コーエーテクモゲームスより2021年3月4日に発売予定のPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~ DX」「アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩~ DX」。「サージュ・コンチェルト」と呼ばれる本シリーズの魅力について、Gamer編集部のTOKENとロックが改めて語り合った。
目次
7つの次元を超えた先に本当に存在するセカイを舞台にしたシリーズ、「サージュ・コンチェルト」(以下、「サージュ」)。今回、その高画質リマスター版となる「サージュ・コンチェルト DX」の発売を前に、「シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~」(記事中、「シェルノサージュ」)と「アルノサージュ ~生まれいずる星へ祈る詩」(記事中、「アルノサージュ」)両作の魅力を、シリーズに深く関連する「アルトネリコ」シリーズとの比較も含めてGamer編集部の2人が振り返っていった。
2人のプレイ遍歴は以下の通りとなっている。
TOKEN:シリーズはPS Vita「シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~」からプレイ。PS2、PS3で発売された「アルトネリコ」3部作もプレイしており、過去にはディレクター・土屋暁氏のインタビューなども手掛ける。PS3「アルノサージュ」の中盤以降は未履修。
ロック:PS Vita「シェルノサージュ OFFLINE ~失われた星へ捧ぐ詩~」(以下、「シェルノサージュ OFFLINE」)から「サージュ」入り。「アルノサージュ」はPS3でクリア済み。
8年前から始まったシリーズということで、記憶の糸をたどりながらの対談ではあるが、ファンの方々には2人と一緒に「サージュ」の魅力を再確認してほしい。
なお、本記事には「アルトネリコ」シリーズを含むネタバレ要素が含まれる。核心をつくような内容は出来るだけ避けているので、シリーズに初めて触れる方は注意していただけると幸いだ。
「サージュ」に触れたきっかけは?
ロック:TOKENさんはどこから「サージュ」に入られたんですか?
TOKEN:どこから、というのは少し難しいですね。自分は「サージュ」が出た頃はもうこの仕事に関わっていたので。
ロック:Gamerの特設サイトもありましたよね。
TOKEN:そうそう。だから「シェルノサージュ」が発表された時は、「土屋暁さんの新作が出るんだ」という印象でしたね。
ロック:土屋さんのことは前からご存じだったのですね。
TOKEN:そうですね。元々自分がこの業界に入った頃に携わったのが「アルトネリコ3 世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く」(以下、「アルトネリコ3」)のインタビューだったので、その時に土屋さんには一度お会いしていたんです。もちろんその前から知っていたのですが。なので、土屋さんが関わっている新しい作品が出るというところから関心を強めていった感じですね。
ロック:では、実際プレイを始めたのはオンライン版「シェルノサージュ」の方だったのですか?
TOKEN:そうです、オンラインの時から触っています。
ロック:自分は「シェルノサージュ OFFLINE」からなんですよね。
TOKEN:オンライン版は結構時間に縛られる仕組みでした。今でこそコミュニケーション系(同期型)のゲームはスマートフォンなどで結構出てきていますけど、PS Vitaって初期の頃は3G回線とWi-Fiの機種があったじゃないですか?
ロック:そうですね、確か3GモデルとWi-Fiモデルがありました。
TOKEN:そうそう。多分オンライン版の仕様は、そのあたりの「オンラインの環境内でどこでもプレイできる」流れを汲んでいるはずなんですよ。基本的に「時間に縛られずいつでもイオンに会える」というのがコンセプトで。自分はWi-Fiの方のPS Vitaしか持っておらず、日中は仕事的になかなか会えないサイクルだったので、すごく大変だったのを覚えていますね。
ロック:「夜しか会えない!」みたいな(笑)。
TOKEN:そうですね(笑)。ただこのコンセプトを2012年に発表しているというのはやはり凄いなと思いますね。
ロック:土屋さんの先見の明は凄いですよね。
TOKEN:当時もそう思っていたからこそ、「シェルノサージュ」のインタビューもしたんです。
ロック:自分はオフライン版なので、オンラインの施策に参加したかったなという気持ちがありました。
TOKEN:そうですよね。オンライン版はDLCとして追加されるストーリーもリアルタイムでアップデートされていくし、イオンと自分(端末)の関係性が変わっていくことによって、ストーリーも開示されていくような流れになっていたんですよ。
ロック:どんどんストーリーが追加されていく、というのはテレビアニメのような感じですかね?
