「ラスト レムナント リマスタード」Nintendo Switch版のリリースを記念して、「ラスト レムナント」の楽曲に携わる関戸剛氏と山中康夫氏にインタビューを実施した。

「ラスト レムナント」(以下、「ラスレム」)が約10年の時を経てコンシューマ機に蘇った「ラスト レムナント リマスタード」。2018年12月6日にPS4用ソフトとしてスクウェア・エニックスよりリリースされたが、2019年6月11日よりNintendo Switchでも遊べるようになった。

Gamerではこれまで、高井氏、直良氏、坂本氏にオリジナル版開発当時の秘話などを語ってもらったインタビューや、初心者に贈る「ラスレム」指南書など、同作に関する記事をいくつかお届けしてきた。そして今回、「ラスレム」の楽曲を担当した関戸剛氏と山中康夫氏に、10年経っても色褪せない同作の音楽の魅力に迫るインタビューを実施した。

なお、これからプレイする人たちのためにネタバレにあたりそうなイベントシーンやボス名は詳細を伏せてあるが、一部のボス名などはそのまま掲載しているので、これからプレイする予定のある人はご注意いただきたい。

制作協力:株式会社スクウェア・エニックス

主人公ラッシュのネーミングもロックからのオマージュ!ロックに彩られる「ラスレム」の世界観のこだわり

――まずは制作当時の、関戸さん、山中さん、それぞれの役割をお聞かせください。

関戸氏:スクウェア・エニックスのサウンド部、コンポーザーの関戸剛と申します。僕は「ラスレム」で、音楽を担当していました。

山中氏:同じく、スクウェア・エニックスのサウンド部の山中康央です。当初はシンセオペレーターとして入ったんですが、楽曲のミックスとかダンジョン関連の楽曲を作ったりもしていました。

関戸剛氏 山中康央氏

――どのような経緯で「ラスレム」の音楽を担当することになったのでしょう?

関戸氏:「ラスレム」の開発が始まる前、「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」(以下、「ミンサガ」)にてメインコンポーザーの伊藤賢治さんと共に僕も数曲担当していたんですが、そこに「ラスレム」のディレクターである高井浩さんもバトルディレクターとして参加していたんです。その後に「ラスレムを作るのでぜひ一緒にやりましょう!」と声をかけていただけたのです。すごく嬉しかったのをよく覚えています。

――全体的な音楽のコンセプトなどは、どうなっていたのですか?

関戸氏:「ラスレム」の主人公の「ラッシュ・サイクス」という名前は、実はジョン・サイクスという有名なロックギターリストからのオマージュなんです。名付けたのは高井さんですが、それくらい高井さんがとにかくロック好きなのもあって、ロックをまず骨格に持っていきたいという要望がありました。

――10年前の当時も、そして今でも、RPGでこれだけ正統派なロックが多様されているタイトルは珍しいと思います。

関戸氏:そうですね。メロディアスなロック、というのが高井さんの要望でした。

――「ラスレム」の楽曲ではギターが多く使われていますが、あれはギター奏者としても有名な関戸さんがご自身で演奏されているんですよね。

関戸氏:エレキギターに関しては、基本的に自分ですべて演奏しています。ベースとかは山中くんに頼んだものもありますね。アコースティックギターはシンセなどで鳴らしているものもあります。

山中氏:アコースティックギターも、何曲かは生で録音しているはずですけどね。全曲ではないです。

――バンド形式で収録されていたりする曲もあるんでしょうか?

関戸氏:ロックバンド調に聴こえるものでも、ほとんどはフェイクです。PC音源で出しているものがほとんどで。バトル曲じゃないものでは、ストリングスを生で収録した曲などはありました。

山中氏:でも一曲だけバンド形式で収録したものがありました。エンディングの「Journey's End」が、そうでした。

関戸氏:ああ、そうでしたね。あれはドラムを当時のローカライズ担当のロバートにやってもらったんですよね。「Journey's End」だけ、まさにバンド形式で演奏して録音しています。

山中氏:歌は別録りで、オケができてからドナ・バークさんに歌を入れていただいたという感じです。

――「Journey's End」は本当に泣ける曲でしたが、ドナさんを起用したきっかけとかはあったのでしょうか?

