10月15日にPS4/Nintendo Switch版がフリューよりリリースされた、横スクロールアクションアドベンチャーゲーム「ゴーストパレード」のレビューをお届けしよう。
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「ゴーストパレード」を手掛けたのはインドネシアのゲーム開発会社・Lentera Nusantara Studio。Steam版は2019年10月にリリースされており、このたびリリースされたのはフリューが国内販売を担当するPS4/Nintendo Switch向けの日本語版だ。
なおPS4版はパッケージ版・ダウンロード版の2形態、Nintendo Switch版はダウンロード版のみでのリリースとなっている。今回のレビューはPS4版のプレイをもとに執筆した。
森に迷い込んだ少女・シュリは、不思議なゴーストたちと出会う
学校帰りに最終バスに乗り遅れた少女・シュリ。彼女は近道をしようと森へと迷い込み、不思議なゴーストたちと出会う。シュリはゴーストたちと協力して様々な困難を乗り越えながら、我が家を目指すことに。ストーリーには環境問題といったテーマが込められており、またゴーストたちはインドネシアの民間伝承や伝説に登場するものをモチーフとしている。
ゲームジャンルとしては横スクロールのアクションアドベンチャーとなっている。シュリは、凶暴な野生生物や、貴重な生き物を捕らえようとする密猟者、森の木々を伐採しようとする工事業者たちを倒したり、様々な障害物を乗り越えながら森を奥へ奥へと進んでいく。ときには強力なボスキャラクターに行く手を阻まれることも。
森の中とはいえロケーションは多様。グラフィックは幻想的だったり、華やかだったりと美しい。ゴーストたちが暮らす街のような場所もいくつかある。管楽器の音色が印象的なBGMも作品世界の雰囲気に合っており、ゲームに彩りを添えてくれている。
敵との戦闘では、シュリ自身の手によるランタンを振り回しての攻撃のほか、仲間になったゴーストを指揮して特殊な技を使うこともできる。仲間になるゴーストはゲームが進むにつれ増えていく。仲間にするためにサイドクエストをクリアする必要があるゴーストも少なくないが、必ずしも仲間にしなくてもよい者も合わせると、登場ゴーストは全部で30種類。
仲間になった中から力を借りるゴーストを3体選ぶことで、L1、L2、R1ボタンを押せば彼らの能力「ゴーストパワー」を行使できる(入れ替えはいつでも可能)。ゴーストパワーは、広範囲にダメージを与えるものや、一定時間敵を補足して攻撃し続けるもの、シュリを敵の攻撃から守るものに、敵の能力を弱めたり動きを封じるものなど、多種多様。すべて、一度使うと一定時間使用できなくなるので、ここぞというときに使うのがおすすめだ。
ゴーストたちのビジュアルは、どれもちょっぴり不気味でありつつも、愛嬌があって可愛らしい。選んだ3体のゴーストはプレイ中、ずっとシュリの後ろをチョコチョコとついてくる。その上ピンチのとき力を貸してくれるとあっては、愛着もわくというもの。30体すべてに移動時、そして能力発動時のモーションが固有に用意されており、さらに会話時の立ち絵もあるというのは、この規模のインディーゲームとしてはなかなかの力の入れようと言えるだろう。
シュリを成長させ、悪い大人をなぎ倒せ!
