2020年4月10日に発売を迎えるPS4用ソフト「ファイナルファンタジーVII リメイク」(以下、「FFVII リメイク」)の製品版プレイレビューをお届けする。
目次
筆者はこれまでに、東京ゲームショウ2019の試遊版と、今年2月のメディア向け体験会で記事を書いてきていたが、今回はついに製品版を先行プレイさせてもらうという機会に恵まれた。そしてこの先行プレイで、「これは『FFVII』をベースにした、新たなゲームでは?」という感想に至った。
これまでの試遊では、オープニングから壱番魔晄炉(ここまでは現在配信中の無料体験版でもプレイ可能)~八番街までと、伍番魔晄炉、及び地下下水道で戦うボス「アプス」戦がプレイできた。これらはオリジナルの「FFVII」で既に知っているシーンで、オリジナル版をプレイした人ならば「ああ、あそこ」と、すぐに思い当たる箇所だ。
それだけに、これまで何時間もさまざまなバージョンの試遊をしてきた筆者も、完全に勘違いをしていた。その勘違いとは、「FFVII リメイク」は「FFVII」の“焼き直し”だと思っていた点だ。恐らくそれは、多くのユーザーが当たり前のように感じているはずのではないだろうか。
そもそも「FFVII リメイク」というタイトルからして、オリジナルの「FFVII」を今の技術で描いたもの、と思ってしまう。だが、実際の「FFVII リメイク」は、その予想を色んな意味で裏切ってくる内容だった。
「FFVII リメイク」は、確かに「FFVII」だ。残念ながら筆者は今回ウォール・マーケットまでしか進めなかったのだが、クラウドがいて、バレットがいて、ティファがいて、エアリスがいる。キャラクターは新たなセリフや声がついたとは言え、我々が知っているキャラクターたちである。
そしてストーリーのベースも、確かに「FFVII」だ。だが、それはあくまでもベースであり、プレイを開始して2時間も経つ前に、「これは別のゲームと言っていいのでは?」と感じ始めていた。
本稿では、そこに至るまでの様々な理由と、そして今回の試遊で新たに判明したことなどを記していく。
なお、この記事は少なからず「FFVII リメイク」及び、オリジナル版「FFVII」のネタバレを含むので、ご注意願いたい。また、これまでの体験会の模様で判明したことなどは、下記記事を参照してほしい。
クラウドは「なんでも屋」として生きる
「FFVII リメイク」では、ストーリーがより緻密に描かれている。
例えば、オリジナル版「FFVII」でのクラウドは、壱番魔晄炉での爆破作戦のためにアバランチに手を貸す「なんでも屋」だが、実際になんでも屋として生きているクラウドの姿はほぼ見られなかった。
だが「FFVII リメイク」のクラウドは、なんでも屋としての初仕事が壱番魔晄炉の爆破作戦で、この後もなんでも屋としての姿が描かれる。そのなんでも屋の仕事が、「なんでも屋クエスト」といういわゆるサブクエストで搭載されている。
クラウドがなんでも屋として街の人々の願いを叶えていくと、なんでも屋としての評判は上がり、クラウドにはますます仕事が来るようになる。
クラウドのなんでも屋としての働きぶりは、時にメインストーリーやサブクエストにも影響する。クラウドはあくまでなんでも屋であり、なんでも屋としての仕事を果たさずに進むと、そのツケはクラウド自身に返ってくる。
もちろん、サブクエストはあくまでメインストーリーではないので、全部無視して進むことも可能だ。だが、評判とは人伝に流れていくものであり、なんでも屋としての評価をおろそかにしていると、新たに出会う人々から冷たい態度を取られたりすることもある。クラウドのミッドガルでの生き方を決めるのは、プレイヤー自身だ。
街を歩いていても、クラウドの生き方は常に見られている。なんでも屋としての評判が上がれば、雑踏から漏れ聞こえる声も、クラウドへの期待を感じるものになってゆく。ティファが最初に言う、「縁はお金より大事」「縁が仕事を呼ぶ。いい仕事をすれば、またそれが新たな縁を呼ぶ」という言葉は、忘れずにいたい。
クラウドが生きていく姿を感じられる工夫は端々にあるのだが、その中でも本作では七番街スラムにクラウドの部屋がある点に注目したい。当たり前のようでいて、それでもオリジナル版にはなかった要素で、クラウドは七番街スラムでアパートを借りることになるのだが、隣の部屋にはティファが住んでいる。他のアバランチのメンバーも皆、七番街スラムにきちんと家があり、家庭の事情もそれぞれだ。
