PS4/Nintendo Switch/PC用ソフト「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」の魅力を、続編となる「ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~」の発売前にプレゼン形式で紹介!
目次
先日、続編が発表されたPS4/Nintendo Switch/Steam用ソフト「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~(以下、ライザのアトリエ)」。
本作の魅力を、これを機に改めて伝えたい――そんな想いを抱いたGamer編集部・TOKENは、「アトリエ」シリーズ未経験のライター・小林白菜を聞き手とした、“「ライザのアトリエ」プレゼン企画”を決行した。
キャラクターデザインが大きな話題を呼んだ本作。一方で、「アトリエ」シリーズへの入門にも最適な1本だというのだが、果たして?
なお「ライザのアトリエ」は、現在全機種版において「ライザのアトリエ サンキューセール」と題して、8月4日(火)(Steamは8月3日(月))まで本編・Digital Deluxe版・シーズンパスが最大39%OFFで販売中。続編の「ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~(以下、ライザのアトリエ2)」は今冬発売が予定されている。この記事を読んで興味を持った方は、まず1作目からプレイしてみてはいかがだろう。
「アトリエ」の歴史は試行錯誤の歴史! 話題になった“太もも”は新境地の証だった
TOKEN:まず、小林さんは「アトリエ」のことはどれぐらいご存知なんですか?
小林白菜(以下、小林):本当に素人同然の知識しかないんですけど(笑)。大体の作品でかわいい女の子が主人公で、その女の子が材料とか薬とかを組み合わせて、いろいろなアイテムを生み出していくっていうゲームなんだろうなと。で、やっぱりここまでシリーズが続いているってことは、キャラクターの魅力だけじゃなくてゲームとしてのバランスとか、錬金術の面白さとかもしっかりあるゲームなんだろうなとは感じていますよね。
TOKEN:実は「アトリエ」ってシリーズごとに結構変わっているんですよ。男性主人公のタイトルもありましたし。たとえば他の主要なRPGだと、「ドラゴンクエスト」はわりとオーソドックスなベースがちゃんとあると思うんですけど。「ファイナルファンタジー」シリーズや「テイルズ オブ」シリーズとか、あのあたりはシステム的な踏襲は多少あるにせよ、基本的には毎回新しい要素を取り入れているじゃないですか。「アトリエ」ってそれが大きなくくりの中にそれぞれ各シリーズ単位であるっていう。
小林:いわゆる「アーランドシリーズ」とか「黄昏シリーズ」とか、世界観による区分けがあるのは知っていましたけど、そういったシリーズの切り替わりごとにシステムにも大きな変化があるってことですか?
TOKEN:そうですね。世界観っていう区分で見がちなんですけど、結構ゲームシステムもシリーズごとにチャレンジがあって、変化をしている。調合の仕組み1つとっても、ちょっとずつ変わっていったりとか、やり方も過程を変えたりっていうのを頻繁に繰り返しているんですよね。個人的には「アトリエ」の歴史は試行錯誤の歴史だなって感じていて。「アーランドシリーズ」が大きな流れの転換点にはなったと思うんですけど。
小林:なるほど。
TOKEN:自分が遊び始めたのは7作目の「イリスのアトリエ エターナルマナ2」(2005年)からなんですけど。初期作は比較的シンプルにアイテムの調合がゲームの中心にあるストーリーラインだったのが、しばらくしてRPG色が強くなっていって。それが「イリスシリーズ」や「マナケミアシリーズ」ですね。「マナケミア ~学園の錬金術士たち~」(2007年)にいたっては調合の要素はちゃんとあるものの、どちらかというとアイテムをガツガツ作って、敵を倒して~みたいな。アイテムの使い道としてはすごくシンプルなゲームになっているんですよね。その頃になると調合の意味合いがちょっと変わってきていたりするんですけど、それが「アーランドシリーズ」になって見直されて、原点回帰みたいな作風になってきていて。そこからの調合システムは毎回、チャレンジを繰り返しながらここが良くないってなったら次回作ではフィードバックしたものをシステムに導入したりとか……。
小林:その辺は結構ユーザーの意見を素直にフィードバックするような形なんですか?