シュリ自身も、ただゴーストたちの能力に頼り切るばかりではない。敵を倒してレベルアップを重ねていくことでスキルポイントを入手でき、これを消費してシュリの能力を強化できる。攻撃力、防御力、HPといった基礎能力向上のほか、連続攻撃の回数が増える、ゴーストパワーのリキャスト時間が短くなるといった具合に、シュリはどんどんたくましく成長。
ボスを倒したり、道中の宝箱を開けたりして入手できる装備品も、シュリの能力を増強する効果を持っている。ゴーストたちがやっているお店で手に入るアイテムにも、回復アイテムのほか、一定時間能力を増強するものもある。
ふつうの女の子のはずのシュリが、工事業者の作業員や猟銃を持ったハンターといった悪い大人たちを次々なぎ倒せるようになるのは、シュールな光景ながら実に痛快だ。
また、シュリはストーリーの進行状況に応じて「パラシュート」「壁ジャンプ」「エアダッシュ」などの新たなアクションも体得していく。徐々に移動が快適になっていくのは遊んでいて心地いい。
これらの新たなアクションを使ってそれまで越えることができなかったギミックを乗り越え、行動範囲を広げていくような場面も多く、この点はいわゆる“メトロイドヴァニア”的な構成となっている。ただ、そこまで入り組んだマップにはなっておらず、基本は一本道なところに、能力獲得後に進めるようになるもうひとつの道がときどきある、といった感じ。
あくまでゲームシステムの重点は、ゴーストパワーを駆使した戦闘と、操作精度を求められるギミック踏破の2点に置かれていると言える。そしてこれらを総合したプレイフィールはというと……なかなか一筋縄ではいかない、独特の噛みごたえがあるものに仕上がっている。
“独特の噛みごたえ”を生む、昨今珍しいゲームバランスと操作性
本作が持つ“独特の噛みごたえ”にはいくつかの理由があるが、エンディングまでプレイして特に印象に残ったのは「ダメージを受けたあとに無敵時間がまったくない」という点だ。
体力制のアクションゲームの場合、その多くは操作キャラクターがダメージを受けたとき少しの間、無敵時間が設けられている。これがない本作では、攻撃判定のあるギミックや敵の攻撃がシュリに接触したとき、当たり方が悪いと瞬く間に連続ダメージを受けて体力をゴッソリ奪われてしまうのだ。ダメージを受けたシュリがリアクションをしている僅かな間は操作不能になるのだが、連続攻撃を受けるとこの操作不能時間が何度も継続される、いわゆる“ハメ攻撃”を受けている状態になる場合も。
この辺りは懇切丁寧なつくりのアクションゲームばかり遊んでいると、かなり面食らう部分だろう。こういった状況に直面する頻度はギミックの難易度が上がり、敵の攻撃が苛烈になってくるストーリー後半ほど増えていく。
幸い、シュリを操作できない状態でもメニュー画面は開けるので、マズいと感じたらすぐさまインベントリから回復アイテムを使用すればいい。そういう意味ではバランスは上手く取れていると言えるかもしれない。
また序盤で苦戦を強いられたのは、「空中ジャンプ後に着地点の微調整が困難」という点。シュリは地上でジャンプしたあと、空中でもう一度ジャンプができるのだが、この挙動がなかなか曲者なのだ。本作では狭い足場をジャンプで乗り越えるような場面も多い。狭い足場に着地しようとするとき、少しスティックを進行方向とは逆に倒して着地点を微調整するというのは、多くのプレイヤーが無意識レベルで行う操作だと思うのだが、このときシュリは、必ず結構な距離を勢いよく跳躍してしまうのだ。
したがって「ちょっと飛びすぎたから少し後ろに戻りたい」または「ジャンプの勢いを減らしたい」という感覚でスティックを反対側に倒したとき、戻りすぎて想定した着地点を飛び越えてしまい落下死……ということを何度も経験した。パラシュートによる滑空能力が手に入ってからは、着地点を微調整するのも楽になるのだが、その後もジャンプの挙動自体による苦戦は少なからず続いた。