また、愛想がなく見えるクラウドだが、実際はただ単に人付き合いが苦手でコミュニケーションを取ることに慣れていないだけ、という姿も、端々で伺える。クラウドが仲間と上手くコミュニケーションを取れない姿は、本作の中でもあちこちで描かれており、更に深くクラウドというキャラクターを知ることができるだろう。
クラウド以外のキャラクターの生き様も
バレットやティファ、エアリス、そしてジェシー、ビッグス、ウェッジというアバランチのメンバーらも、奥深くまで描かれている。
正直に述べると、筆者は頑ななまでのユフィ推しだ。エアリス派とティファ派がどのような争いを繰り広げても、筆者には関係がない。……なかった。20年以上に及ぶユフィへの愛を覆したのが、本作のティファである。
ティファは、クラウドに部屋を紹介してくれたり、なんでも屋の仕事を手伝ってくれたりと、世話好きな彼女の性格のベースは決して変わっていない。それでいて「神羅なんて大嫌い」という部分と、彼女が持つ本来の優しさとで微妙に揺れ動く心が、見事に表現されている。
同性である筆者から見ても、「ティファ、最高に可愛いじゃん!」と思えるので、ぜひ期待していてほしい(あとさりげないポイントだが、ティファの腹筋がすごい)。
バレットの魅力は既に前の記事でも大分触れているが、改めて感じたのは、神羅への憎悪の深さであり、それ故にどうにもクラウドには心を開けず、時には「そりゃひどい……」と思わず零してしまうほど、クラウドに冷たい言葉をかけてくることもある。その一方でマリンへの愛情の深さを感じさせ、親バカっぷりは健在だ。
エアリスは、伍番街スラムではたくさんの子供たちや、スラムの住人らからとても慕われている新たな面を知ることが出来る。それでいて天真爛漫でクラウドにぐいぐいと迫ってくる押しの強さは変わらなく、眺めていてとても微笑ましい。
本作ではエアリスが伍番街スラムで街の人に頼まれて花を持っていく姿や、とある話題になると明るい彼女が一瞬だけなんとも言えない表情を見せたりする。繊細な表情の表現が可能になったからこそのシーンには、注目してほしい。
アバランチのメンバーであるジェシーとビッグスとウェッジは、オリジナル版と同じセリフを口にすることもあるものの、ほぼ新キャラクターかと思うくらいストーリーが掘り下げられている。彼らのストーリーはぜひ実際にゲーム中で楽しんでほしいのでその詳細は伏せるが、色々と衝撃を受けたことだけは記しておきたい。
オリジナル版よりもハイデッカーの出番が随分と増えており、なりを潜めたのかと感じた「ガハハ」も健在。スカーレットは、裏表の激しい性格になったようだ。
紹介しきれないほど多くの新たな「FFVII」を彩る新キャラクターたちも、いずれも魅力あふれるキャラクターたちばかり。特にウォール・マーケットには、ひとくせもふたくせもある個性的なキャラクターがそろっているので、楽しみにしていてほしい。
声が入ることで可能になった、曖昧な感情の表現
各キャラクターたちの見せる表情なども豊かだが、彼らの感情を更に深く掘り下げてくれたのは、声優陣による見事な演技である。
オリジナル版のクラウドは発言にブレがあるのだが、そう感じる理由は後半にならないとわからないことと、やはり文字だけのセリフではプレイヤーが推測するしかない部分もあった。だが、本作のクラウドは声音でも感情を表現するため、オリジナル版で感じていたようなブレを感じることが、まったくと言っていいほどない。
例えばゲームの冒頭でバレットと壱番魔晄炉の作戦を進めるクラウドの声は、誰にも気を許していないというのが解る、“クラウドらしい声”だ。しかし幼馴染のティファの前では、その声音が、ふっと和らぐ。
それまでの硬い声から、一気に雰囲気が柔らかくなるのだが、決してクラウドらしさを失うほどではなく、それでいてティファにだけは「これが素のクラウドなのだ」と解るトーンで、文字のセリフだけでは難しい微妙な感情が声に乗せられている。
恐らく文字だけの表現ならば、「ああ」というセリフになっていたのではないかと思われるクラウドの相槌が、「うん」と力強くひとつ頷くだけになっているのは、筆者激推しのワンシーン。他にも、ここでは語り切れないほど(色々なところに抵触しそうなので語れない、とも言う)ボイスは最高の仕事をしているので、楽しみにしていてほしい。
前述の、筆者がティファに陥落した理由も、声の演技によるものが大きい。ティファの前を向こうとする想いや、クラウドへの想い、彼女の複雑な感情が声に乗ることで、筆者は20年近くかかってティファというキャラクターを正しく理解できたような気がした。だからこそ、改めてティファというキャラクターに、愛情を持てたのだろう。
