育成戦略アクションRPG「ファイナルギア」をレビュー。ビリビリが放つ最新作なので、注目していたという人も多いだろう。その内容は期待に応えられるものだったか、本レビューで紹介する。
「ファイナルギア」は、美少女とメカを題材にした育成戦略アクションRPG。ロボットに登場する美少女たちでパーティを編成、バトルを勝ち抜いていく。「アークオーダー」や「アズールレーン」の延長線上にある作品のように思えるが、実際にプレイすると、スマホゲームに求められる内容を前進させる、非常に価値の高い作品だと感じた。
ロボット愛の感じられるカスタマイズシステム
本作の魅力の大きなポイントは、ロボット愛が感じられるところ。ロボットファンが「ココだよココ!」と感じるツボを絶妙に押してくるのだ。たとえばそのひとつが、カスタマイズシステム!
「クラフトメカRPG」と銘打たれている通り、本作のロボットは、腕や脚、コックピットなどのパーツを組み合わせて自由にカスタマイズできる。「クラフト」というと、「マインクラフト」のように自由にパーツを組み合わせてメカデザインできるようなイメージを持つ人もいるかもしれないが、そこまでの自由度はなく、あくまでカスタマイズといった内容。だが、それでいい。いや、それでこそいい。
…というのも、自由にメカをクラフトできるゲームの場合、「強いロボット」と「カッコいいロボット」がかけ離れたものになってしまうことが少なくない。強さ…パラメーターを重視して武器を山ほど詰みこんだり、重さに耐えうる移動力を得るために足やタイヤを何個も取り付けたり…。それはある意味、「機能美」というカッコよさを持っているが、「ガンダム」や「ボトムズ」「パトレイバー」といったリアルロボットものの持つ「カッコよさ」とは方向性が異なる。
本作が目指しているのは「ガンダム」「ボトムズ」「パトレイバー」といったリアルロボットもののカッコよさ。腕や脚、コックピットなど、あらかじめパーツの内容と配置箇所が決められていることで、どんな組み合わせであっても破綻しないカッコよさを持っている。
しかも、ヒーロー的カッコよさと、兵器的カッコよさ、どちらのパーツも用意されているのが素晴らしい。ヒーロー的カッコよさというのは、いわゆる主人公機的カッコよさのこと。「機動戦士ガンダム」でいえばガンダムであり、ガンダムバルバトスであり、Gセイバー。
一方、兵器的カッコよさというのは、実際に兵器として存在してもおかしくない、リアルさを持ったカッコよさのこと。「装甲騎兵ボトムズ」のスコープドッグや「メタルギア」シリーズのメタルギアのようなロボット(メカ)たちの持つカッコよさだ。
さらに、本作がカッコいいのはロボットだけじゃない。ドックもカッコいい!ドックでロボットのパーツ換装を行う際、ちゃんとアームが伸びてきて、換装用パーツをロボットに取り付ける。しかもこの時の効果音がいちいちカッコいい。ロボットものを見る時、ドックで整備している様子や、兵装を取り換える様子に燃えるファンは筆者だけではあるまい。筆者はこの演出にあまりに燃えてしまい、意味もなく何度もパーツ換装してしまった。
ただもちろん、こうしたロボットカスタマイズの楽しさを持ったゲームというのはこれまでもあった。「フロントミッション」シリーズや「アーマードコア」シリーズなど、金字塔といえる作品も存在している。それらの作品と本作との違いは何か?といえば、「美少女」の存在だろう。
美少女とロボットをダブルで味わえる楽しさ
美少女×ロボットの取り合わせがイイことは、「サクラ大戦」や「パワードール」といった先行作品が既に証明している。その中で本作ならではの魅力といえるのが、ロボットがパワードスーツ型であるということだろう。パワードスーツ型で顔が露出しているため、ロボットのカッコよさと美少女のかわいさをダブルで楽しめるのだ。
