ミストウォーカーコーポレーションからリリースされたRPG「FΛNTΛSIΛN」をレビュー。「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親が手掛ける新作RPGの出来栄えはいかなるものだったか。

「FΛNTΛSIΛN」は、iOS向けのゲームサブスクリプションサービスApple Arcade向けにリリースされたRPG。本作の特徴のひとつは、ストーリーを坂口博信氏、音楽を植松伸夫氏という「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親が手がけていることだろう。そしてもうひとつの特徴が、マップがジオラマで作成されていること。コンセプトアートに基づき実際にマップの模型を作成、それを3Dスキャンすることで3Dデータとしてゲーム内に取り込んでいる。非常に話題性の高い作品だけに、楽しみにしていた人も多いだろう。筆者もその一人だ。なお、本作は前編・後編の二部構成。今回リリースされたのは前編で、後編は2021年の後半にリリース予定となっている。

ジオラマによる独特な臨場感!そして魅力的なストーリー

本作の特徴である「ジオラマ」について、実はプレイ前、筆者「ジオラマで作らずとも、3DCGで作ってジオラマ風に見せればいいんじゃないの…?」なんてことを思っていた。しかし、これは大間違い。プレイして、ジオラマじゃないと出せない味わいがあるとよくわかった。

何がジオラマじゃないと出せない味なのか?というと、不規則性。ゲーム向けの3DCGでは、基本的に同じオブジェクトは使いまわす。たとえば、部屋の中に同じ形の椅子が10脚ある場合、基本的には1個の椅子をコピーして使用する。そうでないと制作コストが嵩むし、ゲームを動かす際のメモリーに余計な負荷がかかってしまう。だが本作は3DCGではなくジオラマ。一部に3DCGを使用しているようだが、ほとんどの部分で現実に模型を作成しているため、使いまわしされたオブジェクトはほとんどない。なので、窓や椅子や机、木など、同じように見えるものであっても実際には少しずつ差が存在している。現実世界と同様、不規則なのだ。このことが、3DCGでは生み出せないリアリティをもたらしている。

ただ、ゲームをしばらく進めていると、背景がジオラマであることについて、いい意味で気にならなくなってしまった。どういうことかというと、それくらいストーリーにのめりこんでしまったのだ。

本作の舞台となる世界は、人々が「死械球」に悩まされる世界。「死械球」とは、空に開いた穴から次々に湧き出す機械浸食体。人々はこの「死械球」を「邪神」がもたらしたものと噂していた。

本作の主人公、レオアは、機械の支配する別世界で魔法爆発に巻き込まれ、記憶を喪失。彼は行方不明の父を探すという目的や、多次元世界を行き来できるという能力を持っているのだが、そのことも忘れてしまう。唯一彼が思い出したのは、ある少女の面影。面影を辿りキーナという女性と再会したレオアは、キーナと2人、邪神と、自らの運命を探る冒険へと旅立つ…。

…これが本作のストーリーだ。ベースになっているのはレオアとキーナの物語。ボーイ・ミーツ・ガールものといっていいだろう。そこに多次元世界、機械、魔法…といった多くのキーワードが絡んでくる形式だ。シンプルな物語をベースにしながらも、様々なキーワードによって、「謎」が生みだされる。この言葉はどういう意味なんだろう?このキャラはどういう意図で行動しているんだ?といった具合に。そうやってストーリーを追いかけている内に没入してしまい、先が気になって仕方がなくなってしまう。

また、巧みだと感じたのが、情報の圧縮テクニック。ミストウォーカーコーポレーションは「ロストオデッセイ」で行った小説的な演出を、本作でも導入している。本作のストーリー中、過去のエピソードや、キャラクター達が心情を吐露するような場面では、挿絵と文字情報で小説的にストーリーが語られるのだ。

CGアニメーションでキャラクターの動きを見せながらセリフでストーリーを語るゲーム的演出より、小説的にストーリーを語った方が、同じ時間あたりに伝えられる情報量は多い。これは、一冊のライトノベルを描くのに30分アニメ数話分かかることからもわかるだろう。本作はこの特性を使って登場人物の過去の体験や心情を共有し、一気にプレイヤーと共感をはかる。なので、気づくとストーリーに没入してしまう。そして結果として、背景がジオラマといったことを忘れ、ゲームの先がどうなるのかを楽しみにしてしまうのだ。

「エイミング」と「ディメンジョンバトル」!オールドスクールに見えて新しい楽しさ

では、ゲームシステム面はどうか?本作は、月額600円のApple Arcade向けにリリースされているため、ガチャをはじめとするゲーム内の追加課金要素はない。もちろん、動画広告を閲覧してアイテムをゲットする要素もない。このため、ゲームシステムは買い切り型のパッケージゲームのRPGのような形になっている。つまり、街で情報を収集し、フィールドマップやダンジョンを探索。モンスターと戦いながら、目的達成を目指す…といった形式だ。

操作は物理ゲームにも対応しているが、スマートフォンでも快適にプレイできる。移動や探索はスワイプではなくタップ操作にまとめられており、目的地をタップすると移動。探索可能なオブジェクトが周囲にあるとアイコンが表示され、アイコンタップで探索が行える。

