フロム・ソフトウェアが2019年3月22日に発売するPS4/Xbox One/PC用ソフト「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」。本作にプロモーターとして携わる北尾泰大氏にインタビューを行った。

目次
  1. 工夫することにやりがいを感じてほしい
  2. こだわり抜いた、ケレン味のあるアクション
  3. 「SEKIRO」でまた新鮮な戸惑いを

「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(以下「SEKIRO」)」は、「DARK SOULS」などで知られるフロム・ソフトウェアが、アクティビジョンとタッグを組んで開発した新作アクション・アドベンチャー。歯応えのある難易度と、そこから得られる達成感といった「ソウル」シリーズの大きな特徴を踏襲しつつ、新たな世界観と新たなシステムの数々を搭載した、ファン待望の作品だ。全世界から注目を集めるこの作品はいかにして生まれ、どんなコンセプトを持っているのか。フロム・ソフトウェアでプロモーターとして携わる北尾泰大氏に話を伺った。

ちなみに北尾氏と言えば、かつてはSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に在籍し、やはりプロモーターとして活躍してきた人物として有名だ。フロム・ソフトウェアのメンバーとなったことでどんな変化があったのか、フロム・ソフトウェア作品への思い入れなども聞いてみたので、ぜひ読み進めてほしい。

工夫することにやりがいを感じてほしい

――今回はActivisionとの共同開発ということですが、それぞれどういった箇所を担当したのでしょう。

北尾氏:まずActivisionと組むことになった経緯についてお話しさせていただきます。我々は国内の販路しか持っていませんから、本作の企画が立ち上がった際に海外のパブリッシャーさんを探していました。その時に興味を持ってくださったパブリッシャーさんのひとつがActivisionでした。我々としても彼らの開発ノウハウなどに興味があり、一緒にプロジェクトを進めることにさせていただきました。

共同開発の形についてご説明差し上げると、ゲームの内容、クリエイティブに関わる部分の決定は我々に委ねられていますし、実際に作るのは我々です。そのうえでActivisionの方ではユーザーテストを実施、分析し、我々が作りたいと思っているゲームになっているかといった点をレポーティングしてくださっていました。

――Activisionが入ったことによって、ゲーム内に大きな変化はありましたか?

北尾氏:ユーザーテストの結果をもとに、オンボーディングやチュートリアルといった部分で、たくさんの参考になる意見や改善のための提案をもらいました。開発チームにもすごく良い刺激がありましたし、Activisionのプロダクションチームも我々と同じようにこのプロジェクトに情熱を注いでくれて、同時に楽しんでくれて、とても良いコラボレーションになったと思います。

――「ソウル」シリーズとは似ているようで、違う部分も多々あります。特にオンラインの要素がまったくないことには驚きました。

北尾氏:今作をシングルプレイにした理由はいくつかあるのですが、シングルプレイに特化し、そこにリソースを集中させることで、これまでのオンライン対応タイトルとは違った本作ならではの魅力が生まれたと思います。

――これまでは他プレイヤーと協力して強い敵を倒す方法が取れましたよね。それによってアクションが苦手な人もクリアできた側面があると思いますが、今回の難易度はどのように調整されているのでしょう。

北尾氏:前提として「DARK SOULS」シリーズや「Bloodborne」などの我々の近年のタイトルに比べ、簡単にしようとか難しくしようとはしていません。本作も近年の我々のタイトルと同様に、工夫や学習によってこそ克服可能な難度があり、それを乗り越えた先に高い達成感を感じることができる、という骨太でやりがいのあるゲームになっています。一方で本作では道中の雑魚敵などはこれまでのタイトルより強いですし、正面から挑んでいくと、これまで以上に歯応えのある難度になっているかと思います。つまり、よく死にますね。「ということはこれまでより難しいのでは?」とお思いになるかもしれませんが、本作では正面突破以外にも、隠密(ステルス)や、搦め手である義手忍具など、困難に対する対抗手段がこれまでより多く用意されているのです。

