゃうんですよね…(笑)。
坂本氏:逆もあって、製品版ではバグはないのに、マスター版として残っているデータにバグがあって、「おかしいな、直したやつのデータが残っていない!」みたいなこともありますよ(笑)。今回もデータが残っていない、ということは、多々ありましたね…。
直良氏:タイトル画面も、うちのハードディスクから発見されましたからね。残っていてよかった。
高井氏:物持ちいいね(笑)。
直良氏:もちろん、スクエニを退社するときにちゃんと松田社長に「データ持ち帰りますね」って断って持ち帰ったんですよ。「何かあるといけないので」と持って帰ってきたら、本当に何かありましたね(笑)。正直なところ、「ラスレム」がこうして再び出るなんて、予想もしなかったですし。
「ラスレム」のアートに迫る――リマスター版では100体以上のキャラクターアイコンを直良氏自らリファイン!
――直良さんは今作にあわせてビジュアルを描き下ろしていますが、10年前の作品を改めて描くにあたって苦労したところはありますか?
直良氏:かつて「ラスレム」をプレイしてもらった人たちには、どうしても思い出補正がかかるじゃないですか。まずは、そこでハードルが上がりますよね。
あと、発売に向けて絵を起こしていくっていうのはどのタイトルでもやってきているので作りやすいんですが、既に出た作品で自分たちも全貌を解っているものを、ああいうグループショットという形の絵に落とすのは、すごく悩みました。
物語の中での各キャラクターの立ち位置とかそういうのを含ませつつ、新しく見る人にもちゃんと伝えなきゃいけないし、それでいて王道っぽさもある絵にしていかなきゃいけないですし、そう考えると思いの外、手こずることになりましたね。
後はキャラクター自体も思い出さなきゃいけないですし。「あれ、そういえばこれ、どうなっているんだっけ」みたいなのとか(笑)。
高井氏:なんでこうしてたんだっけ、っていう部分はありますよね。
直良氏:そういうところに、すごい時間がかかってしまって。しかも塗り方も新しい塗り方を試してみようとか余計なことを始めちゃったので、なおさら収まりがつかなくなってしまいました。
――あの絵の中で、一番苦労したキャラクターは誰ですか?
直良氏:ダヴィッドですね。記号としてはとても簡単なキャラクターなんですけれど、あの人は一番どういう立場で見せるのがいいのか、わからないキャラクターなんですよ。
表情もそうですが、立場ある人でもあるし、だからといってあまり思わせぶりにしても仕方ないですし、でも実際に色んなもの背負っている人なので、構図的にもラッシュに対してどう置くのがいいのだろう、と色んなことを考えて、レイアウトに時間がかかりましたね。
――ゲーム内で使用されているアイコンも、全て書き直されたということですが。
直良氏:そうですね。最初は元々ある絵を引き延ばして、開発会社さんが一生懸命綺麗に直してくださっていたんですけど、ちょっと「10年前の俺を引き延ばすなー!」みたいな感じになっちゃって(笑)。さすがにお客さんの前に出せるクオリティじゃないと思って、「これはやらせてくれ」とお願いしました。
元の絵があったため、そんなに一生懸命手をいれなくても良かったんそれほど大きな修正はなかったので、1キャラ30分くらいのペースで直していって、110体くらい100体以上のキャラクターを4~5日で書き直しました。
高井氏:人がいっぱい出るゲームですみません(笑)。
直良氏:いえいえ。10年前よりも、ちょっとは上手くなったかと思うんですけれども(笑)。
――ワールドのアートとかで苦労された部分はありますか?
直良氏:ワールドは僕よりも別の担当がメインで描いていたんですけれども、高井、河津、グラフィックのディレクションをしていた人間で、レムナントというものはどういうものが正解なんだろうっていう、一つの意識を共有できるまでは、当時かなり時間がかかりました。
リードでやっていたアーティストが、アスラムにある「ヴァレリアハート」という巨大な剣のレムナントをドカンと刺してくれて、それが「ああ、これかも」と見えてきた瞬間でしたね。
それまでは本当に何をやってもオーソドックスなファンタジーの世界にしかならなかったので、そこから「貴方の街にひとつずつあるレムナント」みたいなものが徐々に構築されていきました。
――「貴方の街にひとつずつあるレムナント」という話ですと、私はブルーエルフが一番好きなんですが、皆さんのお気に入りのレムナントってありますか?