TOKEN:というよりは、断続的に遊ばせるという目的があるんじゃないですかね。その後に出た「拡張少女系トライナリー」も発想的にはそうじゃないですか、あれはアニメを媒介にしていますけど。多分そこにアイデアがあるんだと思います。オフライン版は、どちらかというと詰め合わせのようなゲームなので。
ロック:そうですね、一気にプレイできる感じでした。
TOKEN:オフライン版は、仕様的にイオンとの交流もそんなに苦労することなくできたと思うんです。ただ、イオンとリアルタイムでコミュニケーションをしていくという面で、オンライン版での体験が「シェルノサージュ」の楽しさの一つであったのは間違いないかなと思いますね。
ロック:コミュニケーションも含めて「シェルノサージュ」、ということですね。
TOKEN:そうですね、主体はそちらかなと。ストーリーはもともとイオン自身の中にあるものなので、それはそれで楽しみなんですけどね。
ロック:オフライン版からプレイした自分は、割とストーリーを主体にやっていました。
TOKEN:オフライン版は作り的にそうですもんね。
ロック:そうなんです。「シェルノサージュ」はコミュニケーション要素があっても強制はされないというか、やってもいいしストーリーをガンガン進めてもいい、という感じですよね。
TOKEN:シャール周りのシステムも、オフライン版は確かすごく楽になっていましたしね。オンライン版はとにかくそこが大変だった印象があります。
ロック:自分もHymp(ヒュムノポイント)は結構苦労した覚えはありますけどね(笑)。
TOKEN:オンライン版の時は、終盤はストーリーを解放するだけで手いっぱいでしたよ。
ロック:ストーリーの先も気になりますしね。
TOKEN:オンライン版の場合は更新されるまで時間があるので、待つしかないという感じですかね。当時は結構まとめて進めた記憶があります。
ロック:「サージュ・コンチェルトソーシャル」を見ると、当時やっていた施策の跡が残っていて。個人的にそれを見るのも楽しかったんですよね。「こんなことがあったんだ」という。メールのやり取りなんかもあったらしいじゃないですか?
TOKEN:ありましたね! やっていました。
ロック:リアルでやりたかったな、という思いはありますよね。一応オフライン版も「オフラインコンソール」というものがあったと思うんですけど、あまりリアルタイムな感じではなかったので。ライブ感を楽しみたかったなという気持ちはありますね(笑)。
TOKEN:そうですね、全体的にライブで楽しむコンテンツなのは間違いないと思います。
世界体験ツール「シェルノサージュ」
「シェルノサージュ」の肝・イオンを2人はどう見る?
ロック:それでは「シェルノサージュ」の話題に入っていきたいと思います。個人的に「シェルノサージュ」といえばイオンだと思うのですが、イオンのキャラクターとしての魅力はどこにあると感じますか?
TOKEN:当然キャラクターとしてのかわいさや、ストーリーと紐づく部分での優しさのようなものは見えてくると思うんです。ただ、一般的な俯瞰で見るような魅力というよりは、自分が端末として接していくという、コミュニケーションから生まれる愛着のようなものが強いのかなと思いますね。
イオンと日々コミュニケーションしたり、外へ出たり、限られた空間で一緒に過ごす中で、イオンに対する気持ちが高まっていく。そうしたバックボーンがありながら、ストーリーを紐解いていく…といった一連のサイクルの中に、イオンの魅力は詰まっているんじゃないかなと。
ロック:なるほど、確かにそうですね。自分としては記憶喪失というのがポイントなのではないかと考えています。プレイヤーも世界について知らない状態からスタートする訳じゃないですか? そして、イオン自身も自分のことはあまり知らない。互いゼロに近い場所からスタートするのが、プレイヤーに寄り添っている感覚を強めているのかなと思います。
TOKEN:要はこの世界のことは誰も知らないんですよね。こういう距離感というか立ち位置の作品ってそもそも少ないんだと思います。
ロック:選択肢があったり“トントン”したりするのは恋愛シミュレーションっぽくもあるんですけど、世界に対しての理解という意味ではそれより平等というか、置いてきぼりにされているようで近くにいてくれる感覚はありますよね。
TOKEN:そうですね。意図的に開示してくる情報も、そういうコントロールがされているイメージはありました。
ロック:ちなみにTOKENさんは、イオンをパートナーとして見ていましたか? 自分は最終的に親目線になってしまったんですけど(笑)。
TOKEN:(笑)。難しいですね…。多分それは、さきほど言った「俯瞰で見るか隣にいる存在としてみるか?」のような目線の違いが明らかに出ると思うんです。自分は親というほど目線を高くしていないし、かといって恋人みたいな感覚とも違ったので…パートナーかな?
