スカシウマラボが制作したスマートフォン向け推理アドベンチャー「和階堂真の事件簿2 - 隠し神の森」をレビュー。前作からの改善点や、変更店に触れつつ、その魅力を探る。

目次
  1. 人里離れた山村で起きた奇怪な殺人事件
  2. ゲームシステムは前作を踏襲!探索の構造は本作独自
  3. プレイしないのはもったいない!ミステリーゲームとして秀逸な作品

「和階堂真の事件簿2 - 隠し神の森」は、スカシウマラボが制作したスマートフォン向け推理アドベンチャーゲーム。タイトルにある通り、本作は第2作。前作、「和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔」の直接的な続編となっている。もちろん、主人公は和階堂真。ただし、同一人物ではない。前作の主人公の孫にあたる、同姓同名の刑事が本作の主人公だ。

人里離れた山村で起きた奇怪な殺人事件

本作のオープニングは、和階堂真が刑務所に収監されている人物を訪ねるところからスタートする。前作をプレイしている人であれば、思わずニヤリとする場面だ。というのも全作のオープニングは、老刑事が孫に昔話を語るというシーンから始まっていた。本作もまた、前作をなぞるように、「事件についての話を聞く」というスタイルが取られているわけだ。ミステリーファンならここで、「何らかの物語的仕掛けがあるかも…?」と勘ぐってしまうかもしれない。そんな「勘ぐり」もまた、本作の楽しさとなっている。

なお、本作は前作をプレイしていなくとも十分楽しめる作品だ。前作を思わせる演出や、前作であった出来事に触れるセリフは若干出てくるものの、基本的にストーリーは本作のみで独立している。

都市部が舞台だった前作と異なり、本作の舞台は田舎。千堂家という一族が大きな力を持っている山村で、その千堂家当主が殺されるという事件が発生する。しかも、遺体は面をつけ、ミノをかぶった奇怪な状態。この事件を解き明かすことが、プレイヤー=和階堂真の目的となる。前作も昭和的な雰囲気を特徴としていたが、本作はそこに山村で大きな力を持つ旧家の存在、神隠し、祟りを告げる老婆…など、横溝正史的テイストが加わった形だ。

ゲームシステムは前作を踏襲!探索の構造は本作独自

ゲームシステムは前作を踏襲している。プレイヤーは画面をタップすることで、事件に関する情報を集めていく。人や探索ポイントをタップするとさらにコマンドが表示され、聞き込み内容や探索箇所を選ぶことが可能。聞き込みや探索によって獲得した情報は、装備することができる。装備によって、聞き込みや探索時のコマンドが変化し、新たな情報が手に入るわけだ。

また、「推理」フェイズも健在。獲得可能な情報をすべて集めると、画面に「推理」アイコンが出現。アイコンをタップすると、推理」フェイズになり、出題に対して、獲得した情報で回答していく。見事全問正解すると、次の章へ物語が進む…という仕組みだ。

前作と異なる点として、装備した情報に対して、そのマップ上の誰が新情報を持っているか表示されるようになった。装備品の欄に登場人物の顔アイコンが表示され、アイコンにチェックマークが表示されていれば新情報なし。チェックマークがなければ、なんらかの新情報を獲得できる。前作で、装備の切り替えがシラミ潰しになってしまう…という要望があったことへの対応だろう。

ただ、この新情報の表示に関して、筆者はプレイ直後、「作業になってしまうのでは?」という懸念を持った。装備品を一通り見れば、次に誰と会話すればよいか一目瞭然。だからこそ、指定された人物と会話するだけの作業になってしまうのでは…という懸念だ。しかし、ゲームを進めてみると、この懸念は杞憂に終わった。

前作は基本的に、探索完了によって新たな探索ポイントが出現していく…という構造になっており、一度探索完了した場所をもう一度探索する…という事が少なかった。乱暴に言ってしまえば、前作は一本道に近い構造になっていたわけだ。これに対し本作は、同じポイントを何度も訪れ、探索するという構造。何か新たな情報が手に入ると、一度調べた場所、人であっても改めて会話する必要が生まれるため、単純に指定されたポイントに向かえばよい…という状況は発生しない。

新たな手掛かりを手に入れる度、思わず「これは、あの人物に確認を取った方がよいのでは…?」と感じてしまう。いかにも、刑事として捜査を進めているような気分だ。ノベルゲームが普及する前の、テキストアドベンチャー的な味わいも感じられる。

場所移動を繰り返しながら探索を進めていくという本作のシステムを、「めんどくさそう」と思う人もいるかもしれない。が、本作はこの点もしっかり配慮されている。すべての情報を獲得し終わった場所に訪れた場合、「もうここで聞けることはなさそうだ」というメッセージが表示されるため、自然と探索場所が絞り込まれていく。このため、「自分で探索している」という感覚を味わいながらも、不必要なシラミ潰しを行うことはない。

また、本作ではヒント機能も追加された。動画広告を閲覧することで、次の探索ポイントについての情報が得られる。なので、次にどこを探索すればよいか本当に分からなくなった場合であっても、シラミ潰しプレイを回避可能だ。

プレイしないのはもったいない!ミステリーゲームとして秀逸な作品

最後に、「物語的仕掛け」についても触れておこう。ミステリー小説では、「犯人」が「警察や探偵」へ仕掛けるトリック以外に、「作者」が「読者」へ仕掛けるトリックが存在する。その代表格が文章表現にトリックを仕込む「叙述トリック」だろう。

文章表現にトリックを仕込むというのは、たとえば人物描写で、「キューティクルが輝くロングヘア」「スイーツ作りに夢中」「カワいいぬいぐるみ集めが趣味」というものがあったとしよう。この描写に対して、キャラクターの性別を女性と捉える人は少なくないはずだ。しかし、性別についてはどこにも言及していない。なので、このキャラクターは男性である可能性も残される。

こんな風に、読者の先入観を使って錯覚を作り上げる技術が「叙述トリック」。キャラクター自身が性別を隠しているというのではなく、「作者」が仕掛けているという点がポイントだ。実は前作には、「叙述トリック」とは異なるものの、「作者」が「読者」へ仕掛けたトリックが存在していた。そして、本作にもまた、形を変えたある「仕掛け」が存在している。この「仕掛け」による驚きも、本作の魅力だろう。

本作は前作から約3か月という短期間でリリースされているが、その内容は決して前作に劣るものではない。改善が施されたシステム面や、前作と趣向を変えた仕掛けなどで、前作ファンが確実に満足できる出来だ。

また、前作のレビューでも書いた通り、ミステリー好きであればプレイしないのはもったいない。1時間~2時間ほどのプレイ時間でクリアできるため、文庫本を読む感覚で楽しめるだろう。ちなみに、個人的には、このリリーステンポで定期的にプレイしたいと感じた。…が、物語に仕込む仕掛けを考えなければならないシナリオ担当者の苦労を考えると、それはワガママかもしれない。とはいえ、続編のリリースに期待せざるを得ない作品であることは間違いない。

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