プレイヤーキャラクターは左腕に忍義手をつけており、そこから鉤縄を出してマップを縦横に移動することが出来ます。鉤縄を使って敵の思いもよらぬ高い位置に移動して、敵を観察し、隠密を使って静かに暗殺していく、という攻略も出来ますし、義手に仕込んだ義手忍具で弱点を突く、といった戦い方が出来るシチュエーションも用意されています。攻略の手段が多彩に用意されているので、これまで以上にハードなシチュエーションに対して、これまで以上の戦略で立ち回ることができるようになっています。

――もうひとつ「ソウル」シリーズとの大きな違いと言えば、世界観が和風であること、またしっかりとしたストーリーがあることも挙げられますが、こちらはどのような経緯で導入したのでしょうか。

北尾氏:近年では中世ファンタジーやゴシックといった世界観のタイトルが多かったのですが、以前は「天誅」シリーズや「O・TO・GI ~御伽~」といった日本をベースにしたゲームも作っていました。「DARK SOULS III」でシリーズに一旦区切りがついたとき、「久々に和風のゲームを作ってみよう」というのは自然に出てきた流れです。

もうひとつは「忍び」という部分です。宮崎(「SEKIRO」ディレクター・宮崎英高氏)は「DARK SOULS」シリーズや「Bloodborne」などでもそのマップを立体的に作ってきましたが、彼はその立体的なマップを実際に立体的に移動・探索するゲームを作ってみたいと考えていました。それを鉄で出来た重い甲冑を着た騎士でやるのは不自然だけれども、忍者であればギリギリ格好良く再現できる。作りたいゲームデザインの観点からも戦国時代の日本という舞台はマッチしていたのです。

――「天誅」や「OTOGI」、「ニンジャブレイド」といったフロム・ソフトウェアさんが過去に発売したタイトルが影響を及ぼしている点はあるのですか?

北尾氏:日本や忍びといったキーワードが出てきたとき、当然自社のIPである「天誅」シリーズは真っ先に浮かんだところです。しかし「天誅」シリーズはもともと外部で開発しており、作り手の色がかなり濃いシリーズであり、それを今の我々が作っても真似事になってしまいますし、それは「天誅」シリーズのファンの皆さんにとっても喜ばしくないことだと思います。鉤縄を使ったワイヤーアクションや敵を殺す一撃の「忍殺」といった要素は「天誅」シリーズからの刺激として引き継ぎながら、今回は、今の我々らしい新しいゲームとして作ることにしました。

――ストーリーについてはいかがですか? 「ソウル」シリーズだとぼんやりと語られるだけで、ファン同士が考察する機会も多い作品でしたけど。

北尾氏:「DARK SOULS」シリーズなどでプレイヤーさんが操作するのは、キャラクターメイキングを前提としたアバターキャラクターでした。今作では固定の主人公キャラクターが存在します。せっかく固定の主人公がいるので、ストーリーもある程度、主人公や彼の周辺にいるキャラクターにフォーカスしたものになっています。なので、これまでの「世界」全体を語っていたストーリーよりはとっつきやすいというか、捉えやすいストーリーになっているかなと。しかし、作っている人間は同じですし、あくまで我々なりに…という範囲ですが…。我々としてはこれまでも、そして今作でも、プレイヤーさんのプレイ自体がストーリーになっていく…というとろを目指していますし、例えば長めのムービーでユーザーさんにストーリーを押し付ける、といったことは「SEKIRO」でもしていません。また断片的な情報からユーザーさん自身がストーリーを考察するといったことは、本作でも楽しんでいただけるのではないかなと思います。

――探索のロケーションとなる場所も気になるのですが、やはり城や屋敷がメインになるのですか?

北尾氏:巨大な城もあればその城下もありますし、燃える武家屋敷に雨の降る竹林、紅葉の美しい寺といった様々なロケーションが用意されています。戦国時代末期に相応しい、荒廃した寂れた空気の中に、日本古来の色鮮やかな美しい風景が広がる、本作ならではの景色を楽しんでいただきたいですね。

こだわり抜いた、ケレン味のあるアクション

――今回の戦闘ではタイミングよく攻撃をガードして、体幹を削るというこれまでにないシステムが導入されましたが、こちらの経緯は?

