スクウェア・エニックスより発売中のPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X/PC(Steam)向けサードパーソン・シューティングゲーム「OUTRIDERS」(アウトライダーズ)のレビューをお届けする。
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攻撃は最大の防御! 自然回復が存在しないハイスピードなバトルシステム
2021年4月1日に、スクウェア・エニックスより発売されたTPS「OUTRIDERS」。「Gears of War: Judgment」や「Bulletstorm」を手掛けてきたデベロッパーであるPeople Can Flyによるタイトルだ。
本作の舞台となるのは、地球から遠く離れた惑星であるエノク。本作の地球は自然環境の悪化によって壊滅しており、生き残った人類は新天地を目指して宇宙船「S.M.フローレス」で果てのない航海を続けており、その果てに地球に類似した自然環境をもつ惑星エノクへとたどり着く。しかしエノクは、危険な猛獣が跋扈し、アノマリー嵐と呼ばれる特異現象が多発する危険な土地であることが発覚。入植のための先遣隊(アウトライダーズ)の一員として先にエノクへと降り立っていたプレイヤーは、アノマリーを浴びながら一命を取り留めるも、入植を強行しようとする勢力との争いの中で負傷してしまう。
治療のため冷凍睡眠ポッドに入れられたプレイヤーが再び目を覚ましたのは31年後。アノマリー嵐によって人類の入植計画は失敗し、惑星エノクは地球人同士が限られた物資を奪い合う地獄と化していた。アノマリーの影響で、異能の力を発現させる「変異者」へと覚醒を遂げたプレイヤーは、電子機器を破壊するアノマリー嵐の影響下にありながら発せられた、謎の電波の発信元を調査することになる……というのが、プロローグで明かされる本作のストーリーの大筋。SFの王道設定を抑えつつも、31年後の荒廃しきった世界には、「北斗の拳」や「マッドマックス」に代表されるポストアポカリプス的な雰囲気があり、その手のジャンルが好きな身としてはたまらない。
本作は、ハック&スラッシュとCo-opがメインのゲームでありながら、ストーリーにも結構な力が入っている印象で、メインクエストだけをラストまで一通りクリアするだけでもかなりのボリュームがある。
本作はオープンワールドではなく、ルートタイプのシューターだが、メインクエストだけではなく、何度でも挑戦可能なサイドクエストも存在。それ以外にも、装備の強化素材を入手できる採掘ポイント、世界観や設定をより深く知れるジャーナルなどの収集要素もあり、フィールドを探索する楽しさやメリットも用意されている。
本作の大きな特徴は、変異者がもつ様々な特殊能力(スキル)を駆使するアクション性の高い戦闘。TPSと銘打たれてはいるが、あくまでも銃は攻撃の手段の1つという位置づけという印象で、スキルに加えて近接攻撃、緊急回避にカバーといった様々なアクションを織り交ぜて戦うことになる。かなりアクションゲームに寄った作りであるため、シューター自体がさほど得意ではないという人もプレイしやすいだろう。
使用できるスキルは「デバステーター」、「トリックスター」、「パイロマンサー」、「テクノマンサー」の4つの変異者のクラスですべて異なり、プロローグ終了後にどのクラスを選んだかでゲーム性がガラリと変化する。クラスは一度決定すると、新たにキャラクターを作成し直さない限り変更できないため、ここの選択は慎重に行いたい。一度プレイすれば、新たにキャラクターを作成した際、プロローグをスキップしてクラス選択からスタートできるので、4つのクラスを一通り試してみてから、本格的にプレイするスタイルを選ぶのが個人的にオススメだ。
筆者が選んだのは、炎の力を使って戦う攻撃的なクラスであるパイロマンサー。筆者自身は、普段シューターゲームをプレイする際に、アサルトライフルやサブマシンガン等で、積極的に前に出ながら戦うのが好きなタイプなのだが、中距離戦を得意とするパイロマンサーは筆者のようなプレイヤーには最適。スキルの射程の多くが、主力となるフルオート系のライフルに近く、遮蔽物を貫通する性質もあり、隠れている敵を一方的に攻撃することもできる。相手に継続ダメージを与える炎上、一定時間敵を無力化する灰燼といった状態異常を付与することもでき、とくに敵の動きを封じられる灰燼は非常に強力だ。