関戸氏:実はドナさんは、元々「この人に頼もう」と思っていたシンガーさんの事務所の社長さんだったんですよ。で、そのシンガーさんにオファーを出したらドナさんが仮歌を入れて返してきてくれて、それがすごいハマっていたので、急遽ドナさんに頼もうと変更したんです(笑)。社長さんと言えどもプロの歌手でもあるので、何回か歌ってもらってビシっと決めていかれましたね。

――開発時、「レムナント」という未知のものをどう開発メンバーの中で共有するのに苦労したというのは以前に直良さんがおっしゃっていたのですが、音楽面でも「レムナント」という未知の存在への表現で苦労した部分はありますか?

関戸氏:僕は全然苦労していないんですよ(笑)。…というのも、サウンドディレクターだった御子柴(※御子柴健一氏)が、既にエーテルのような流体のようなそういうものを、サウンドエフェクトで表現してくれていまして。

山中氏:そのサウンドエフェクトが、サウンドトラックの一曲目に入っている「The First Awakening」の冒頭部分ですね。当時は「レムナント起動SE」って呼ばれていました。あの音が印象的なので、サントラにも入れてしまおうと。

関戸氏:僕は、そのSEに続けて、ぱっと音楽が鳴り出すように作曲していました。あのSEが先にあったおかげで、「レムナント」というものへの楽曲のイメージはとても掴みやすかったんです。

――タイトル画面でまず聴くことになる音は、そもそも音楽ではなくSEだったんですね。そこに新たにタイトル画面としての曲をつけて、「The First Awakening」という一曲になったと。あの神秘的なタイトル画面でのBGMの音は、ずっと気になっていたんですよね。

関戸氏:かっこいいですよね。御子柴の力作です!

山中氏:タイトル楽曲も、最初メロディがもっとちゃんと入っているバージョンがあったんです。でももう少し抽象的にしたい、ということで、メロディを抜いてゲームに乗せることになったんですよ。

――「The First Awakening」にはそもそもコーラスが入っていますが…、もっと歌らしい歌とかでしょうか?

山中氏:いえ、トランペットでもっと主張したメインメロディがあったんです。

関戸氏:それを抜いて、クワイヤを前面に出す感じにして、あまり具体的なメロディを語らないようにしたんですよね。

――メロディを語らないことによってレムナントの神秘さを表現したという感じでしょうか。

関戸氏:そうですね。タイトル画面の曲なので、主張しすぎるよりは引っ込めたいというのがあって、抽象化しました。ゲームを進めていくとそのメロディが入った曲が登場するので、その伏線というようなイメージです。

――なるほど、そのメロディが入った曲はプレイヤーの皆さんがご自身で辿り着いて聴いてみてほしいですね。では「ラスレム」の音楽で特に気を配った面などはありますか?

関戸氏:ミキシングとかの領域になってくる部分でもあるのですが、できるだけタイトにしたかったので、あえてすっきりさせるようにしました。

山中氏:ドラムの音色はすごい実験しましたよね。メタルっぽいニュアンスのドラムにしたかったんですが、当時なかなかメタルっぽいドラムの音というのが打ち込みで再現が難しくて、色々処理を工夫して試してみて、どの音色で進めるかを検証しました。

関戸氏:当時、RPGのバトル曲では「ノーマルのバトルはテンション低め、中ボスでちょっと上がって、ボスはもっと上がる」みたいな方程式があったんですけれど、そういうのが「ラスレム」ではあまり関係なくなっちゃいましたね。最初からぐいぐいと食い込ませていくサウンドにしたかったので、色々な音を作ってもらって検証して…、そこがまず最初に気を配った部分でしょうか。

――リマスター版でも山中さんはサウンドデータサポートという形でお仕事をされていますね。リマスターにあたって、何か音での変更はあったのでしょうか?

山中氏:変更点というよりは、当時の音の鳴り方と同じ鳴り方を再現させるための仕事をしていました。具体的な作業はほぼ御子柴がやっていまして、僕は当時どうだったかというのを思い出すという仕事でした(笑)。なにせ10年前の作品なので、当時どうやって実装していたのかを忘れていて、僕が思い出して御子柴が再現する、という感じです。なので、リマスター版でも基本的に当時のリソースのままです。

――音楽を作る順番はどうなっていたのでしょう? まずバトル曲から、とか、フィールド曲からとか。

山中氏:あくまで「ラスレム」の場合はですけど、ここが必要だから次はここを作ってくれ、みたいにプランナーから発注がくる、という感じで。最近だとある一定の範囲を完全に作ってから量産するパターンが多いので、こういう作り方はあまりないかもしれません。

「ラスレム」の印象的なオープニングを彩る楽曲たち

――オープニング曲はあえての4曲構成ですね。音を流し続けるのではなく、間に音楽がないイベントを挟んでまた次の曲へ…と進んでいきながら、やがてゲームのタイトルロゴと共に「Opening Suite : The Assault」がかかって、ダヴィッドがゲイ・ボルグ発射準備イベントに入る…という、音楽とイベントの迫力が見事に融合しているオープニングでしたが、これはグラフィックチームなどとお話を進めながら作っていかれたのでしょうか?