北尾氏:我々がイメージする忍びの戦いというのは、ギリギリの駆け引きの中で一瞬のスキを見つけて相手を殺す、といったものでした。体幹を巡る戦いというのはそうしたイメージから生まれてきたものですね。激しい攻防の中でお互いの体幹を削り合い、体制を崩したスキに一撃必殺の「忍殺」を決める、かなりスリリングで緊張感のある剣戟になっていると思います。体幹の崩し方は様々で、刀による攻撃はもちろん、義手忍具も有効ですし、また敵の攻撃を刀で防ぎ、弾くことでも体幹を削っていくことができます。

――敵の攻撃を弾くのは、「ソウル」シリーズのパリィのように敵の攻撃タイミングに合わせてボタンを押す必要があるんですよね。僕は「ソウル」シリーズだと盾で攻撃を防いでから反撃するというスタイルで、パリィはあまり使わなかったんです。そんな人へのアドバイスはありませんか?

北尾氏:パリィは「決まれば確実に相手が体勢を崩す」という、かなり強力なものでした。しかし弾きは体幹にいくばくかのダメージを与える程度ですので、パリィに比べてボタンの入力タイミングはかなり甘めに作られています。もちろん、敵の懐に入り込んで刀をぶつけ合うというのは勇気がいりますし、すべての攻撃を弾く必要はありません。また、ヒット&アウェイで敵のヒットポイントを削っていくのももちろん有効な戦略です。ヒットポイントが減ることで、体幹ダメージの回復スピードが遅くなるので、ジワジワと立ち回るのもひとつの手です。

――武器のほうでは刀の一種類だけに絞るという、かなり思い切ったことをしていますよね。

北尾氏:プレイヤーキャラクターの忍びは“楔丸”という特別な刀で戦います。これがメインウェポンですね。今作ではメインとなる武器を絞ることで、そこにリソースを集中することが出来ました。これまでは幅広く様々な武器を用意していましたが、今作ではこの刀一本で出来ることを深掘りして作っています。流派ごとに異なる剣技や、義手忍具とのコンボなど、刀一本で様々なアクションが可能ですし、そのモーションはなかなかケレン味のあるものになっていると思います。

――ケレン味というのは、強く意識したポイントなのでしょうか?

北尾氏:それはあると思います。我々の場合、例えば日本刀を振るモーションを作る際に、剣道や武道の動きを忠実に再現する、といった作り方はしていません。当然、そうしたものはかなり研究しますが、そのうえで、リアリティよりも、ゲームとして格好良い、あるいは気持ち良いなど、ケレン味のあるモーションを目指して作っています。

――もうひとつの武器として手裏剣などを収めた義手忍具もありますが、こちらはどういった存在として導入したのでしょう。

北尾氏:戦闘においては刀をサポートするサブウェポンのようなイメージでしょうか。搦め手である義手忍具はそれぞれの個性が明確で、刀には出来ない、敵の意表をつくような戦闘を可能にします。例えば光と音で敵の目をくらます爆竹や、瞬時に2メートル以上伸びて敵を刺す仕込み槍などですね。また「この敵にはこの義手忍具がかなり効く」というのもありますね。例えば耳が良い動物に対しては爆竹の効果が絶大だったり。

――義手忍具はマップ内に落ちていて、それを拾っていく流れですよね。

北尾氏:ショップで売っているものもありますが、殆どはマップを探索して入手する形になります。マップは自由に行き来出来るので、ある強敵がなかなか倒せない、それではと別のマップに行き、そこで新たな義手忍具を手に入れ、再度その強敵に挑んでみる…といった攻略もできるようになっています。

――ちなみに、義手忍具の種類はどのくらいの数になるのでしょう?