バレットのボイスについては既に以前の記事で語っているので割愛するが、全体を通して改めて「声が入ることの効果」を、まざまざと見せつけられた。
とにかくマップを歩いている間も、大抵は誰かが何かを喋っていることが多く、無音(BGMは含めない)の時間がかなり少ない。常に、シナリオが進行している。そしてそのキャラクターの人となりを知ることができる、といった風だ。
バトルはイージーか、クラシックモードもオススメ
「FFVII リメイク」のバトルについては、以前の記事でそのシステムについては語りつくしているので、割愛させていただく。そしてその上で本作をプレイするのに、難易度をイージーか、クラシックモードに設定することもオススメできる。
クラシックモードは、敵の強さはイージーと同じで、攻撃やガードなどはオートで行ってくれて、魔法やアイテム、アビリティを使いたい時は自分でコマンドを入れるモードだが、コントローラー入力をすればいつでも任意にキャラクターを動かすことができる。何の操作もしていない時だけ自動になるのが、クラシックモードだと思ってほしい。
本作のバトルは、個人的には難易度が高めに感じた。恐らくノーマルでスタートしたプレイヤーは、初めて戦うボス戦で、一度は全滅する方もいるのではないだろうか。壱番魔晄炉のボスであるガードスコーピオンも手ごたえのあるボスだったが、無料体験版でガードスコーピオンが余裕だったという人も、この先を甘く見ないほうが良い。
もちろんこれについてはアクションゲームや、本作のゲーム性への慣れ不慣れが大きく影響する。ただし、アクションゲームを数々プレイしている筆者だが、イージーでも相当倒すのに苦労したボスもいることは、お伝えしておきたい。ノーマルでは、1時間戦って結局勝てなかったボスも居た。攻略を知っていないと勝ち方が解りにくいボスは、かなり多い。逆に攻略方法さえわかってしまえば意外とあっさりと勝てる、ということもある。
本作では「みやぶる」マテリアがボス戦攻略の鍵の一つにもなるので、「みやぶる」マテリアは常時パーティメンバーの誰かに装備させておくといいだろう。また、「みやぶる」で表示される情報は、しっかりと目を通したほうが良い。イージーでの雑魚バトルすら、「みやぶる」で弱点をつけないとなかなか倒し切れない敵もいるので、同じ属性のマテリアを2キャラ以上に着けているよりは、完全に役割分担をさせたほうが良さそうに感じた。
マテリアはオリジナル版から引き継いでいるものも多いが、「ぜんたいか」など本作のシステムには合っていないマテリアは、見当たらなかった。新たなマテリアも多数増えているので、色々試してほしい。特に序盤で入手できる「かいひぎり」マテリアは、回避後の攻撃が範囲攻撃になる便利なマテリアだ。
イージーだとATBゲージの管理は随分楽になるが、アクション性の強いバトルが好きな人には物足りないかもしれない。難易度変更はメインメニューが開ける時ならばいつでも可能なので、まずは好きな難易度でプレイを始め、難易度が合わないと感じたらモードを変えてほしい。
細かい所感まとめ
「FFVII リメイク」は、一度通り過ぎたマップには戻れなくなることが多いようで、プレイ中に「この先に進むと、アイテムが取れなくなりますが良いですか?」「先に進むと進行中のクエストを進められなくなりますが良いですか?」といった確認ダイアログが表示された。
クリア後には好きなチャプターから始められ、取り逃したアイテムやクエストなどをやり直せるようになるとのことなので、アイテムやクエストを残して先に進むかは、プレイヤーの選択次第だ(ただし前述の通り、サブクエストの達成度はなんでも屋の評価につながる)。
ミニゲームは今回プレイした部分では、ダーツ、バイクゲーム、スクワット、コルネオ・コロッセオがプレイできたが、今作のミニゲームはいずれもストーリーの中に自然に溶け込む形で置かれている。なので、いずれもストーリー上で無理なく楽しめる。
ダーツは今回が初登場となるが、ゲームは一般的に親しまれている「01」というルール形式。このルールは、「301」の持ち点をぴったり0にするゲームで、本作では0点にするまでの手数で勝負することとなる。
音楽はオリジナル版の曲をアレンジした楽曲が大半なのかと思いきや、新曲もかなり多い印象だ。しかし、ここぞというところではオリジナル版のアレンジ曲がかかることが多い。また、本来ならばミッドガルの外で流れるはずだった曲も、多くが別の場面で違う使われ方をしている。