TOKEN:シリーズすべてのスタッフが全く同じと言うわけではないので、関わる方によって気にするところは多少変わるんでしょうけど、基本的にはそんな感じですね。ユーザーの意見を大事にして今までやってきたのかなと。そのチャレンジは「アーランドシリーズ」の1作目「ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~(以下、ロロナのアトリエ)」(2009年)からずっと続いてきていて。チャレンジの流れのひとつの完成形だったのが「不思議シリーズ」の最終作「リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~」(2017年)と、その後に出た「アーランドシリーズ」の4作目「ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~」(2019年)だったと思うんですけど。この2作が今までやってきたことの集大成のような作りになっていると。だからどちらもすごく遊びやすいゲームになっている一方で、この路線でのさらなる発展系って作りづらいかなぁって思っていたんですね。
小林:その2つが当時の路線の集大成であると同時に、ここが上限というか頭打ちかもしれないという感覚があったんですね。
TOKEN:それはユーザー側も感じ取っていましたし、プロデューサーの細井さんもインタビューで同様のことをおっしゃっていて、共通の見解だったかなと。それを経て発表されたのが昨年の「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」(2019年)でした。「ライザのアトリエ」って、まず太ももの話題が先行していたじゃないですか(笑)。
小林:そうですね(笑)。やっぱり第一報のとき、実際にゲームをプレイしている人はいないわけで、キャラクターデザインのこと以外に語れることがないからっていうのもあると思うんですけど。ふとももが目を引くという言及が、僕のTwitterのタイムラインなんかでも話題になっていて。でも結果としてファンアートが盛り上がったりとプロモーションとしては成功していた印象ですね。
TOKEN:「アトリエ」のファンアート文化っていままでも無かったわけじゃないんですけど、既存のファン層を超えて波及していったのはとても印象的で。あとコスプレとかも話題になりましたよね。有名な方もやられていたんですけど、それ以外でも盛り上がって、公式でもコンテストがあったりして。こういう動きって珍しかったので個人的にもびっくりしました。話題の方向性はちょっと違うんですけど、ビジュアルのインパクトでまず話題になるって点では、「ロロナのアトリエ」が発表されたときの感覚が近くて。
小林:あー、それは分かる気がします。
TOKEN:こう、岸田メルさんの一枚絵がバン!と出てきたときのインパクトですよね。「ロロナのアトリエ」ってこれまで2Dのデフォルメで表現されてきたキャラクター描写を、PS3の能力を活かした3Dで表現するっていうチャレンジもしていた作品だったので、それも含めてビジュアルの印象が強く残っていて。従来の「アトリエ」のイメージを刷新するチャレンジをいくつもしていたんですけど。ただ、シリーズを追っていない人にとってはそういう変化の大きさって感じづらいじゃないですか。どういう風に変わったのか、実際のゲームはどういうシステムなのかっていうのは最初のインパクトだけでは伝わりきらないところもあるなと思って。これは「ライザのアトリエ」も同様で、今回の企画もそういった部分を紹介できればなと思って提案したんですけど。
小林:はい、なるほど(笑)。
TOKEN:そもそもゲームのコンセプトの中に“そのキャラクターデザインである意味”っていうのがちゃんとあって、それはキャラクターだけに注目していると見えてこない部分なんですよね。100%伝わるのはやっぱりプレイしてもらうことなんですが、PVでも多少は分かるかなと思うんですけど。
小林:「ライザのアトリエ」が発売してからは、ゲーム内容とかストーリーのここが良いみたいな情報も耳にするようにはなってきたんですけれども、閉鎖的な田舎の村で生まれたライザが、まあ、頑張るというか(笑)。
TOKEN:そうですね、ざっくり言うとそんな感じですね(笑)。
小林:そのストーリーがどのように胸に迫るものになっているのかというのはプレイした人にしかわからない部分だったと思うんですけど。その物語の中で、ライザのデザインが活きるものになっていたのであれば、それはどういった部分なのか、すごく気になりますね。
TOKEN:その辺も触れていきたいんですけど、ちょっと順番に紹介しますね。
TOKEN:まずキャラクターデザインの話をする上で触れておきたいのが、ゲーム内のCGモデルも、これまで以上に肉づきというか身体つき……っていうと恥ずかしい感じですけど(笑)。
小林:「アーランド」からの流れとしては少女趣味的というか、“線が細い”デザインで、ゲーム内のグラフィックもイラストに合わせたものになっていた印象がありますよね。