関戸氏:はい。他のイベントシーンなどでも全てそうなのですが、イベントプランナーの八木さん(※八木正人氏)と、御子柴、山中くんとで、まだ色すらついていないポリゴンだったりグラフィックだったりを見せてもらいながら進めていっています。

イベントシーンの秒数だけは決まっているので、ここは環境音を聞かせて、このシーンから曲を始めたほうが印象的になるんじゃないかとか、ここで一度曲を終わらせてセリフに注目を集めたほうがいいんじゃないかとか、そういうことを八木さんと吟味しながらプランを作って、翌週までにデモを作って見てもらって、また新しいシーンの打ち合わせをして…、という感じで進めていっていましたね。

――秒数が決まっているイベントシーンに合わせて曲を作るのは大変だと伺いますけれど、やはりあれだけきっちりあわせるのは大変ではなかったですか?

関戸氏:多分皆さんが思っているほど難しくないですよ。それよりも短い曲のほうが難しいんですよ。3秒とか4秒とかだと曲の形にさせるのがそもそも難しくて、30秒、40秒とかならそんなに大変ではないですね。とりあえず流れを作って、あとはそこからどう落とし込むかというくらいなので。

――ちなみに3秒の曲って想像がつかないのですけれど、どんなものですか?

関戸氏:ジングルとかですね。ファンファーレとか。

山中氏:なんというか、やりようがないんですよね(笑)。短いジングルは、本当に難しい。

関戸氏:その点、大きな流れを作って、ここに音楽が必要ないならちょっと早く終わらせて、その終わり方を次のシーンにつながるような雰囲気のコードで終わるのか、完全に終止という形で終わらせてから次のシーンにどうつなげるかとか、そういうのはゲーム音楽を作られる方なら皆さん考えるところだと思います。

――まさにその「大きな流れからつながっていく」というワンシーンになるかと思いますが、「Opening Suite : The Assault」でビシっと一度音を〆た後、ゲイ・ボルグ発射シーンはダヴィッド隊のバトル画面になって、音楽もボス曲のひとつである「Clash of Opposites」に切り替わりますよね。オープニングの一部でありつつも実際にバトルを動かせるという、とても印象的なシーンですが、当時はボスバトル曲であることとオープニングの一部になること、どちらを意識されたのでしょうか?

山中氏:これは当時、中ボス曲として作ったものをあそこに当てはめたので、後から入ったかたちになります。「この流れだと合うね」という感じで、あのシーンに入れたんですよね。実際にプレイしたユーザーさんからそのように思ってもらえるような自然な流れだったということは、やはりあそこにあの曲を合わせて良かったです。

――イベントシーンからあまりに自然と繋がるので、オープニングとして使うことが前提なのかと思っていました。何度見ても、音楽、イベント、ボイス、様々なものが極限まで絞られた素晴らしい流れのオープニングです。御子柴さん力作のSEが流れるタイトル画面から、ニューゲームを選択、オープニングからゲイ・ボルグ発射までの流れは、未プレイの方にもぜひ一度見ていただきたいと思います。

※タイトル画面で流れる「The First Awakening」のフルコーラス版はサントラなどで聞いてほしい。バトルは倍速モードにしているが、ゲイ・ボルグの起動シーンのみ、通常速度にしている。

あの人気曲の通称は「イケイケバトル」――「ラスレム」はとにかくバトル曲が熱い!