ロック:なるほど。イオンって最初は結構弱々しい感じがあったじゃないですか?
TOKEN:そうですね、やはり記憶喪失なので。寄り添っていってあげる存在だから、こちらもそれに対して色々反応を見ながら体験を楽しむところはありますね。そういう意味では、どの目線でみているのかはあまり考えたことがなかったですね。
ロック:不思議な関係性ですよね。
TOKEN:そうですね、そんなに遠い距離感ではないかなと思います。今振り返ると、割と近い距離感で捉えてはいたのかなと。
ロック:序盤は右も左も分からない上にだいぶひどい目にあったりするので、自分はとにかく同情してしまいました(笑)。
TOKEN:自分は「アルトネリコ」シリーズをプレイしているからだと思うんですけど、ひどさみたいなものはあまり強くなかったですね。ヒロインも主人公たちもそうだと思うんですが、ストーリー的には落ちては上がり落ちては上がりの繰り返しの作りなので。
そういう意味では最初は底からスタートしている訳で、そこからどう上がっていくのか、みたいなところをストーリーを読む上では楽しんでたかなと思いますね。
記憶修復に“夢セカイ”―世界観と強く結びついたゲームシステム
ロック:ではシステムの話に移ります。ゲームの中でイオンの失われた記憶(夢セカイ)は廃墟のマップで表現される訳ですが、個人的にはこれが結構ロマンがあるなと!
TOKEN:(笑)。具体的にどういうところがロマンなんですか?
ロック:廃虚自体が好きなのもあるんですけど(笑)。やはり記憶と街(場所)が結び付いているという所ですかね。夢セカイに入っていく時も扉を通るので、場所とリンクしている感じがして好きでした。
TOKEN:自分はそこに関しては割とシステマチックにやってしまっていたから、強い印象はないですかね。もちろん廃虚から連想するものというのは絶対にあるから、色々考えながらプレイしましたけどね。
ロック:「シェルノサージュ」はゲームゲームした感じを取っ払っているというか、UI一つを取ってもゲームっぽくないという印象を自分は受けたんですよね。
TOKEN:個人的にはソーシャルゲームのロジックだと思うんですよ。イオンと交流して、色々開放していって、シャールを育てて、記憶を開放して、そしてまたイオンとコミュニケーションを取る、といったサイクルが回っていく作りというか。それぞれのサイクルって短いじゃないですか?
ロック:確かにそうですね。
TOKEN:その短いサイクルで回っていくのはソーシャルゲームのロジックだなと思います。
ロック:オンライン版だから、という面もあるかもしれないですね。
TOKEN:そうですね、オフライン版はもっとガツガツ進めていけると思うので。オンライン版とオフライン版で明確に違いがあるのは間違いないですよね。ただオフラインに関しても、自分でコントロールをすればひと通りのサイクルで楽しめると思いますよ。
廃虚の話でいうと、あの世界観はめちゃくちゃ独特ですよね。
ロック:何と表現したらいいんですかね、オリエンタル?
TOKEN:世界観的にはそうですよね、色々な文化が混入している感じなので。
ロック:あまり他にないジャンルですよね。
TOKEN:そうですね、そこは用意されていたデザインが基準になっているのかなとは思います。ただ、こういう少しふざけた世界っていうんですかね、オリエンタルなんだけど、ツッコミたくなるような町並みがたまにあるわけじゃないですか?
ロック:ありますね(笑)。
TOKEN:そういうものはやはり土屋さんならではの世界観だなと思いますね。そこが魅力というか、これがないと「サージュ」を感じられない部分ではあるかなと思うので。
ロック:異世界感はあるんですけど、同時に親近感もありますよね。昭和っぽい看板があったり、秘密基地があったり。
TOKEN:そうですね! ノスタルジーな作りは随所にありますよね。
意外と王道? 「アルノサージュ」へ繋がる大ボリュームのストーリー
ロック:メインストーリーについてはいかがでしょう?