ここでは無敵時間とジャンプの挙動という特に印象に残った2点を挙げたが、ほかにも思わぬ苦戦を強いられる箇所が本作にはいくつも存在する。ぶら下がり状態のシュリは攻撃を一発でも受けると落下してしまうにも関わらず、このぶら下がりで進んでいかなければならない場所と火球をシュリめがけ狙い撃ってくるギミックの組み合わせが凶悪だったりと、攻略に手を焼いた局面は枚挙にいとまがない。
こういったじゃじゃ馬な操作性、よくあるアクションゲームとはひと味違うバランス調整により、本作はなかなかの高難易度となっている。しかしこれをうまく使いこなすためにトライ&エラーを繰り返す感覚は、昨今ではあまり得られていなかったものだった。高難易度ゲームが好きという方には、本作が持つ“独特の噛みごたえ”にもぜひ挑戦してみてほしい。
不満を感じるマップ表示の仕様
上で挙げた操作性やゲームバランスは必ずしも不満点というわけではなく、その厄介さが独特の面白さに繋がっている部分もある。一方で個人的にかなり気になったのはマップ表示の仕様だ。
本作は前述のとおり少なからずメトロイドヴァニアのような面があり、ストーリーを進展させるための目的地を、マップに記されたアイコンを頼り目指す局面も多い。にも関わらず詳細マップを表示するには、メニューを開く→マップを開く→簡易マップを表示する→詳細マップを表示する、といった具合にたどり着くまでにボタンを4回も押す必要があり、いずれも処理にワンテンポの時間を要する。
マップ画面に進むときは雲が左右に割れるアニメーションが毎回表示され、これを見届けてからでなければ詳細マップに入れないので、この点も地味なストレスを感じる。さらに、マップ画面から一発でメニューを抜ける方法がないので、ゲームに戻るには上に挙げた行程をもう一度踏む必要が生じるのだ(雲のアニメーションもまた見なければならない)。
メニュー画面の快適性を重視したい筆者としては、マップを参照する頻度が高いゲームであるにも関わらずこのような仕様となっているところには、歯がゆさを感じざるを得なかった。マップ画面をメニューとは独立したものにしてボタンひとつで呼び出せるようにするか、せめてメニュー内だとしてもゲームに戻るときはボタンひと押しで戻ることができれば、印象は全然違っていたと思う。
環境破壊への警鐘を鳴らしつつも、ゴーストたちのやりとりが楽しいストーリー
ここまで主にゲーム部分について紹介してきたが、本作はストーリーにも力が入っている。
最初は家に帰るために森をさまよっていたシュリだが、たくさんのゴーストと出会い、彼らの住む森が人間の環境破壊によって脅かされているのを知ると、彼らを救うために奔走することになる。自分たちの利益のことしか考えない人間たちに立ち向かうのはもちろん、すべての人間を憎んでしまっている森の生き物や精霊たちに信用してもらうためには、彼らとも戦い、シュリに森を救うに足る優しさと強さがあることを示さなければならない。
筋書きは絵本や児童書のようにシンプルなものだが、アクションゲームとの相性は良い。環境破壊への警鐘といったメッセージも特別新しいものではないものの、ゲームでもこうしたテーマを扱うというのは、インドネシアにおける環境問題の深刻さを表しているのかもしれない。これを切っ掛けに関心を持ってみるのも良いだろう(筆者も少し調べてみたが、経済の発展によってゴミ問題が深刻化しているそうだ)。
もちろんシリアスな場面ばかりではなく、ゴーストたちの呑気な掛け合いは読んでいて楽しい。仲間にならないキャラクターも含め、国内のゲームではあまり見かけないユニークなデザインのキャラクターが沢山登場するあたりも、海外作品だからこその魅力と言える。
彼らに話しかけることではじまるサイドクエストには、釣りなどのミニゲームが楽しめるものも。難易度が高い本編でのアクションに疲れたら、気分転換に遊んでみてほしい。
「ゴーストパレード」は“独特の噛みごたえ”があるアクションアドベンチャーだ。そのプレイフィールは巷のタイトルとはひと味違っており、高難易度アクションがお好きなら挑戦する価値があるものと思う。ストーリーや各種デザインからは異国情緒も感じられ、この部分が気に入る方もいるのではないだろうか。
神秘の森に迷い込んだ少女の一筋縄ではいかない冒険を、ぜひ体験してみてほしい。