高井氏:ブルーエルフが好きって、渋いなぁ(笑)。
直良氏:僕はエリュシオンと、ナーガ・プールにあるグゥエインとかも好きです。
坂本氏:僕は、バルテロッサにあるトウテツですね。
直良氏:一番好きなのは、〇〇(※ネタバレ)なんですけどね。
――それはちょっとマズいやつですね。
高井氏:じゃあ僕は、●●(※ネタバレ)で。
――更にまずいですね(笑)。
高井氏:サイクロプスを呼び出すタリスマンは、機能としては面白いですよね。
――景色もより綺麗になったかと思いますが、お勧めのポイントはありますか?
高井氏:ディヴァインディヴァイド渓谷は、妙に記憶に残っていますね。
直良氏:今回リマスターをするにあたって、絵を再構築してもらっていて、ダヴィッドの玉座のところはライティングも変えてもらい、テクスチャも綺麗にしてもらって、すごい見栄えが変わって「あ、ここいい」ってなりましたね。イラストで描いた場所だったっていうのもあって、尚更思い出深いのもあります。
坂本氏:僕は、開発に最初に「水の質感を、こういう感じにできます」と見せられたのがクローキグ湿原で、「これはいける」と思ったので、あそこがすごい好きですね。
――ならば、フォーン海岸とかもかなり綺麗になったんじゃないでしょうか?
坂本氏:そうですね。水の表現はこの10年でかなり進化したので、本当に綺麗になっていますよ。
――皆さんがお気に入りのユニークリーダーはどなたですか?
高井氏:僕はホーワンゲール(※)ですね。アイツには苦労させられたんで(笑)。
※ホーワンゲールを仲間にするためには、ゲーム中でも最強の一体と言われている「神と呼ばれしもの」を倒さなければならない。
直良氏:僕はエイミーです。エマにも思い入れがあったし、デザインをするのに苦労したんですよね。最初にエマをデザインした時は、かっこいい男を描いて、それを後から女性に性別転換させているんですよ。
僕はかっこよく見える女性を描くときにはそういう手法を取ることがあるのですが、そこからそのエマの面影がある娘、となった時に可愛らしさが必要になってしまい、すごく難しかったんですよ。
それもあって、エイミーが動いていると、「うちの子」っていう気持ちになっちゃうんですよね。能力的に融通がきくっていうのもありますけど。
坂本氏:僕はメインキャラクターで申し訳ないんですけれど、パグズですね。戦闘中に彼が杖を振っている様子とかが何かバトルのシーンとそぐわないというか、えらく場違いな感じなのに、でも強い、っていうところが(笑)。
直良氏:某SF映画の騎士的なポジションですよね、パグズは。
坂本氏:そうなんですよね。どちらかというと戦闘に出なくてもよくて、ずっと玉座のところにいるようなポジションなのに、ちゃんと戦ってくれるところが好きです。
オリジナル版ファンには気になる、各所の調整について確認!
――バトル部分については、難易度の調整とかはされていないんでしょうか?