TOKEN:そうそう、“線が細い”。過去のイラストレーターさんのデザインって、全体的にアクセサリーなどの小物が多くて、線が細いキャラクターとトータルのバランスで見せているものが多かったんですけど。特に主人公はスリムな女の子が多くて、もちろんそのデザインも魅力的だったんですけど、今回はライザ以外のキャラクターも含めてキャラクターデザインを担当したトリダモノさんのイラストの肉感的な部分を活かしたものになっていて。
小林:仲間のキャラクターもライザ以上にグラマラスだと話題になっていましたよね。
(公式サイトのキャラクター紹介ページを見る)
https://www.gamecity.ne.jp/atelier/ryza/ryza.html
TOKEN:ライザも全体的に肉づきが目立つ、まあやっぱり特に太ももが凄いんですけど(笑)。
(表示される画像をイラストから3Dモデルに切り替える)
TOKEN:ゲーム内の3Dモデルも基のイラストの質感をかなり意識されていて。多分小林さんが挙げていたのはリラだと思うんですけど……。かなり筋肉の付き方なんかもイラストを再現していて。
(リラの紹介ページを見る)
https://www.gamecity.ne.jp/atelier/ryza/lila.html
TOKEN:男性キャラクターのガタイの良さなんかも再現度が高いんですよ。まあ筋肉質なキャラクターってこのレントくらいしかいないんですけど(笑)。ほかの男性キャラクターとしてはタオ、あとクラウディアっていう女の子のキャラクターもいて。クラウディアは線が細いほうなんですけど、3Dモデルは意外と身体つきがしっかりしていて。そういう意味でもイラストを反映する方向性をいままでと変えてきているなってところを個人的にはプッシュしたいかなと。
(レント、タオ、クラウディアの紹介ページを順番に見る)
https://www.gamecity.ne.jp/atelier/ryza/lent.html
https://www.gamecity.ne.jp/atelier/ryza/tao.html
https://www.gamecity.ne.jp/atelier/ryza/klaudia.html
TOKEN:動画で観るともっと分かりやすいかなって思うんですけど。
小林:改めてこうして観ると、キャラクターデザインを3Dに落とし込むっていう技術がすごく高いですよね。
TOKEN:それも試行錯誤があってのことで、「ロロナ」の頃から何回かターニングポイントがあって、今はここまでのクオリティになっているっていう感じですね。
シリーズの醍醐味、調合システムは「リンケージ調合」で歴代屈指の分かりやすさを実現
TOKEN:次にゲームシステムについて順番に触れたいんですが、小林さんは調合にどういう印象を持たれていますか?
小林:本当になんとなくのイメージなんですけど2種類とか、それ以上の複数のアイテムを組み合わせることで、冒険が有利になる新しいアイテムを生み出せるみたいなものでしょうか。
TOKEN:これはシリーズで共通しているんですけど、「アトリエ」って同じアイテムを組み合わせたとしても同じ結果が出るわけじゃないんですよ。
小林:えー、そうなんですか!
TOKEN:アイテムごとに品質っていうのと、効果とか特性とかがそれぞれ備わっていて。その引継ぎがあったり、掛け合わせがあったり。単純に品質を上げたいのであればより高い品質のアイテム同士を組み合わせなければいけないとか。そういうシステムが基本としてあるんですよ。
小林:同じ素材でも、能力や特殊な効果が付いていたりいなかったり、ひとつひとつが違っているってことですかね?
TOKEN:だから基本的に低い品質の素材で作った回復アイテムは回復量が少ない、高い品質の素材で作ったものはより高い効果というように、同じアイテムであっても変わる。もちろんアイテムの違いによってまたさらに変わるんですけど。あと選択肢が1つじゃないっていうのもあって。
小林:同じアイテムを調合するにしても、いろんなやり方があるってことですか?
TOKEN:そうですね。このカテゴリーのアイテムが必要ですよって言われたときには、そのカテゴリーのアイテムであればどんな形であっても作ることができるっていう自由度が魅力のひとつになっていると思います。
でも従来の調合ってそういう仕組みに、カスタマイズ性を上げるための+ αを組み合わせるという要素があったんですね。ベースにある調合システムが毎回ちょっとずつ変わったり。単純に調合の釜に素材を入れていけばアイテムができるという場合もあれば、ひとつ前の「不思議」シリーズではパネル式になっていて、属性に対応したマスに同じ属性の素材を入れたりすると+αの属性値が増えたりとか、そういう仕組みになっていて。
小林:毎回そういう変化を設けているってことでしょうか。
TOKEN:シリーズごとの特色はいろいろな部分にあるんですけど、調合システムは特にシリーズによって大きく変化がある部分の1つなんですね。例外は多少あるにしろ、基本的にはシリーズを通してベースの仕組みを踏襲している感じなんですけど、ライザでまた結構大きく変わっているんですよね。それが「リンケージ調合」という名称になっているんですけど。実際に動画で観ると分かりやすいかなと。
小林:動画では調合に使う素材が10個ぐらい出ていますけど、それが全部合わさって、1つの新しいアイテムになるっていうことですか?