――「ラスレム」をプレイした最初の印象は「バトル曲がすごく多い」という感じでした。特に最初のうちは音楽が変わる法則もわからなかったので尚更なのですが、屋内のバトルだと「Flamedrop」、屋外のバトルだと「Sword Sparks」に変わるという法則に気が付いた時は、思わず震えました。

関戸氏:それは高井さんのアイディアですね。高井さんが「ミンサガ」でバトルディレクターをやっていた時に、とにかくバトルを楽しくするためにバトル曲がいっぱいほしいという話をしていて、その一つとして、屋内と屋外でバトル曲を分けちゃおう、というアイディアが出ました。

山中氏:最初、そういったアイディアを形にするべく、デモを何曲か作って高井さんに聞かせていましたもんね。ゲームに乗っていない没になった曲もありました。

――おや、それはもったいないですね。

山中氏:一回、何かの時に「出しちゃいましょうよ」って関戸さんに言ってみたんですが、かたくなに嫌がられまして(笑)。でも僕はまだデータ持っているんですけどね。

関戸氏:え? 本当に?

――では、Switch版リリース記念ということで公開しちゃいましょう。

関戸氏:いやいや、もう赤面しちゃうような出来なので(笑)。

――でも屋外バトル曲の「Sword Sparks」はすごくかっこいいのに後半は出番がまったくなくなってしまうのが、ちょっともったいなかったです。

山中氏:そうなんですよね。ゲームの後半ややりこみ要素は、どうしてもダンジョンばかりになってしまうので、必然的に曲が「Flamedrop」だけになっちゃうんです。せっかく分けたのにもったいなかったな、とは後になってから思いました。

ちなみに「Sword Sparks」は、最初ゲーム内に仮でデモ版を乗せていたんですけど、いざ完成品が出来て差し替えたら、高井さんが「デモのほうがいい」となって、結局デモのほうに戻したんです。

関戸氏:あー、そんなことあった(笑)。

――「Sword Sparks」はノーマルバトル曲にしておく曲じゃないぞ、というくらいにクオリティが高いですけど、デモだったんですか?

山中氏:厳密にはもちろんデモバージョンからブラッシュアップはしているので、これがデモそのままというわけではないんですが、デモのニュアンスを残した曲になっているという感じです。

関戸氏:デモって作りがかなり粗いので、後でもっと作り込もうとして、本当にざっくりしたものを開発バージョンに入れておいたんですよ。で、完成品は色々音色を変えて、ドラムの音も調整して…とかあちこち手をいれていったんですけど、結果的に手をいれたことで逆におとなしめに聞こえてしまったようで、デモの荒々しさのほうが良い、となってしまったんですよねぇ…。

山中氏:高井さんにさらっと「なんかおとなしくなっちゃったなぁ」って言われました(笑)。とはいっても本当にデモをそのまま出すわけにはいかないので、そこはもちろん調整はしているんですが、その調整のときにギターの荒々しさを残したり…、という感じでデモの印象を強めに出すようにしました。

あの時に、気軽に仮デモを乗せるもんじゃないなって思いました。聞き慣れてしまうと、新しいバージョンがなんとなくしっくりこないっていうのは、よくあることなので。

――「Sword Sparks」はテンションがかなり高いですが、これがデモの雰囲気を重視した曲なんですね。

山中氏:そうです。ノーマルバトルの曲だし…と、もう少し控えめにするはずが控えめに出来なかったので、結局その後の曲がこの曲よりももっともっとテンション上げていかなきゃ、という感じで、大変になってしまったんですよね。

――モラルで曲が変わるのはさすがにわかりやすかったのですぐに気付きましたが、これもバトルの緊張感と連動していて面白かったです。

山中氏:モラルで曲が変わるというのは、もう高井さんが「絶対にこうしたい」ってこだわっていた部分なんですが、モラルとは何かが中々わかりませんでした(笑)。

――あのゲームにおけるモラルの役割だとか諸々、それこそ開発の初期の段階ではわかりにくそうですもんね…。

関戸氏:こうだったらピンチの雰囲気で、こうだったらテンション上げて…みたいな感じに説明されましたけど、なかなかピンとこなかったんですよ。多分、今これを読んでくださっている方でも、「ラスレム」を未プレイの方だと「モラルで曲が変わる」と聞いてもやはりピンとこないと思うんですが…、それでも僕たちもなんとか高井さんが言うところの雰囲気を感じ取って、バトル優勢時の曲を作って…確かそれが「イケイケバトル」。

――あの、それはまさか「ラスレム」の中でも屈指の名曲と名高い「Reversal!」のことでしょうか?(笑)

山中氏:そうですそうです、あの曲の仮タイトルは「イケイケバトル」でして。僕らはずっと発注リストの仮タイトルで仕事を進めてしまうので、「Reversal!」って言われてもピンとこないんです(笑)。今でも通称は「イケイケバトル」ですよ。

――衝撃の仮タイトル! しかも別に冗談でつけたとかじゃなくて、本当に「イケイケバトル」だったんですね…。「Reversal!」は、かなり支持率の高い曲ですよね。

関戸氏:(意味深に笑いつつ)まぁ…あの曲は悪くはないですよね。

山中氏:お? そういう感じに出ます?