坂本氏:していないです。先程のクエストのお話と同じで、下手にいじると色んなところに破綻が出そうなのでそこはやめておこう、っていうのと、以前に遊んだ方たちが、自分の当時の攻略法が使えないのは困るだろうと考えたのもあります。後からそういうファンの方たちに、「なんでいじったんだ」と思われてしまうのも悲しいので、あえてそこはいじらなかったです。
――それを伺って、安心しました。リマスターにあたって、ボスを弱くされたらどうしようと思っていたので。
坂本氏:弱くされたらどうしようってなるんですか(笑)。
――絶対に弱くしてほしくないです。2時間戦って(※Xbox 360版当時)全滅したいんです。
坂本氏:通常の雑魚はBR(バトルランク)の影響をすごく受けますけど、ボス戦はあまりBRの影響を受けないので、一生懸命頑張れば勝てるようになるはずなんですけれどね(笑)。
――「ラスレム」は、そういう部分を含めて、初回はよくわからないじゃないですか。初回のボスと2時間戦って負けるっていう手探り感も、「ラスレム」の良さの一つだと思います。
坂本氏:昔からの根強いファンの方にそうおっしゃっていただけると、やはりいじらなくてよかったな、と思いますね。
高井氏:難易度は下手にいじらないほうがいいですよね。先程から何回か言っていますけれど、今は誰でもエンディングにたどりつける、みたいなゲームが主流になっている部分もあるので、こういうゲームでは難易度調整は迷うところでもあります。
それでも今、あえて何か追加することがあるかって考えると、ターン毎にセーブ機能とかくらいだったら、ついていてもよかったかもなぁ、と思いますが、それすら2時間ボスと戦って、清々しく2時間が消し飛んだ人にとっては、余計なことするなって感じだと思うんですよね。
――PC版から倍速モードがついて、大体20~30分くらいで終わるようになりましたし、それで充分かと思います。
坂本氏:バトルの倍速モードはPC版と同じなのですが、リマスター版ではラッシュの移動速度も変えられるようにしたんです。そこについては、Steam版とかで要望が多かったんですよね。
この機能追加で、簡単になったクエストがあって、人によっては、お得に感じると思うんですけども。敵を追いかけるクエストで、移動速度が速くなったので簡単に追いつけちゃうんですよ。
倍速にすると敵の移動速度も早くなるっていうのも一応考えたんですけど、楽なのが良い人もいるだろうし、と思いまして、敵の速度はいじりませんでした。原作通りに遊びたい方は、移動速度を遅いままで遊んでいただければと思います。
――バトルの最大参加人数は18人までの、6ユニオンまででしょうか。
高井氏:生放送をやった時に記憶が曖昧だったもので15人って言ってしまったと思うんですが、最終的には最大18人ですね。
坂本氏:そうですね、これもバトルの難易度に関わってしまうところなので変更はないです。いいキャラクターがたくさんいるのにこれだけの人数しかパーティに入れられないのかというもどかしさはあると思いますが、そこも含めて楽しんでいただきたいです。
――白覇王やロストレムナントを超えるような強敵の追加は?
坂本氏:ボリューム的に十分だと思いましたので、足していません。
高井氏:あれ以上の敵と戦いたい人いるんですかね(笑)。
直良氏:PC版でかなり手を入れて、ある意味でPC版がディレクターズカット版みたいになっているのもあるんで、そこの上に更に追加するのも、っていうのはありましたね。
高井氏:正直に言うと、あれらの強敵系って、理論値で勝てる人がいるかもね、くらいでしか当時試していないんですよ。なので当時は、「みんな、あれを倒すのか」っていう気持ちで見ていましたよ(笑)。
坂本氏:Xbox 360版からPC版になったときに、Xbox 360版で配信されたDLCとか全部入っているっていう状態になって、クエストだったり敵の配置も変わっているんですよね。その辺りが結構複雑に修正されていて、難易度やバトルの追加を簡単にできないんですよ。僕らの知らないところで破綻するんじゃないかというのがあって。
高井氏:めっちゃこわいですよね(笑)。
――仲間の成長方針とか、素材を欲しがったり、特定の武器をラッシュが所持すると欲しがったりするのも変わらず、というところでしょうか。
坂本氏:その部分はこのゲームの特徴でもあるので、最初から変えないほうがいいと思いました。自分が育成方針を決められないっていうのはすごいなぁと、10年前は思いましたが(笑)。
高井氏:「ラスレム」のキャラクターは生き物なので、こっちの勝手な御仕着せはだめ、っていうことですね(笑)。あの人たちは、あの中でちゃんと生きているので。
――PS4版になって、当然トロフィーがあると思うんですけれども、トロフィーの内容はXbox 360版の時の実績と同じになるんでしょうか?
坂本氏:全く同じにしているはずです。PS4版だけで言うと、全部のトロフィーを取ればプラチナトロフィーがもらえるっていうのはありますけれど、変更点と言えばそれくらいだと思います。
開発陣営のパーティの方針は?堅田氏も交えて語ってもらう
――皆さんのラッシュのお勧めの育成方針とかありますか?