モンスターとの遭遇はランダムエンカウント。フィールドを歩いているとモンスターに遭遇し、バトル画面へと切り替わる。バトルはターン制のコマンド選択式。…これだけだと非常にオールドスクールなRPGのように思えるかもしれない。もちろん、これだけで終わりじゃない。

本作ならではの要素のひとつが、「エイミング」だ。これは、バトル時のターゲット選択に関わる要素。本作では、コマンドをタッチした後、そのまま指を離さずスワイプするようにターゲットを選ぶ。スワイプによって行動キャラクターから線が伸び、キャラクターとターゲットとを線で結ぶように選ぶのだ。

この時、使用する武器やスキルによって、線がターゲットを貫通したり、カーブをかけることができたりする。線が貫通する場合は、直線状の複数の敵キャラクターを一度に攻撃可能。カーブをかけられる場合、軌道上にいる複数の敵キャラクターを一度に攻撃したり、手前の敵を回避して後ろの敵を攻撃したりといったことができる。

「エイミング」のおもしろさが最も分かるバトルが、中ボス「シンデレラ三連星」とのバトルだ。「シンデレラ三連星」自体が非常におもしろい、憎めない敵キャラクターなのだが、バトルもおもしろい。「シンデレラ三連星」の1人、「猪突のドッティ」が使うスキル「ガード」は、貫通効果を遮るというもの。しかもドッティは防御力が非常に高い。なので、倒すためにはドッティを回避して、背後に控える2人…「胡蝶のマリガ」「鹿鳴のフォルト」を攻撃しなければならない。そのために重要なのが「エイミング」による「カーブ」だ。

いかに多くの敵を攻撃するか?を考えるのも楽しいが、次のキャラクターのターンで効率のようい「エイミング」を行うためにどの敵から倒すか?…も重要。「エイミング」自体は非常にシンプルなのだが、実に奥が深く、おもしろい要素だ。

そして、この「エイミング」の楽しさを最大限味わえるのが、ふたつめの要素である「ディメンジョン・バトル」。ストーリーでも触れた、多次元世界を使った要素だ。これは、エンカウントしたモンスターを別次元に送り込むことでバトルを回避できるというもの。「ディメンジョン」をオンにしておくだけでOK。以降、敵が出現するマップを歩いていても、エンカウントは発生しなくなる。非常に快適だ。とはいえ、「ディメンジョン」はただ敵が出なくなるという機能ではない。

「ディメンジョン」には上限があり、上限に達すると、別次元に送り込んだすべてのモンスターとの強制バトルが発生する。しかも、「ディメンジョン・バトル」ではモンスターが一斉に登場する。そんなに都合のいいシステムではないわけだ。なので、送り込んだモンスターがある程度貯まったら、自分の意思で「ディメンジョン・バトル」を行い、モンスターの数を減らしておいた方がいい。

ただ、「ディメンジョン」に最大限モンスターを送り込んだほうが「エイミング」を楽しめる。大量のモンスターが一度に出現するので、狙い甲斐があるのだ。ちなみに、モンスターは大量に登場するが、別次元に送り込んだモンスターが全部一斉に登場するわけではない。出現したモンスターをある程度、どんどん追加されていく…という形式。なのでどのモンスターを倒し、どのモンスターを残すかという戦略性も問われる。戦略的なバトルが好きなら、ガンガン「ディメンジョン」を活用しよう。

買い切り作品としてよくできたRPG!アイテム探しのネタにニヤリ

ビジュアルとストーリー、システムと紹介してきたが、最後にまとめると、本作は非常によくできたRPGだ。一般的なスマホゲームとしてというより、買い切りのパッケージゲームとして非常によくできている。坂口博信氏、植松伸夫氏といった開発陣が作っただけのことはある、さすがと思える出来だ。

非常に細かい点だが、個人的に気に入っているのが、マップでのアイテム探索。マップのあちこちにアイテムが隠されており、移動の際にこれを発見していく…という、これ自体はRPGでよく見られる要素だ。これのどこが気に入っているのかというと、「そこにそのアイテム隠すか!?」というネタの部分。

たとえば、ゲームを進めると登場する豪華客船ウズラ号の船長室に隠されているあるアイテム。ウズラ号の船長であるジニクルは、白髪でそれなりに年齢を重ねているような風貌なのだが、筋骨隆々とした体を誇っている。そんな船長が部屋に置いているアイテムとは何か…?これは是非、自分でプレイして確かめてほしい。ただ、こんな風にマップへ配置されたアイテムひとつとってもネタが込められており、思わず隅々まで探索したくなってしまう。

サブスクリプションサービスであるApple Arcadeへの加入をためらう人もいるかもしれない。ただ、同サービスは初月無料で体験できる。本作をプレイするだけなら、1か月でも十分だろう。また、仮に1か月でクリアできなかったとしても、2か月目以降に必要な費用は月額600円。筆者としては、本作の内容を考えれば十分元が取れる価格だと思う。坂口博信氏、植松伸夫氏のファンはもちろん、RPG好きなら是非試してみてほしい。

Apple Arcade内「FΛNTΛSIΛN」配信ページ
https://apps.apple.com/jp/app/id1517339045

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