――「Reversal!」でそのような反応をされるとは…。関戸さんご自身で、自信のある曲ってどれなんでしょう?

関戸氏:全曲それなりに自信はあるんですが…「イケイケバトル」はちょっと戸惑いがあるんですよね。これでいいのかな、という感じと言いましょうか。それよりも自分で「バトルはこれだろ!」と思うのは、オープニングの後にエマと2人で戦うことになる洞窟で出てくる中ボス曲なんですけど。

――「Struggle Eternal」ですか。あら、でも意外ですね。もちろんバトル曲のどれも素晴らしいんですが、「Struggle Eternal」ってその中でも正統派のロックですよね。

関戸氏:いやぁ、もうこれが出来た時は、「やったな、これで俺の仕事は終わった!」くらいの気持ちになりましたよ。それくらいの自信作ですね。まだ未プレイの方にはぜひ聞いてみてほしいです。

山中氏:でも、作曲家が好きな曲がユーザーの好きな曲、という風にはならないんですよねぇ(笑)。

みんなのトラウマ曲?地獄門戦、拠点戦、ラストバトル戦の3曲について更に掘り下げる!

――当時、「親の声より聴いた曲」になってしまった地獄門戦「The Gates of Hell」や拠点戦の「Press to Victory」は、1~2時間聴き続けながら(※Xbox 360版当時)バトルをやることになるという想定で作られたのでしょうか?

関戸氏:2時間ずっとかかるとは、さすがに思っていなかったです。作っていたときは、とにかくバトル曲が多いのでどうやって違いを出すかっていうのは、一生懸命考えていました。それこそリズム感とかですけど、その曲をユーザーが10分聴くのか、2時間聴くのか、全然解っていなかったんですよ。

山中氏:もちろんボスのコンセプトは聞いているので、そのボスのテンションに合わせているというのはありますけれど、実際にユーザーがその曲を何時間ループすることになるかまでは気づいていなかったですね。

――多分ループ数で言うと、普通に何百ループレベルになっちゃうと思いますよ(笑)。地獄門は地獄門らしく、七人衆は七人衆らしいテンションで、ということですね。

関戸氏:高井さんは、ボスであろうが中ボスであろうが、基本はプレイヤーにエールを送る形の曲にしてくれ、と言っていたんです。なのでボスがおどろおどろしいからという理由で曲もずっとおどろおどろしいというのはダメで、例えば曲の冒頭はおどろおどろしくてもいいんだけど、曲の進行でプレイヤーを応援するようなメロディが必ずあったほうがいい、とは言われました。

なので、地獄門戦の「The Gates of Hell」や拠点戦の「Press to Victory」は、どちらも出だしはちょっとおどろおどろしいんですけれど、後半には割と応援するようなメロディが入る曲にしました。

――その「応援する」メロディが曲者なんですよねぇ…。バトル開始から30分くらい経ったところで、「もうリセットして出直してきたほうが…」とか脳裏を過ぎるんですが、Xbox 360版はオートセーブがなかったので、セーブしたのが大分前だと死んでも勝たないとデータが相当前に戻されてしまうといこともあって…そこにその「頑張れ、おまえたち!」みたいにお尻を叩かれているメロディが来るものだから、なおさら引くに引けないんですよ。ほぼ毎ターン、アニメート(操作不能になり味方を攻撃してしまう状態異常)解除ゲームみたいになっているのに(笑)。

関戸氏:それはもう本当に全然想定していなかったんです、すみません(笑)。「ラスレム」に限らず、作っている最中はプレイヤーがどういう状況で聴くことになるのかわからないっていうのも結構あるんですよね。さすがに七人衆については、七人衆が基本的には1人ずつ、そして七つの拠点で戦っていくので、一応それなりに長時間聴くことになるのかな、くらいには思っていたんですけれど。