TOKEN:イオンがどういう時間を過ごしていったのかを追いかけていくような構造ですよね。守られている状態のイオンが、色々なことを乗り越えていって、たくさんの人と出会い、また傷つき、みたいな。それに伴って世界もまた大きな影響を受けてくる、という感じですね。
ロック:物語的には王道といっていいんですかね?
TOKEN:そうですね、ただ世界にまつわる物語なので、スケールは結構大きいかなとは思います。そして登場人物たちにもちゃんとドラマがあって、物語を引き立てていると。ボリュームもすごいですけどね(笑)。
ロック:そうですね(笑)。
TOKEN:改めてこの物語を捉えるのは難しいですね。
ロック:内容に触れすぎるとネタバレになってしまいますしね(笑)。
TOKEN:イオンは何者なのか? という話ではありますよね。あとはそれを取り巻く登場人物たちがどういった立ち位置なのか。ネイの存在なんかはすごく大事かなと思います。
ロック:ネイはかなりの重要人物ですよね。自分は大人がかっこいい作品という印象があります。中でもレナルルさんは、悩み多き女性という感じで好きでしたね。ただ、物語の中心となるのは子どもたちなんですよね。
TOKEN:そうですね、子供たちとイオンが一緒に行動してるというのも含めて。それこそ「アルノサージュ」に繋がる部分でもあると思います。
RPGなどでボリュームが多いことはあると思うのですが、こんなに追加してボリューム膨らませるケースはあまりないと思うので、それは凄いですよね。ストーリーを追いかけるのが大変だったのを覚えています(笑)。
ロック:自分も、一気にやるのは大変だった記憶がありますね(笑)。
TOKEN:そうですよね。純粋にボリュームがあるので、振り返らないとなかなか思い出せないですよね。
ロック:振り返りという意味も込めて、DX版でやり直したくなりますね!
TOKEN:時間が作れるかな? という不安はありますけどね(笑)。
「アルトネリコ」との関連性も―RPGとなった「アルノサージュ」の魅力とは?
“世界体験ツール”からRPGへ
TOKEN:今回デラックス版が出るにあたって、やはり「アルノサージュ」をちゃんとやりたいなと思いますね。自分は「シェルノサージュ」だけしかストーリーを完璧に追えていないので。
ロック:そうですよね! 「アルノサージュ」は「シェルノサージュ」からガラッと変わった印象でした。
TOKEN:そうですね。自分は本当に中盤ぐらいで止まってしまっているので、まだ自分の中で持ってない情報がたくさんあるんですよ。
ロック:シリーズという面で、アドベンチャーの続きがRPGの作品はなかなかないと思います。
TOKEN:そうですね、これも「アルトネリコ」の話に繋がるんですが、「アルトネリコ」がRPGのシリーズだったんですよ。そういう意味では、戻ってきたという感覚の方が個人的には強かったですけどね。
ロック:システム的に「アルトネリコ」に似た部分はあったんですか?
TOKEN:ありましたね。詩魔法を使うという仕組み自体が「アルトネリコ」と通ずるものがあります。懐かしいなという気持ちは色々な所でありましたね。
ロック:「アルノサージュ」の特徴的なシステムとして「禊ぎ」があると思うのですが、これもそうなんですか?
TOKEN:「禊ぎ」という名前ではなかったんですけど、お風呂に入るイベントがありました。
ロック:確かに近い感じですね。
TOKEN:禊ぎは個人でやるものなので、正確には少し違うんですけどね。
TOKEN:あと、詩魔法は使うものによって姿が変わるじゃないですか?
ロック:そうですね。
TOKEN:それも「アルトネリコ」のシステムの中にあったんですよ。それと一番大きいのは、精神世界に潜る「ジェノメトリクス」ですね。階層を掘る毎にどんどん複雑化していく、といった作りも含めて基本的には同じでした。
ロック:キャラクターの心の中って普通は一面で表現されていたりすることが多いと思うんですが、「アルノサージュ」のジェノメトリクスは層になっていますよね? 一回見ただけでは全てを知ることはできない、というような。
TOKEN:掘っていくと「一層目で見たものはもう本当に表面なんだな」と思うんですよね。
ロック:その深さが自分は結構好きなんですよ。
TOKEN:ロックは年齢的にリアルタイムで触れられなかったと思うんですけど、多分「アルトネリコ」シリーズは超ハマると思いますよ!