高井氏:僕は剣から杖まで一通りやってしまっていて、自分の方針がなんなのかわからないラッシュになっていましたね(笑)。
直良氏:僕たちはデバッグでやっているからどうしてもそうなっちゃって、あんまりひとつの方向に偏って育成させられなかったんですよね。僕らも1周目の時って、プレイヤーの皆さんとまったく同じ状況だったんですよ。ラッシュは万遍なくどういう方面にも育てられるので、中途半端になってしまうという状態で。
坂本氏:僕もプレイヤーとして最初にやったときは全然わからなかったので、「主人公なんだし剣持たせないとでしょ」と、どんどんファイティングアーツばっかり使っちゃってましたね。
直良氏:最初はそうなりがちですよね。
坂本氏:最初のトレジャーから手に入る武器が、剣じゃないですか。なのでこれをどんどん強化していけばいいんだな、みたいな感じになっちゃいますよね。後からラッシュの育成が自分で決められるっていうのを知って、「そうだったんだ…」ってなったりして。でももう取返しがつかないな、と(笑)。
高井氏:めっちゃ不親切だな、このゲーム(笑)。
直良氏:誰が作ったんだよ(笑)。
一同:(爆笑)
――そのあたりを補うチュートリアルが追加されていたりしないんですか?
坂本氏:最初は内部仕様を知らないで楽しんでもらいたいという部分があって、入れていません。PS4上でマニュアルは読めるようにはしてありますけれど、マニュアルだけでは内部仕様まではわかりませんね。
――(笑)。実際さわってみないと、あのゲームはわからないですからね。
直良氏:触ってみても、悩みますから(笑)。
――最後のほうでようやく「あー…」ってなりますもんね。
高井氏:堅田さんは、どうですか?(※堅田愛咲美氏。「ラスレム」リマスター版プロジェクトアシスタント)
堅田氏:自分の好きなように育てて、愛のあるキャラを入れるのがお勧め、という感じですね。序盤に育てていたキャラはどうしても強くなっちゃって、後から加入してきたキャラが見劣りしちゃうんですけれど、それでも好きなら無理やり組み込んで使いますし。
高井氏:二周目以降で誰が仲間になるのか全部わかっている状態で、あいつとあいつとあいつは絶対パーティにいれたい、みたいな計画をたてて遊びだすと楽しいですよね。
直良氏:堅田さんは、ラッシュはどう育ててるの?
堅田氏:私は主人公は剣と盾派なので、片手剣寄りで育てていますね。私はまだ二周目に入れていないですけれど、二周目になったら二刀流とか、若干そういう遊びを始めてもいいかなぁと思います。
――私のラッシュはかたくなに術法寄りで、ひたすら禁忌術法を連発させるので、皆さんこだわりがあって面白いですね! まさに遊び方は無限大という感じです。
高井氏:それがこのゲームのいいところですね。
「ラスレム」のバトル楽曲は、高井氏のギターへのこだわりで制作された!
――音楽はリマスター版でも変更はなしですか?
坂本氏:変更していません。サウンドのほうにも確認しましたが、いじらなくてもいいという判断になりましたね。
――関戸剛さんのサウンドは本当に合っていましたね。関戸さんに音楽をお願いした経緯は覚えていますか?