山中氏:曲を作るタイミングによっては、限られた情報しかない中で作らなきゃいけなくて。

――ちなみに2時間聴き続けたのは本当にXbox 360版のころのお話で、PC版、PS4版、Switch版ではバトルの倍速モードが搭載されているので、倍速モードなら15分くらいで終わりますし、新規さんも安心ですね。もちろん負けると即ゲームオーバーになってやりなおしなのは変わらないので、そういう意味では初見のユーザーさんほど何時間も聴くことになると思いますが。

関戸氏:本当に人を選ぶゲームですよねぇ(笑)。

山中氏:そのかわり、ハマるとすごい愛されるゲームですよね。

――私はXbox 360版で実績フルコンプまでプレイしたんですがその後にPC版が出ると知り、しかもPC版では色々バージョンアップすると聞いて、それなら「ラスレム」のためにPCの1台くらい組んだるわ! と。

山中氏:それだけ愛してもらえたなら本望です。そういえばあのころ、PC版のベンチマークのためだけに、「Reversal!」の別バージョンを作ったんですけど、ベンチマークでしか聴けないのがもったいなかったんですよ。

――ありましたね、別バージョン。あとXbox 360版購入特典のプレミアムサウンドトラックも全曲メドレー形式になっていて、最初に話に出た御子柴さんの「レムナント起動SE」が「Clash Of Opposites」の頭に入っているんですよね。これから遊ぶ方のためにもぜひそういった埋もれてしまった曲たちを、また表に出してあげてほしいです。

山中氏:そうですね、何か機会があればいいのですが。さっき話に出た、関戸さんの没曲のデータもありますしね(笑)。

――ラスボスの前半戦でかかる「Nisus」は、これまでとがらりとかわってオーケストラからの出だしで始まって、曲の途中で旋律は同じなのにサウンドがバンドに切り替わるというのも面白かったです。

山中氏:実はラスボス戦の曲、最初は逆だったんですよ。つまり「Schismogenesis」のほうが先で、「Nisus」のほうが後だったんです。でも実際に乗せてみたら「これはもしかしたら逆のほうが合うんじゃないか?」となって、それで「Schismogenesis」と「Nisus」を逆にしてみたんです。

――「Schismogenesis」のことも伺おうと思っていたところで、まさかの驚きのエピソードです(笑)。

山中氏:でも実際、盛り上がり方については意識していたんですよ。関戸ともラスボスの後半戦に向けてテンションがどんどん上がっていかないとだめだということで、そのテンションでいくためには、順序を変えたほうがいい、ということになったので。そこはこだわって作って、入れ替えてからも調整はしました。

関戸氏:「Schismogenesis」は、テンションをあげるために曲のテンポをどんどん上げていったんですけれど、テンポをあげすぎて僕がギターで弾けなくなっちゃったんですよね。指癖でなら弾けるんですけど、いわゆる譜面通りに弾くことができなくなっちゃいまして。なので、録音してから機械の技術で直しましたけれど(笑)。とはいえど、それなりにちゃんと弾けていないと直すことすらもできないので、我ながら「はやいなー!」とひいひい言いながら、一生懸命弾いていましたよ。

山中氏:通常バトルもそんな感じでどんどんアップテンポになっちゃったから、関戸さんどの曲も弾くの大変そうでしたよね(笑)。

プレイヤーの冒険を後押しするようなイメージで作られたという、フィールドや街の楽曲

――バトル曲ばかりが「ラスレム」音楽の魅力じゃないぞ、ということでお次はフィールド曲ですが、フィールドの曲も実に多彩でしたね。

山中氏:フィールド曲は、ゲーム中で絵が出来ていたのでイメージがしやすく、作りやすかったと思います。フォーン海岸の「Breakers on the Shore」は当時、妖しさのある曲と画面の雰囲気がめちゃくちゃあってるなと思った覚えがあります。

関戸氏:フィールドの曲は大体どれも、プレイヤーの冒険を後押しするようなイメージで作っていましたね。

――確かに、割と前向きな曲が多かったです。フォーン海岸以外に印象的なフィールドの曲はありますか?

関戸氏:自信作という枠だと、渓谷とかで流れていた曲で、昭和の喫茶店で鳴っているような曲やんけ、って言いながら作っていた曲とかも、僕としては自信作なんですよ。当時曲名がついていなかったんで、全然曲名が出てこないんですが(笑)。

――おまかせください。それは「Limberlost」です。

山中氏:あ、そうそう、「Limberlost」です。ガットギターを使ってるのが印象的な曲です。

――この曲を聴くために用もないのにクローキグ湿原に入り浸るレベルの名曲です。ガットギターの音色を使ったことで、ちょっと懐かしさのある音になったんでしょうか?