ロック:本当ですか! やりたいなぁ…。
TOKEN:面白いですよ。PS2だから、今触るのはなかなか難しいタイトルではあるんですけどね。
ロック:「アルトネリコ」シリーズもDX版を出して欲しいですよね。
TOKEN:色々ハードルはあると思いますけどね(笑)。何かしら触る機会ができたらいいなと思っています。個人的には本当に好きなタイトルだったので、今知ってもらいたいですね。キャラクターの内面も色々と重いので、若い頃に触りたい作品ではありますけど。
ロック:ストーリー的にも「アルノサージュ」と「アルトネリコ」シリーズは深い繋がりがあったりするんですよね?
TOKEN:そうですね。ただ自分は言った通り途中までしかやっていないので、ゲーム中でどう描かれたかまでは知らないんですよ。
ロック:そうですよね…。場所の名前だけいうと、“アルトネリコタワー”は出てきました。
TOKEN:そうそう、「アルトネリコ」シリーズでも塔の存在はすごく大事なんですよ。
ロック:あとは塔の管理者として、シュレリアも登場しましたね。
TOKEN:シュレリア、懐かしいなぁ…。
ロック:「アルトネリコ」をやっていない身としては、誰だろう? と最初は思ったんですよね(笑)。
TOKEN:アヤタネとかも出ているじゃないですか。アヤタネも「アルトネリコ」に関係したキャラクターなんですよ。
ロック:彼にも深い背景があったりするんですか?
TOKEN:ありますね、懐かしいですねぇ…。
キャラクターの成長やバトル、「シェルノサージュ」との連動要素
ロック:「アルノサージュ」は、キャラクターの成長も魅力の一つだと思います。
TOKEN:そうですね。デルタとキャスティ(キャス)がまさかこういう立ち位置になるとは、と思いました。デルタって名前は言われていなかったじゃないですか?
ロック:そうでしたね。
TOKEN:見てなんとなくは分かるけど、「あぁ~」とは思いましたね。そもそもキャスが一緒にいる時点でそういうことなんですけどね(笑)。
ロック:そうですね(笑)。カップルというよりかはバディというか、パートナー的な感じですよね。そこの関係性はベタベタしすぎないで個人的にいいなと思いました。バトルは「アルトネリコ」シリーズとはまた違った感じなんですか?
TOKEN:そうですね、バトルは「2」の作りに近いかな。「アルノサージュ」は基本2人で戦うんでしたよね?
ロック:そうですね。基本的に、ヒロインを守る形で主人公が戦います。
TOKEN:例えば「アルトネリコ2」だと、前衛と後衛の組み合わせが2ラインあるんです。だから「アルノサージュ」はシンプルに収まったなと思いましたね。どちらかというとリアルタイム性が結構強い仕組みじゃないですか。
ロック:ジャストカードとかありますしね。
TOKEN:そうですね、結構考えることが多いなと思いました。
ロック:最後に詩魔法で敵を一掃するという流れも「アルトネリコ」からあったんですか?
TOKEN:こんなにたくさん敵は出てこないです(笑)。どちらかというと爽快感を強めたのかなとは思いましたけどね。
ロック:「アルノサージュ」の敵は単体ではなくWAVEで襲ってきますもんね(笑)。あとはジェノメトリクスの精神的傾向「ジェノマップ」によってバトル中の掛け合いが変わる、なんて要素もありました。
TOKEN:そこは多分オリジナルだと思いますけどね。基本的に詩魔法を繰り出す間に前衛が守る、という構造が「アルトネリコ」のベースの仕組みなので。
ロック:掛け合いでいうと、フィールド上でも仲間たちとの会話がありましたよね? 仲間と旅をしている感じがあって楽しかったのを覚えています。
TOKEN:そうそう。話すキャラクターを切り替えたりできましたもんね。
ロック:ほかに特徴的なのは「ジェノミリンク」ですかね? 「シェルノサージュ」と連動して「アルノサージュ」の物語の内容が変わる、みたいな。
TOKEN:ありましたね! これも世界観が繋がってるという「サージュ」の考え方の反映ですよね。
ロック:そうですね。
「サージュ・コンチェルト」を語るには欠かせない“詩”
TOKEN:完全に忘れていましたけど、詩の話をしてないですね。
ロック:あ、確かにそうですね(笑)。
TOKEN:詩は凄いですよね。「シェルノサージュ」や「アルトネリコ」の頃からそうなんですけど、キャラクターに応じて志方あきこさんや霜月はるかさんといった異なる歌手が担当するんです。
曲も自由度が結構あって、志方さんが作る曲は本当に幅があって面白いんですよ。過去に2回ぐらいインタビューしてるんですけど、本当に楽しく作っていらっしゃるみたいで。そこは聞いていて凄く面白かったですね。
ロック:オリエンタル風の曲から急にSFっぽくなったりしますよね。
TOKEN:そうですね、魔法少女のテーマ曲なんかもあったり(笑)。
ロック:ありましたね(笑)。詩によっては架空言語を使っていたりもしますよね?