高井氏:まずギターが弾ける人がいいなっていうのがありまして。それで、関戸さんがバリバリのギター弾きなので。あとは僕自身がロックやメタルというその手の曲が好きなのもあって、そういう曲が書ける人っていうので、関戸さんにお願いしました。
直良氏:高井さん、とにかくギターにはめっちゃこだわっていましたよね。
――それはやはりバトルを中心に進むゲームで、バトル曲を優先的に考えたからでしょうか。
高井氏:そうですね。僕、バトルの曲にしか興味がなかったんですよ。なので、バトル曲以外は良しなに、くらいで(笑)。
関戸さんと特に話し込んだのは、モラルが遷移するときにバトル曲が変わるじゃないですか。あの曲の入りのところが、いきなりクライマックス感がないと変わった感じがしないから、っていうのがありました。
でも他のイベントシーンの曲とかは、「うん、いいんじゃないかな」と、関戸さんにほぼお任せ状態でしたね。バトルだけ自分の好みをぶつけた、っていう感じです。
直良氏:あの音楽はシステムとも連動していたし、よかったよね。
高井氏:人によっては「何故全部ロックなんだ」って感じる人もいるかもしれませんけどね(笑)。
坂本氏:バトル曲が凄くいい、という評価はもらっていますね。生放送をやった時も、バトルシーンでそういうコメントがたくさんついていました。
――10年間ずっとサントラ聞いている身としては、そこでリマスター版発売記念とかでライブをやっていただきたいですね。
坂本氏:なるほど・・・ ご意見として承っておきます。
「ラスレム」はやればやるほど面白さがわかるスルメのようなゲーム――リマスター版を待つファンへのメッセージ
――PS機種での発売を10年待ち続けた、まだ「ラスレム」を未プレイの方たちに向けて、一言お願いします。
高井氏:近年ない、歯ごたえのあるゲームだとは思うんですけれども、愛をもって様々な要素を理解をしていただければ、そこから面白さがスルメのように出てくるゲームですので、ぜひ一度手に取ってもらえると嬉しいなと思います。
直良氏:今こういうタイプのゲームはあまりないですが、まずは一度やってみていただきたいです。スクエニさんからリメイク作品が多く出されていますが、ちゃんと魅力のある作品がリメイクされていますし、「ラスレム」もその作品と肩を並べられるゲームだと思います。今、このゲームをどう感じていただけるかは楽しみでもあり、怖くもありますが、僕たちは自信を持って勧めたいです。
坂本氏:僕は、「何故PSハードで出ないんだ」と、ずっと思っていた人間なので、PS3からPS4へと当初想定していたハードではなくなってしまいましたが、今回チャンスに恵まれて移植させてもらうことが出来て、本当に嬉しいです。
Xbox 360版、PC版を遊んでいなかった人はもちろんのこと、遊んだ人もより快適に遊べるように移植はできたと思います。「10年経っても色褪せないのはすごい」と、移植して僕自身そう思ったので、ぜひ遊んでもらいたいなと思います。
――では最後に、Xbox 360版、PC版から10年応援し続けてきたファンに向けてメッセージをお願いします。
高井氏:Xbox 360版とかPC版をひたすら遊び続けてくださったお客さんにとっては、今やってもやっぱりハマれると思うので、時間のかかるゲームですけれど、これを機にもう一回プレイしてほしいですね。
直良氏:僕にとっては、今でも思い入れのあるキャラクターたちばかりです。10年経って、ちょっと綺麗になった彼らに会ってもらいたいなと思いますし、もちろんキャラクター以外の部分も想像を超えて綺麗にしてもらえたので、見て歩くだけでも新鮮な世界になっていると思います。ぜひ、今作でも遊んでいただきたいです。よろしくお願いします。
――ありがとうございました!
「クリムゾンフレア」の修得方法
リーダーチェック
バトル突入時に、該当ユニオンに属するリーダーユニットが、突撃術法のSランク技を習得済み。
ユニットチェック
バトル突入時に、該当ユニオンに属するリーダー以外のユニットとして、
突撃術法
狙撃術法
工作術法
戦術術法
のそれぞれの習得者を1名以上配置している。
※アクション/レベルは問わず。
※敵ターゲットに攻撃できる術法、かつ戦略以外の術法を、リーダー以外の4人がそれぞれ使用する必要がある。
モラルチェック
コマンド選択時に、全体モラルが一定値以上、味方に優勢であること。
コマンド選択時に、該当ユニオンのユニオンモラルが一定値以上あること。
ステータスチェック
コマンド選択時に、該当ユニオンが、特定のステータス異常になっていないこと。
コマンド選択時に、該当ユニオンに属するユニットが、特定のステータス異常になっていないこと。
状況チェック
コマンド選択時に、該当ユニオンがロックアップしていないこと。
コマンド選択時に、該当ユニオンに属するユニットの初期使用アクション必要AP、およびクリムゾンフレアの必要AP、+1を満たしていること。
※アクション合計100、クリムゾンフレア153なら、AP254以上必要。
コマンド選択時に、該当ユニオンに属するユニットが、優先行動を持っていないこと。
※各ユニットが各々の術法で全力攻撃できる状況であること。
上記条件を満たしている場合に、コマンドで「ミスティックアークで攻めろ」を選択。発動後、バトルに勝利するとリーダーが習得。
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※画面は開発中のものです。
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