関戸氏:そうですねぇ、昭和のノスタルジーっぽさが出たんでしょうか。喫茶店の扉をカラーンと開けたらこの曲が流れていそう、って開発のみんなも言っていましたね。

――「ラスレム」は全ての街(※領地)にひとつずつ曲がついていて、そこも凄いなと思いました。

関戸氏:街のことについては八木さんが、この街は文明がすごく発達していたけれどこんなことがあって今はこんな風になっている、みたいな背景設定まで、すごく丁寧に説明していってくれたんですよ。ゲーム上で見える部分以外のもっと深い設定を全部説明してくれたので、街の曲はとてもやりやすかったです。

――なるほど、その語られていない設定はファンとしてぜひ知りたいところですが…街の曲は八木さんとご相談されながら作られていったのですね。

山中氏:八木とは仲がいいのもあって、日常会話でも普通に「ラスレム」の話を色々していて、特に打ち合わせとかかしこまったものじゃなくて、雑談しながら作っているような感じでした。何故か八木は煙草を吸わないのに、煙草部屋にきて話をするとか(笑)。

関戸氏:僕たちも以前は喫煙者だったので、それに合わせて来てくれていたんでしょうね。

――煙草部屋で物事が決まっていくって、ゲーム開発あるあるですよね。

山中氏:昔、打ち合わせなんて、そんなになかったですもん。煙草部屋で全部完結するっていう。あの打ち合わせにもなっていないような雑談、楽しかったです。みんなでワイワイ意見を出し合って。

――なんとなく集まって話していたことをそれぞれが汲み取って形にしていく、という感じですか。

関戸氏:はい。アスラムならばヴァレリアハートが街の真ん中に刺さっていますが、何故刺さっているのか、全部理由があるんですよね。そういった各領地の持つ事情や理由を、八木さんが色々雑談がてら説明をしてくれまして。設定がしっかりしているのでイメージも固めやすく、「じゃあ、こんな感じでどうですか?」と提案していくことが多かったと思います。

――あのヴァレリアハートが刺さっている画を最初に出てくるまでが大変だったと、直良さんがおっしゃっていましたね。そこから「貴方の街にひとつずつあるレムナント」というイメージが構築されていったそうですが、音楽が各街で全て違うのもそういった背景からですか?

山中氏:そうだと思います。レムナントが変われば景色も変わり、音楽も変わるという。直良さんとも当時、レムナントを象徴する音というのはどんなものなのか、というお話などは御子柴と直良さんで話していた記憶があります。

――そのレムナントを象徴する音っていうのは、最初のほうにもお話があったあのSEなんですよね。あのSEを作るだけで大変だったのではないでしょうか。

山中氏:SE作りは御子柴ですが、相当作り直していると思いますよ。

関戸氏:それに便乗して曲をつけたら、レムナントという、謎と神秘さを兼ね備えた曲になったという感じで、僕は楽をさせてもらいました。

――ちなみに関戸さんは、ご自身の曲でオーケストラの収録をされたのは「ラスレム」が初めてですか?

関戸氏:自分の曲ではそうですね。人の曲ではありますけど。それでアレンジャーさんをどうしようかと思って、亀岡夏海さんにオーケストレーションをお願いしたんですよね。亀岡さんはすごいですよ。収録当日の朝まで細かいやり取りをして、こちらのイメージを最大限まで汲み取っていただいて、本当に細部にこだわって作っていただきました。

山中氏:あの時、徹夜でしたもんねぇ(笑)。「ラスレム」の生収録は色々はちゃめちゃでした。それすらも楽しかったですが。

――実際にオーケストラで演奏されたのを聴いていかがでしたか?