TOKEN:言語はかなり攻めていますよね。もちろん「アルトネリコ」の積み重ねがあったからというのはあると思うんですけど、世界観にめちゃくちゃマッチした曲が多いですね。あと土屋さんってサウンドのクリエイターなんですよ、元々「アトリエ」シリーズの楽曲などを担当していて。
ロック:そうなんですね! 「サージュ」も詩を中心としたシリーズという印象があります。
TOKEN:詩以外に、BGMにも色々関わっているんですよ。やはりそうした経験があるからこそのディレクションの大きさもあるのかなと思いますね。
音楽やUI、アイテムまで―シリアスとシュールが混ざり合った独自の世界観
ロック:音楽やUIも含めて、世界観を崩さない努力のようなものは随所に感じますね。
TOKEN:どちらかと言えば、土屋さんの中にある世界観というのが大きいのかなと思いますけどね。彼の中の世界観が組み上げられてるのかなと。
ロック:確かアイテムとかのテキストって土屋さんが書かれているんですよね?
TOKEN:そうですそうです! 「アルトネリコ」シリーズの頃からそうで。インタビューでも色々触れていますけど、「アルノサージュ」でもかなりやっているという話でした。
ロック:アイテムのステータス(フレーバーテキスト)も面白いですよね(笑)。
TOKEN:結構やばいですよね(笑)。あと、調合の時にイベントが発生するじゃないですか?
ロック:“アレ”ですね(笑)。
TOKEN:あのやりとりもシュールですよね(笑)。自分はどうしても仕事で触れる機会が多かったから、そちらの印象が強くなっているというのもありますけど。
ロック:シリアスなんだけど、シリアスになりすぎないような要素は随所にありますよね。
TOKEN:物語的にシリアスな流れになっているのに、調合をしたりするとやばかったりします(笑)。メリハリがめちゃくちゃ凄いですよね。
ロック:「アルノサージュ」もボリュームのある作品なので、こういう息抜き的なイベントは良いですよね。
「サージュ・コンチェルト」をはじめとした“土屋ワールド”とファンたちの熱量
TOKEN:すごく話が戻ってしまうんですけど、今当時自分が書いた「アルノサージュ」のプレイレポートを見直していて、思いっきり「バトルシステムは『アルトネリコ2』の正統進化」って書いてありますね(笑)。
ロック:「2」の進化なんですか?
TOKEN:そうですね、「3」は円形のフィールドをこう歩き回れる仕組みになっていたので、また少し違うんですよ。
ロック:プレイレポートもそうですけど、Gamerの特設サイトも熱の入り方がすごいですよね。
TOKEN:そうですか?(笑)。これは制作してくださったスタッフさんのデザインのセンスもあると思いますね。
今は当時から比べても時間の流れが経ってしまっているので、なかなか同じ熱量を持ち辛いところはありますけど、当時は自分がこの業界で関わっていく中で、真正面からぶつかっていかなきゃいけないタイトルがあると思っていて、その一つが土屋さんが関わる作品だったんですよね。
この頃って自分もまだキャリア的に4、5年ぐらいなので、十代の頃に自分を形成していたものに向き合わなきゃいけないなという気持ちが強くて。そういう意味では、この頃扱っていたものは凄く熱を持ってやっていましたね。
ロック:当時のファンたちの盛り上がりみたいなものはあったんですか?