TOKEN:そうですね、基本的には組み合わせて1個のアイテムをつくります。アイテムっていうのは基本的に採取とかで集めた素材を組み合わせるっていうのと、自分で作ったアイテムも素材に使います。いろんなバリエーションがあるんですよね。
小林:調合で作ったものをまた次の調合の素材にすることによって、またさらに新しいものができたりってことですよね。なるほど……。
TOKEN:まず何を作るか選ぶっていうのがあって。小麦粉って書いてある場合は、小麦粉を選ばなきゃいけませんと。そうすると、いま素材の項目に1とか2って出てるじゃないですか。
小林:ツリーみたいに表示されているところに数字がありますね。
TOKEN:そのマスの色と同じ色の素材を1個増やすと、数字も同じように増えているんですよ。これがいっぱいになると次の効果が発動する条件になります。
小林:このチェーンでロックがかかっているところが解禁されるってことですね。
TOKEN:たとえばいま小麦粉を3つ揃えたので、この効果のレベルが上がると同時に右側の赤の特性が解放されましたよ、みたいな。これは回数が決まっているので、回数を満たすと最後に引き継ぐ特性を選んで、調合しますと。で、“ドライビスク”が出来ました。わりとわかりやすいかなと思うんですよね。
小林:対応している色と同じ種類の素材を、表示された数字の数だけ選べばいいってことですもんね。
TOKEN:そうです。基本的に色を合わせて入れていけば解放されていく仕組みなので。それで、数値は物語が進んでいくごとに増えていって、つくれるアイテムの効果の幅も広がっていくっていう。で、新しい“レシピ”も、特定の条件を満たせばここで解禁できるんですよね。いまレシピって書いてあると思うんですけど、ここで必要になる青の素材を2つ入れたら……“氷びし”っていうアイテムの新しいレシピになりましたと。こうしてまた新しいアイテムがどんどん作れるんですよ。
小林:なるほど。
TOKEN:で、1回作ると次回以降は、最初からそのアイテムがある状態になって、選択肢で自由に作れますみたいな感じですね。
小林:作ったアイテムっていうのは、新しい調合に使う以外にはどういう効果があるんですか?
TOKEN:それはかなり幅があって。まずは戦闘で使うものっていうのがいくつかありますと。相手に攻撃するときに使うものもあって、たとえばいまの“氷びし”だったら敵に攻撃する手段として使うんですけど。あとは爆弾とか。フラムだったら炎の爆弾、レヘルンは氷の爆弾って感じで、属性ごとに爆弾があったりするんですけど。それから自分たちの強化だったり、相手の弱体化だったり、もちろん回復のためのアイテムもあったり。一般的なRPGでイメージできるものはひと通りあって、基本的には自分たちで作る必要があると。買えるものもあるんですけど、買うよりは作った方が明らかに効率が良いみたいな感じですね。
装備とかも作れますね。装備を作るためにはまず金属とかを調合で作って、それを他のアイテムと組み合わせることで新しい武器ができます、みたいな。防具も同じような感じなんですけど。着るものだったら布とかを使うみたいな。わりと1つの素材がいろんなアイテムの材料になるんですよね。
小林:あらゆるアイテムの入手方法の真ん中に調合があるってことですね。
TOKEN:ストーリーに応じて必要になるアイテムとかもあって。たとえば相手が要求するものがあったとして、こういう材質のこういうものが欲しいですっていわれたら、依頼にあうアイテムってなんだろうっていうのをライザたちが考えて、それに沿って調合で作ったらいいねってなったりとか。そういう意味で、調合っていろんなもののトリガーになるというか。
小林:じゃあほんとにアイテムそのものに留まらず、ストーリーの進行なりキャラクターの育成なり、色々なゲーム内の要素の起点に調合があるっていうゲームなんですね。
TOKEN:だから逆にいうと調合がわからないと詰まっちゃうんですよね。
小林:あーなるほど。
TOKEN:これまでの調合の仕組みって最初はシンプルだけどやっているうちに複雑になっていって、難しくなる部分があったので。ただ、入り口の導線がしっかりしていればそこら辺の理解度って全然変わってくるじゃないですか。そういう意味で「ライザのアトリエ」の仕組みはすごくよくできているかなって思っていて。
小林:だから「ライザのアトリエ」は「アトリエ」シリーズ初心者が最初にプレイするのにもオススメなんですね。
TOKEN:そうですね。個人的には「ライザのアトリエ」はかなりいいと思います。初心者の入門用としてなら「ライザのアトリエ」と、あと「不思議シリーズ」1作目の「ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~(以下、ソフィーのアトリエ)」を勧めますね。「ソフィーのアトリエ」はすごくオーソドックスで安定感のある作りというか。各要素もそんなに複雑化してなくて触りやすいかなと。これはわざわざ言う必要もないんですけど、私がシリーズでトロフィーをコンプリートしたのって「ソフィーのアトリエ」と「ライザのアトリエ」だけなんですよね(笑)。