北尾氏:ユーザーさんの探索の楽しみを奪ってしまうかもしれないので、具体的な数をお答えするのは控えますが、それぞれ個性の強いのが揃っていますよ。また義手忍具は強化することもできます。単純にパラメーターが上がる、というよりも改造するようなイメージでしょうか。例えば手裏剣であれば、強化することで貫通弾になったり多段ヒットになったり、性能が変わります。

――義手忍具のひとつとして、ワイヤーアクションを可能にした鉤縄もありますよね。これによってマップの立体感がさらに増したと思います。

北尾氏:そうですね。鉤縄の特徴としてはまず単純に「気持ち良い」というのがありますね。高低差のあるマップを超人的な動きで、縦横に、ダイナミックに移動できるわけですから。また鉤縄によって攻略の仕方もこれまでと大きく変わっていると思います。常人では到達できないような場所に移動できるので、敵より先にこちらが相手を発見し、どう戦おうかと戦略を練る、といったシチュエーションも多く用意されていますので。

――一度だけその場で生き返る「回生」というシステムも独自性が強いですけど、どういった経緯で導入したのですか?

北尾氏:ストーリー的にも「回生」は重要なテーマであり、それはネタバレになってしまうのでさておくとして、ゲーム的には、忍びらしい死と隣り合わせのギリギリの戦いの中で、ゲームテンポを必要以上に阻害しないよう調整する要素としても導入しています。また「死すらも利用して敵を欺く」という、今作独特の、忍び像にも繋がっている要素ですね。

待ち受ける壮絶な戦いに対して、侍にも引けをとらない剣技、卑怯な隠密(ステルス)、搦め手である義手忍具、そして最後には自分の死すらも利用して、持てるすべてを駆使して挑んでいただきたいですね。

「SEKIRO」でまた新鮮な戸惑いを

――北尾さん自身はSIEからフロム・ソフトウェアに転職されて、今までにない刺激もあったのではないでしょうか。

北尾氏:たくさんありました。私はSIE時代、ファーストパーティタイトルのプロモーションを担っており、そこで「Bloodborne」を担当し、その縁でフロム・ソフトウェアに移りました。そういった経緯もあり開発メンバーとはもともと交流があったので、新しい職場環境にはすぐに慣れてしまいましたが、これまでご一緒する機会のなかった社外の方々、例えばSIE以外のプラットフォーマーの皆さんとの仕事などは、それぞれに個性が異なり、勉強になることも多く、刺激的でしたね。また、パブリッシャー側の人間としてSIEのメンバーと仕事をするのも、新鮮なものでした。

――フロム・ソフトウェアの作品には、なにか思い入れはあったのですか? 「Bloodborne」は携わっていただけに、当然あると思いますが…。

北尾氏:学生時代はXboxに夢中になっていたこともあり「METAL WOLF CHAOS」などもプレイしていました。強い衝撃を受けたのは「Demon's Souls」です。どう立ち回ったら良いのか全く分からず、購入してから当分の間はボーレタリア王城の一階から上に上がることすらできなかった憶えがあります。もう本当に辛かった…!(苦笑)しかしトライ&エラーを繰り返す中で段々と「Demon's Souls」というゲームならではのセオリーや戦略を体得していって…冒険の中で自分自身が成長している感覚を味わいましたね。

今作「SEKIRO」もこれまでとはまったく違った立ち回りが必要になるので、そうした新鮮な戸惑いや、成長の感覚を味わっていただけるんじゃないかと思います。

――分かりました。それでは、「SEKIRO」に期待しているファンへ向けてのメッセージがあればお願いします。

北尾氏:骨太なゲーム性や、作り込まれた世界観といった我々らしさを明確に引き継ぎながらも、これまでとは大きく異なるプレイフィールを感じていただけるタイトルになったかと思います。ゲームファンの皆さんに、その新鮮な感覚を楽しんでいただけたら幸いです。

――ありがとうございました。

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE

フロム・ソフトウェア

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  • 発売日:2019年3月22日
  • 17歳以上対象

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE

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  • 発売日:2019年3月22日
  • 17歳以上対象

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE

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  • 発売日:2019年3月22日
  • 17歳以上対象
  • Steam

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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