TOKEN:土屋さんがよく仰ってると思うんですが、「アルトネリコ」シリーズの頃からWebコンテンツをずっと熱心に更新されていんですよ。
そういうものってユーザー心理的には凄くありがたいことで、一緒に楽しみを共有しているという意味で良かったのかなとは思っていますけどね。それが今でもユーザーの熱量に繋がっている部分ではあると思うんですよ。ちなみに「アルポータル」って見たことはありますか?
ロック:そちらの方は無いですね。
TOKEN:自分も昔は見ていて、凄かったんですよ! 投稿コーナーとかがあって、そこにキャラクターが辛辣なコメントをしていくという(笑)。「アルノサージュ」の調合と同じく土屋さんのテイストなんですよ。ああいう施策ってなかなか重い腰を上げづらいと思うんですけど、それをやってきたので、ファンはついていきますよね。
ロック:なるほど、確かにそうですね。今回DX版が出るにあたって、新しい施策とかがあったらいいなと思います。
TOKEN:どうなんですかね? 今のところ直接的には無いですけどね。個人的には、「サージュ」の世界観をどうするのかな? というのはずっと思っていて。「サージュ」を知る上で「アルトネリコ」シリーズは大事だから、展開の幅のようなものが広がってくれればいいなと思う部分もありますね。
あとは自分が「アルノサージュ」の完結の仕方を知らないから、正直「サージュ」の世界観をこの先どうできるのか、みたいなところをちょっと分かっていない部分はあるんですけど。
ロック:続きは若干作りづらい感じはしますね。
TOKEN:ですよね、多分そうなんじゃないかなと思うんですよ。だから、今後どうしていくのか? というのはありますね。
ロック:難しいところですよね…。個人的には、DX版から新規で入ってくださる人がいたら嬉しいなと思います。自分以外に「サージュ」好きな人が周りにいなかったので(笑)。
TOKEN:そうなんだ!
ロック:ストーリーや世界観にどっぷり浸かるタイプの人があまりいなかったんですよね。
TOKEN:なるほどね。自分も今の年だと、この世界観にどっぷりというのはきつくなってはいるんですよ。ただ、単なるゲームのパッケージングだけでなく、世界観をパッケージングしているという所はやはり魅力ですよね。
「サージュ」の世界観って、あらゆる意味で考察されるものだと思いますし、深い層まで掘り下げていく中で、自分たちもそこへ引きずられていって一緒に深みにはまっていく作品なので(笑)。感情移入が凄いんです。そういう作品って今でもなかなかないと思いますし、そこでみんなが楽しんでもらえたらいいのかな? とは思いますね。
ロック:個人的には底の深さと同時に入り口は案外広いのかな、と思うんですけど。
TOKEN:入口の広さはどこに感じますか?
ロック:記憶喪失の話とも繋がりますけど、イオンがプレイヤーと近い状態から始まるので、「サージュ」として独立してやっても入りやすいかなとは思うんですよ。
TOKEN:シリーズとして入りやすいということですか?
ロック:そうですね。考察も強制はされず、どこまで掘り下げてもいい訳じゃないですか。見た目より入り口は広いのかな? という印象はありますけどね。
TOKEN:なるほど。自分は広いとはなかなか言い切れないところがあります。万人受けするというよりは、ハマるかハマらないかだと思うんですよ。ハマればいける、ハマれないとなかなか世界に染まれない、というような。
ロック:確かに万人受けはしない感じですね…。
TOKEN:ただそういうものも含めたシリーズなので。逆に熱量がなかったら、作品として成立しない部分も絶対あると思うんですよね。他にはない魅力に溢れている作品だと思います。
あとは今の時代のシステム、例えばガストブランドの人たちがもう一回こういうゲームを作ろう、となった時に作り上げるゲームを見てみたいなとは思っています。
ロック:それは確かに見てみたいですね!
TOKEN:「サージュ」はやはり時代が早すぎたせいで、システム的なものや構築する部分が少しもったいないなと思う面もあったりしたんですよ。整理されていないというか、詰め込み型のゲームだったので。
ロック:確かに。今はSNSも発展しているので、その辺りとの繋がりもあったらいいかなっていうのはありますね。
TOKEN:そうですね、今の時代の楽しさみたいな。ただあの頃にしか作れなかった熱量とも思うので、せめぎ合いはずっとあると思うんですけどね。ただ、次にどういうものを取り組めるのか、という意味でも見てみたいという気持ちはありますね。