関戸氏:感動ですよね。もちろん亀岡さんの編曲を通してというのはありますけど、まさに作曲家冥利に尽きるというか、至福の時でした。全曲自分の曲ですけれど、スコアリングも含めて生のオーケストラで演奏していただくことでこんなによくなるんだ、という気持ちになりました。

――お客さんがいるいないに限らず、やはりオーケストラで演奏されるというのは格別ですか。

関戸氏:それはもう、もちろん。オーケストラで演奏してもらうのは、こちらも大変ではあるんですけれどね。テクノロジーが進んで、今はもうユーザーさんは生の音なのかPC音源なのか、解り辛くなってきていると思うんですけれど、僕らはやっぱりパッと聴いてすぐ生の音なのか作られた音なのかわかりますし。

もちろんわかりにくい楽器もあって、特にドラムとかは本物かどうかわかりにくいのですが、逆に金管楽器はすぐに本物かどうかわかります。それくらい、生の音の厚みとか迫力というものはありますね。曲を作るだけならばパソコンがあればできてしまいますが、作曲家としては可能な限り生の音というのにこだわりたいんですよね。

――そういうこだわりの経験が出来た「ラスレム」は、本当に貴重なタイトルですね。

関戸氏:実際に制作したのはもう10何年前ですけれど、「ラスレム」を作る前と後で、自分の中でも何かが変わりました。その何かを具体的に言葉にするのは難しいですが。

山中氏:多分サウンドチーム全員、そういう風に感じていると思いますよ。「ラスレム」を作る前と作った後で何かが変わったと。「ラスレム」は、開発がとにかく楽しかったんですよね。

――サウンド以外の方も皆さん、そうおっしゃいますよね。どこにもない新しいゲームを出すぞ、というチーム全員の勢いがとてもあったタイトルなんだな、と感じます。

山中氏:はい。本当にチーム全員で作っている、という感じがありました。みんなが色々新しいことにチャレンジができましたし、「ラスレム」は、いい経験になったタイトルだと思います。

――お二人のそれぞれの思い出深い一曲はどれですか?

関戸氏:自分の曲は、元々自分の中にあるものを外に出しただけなので、あまりサプライズ的なものはないんですよね。この曲は思ったよりもシチュエーションにうまくあったなぁ、とか思うことはあるんですけれど。

それよりも自分の中にない曲のほうが印象が深くて、特にダンジョンの曲はどういう風にするべきか僕はとても迷って山中くんに投げたんですけど、返ってきたものがとても良く出来ていて、おどろきました。

そこからはどんどん山中くんに「これもやってよ」って投げていったんですけれど、ワールドマップの曲には驚きました。あれは指パッチンの音がリズムを刻むように入っているんですが、ちゃんと聞くとリズムと指パッチンの音が少しズレているんです。いわゆる拍を取るタイミングではなくて、あえてズラしているんですよ。凝ったことしているなぁ、と感心しましたよ。

山中氏:僕は「Unrelenting Advance」っていう某イベントシーンで使用されている曲がすごい思い入れがあるんです。ストーリーが大きく動くイベントシーンで流れる曲なので、そのイベントとの相乗効果もあって。あれは打ち込みでしたけれど、曲もかっこいいですし、イベントシーンの演出もかっこいいんですよね。ストーリー中盤くらいで流れるので、ぜひイベントと共に楽しんでほしいです。

――今でも「ラスレム」のライブを本当に待ち望んでいるファンは多いと思いますが、Switch版発売記念ライブの予定などはいかがでしょうか?

関戸氏:山中くんと2人で漫才でもやりましょうか(笑)。そういえば、エンディングのベースは山中くんが弾いているんですよね。ライブ、できたらいいですねぇ。

山中氏:関戸さんも、歳食って速弾きにさらに磨きがかかっていますしね。

――ではファンの皆さんの声が高まれば、というところでしょうか。

関戸氏:そうですね。クラウドファンディングでもやりましょうか(笑)。

――それでは最後に、去年PS4で、そして今年Switchで遊べるようになった「ラスレム」をこれから遊ぶ方、これまで遊んできた方へのメッセージをお願いできればと思います。

関戸氏:PS4で出る時も驚いたのですが、まさか「ラスレム」が10年経って任天堂のハードで出るとは全然思っていなかったので、本当に驚いています。任天堂のハードというと年齢層的に若い人が遊ぶイメージがありますが、そういう人たちも楽しんで遊んでいただけると思います。僕も率先して遊びますので、ぜひ皆さん遊んでください。

山中氏:まさかPS4で出て、Switchで出て、忘れたころに復活するというのはこのゲームらしくて、すごくいいなと思います。好きな人には改めてプレイしていただいてもっと好きになってほしいですし、新規の方にもぜひやっていただきたいです。

――ありがとうございました。

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※画面は開発中のものです。

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