小林:それぐらい、のめり込めた作品としてTOKENさんの中での実績があるわけですね(笑)。
TOKEN:作品によっては依頼に期限とかが設定されたりするんですけど、この2作はそういうのもあまりないんで、触りやすいんじゃないかっていうのもありますね。「ライザのアトリエ」も目標設定はあるんですけど、わかりやすくなってはいるので。そういう意味でもお勧めですね。それでも素材がどこにあるんだっていうところは自分で探索するなど試行錯誤が必要なんですけど、その探索して、調合してっていうサイクルをいかに楽しむかっていうのも「アトリエ」シリーズの魅力で。そこも「ライザのアトリエ」は触りやすくできているかなと。あと、これまではアイテムって使うと基本的には無くなっていたんですけど、今回は無くならないんですよ。
小林:ほうほう。
TOKEN:アイテムを使うというよりはあらかじめ装備するんですよね。これは後でまた説明しますが。それによって組み合わせの自由度も上がっていて、たとえばこのアイテムが無くなっちゃうとあとで困るな、みたいなこともあんまり気にしなくて良いんですよね。あとは調合の結果できたアイテムの効果がイマイチだったなってとき、再調合する“アイテムリビルド”って仕組みも今回から追加されていて。「ちょっとだけ数値が足りなくて効果が出なかったんだよなぁ……」ってときに、継ぎ足して効果を出したりできるようになっているんですよね。
小林:一般的なRPGでいうと、ステータスの振り方をミスしても振り直しができるみたいなものに近い救済策なんでしょうか?
TOKEN:まあ振り直しっていうよりは+ αの調整ができるってニュアンスかなと思うんですけど。とにかくそういうことができるようになって、調合の間口が広がっているっていうのは「ライザのアトリエ」について言いたいところですね。
戦闘は伝統だったターン制から、没入感と戦略性に満ちた「リアルタイムタクティクスバトル」に
TOKEN:あとバトルなんですけど。「ライザのアトリエ」でシステムがめちゃくちゃ変わったんですよ。
小林:これまでよりアクション寄りになっているんでしたっけ?
TOKEN:今まではタイトルによってマイナーチェンジのように仕組みが毎回変わっていたんですけど、基本的にはターン制の戦闘がベースにあったんですよ。自分のターンが来たら何かしらの行動をして、その結果によって追加で行動できたりとか。今回はアクションっていうほどではないんですけど、リアルタイムで進行する形になっていて。これも動画を見てもらうと分かりやすいかなと思うんですけど……。
TOKEN:自分で操作するのは1キャラだけで、この動画ではライザを操作しているんですけど。で、相手に通常攻撃をするたびにAP(アクションポイント)っていうのが貯まっていって、これを消費して、スキルとか、いろいろな行動ができるようになりますよって仕組みなんですね。APは味方の攻撃でも増えるんですけど。これに加えて、タクティクスレベルっていうのがあって、これが上がるとできることが増えていくんですよ。
小林:タクティクスレベルっていうのはライザたちのレベルに対応しているんですか?
TOKEN:いえ、タクティクスレベルっていうのは戦闘中に、APがMAXの状態のとき、上げることができるというシステムですね。タクティクスレベルが1のときは1回しか攻撃できないんですけど、2のときは2連撃できるようになっているんですよ。これによってAPが1度に2段階増えるようになっていて。行動によってボーナスが発生してさらにAPが増えるとか。それからAPをたくさん消費することで本来の順番がもっと先でも割り込んで行動できる“クイックアクション”がR2(※PS4版の場合)で使えたりとか。要はAP管理のゲームなんですよ、バトルシステムとしては。
小林:早めに決着を付けたいときはAPがあまり溜まっていない段階でスキルを使いたいってこともあれば、タクティクスレベルを上げることでより強力な攻撃をいろいろ放てるようにする選択肢もあると。
TOKEN:そうですね。ほかにはアイテムを使うときはAPの右下にある“コアチャージ”という数値を消費するんですけど。これが減っちゃうとアイテムを使えなくなるんです。結構情報量は多いですね。序盤は大変かもしれないんですけど、慣れてくるとスピーディーな戦闘を楽しめるかなと。
小林:コアチャージを消費してアイテムを使うってことでしたけど、この数値を回復する手段っていうのはあるんですか?