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新要素の「ミュージックディスク」。 ディスクを手に入れられる店や自販機の近くを通ると、BGMと共に画面の左上にCDのアイコンが表示されるので、 流れている場所を探してディスクを購入する(もらえることもある)。 入手できるディスクには、オリジナル版のアレンジ楽曲なども多く含まれている。 「ゴールドソーサー」なども、ディスクで入手できる中のひとつ。 |
新曲は、新たな「FFVII」の風景にマッチしているので、楽しみにしていてほしい。もちろんオリジナル版の楽曲のアレンジも素晴らしい出来栄えだ。特に、本作の音楽は「FFXIII」シリーズで数々の名曲を披露してくれた浜渦正志氏と鈴木光人氏も参加されているとあって、「FFXIII」シリーズの楽曲が好きだった人には一層刺さるものとなっている。
懸念していたロード時間は、まったく心配がなかった。読み込み時間は、ゼロに近いと言っていいだろう。実際プレイ中にロード時間を感じる場面は、全くなかった。なお、この時のプレイ環境はPS4Pro+HDDだったので、参考にしてほしい。
ただし唯一、タッチパネルで開くエリア全体マップだけは、若干読み込みに遅延があった。プレイ自体に大きく影響する箇所ではないが、目的地を確認する際などに一瞬の待ち時間があったのが残念だった。
ミッドガルまで……?
ここで改めて最初に綴ったことの話の繰り返しとなるが、この作品は果たして皆が頭に思い描いている「リメイク」作品なのだろうか。少なくとも、これまでに何回も試遊版をプレイさせてもらってきた筆者ですら、その予想は随分と裏切られた。
本作は「FFVII」のミッドガル脱出までを描く、となっているが、実際にはオリジナル版のミッドガル脱出までを、ただ現在の技術で作り直したものではない。
筆者がプレイしたウォール・マーケットまででも、「これは本来ならばミッドガルを脱出してから描かれるはずだった」と思うイベントが、いくつも差し込まれている。そして、「こんなイベントは見たことがない」というイベントも非常に多い。
つまり、オリジナルの「FFVII」ミッドガル脱出までをベースに、かなりの新たな肉付けがされていると言って良いだろう。
本稿の読者が、筆者と同じような作品を想像していたのならば、その想像とは完全に違う作品を見せられることとなる。本作のテキスト量だけで、既にオリジナル版の「FFVII」を上回っているのではないだろうか、というほどのボリュームだ。
残念ながら、今回の「FFVII リメイク」の先行プレイでは、時間の都合でエンディングまでは辿り着けなかったため、筆者もこの新たな「FFVII」がどのように終わるのかを知らずに語らなければならないのは心苦しい。
現状「FFVII リメイク」は複数作で展開されることしか語られておらず、いくつの作品になるのかは明確にされていないが、この先もオリジナル版のファンが予想するリメイクにはならないだろう。なので、これはきっと「FFVII」という物語をベースにした、「FFVII リメイク」という新作なのだ。
物語の中では、何度も「これはどういうこと?」というシーンが登場する。オリジナル版をプレイしている人ほどそのように感じるシーンは多く、そしてオリジナル版をプレイしていない人にとっては、これを機に新たにオリジナル版をプレイし、違いを比較し、考察をしたくなるのではないだろうか。
本作はストーリーラインを辿る一本道のような作品となっている。しかし筆者としては、それは決してマイナスな要素ではなく、「FF」シリーズにはこのほうが合っていると感じる。
また、バトルはアクションとコマンドバトルがうまく融合しており、アクションは得意ではないが、それでいて「ただのコマンドバトルはつまらない」という層でも楽しめるラインに落ち着いたのではないだろうか(前述の通り、個人的に初回はイージーかクラシックモードがオススメ。「みやぶる」マテリアは、つけっぱなしにしよう!)。
筆者は、良い意味で期待を裏切られたと感じた。今はこれ以上の感想は語れないが、決してボリューム不足を感じるような内容でもなければ、ただの“焼き直し”ではないということを強調したい。プレイしている最中ずっと、生まれ変わった「FFVII」の魅力を、じわじわと感じていた。ただの「リメイク」で終わらせなかったこの意欲作を、どうか存分に楽しんでほしい。