カプコンより、2021年3月26日に発売予定のNintendo Switch用ソフト「モンスターハンターライズ」。今回は、開発に関わる辻本良三プロデューサー・一瀬泰範ディレクターへのインタビューの模様をお届けする。
「翔蟲」の導入は、それぞれの武器の個性をより引き立てるためのもの
――「ライズ」の新要素としてもっとも大きいのは「翔蟲」に関連したアクションだと思いますが、過去作に登場するモンスターも、それに合わせた調整になっているのでしょうか?
一瀬泰範氏(以下、一瀬氏):そうですね。翔蟲を使って空中に逃げたりといった対処法を想定した攻撃というのもモンスターによっては存在しています。ただ、翔蟲を使わないと倒せないようなモンスターがいるというわけではなく、うまく使うことでより攻略が楽になるという位置づけの要素になります。
――「アイスボーン」の時のクラッチクローは抜刀時でも使用できましたが、本作の「疾翔け」は納刀時のみのアクションになっています。これにはどういった意図があったのでしょうか?
一瀬氏:実際、そこは僕たちの間でも話し合った部分でした。システム面に関わる新アクションを追加したいとは考えていたのですが、抜刀時でも使えるようにしてしまうと、翔蟲で飛びながら近づいて攻撃して離脱といった感じで、どの武器を使っても同じような動きになり、それぞれの個性が失われてしまいます。
納刀時には主に移動の軽快さという面で「疾翔け」を楽しんでもらいつつ、抜刀時にはそれぞれの武器の特性を伸ばすアクションとして、「鉄蟲糸技」を追加したという形になっています。
――新モンスターである「ビシュテンゴ」については、これまでのモンスターにない動きをしていましたが、モチーフになった生物はいるのでしょうか?
一瀬氏:どのモンスターにも複合的なモチーフがあることが多いのですが、ビシュテンゴの場合は天狗や猿がそれにあたり、柿を投げつけてきたり、モノを使ったトリッキーな動きをしてきます。あとは尻尾を軸に回転するような動きもあるのですが、これは玩具のコマを意識したものになっていますね。
――ビシュテンゴのように妖怪をモチーフとしたモンスターからも、実在するリアルな生物っぽさが感じられました。
一瀬氏:妖怪などをモチーフにしつつも、動物として骨格にあわせた動きに落としこんでいたり、生態に組み込むということは意識しています。あとは実在の動物をモチーフにするのは、過去シリーズでかなりやり尽くした部分があって。その上で、キャッチーなキャラクター性を足したかったのと、今回の和風な世界観にもマッチすると考え、妖怪という要素をモチーフとして使っています。
――フルフルはどのあたりの進行度で戦えるようになるのでしょうか? フルフルといえば、序盤で初心者が手こずることの多いモンスターという印象があります。
一瀬氏:基本的にはこれまでのシリーズと同様、序盤から中盤にかけてのモンスターと考えていただければと思います。基本的な動きも従来のシリーズのものを踏襲しているので、懐かしさのようなものを感じていただけるかなと。
ただ、昔と比べるとプレイヤーのアクションも大幅に増えていますので、それに合わせたアクションの追加や調整を行っています。これはフルフルに限った話ではありませんが、懐かしさと同時に新鮮さも感じられるようになっていると思います。
マルチプレイではカムラの里のあらゆる施設を共に回れるように
――マルチプレイはどのようにして行うのでしょうか?
一瀬氏:本作のマルチプレイに関しては、カムラの里にいるアイルー(郵便屋)のセンリに話しかけることでオンラインやローカル通信プレイに切り替えることができるようになっています。
――マルチプレイ時は、他のプレイヤーが見えるのは集会所のみなのでしょうか?
辻本良三氏(以下、辻本氏):マルチプレイの仕様は「ワールド」の時と少し違っていて、集会所の外でも他のプレイヤーと一緒に移動できるようになっています。PVでも、集会所の外を他のプレイヤーとガルクで一緒に走っている場面が映っていたかと思いますが、あれと同じように、他のプレイヤーの姿を見ながら移動ができるようになっています。
――となると、修練場にも一緒に行けるのでしょうか?