TOKEN:それは、アイテム欄を開いてる映像を見ると「CCにコンバート」って書いてあると思うんですけど。このCCっていうのがコアチャージの略ですね。ここでたとえば“グラスビーンズ”ってアイテムをコンバートすると、グラスビーンズは使えなくなるけど、その分CCは回復します。結構制約は多いシステムで、長期の探索になるとかなり頭を使うかなと。ゲームを進めていけばコアチャージの最大値も増えるんですけど。
小林:じゃあこのコアチャージのやりくりを見越して探索しなきゃいけないんですね。戦闘終了時の自動回復とかは無いわけだ。そうすると尚更、ひとつのアイテムでより良い効果を得ることが重要になるから、調合の結果も自然とより良いものを追求しなきゃって気持ちにさせてくれるわけですね。
TOKEN:そうですね。あとアクションオーダーっていうシステムがあって。
小林:仲間の行動を指示できるみたいなコマンドがあるわけですね。
TOKEN:画面左上に「アイテムを使ってくれ」とか「魔法ダメージ」とか表示されていますよね。それぞれの条件を満たすことで、攻撃が連続で発動する、コンボのような感じになっています。あと操作キャラの切り替えもできて、それぞれの特性によって異なる行動とかが取れますね。ずっと同じキャラを操作していてもある程度は戦えるんですけど、上手く運用したければ切り替えていった方がよりいろいろな戦術が使えますよ、みたいな。
小林:慣れてきたらキャラクターの特性にあった立ち回りをどんどん試していけばいいってことですね。なるほど。
TOKEN:大雑把に言うとそんな感じですね。いま見てもらった通りなんですけど結構複雑なんですよね。調合と比べると覚えることが多くて、ただやっぱりやっていくと複雑だからこその楽しさがどんどん分かっていくので。この動画も、取っ掛かりでつまずかないようにシステムを丁寧に見せようっていうアプローチで、去年の発売当時に用意したものなんですけど。
小林:複雑な分、試行錯誤のしがいがありそうっていうのはいまの説明でもかなり感じられましたね。
TOKEN:まあパーティメンバーとして一緒に戦える人数が最大3人に対して、最終的に仲間になるのは6キャラなので、その辺りでどのキャラで組めば相性が良いかとかも考えなきゃいけないみたいな。能動的にいろいろ試せるようになるとさらに楽しさに幅が出てくるかなと思いますね。ゴリ押しっていうのはあまりしやすいシステムじゃないです。まあ自分は難易度ノーマルでやっていたので結構歯ごたえあるかな、くらいだったんですけど。イージーもあるので。そこもプレイヤースキルに合わせて楽しんでほしいなと。
小林:ストーリーをサクサク楽しみたい方はイージーで進めればいいし、戦闘の試行錯誤も含めて楽しみたければノーマルとか、その上にハードとかもあるってことですよね?
TOKEN:難易度はアップデートなども含めると6段階ありますね(7月29日時点)。まぁ最初はノーマルくらいでちょうどいいかなと思いますけど。2周目以降のやりこみ要素もあるので、そこでもっと高い難易度に挑戦するのが良いかなと。正直、まだ一作目というのもあって、発展途上のシステムではあったかなとも思っているんですけど。ただ、「ライザのアトリエ」で本当にすごく変わりましたね、バトルシステム。
小林:じゃあ今後このシステムが引き継がれるんだったら、そこの進化にも期待したいって感じですよね。
TOKEN:そうですね。ちなみにプレイヤーが能動的に介入していくって意味では、根本的な仕組みはちょっと違いますけど、遊んでいるときの感覚は「ファイナルファンタジーXIII」のバトルに近いかなって思いますね。
小林:ターンベースというよりはリアルタイムの戦闘ではあるけれど、ゴリゴリのアクションではないというような部分が共通しているっていうことですか?
TOKEN:はい。どちらかというと“思考のパズル”みたいな感じですね。
小林:戦略だったり技を放つタイミングとかをリアルタイムで判断して、最適な戦い方を模索していくみたいな。
TOKEN:そうそう、そんな感じですね。
小林:個人的には、完全なターンベースよりも動きがある中で選択肢を選んでいくっていうものの方が直感的に楽しめて好みではあるので、実際に触って確かめたい戦闘だなと思いました。
TOKEN:ちょっと脱線するんですけど、「ライザのアトリエ」は戦闘だけじゃなくてゲーム全体で能動的な遊びっていうのが重視されているみたいで。たとえば素材の採取はマップを探索していて木や草からいろいろ取れたりするんですけど、従来って決まったところから決まったものが取れるだけの仕組みだったんですよね。岩を壊すために爆弾を使ったり、ツルハシで鉱物を採取したりとか。
それが今回は同じ場所でも採取に使うアイテムによって、取れる素材が変わるようになっているので、とにかく自分からアクションしていく必要性があります。それによってここではこれが取れるよねみたいなことを理解して、重点的に採取したりとか。全体的にそういう方向性で作り込まれているんですよね。
小林:へぇ~!