これは「アズールレーン」や「艦隊これくしょん -艦これ-」の時点で生まれているコンセプトなので、本作がゼロから生み出したものではない。だが、本作ならではの魅力として昇華されているのは事実。お気に入りの美少女を、好きな装備でカスタマイズし、戦う。美少女の顔もメカのかっこよさも、常に楽しめる。しかも、自分の手で操作できるのだ!これが楽しくないハズがない。
惜しむらくは、バトル中動く自機が、すべてディフォルメされている店。美少女がディフォルメ前に持つ本来のかわいらしさや、ディフォルメ前のメカが持つディテールのカッコよさを味わいたかった…という思いは正直ある。しかし、プレイするとそこまで気にならない。なぜかというと、バトルがこれまたよくできているからだ。
戦略とアクションの楽しさを体験させてくれるバトル
本作のバトルは、ディフェンスゲーム的なマップ上のバトルと、ベルトスクロール的なアクションバトルの二段構え。マップ上で敵シンボルに接触すると、アクションバトルに移るという構成だ。
チュートリアルが続く序盤の段階では、マップが登場しない。ゲームはアクションバトルを繰り返す形式で進行していく。アクションバトルの目的は、敵を全滅させること。仮想パッドで左右への移動と攻撃、スキル発動を行って敵を倒していく。
アクションバトルに参加できるキャラクターは最大4体。プレイヤーが操作するのはこの内一体で、いつでも自由に切り替え可能だ。キャラクターには射撃型、守護型、狙撃型、爆撃型といったタイプが存在。守護型が盾として敵の攻撃を防いでいる間、射撃型は守護型を援護。狙撃型や爆撃型はダメージディーラーとして遠距離から敵を攻撃していく…というのが基本的な立ち回りとなる。
スキルゲージが満タンになるとスキルが発動可能。この時も仲間の存在が重要になる。守護型のスキルで敵を一か所で集め、射撃型のスキルで一網打尽にする…というように、連携によってダメージ効率を高めることができるのだ。
正直、このアクションバトルだけで十分スマホゲームとしてリリースできたと思う。ここだけでも十分おもしろい。しかし、本作にはさらにディフェンスゲーム的なマップ上のバトルが用意されている。「ディフェンスゲーム的」と書いた通り、マップ上のバトルには「移動するオブジェクトを目的地まで警護する」「指定のエリアを占領する」「指定のエリアを防衛する」といった形で目的が設定されている。
プレイヤーがマップ上でできることは、パーティーの移動。これはパーティーを示すアイコンをタッチし、目的地までスワイプすることで行える。たとえば、「移動するオブジェクトを目的地まで警護する」場合であれば、オブジェクトとともに移動しつつ、敵が接近してきたらその敵へ移動。あるいは「指定のエリアを占領する」であれば、指定のエリアまで移動し、占領ゲージがゼロになるまでその場に留まる…といったことが、プレイヤーのやるべきこととなる。
つまりこれは紛れもなく、ディフェンスゲーム。ただし、一般のディフェンスゲームと違うのは、敵との戦闘がアクションバトルで行われるということ。パーティーのアイコンと敵アイコンが接触すると、画面が切り替わり、アクションバトルになるという格好だ。
本作のこの、ディフェンスゲーム的なマップバトルととアクションバトルを組み合わせたシステム、正直おもしろい。コンシューマゲームをプレイしているかのような、「ゲームを遊んでいる!」という満足感がある。
その一方で、コンシューマゲームほど重くない。マップバトルは出現する敵の数が数体に限られているし、アクションバトルは1ステージが長くとも3画面ほどという規模。なので、さほどプレイに時間がかからないのだ。こうした仕様が、満足感は高いのに、気軽にプレイできるという独特な魅力を作り出している。
「アズールレーン」の期待を華麗に上回る楽しさを持った作品
バトル中動くのがディフォルメキャラという点で、筆者と同様の残念さを感じる人もいるかもしれない。しかし、美少女×メカジャンルが好きな人なら、本作は確実に満足できる作品だと思う。「アズールレーン」の期待を華麗に上回る楽しさを味わわせてくれるだろう。