一瀬氏:そうなります。基本的に本作では、他のプレイヤーとどのエリアでも行動を共にすることができるようになっています。より直感的に他のプレイヤーとのつながりを感じられるようになっているかなと思います。
――体験版では、モンスターの元に素早くたどり着けるオトモガルクを愛用するユーザーが多いようにも感じましたが、オトモアイルーを選ぶメリットを教えてください。
一瀬氏:移動やモンスターへの攻撃という面ではオトモガルクに分があるのですが、オトモアイルーは回復や罠を仕掛ける補助面が優秀という差別化を図っています。個人的には、ガルクとアイルーをそれぞれ1匹ずつ連れていくのがバランスがいいと思いますが、プレイスタイルにあわせて、ガルク、もしくはアイルーを2匹選んでもらうというのもアリかなと。例えば剣士なら、移動しながら砥石が使えるのでガルクを選ぶメリットが大きいですが、ガンナーだとそれはないので、アイルー2匹というのも選択肢に入ってくると思います。
――オトモガルクにも、従来のシリーズのアイルーのようなカスタマイズ性はあるのでしょうか?
一瀬氏:そうですね。オトモガルクにも、通常武器とは別にクエストに持ち込むことができる猟犬具という特殊な装備が存在しており、クエストの進行によって開放されるようになってます。PVにも、オトモガルクが傘や鎖鎌のような武器を使っている映像が写っていたと思いますが、それが猟犬具にあたります。
――本作では食事が団子になっていますが、食事システムについて詳しく教えて下さい。
一瀬氏:本作の団子には一つ一つに効果が設定されていまして、その中から3種類を自由に組み合わせられるというシステムになっています。ゲームを進めると選べる団子の種類が増えます。またクエスト出発後にもキャンプで団子を食べられるようになっています。
――新しく登場する装備である「花結」について教えて下さい。
一瀬氏:本作のフィールドには取得するとステータスをアップさせてくれる「ヒトダマドリ」が存在しているのですが、その取得可能な総量をアップさせることができるブレスレットのような装備が「花結」です。
花結の種類によって攻撃だったり体力だったり、上限幅や取得値のステータスが異なり、プレイヤーのスタイルにあわせて付け替えたり、クエスト中にどのヒトダマドリを優先して集めるかを考えるといった仕様になっています。ゲームの進行度に合わせて選べる種類が増えていきます。
体験版では狩猟笛が一躍人気武器に
――1月に配信された体験版についてのお話もお聞かせください。とくに使用率が高かった武器というのはありますか?
辻本氏:やはり話題になったのは狩猟笛ですね。とくに「アイスボーン」の時は使用率が最下位だったのですが、「ライズ」の体験版ではかなり上位まで上がってきていたので、武器の中ではとくに目立っていました。
――狩猟笛はアクション面でも大きな変化がありましたが、これはそれまで使用率が低かったことを受けての調整だったのでしょうか。
辻本氏:それは、一瀬が狩猟笛使いだからというのも影響しているかもしれません(笑)。
一瀬氏:それはあまり関係なりですね(笑)。元々、前に出ながら演奏するというスタイルは、過去に担当したシリーズから目指していた狩猟笛の方向性だったんです。今回はそれをより強調させたアクションを一度取り入れてみようと。翔蟲の導入で全体のゲームテンポ自体も上がったので、それに合わせて狩猟笛の仕組みも変更した結果生まれたのが、本作の狩猟笛のスタイルになります。
――「モンスターハンター」シリーズを通して、武器の人気の変化などはありましたか?
辻本氏:その点は、実はあまり昔も今も変わってないかもしれないですね。太刀は実装からずっと不動の人気ですし。
一瀬氏:大剣も初代から定番の武器として人気ですし、双剣もかっこよさと扱いやすさで使用率が高いです。あとはチャージアックスも安定して人気が高いです。
――最後に、読者に向けてのアナウンスなどがありましたらお願いします。
辻本氏:3月26日にはSwitch版の「モンスターハンターライズ」が発売となります。特に海外からの要望が多かったPC版に関しては、2022年の初頭頃を目安に開発を進めようと思っています。詳細についてはまだまだ先になってしまうと思いますが、決まり次第改めてアナウンスさせていただければと思います。
――ありがとうございました。
着実に発売が近づきつつある「モンスターハンターライズ」。インタビューの最後にはPC版がリリース予定であることが明かされ驚かされたが、「ワールド」と同様にPCでプレイしたいユーザーにとっては朗報となったのではないだろうか。
なお今回のインタビューにあわせて、本作の新バージョンの「試遊レポート」も掲載しているので、こちらもご一読を。