TOKEN:その能動的な遊びを一番感じてもらえるのはやっぱりバトルかなって思うんですけど。クイックアクションの操作をすれば一旦コマンドに戻って、その時は一時停止になるなど、じっくり考えられるタイミングもあるので、アクションが苦手な方にもそこまで大変ではないかなと思います。
田舎の村で生まれ育った少年少女たちの“ひと夏の成長”を描く、等身大のストーリーにも注目
TOKEN:それから世界観とかストーリーについても話しておきたくて。まず世界観ですけど、「アトリエ」って結構オリエンタルなんですよね。
小林:シリーズ通してぱっと見、ヨーロッパがモチーフとも言い切れない、どこの国かって断定できないような感じですよね。
TOKEN:これまでのシリーズではドイツ語が多かったのである程度のイメージはあると思うんですけど、細部を見るとそうでもないような、独自の世界観なんです。さっきから「ライザのアトリエ」のキーワードとして出てきている田舎というのもどちらかというと日本の田舎っぽさがあって。もちろん街並みは違うんですけど、光の表現とか、ハレーションのかかり方とかにちょっと日本っぽさが意識されているんですよね。
小林:へぇ~そうだったんですね!
TOKEN:「ライザのアトリエ」は夏を描く作品なんで。これまでのシリーズでひとつの季節だけを描くっていうのははじめてのことなんですけど。その夏の空気感が日本らしいものになっていて、そこに田舎が舞台というのが合わさって、独特の雰囲気になっているかなと。
小林:あーなるほど。たとえばですけど、夏に上映される劇場アニメって夏の田舎町を舞台にしたものが多いじゃないですか。「サマーウォーズ」だったり、あと「虹色ほたる ~永遠の夏休み~」とか。空気感として、その辺と共通するものがあったりするってことですかね。
TOKEN:そうですね……まあ要は、ご存知だと思うんですけど結構閉鎖社会だったりとか、子どもたちは鬱屈としているわけですよ。そういう雰囲気とビジュアル的な部分がうまく噛み合っているかなって感じですかね。
小林:それってゲームの途中で田舎の村や島以外の場所に舞台が移ったりはするんですか?
TOKEN:もちろんマップの移動とかはあるんですけど、基本的にはこの街の中での話ですね(※次回作「ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~」は故郷を離れたライザの、都での冒険が描かれるとのこと)。絵の雰囲気の話なんですけど、カラッとした感じとか、光の加減とか、すごく意識されていて。個人的にはそこが魅力かなって思っているんですけど。
小林:その辺が日本の夏の日差しとかを意識しているってことなんですかね。
TOKEN:あとは陰影の表現とか。ちょっとやり過ぎかなと思うくらい、現実的ではあまりない影の掛かり方なんかも意識してつくっていて。その辺も独自の雰囲気を出すことに意識を向けているのかなっていうのはあるんですけど。
小林:その光の表現というのもやっぱり過去作にはあまりなかったところなんですか?
TOKEN:ここまでメリハリのあるものではなかったですね。比較するとしたら、僕は「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣(以下、BLUE REFLECTION)」(2017年)を挙げるんですけど。プロデューサーも同じく細井さんなので、同様のこだわりっていうのは絵づくりと、あとストーリーからも感じますね。等身大の人間を描くというのが魅力かなと思っています。
小林:「BLUE REFLECTION」は日本の学校が舞台だから、日本で過ごしたユーザーさんたちの体験に寄り添うような作品世界っていうのが共通してあるんですかね。
TOKEN:特に「ライザのアトリエ」は、やっぱり海外のユーザーにもたくさんプレイされているんですけど、海外に迎合するのではなくて、あくまでも日本ならではの夏の空気感を届けるっていうアプローチなんですよね。
小林:じゃあその辺はプロデューサーさんのこだわりというか、作家性みたいなものなのかもしれないですね。
TOKEN:「アトリエ」ってタイトルによってはインフレを起こしていたというか。錬金術だから何でもできるみたいな感じで、空間ごとねじ曲げられますみたいな(笑)、めちゃくちゃやばいアイテムとかも作れたんですけど。「ライザのアトリエ」ってあまりそういうのもないので、そこも素直に楽しめるかなっていう。
ストーリーもボリュームは決して多くはないんですけど、等身大の少年少女を描くものとして感動的なものになっていて。閉鎖的な環境下で鬱屈としていた女の子が、錬金術と出会っていろんな出来事に巻き込まれ、あとは自分たちが暮らす場所の秘密とかを知りながら次への一歩を踏み出すみたいな。大まかにはそんな感じなんですけど。
小林:ボリュームは過去作と比べるとちょっと少ないってことですかね。
TOKEN:ストーリーを追うだけだったら、やろうと思えばかなりのスピード感でできるはずですね。自分は30時間~40時間くらいでクリアしているんですけど。ただ、どちらかというとサブイベントとかクエストとかが充実しているので。そういうものを追いかけながらキャラクターへの理解とかを積み重ねていった結果として本筋があるというか。
小林:クエストとかについては、1本のストーリーのためにプレイしていくというよりは、いろいろな頼まれごととかを受けていく中でストーリーが進行していくような感覚なんですかね。
TOKEN:基本的にはキャラクターの内面がちょっと分かりますとか、島や村に住む人たちはこういう人たちだよみたいな。サブキャラクターも魅力的というか個性的だったり、作品の終盤において大事な役割を担うキャラとかもいたりするので。そういう人たちの、なんでこうなってるのかなっていう部分を深掘りできるのがサブクエストの要素ですかね。
小林:そういう、メインストリートに組み込まれてはいないけど、自分で追求していくことが周りのキャラクターへの理解に繋がるっていうのは個人的には結構好きですね。ボリュームに関しても、全体のプレイ時間が長い短いというよりは、その時間の中でぎゅっと詰まったドラマとかがあるんだったら密度の濃い体験になるし、僕はそれぐらいの時間で十分かなって思いますし。
TOKEN:そうですね。ボリュームがありすぎても大変ですし。まあ田舎社会の部分の表現ていうのは濃ゆ目というか。結構しっかり描くので、そこに拒否反応があるとちょっときついかなと思うんですけど。田舎を少し知っていれば、まあこういう側面もあるよなという感じにはなるかなと。
小林:でもそういうところがあるからこそ、ライザたちのもっとこういう風にしていきたいみたいな行動も感情移入できるものになっていそうではありますよね。
TOKEN:ライザ自身は自分に対してのことだったり、他のキャラクターに関しては親だったり、自分の好きなものに対してだったりとか、ほんとにそれぞれの葛藤がいろいろあるんですよね。その辺は明確に、それぞれのキャラのテーマになっているので、そこを楽しんでもらえるのが良いかなって思っているんですけどね。
あと個人的にはエンディングが好きで。さっき言った通りライザが成長する物語なんですけど、あくまでもこの体験っていうのはひと夏の特別な体験なんですよね。その特別な日々を経て、現実に戻っていくっていう感覚もそうだし、現実っていうのは未来を指すものでもあるので。未来がどういう風になっていくのかっていうことに、ライザ自身も、他の仲間達も、目線を向けていく……っていう形になるので。そういうところを見て欲しいですね。
もちろんみんなで世界を救う的な展開もあったりするんですけど、そこに主眼は無いなと思っているので。あくまでもそういう行動は彼らが歩む道のりの副産物でしかないというか。それも「アトリエ」シリーズの持っている魅力のひとつかなと思っているんですけど。
小林:ひとりひとりのドラマがとても気になります。
TOKEN:あとは「ライザのアトリエ」だけのポイントかなって思うのはノスタルジーですかね。それは従来の「アトリエ」には無かったかなぁと思っていて。
小林:それは、たとえば我々の場合、在りし日の夏休みの思い出だったり、故郷にいた頃の出来事だったりっていう記憶が蘇るようなってことでしょうか?
TOKEN:そういう瞬間的な部分もそうだし、思春期の頃の感情とかそういうものをすごく味わえる作品かなと思いますね。
小林:かなり田舎の閉鎖世界でっていうのは聞いていたんですけど、そこまで思春期だったり、子どもの自分たちには力がなくてみたいなところに主眼を置いているというところまでは知らなかったです。どの要素もかなり僕が好きなバランスで成り立っているように感じましたし、これまで以上にやっぱりやってみなきゃなという思いは大きくなりました。
TOKEN:そうですね、そしてゲームを通じてライザのことを好きになってもらったら続編の「ライザのアトリエ2」にもぜひ注目してもらえればと思います。
TOKEN・小林:本日はありがとうございました!