それに加えて本作の大きな特徴となっているのが、体力回復のシステム。一般的なシューターゲームでは、体力の回復はアイテムの使用か、時間経過による自然治癒で体力が回復するケースがほとんどかと思うが、本作は攻撃やスキルを敵に命中させたり、敵を倒した際に体力が回復するという独自性の強いシステムが採用されている。
そのため多数の敵に囲まれてジリ貧になりそうになった際、物陰に隠れて体力が回復するのを待つ……といった行動がとれないようになっており、状況を一変させるためには攻めに転じる必要性が出てくる。この仕様により、隠れてやり過ごすというタイミングがほとんどないため、とにかくゲームスピードが早い。配置される敵の数が多いため、油断すると体力全快からでもあっという間に倒されることもある反面、ギリギリのタイミングでスキルのクールタイムが終了し、瀕死の間際から一気に体力が全快して形成が逆転することも多く、目まぐるしい戦況の変化とスリリングなプレイ感が、本作の大きな醍醐味だと感じた。
上位のワールドティアを目指し、強力なアイテムとビルドを求め続ける
戦闘システムと並んで本作の特徴ともいえるのが「ワールドティア」。本作はランダムでドロップする装備を集めるハック&スラッシュ要素の強いゲームとなっているが、敵の強さや入手できる装備の強さは、このワールドティアによって変動する。
ワールドティアは敵を倒していくと自然と上昇、ゲームオーバーになると下がるという仕組みになっており、何度もゲームオーバーにならない限りはサクサクとランクが上がっていく。本作は配置されている敵の数が非常に多いため、ワールドティアが上がると難易度も大きくあがり、油断するとあっという間に倒される、歯ごたえのあるバランスに調整されるようになっている(ワールドティアを固定しておくことも可能)。
本作の良いところが、クエスト内の戦闘で倒されてしまった場合はその戦闘の開始前からやり直しになるのだが、倒される前に入手していたアイテムはそのまま持ち越されること。このおかげで、適正難易度より高めのワールドティアを選んで倒されたとしても、途中で入手した強力な装備を使って再挑戦して突破する……といった循環が作りやすく、さらに強力な装備をもとめて高いワールドティアでプレイし続けたくなる。それでも難しいと感じたら、そのクエストの間ワールドティアを下げたり、別のクエストで装備を整えてから再挑戦することもできるので、ゲームオーバーになっても心が折れずに何度もプレイし続けられる構造になっている。
難易度が非常に細かく用意されてる上、プレイヤーの実力にあわせて自動で調整が行なわれていくため、TPSに慣れている、不慣れな人に関わらず、「ちょっと油断すると倒されるけど、何度か挑戦すればクリアできる」という、ほどよいゲームの難易度で進められるようになっている。
また装備はドロップで入手するだけではなく、ショップで購入したり、入手した装備を強化して使うこともできる。装備には、モジュールと呼ばれるアビリティが付属しているものもあり、装備を解体すると付属していたモジュールのロックが開放され、他の装備に付け替えられるようになる。解体を行うと、装備の特性やレアリティを上昇させるのに必要な素材も入手できる上、ゲームを進めているとパラメータ的に上位のものはどんどん手に入るので、序盤~中盤のうちは優秀なモジュールがついた装備は積極的に解体し、素材やモジュールをひたすら集めていく方がメリットが大きいと感じた。
このモジュールは、キャラクターのビルドにかなり大きな影響を及ぼす要素となる。ダメージや回復量などのパラメータを変化させるものだけではなく、敵を倒した際に味方の体力を回復、攻撃と同時に稲妻を発生させる、リロード中に衝撃波を発生させる、何らかの状態異常を与えるなど、プレイ感がガラリと変わるものも多く、モジュール自体のバリエーションも非常に豊富。例えばショットガンには、近距離で威力を発揮するが、装弾数が少なく頻繁にリロードを行なわないという弱点があるが、これにリロード時に衝撃波を発生させたり、スローの状態異常を付与させるモジュールを装着することで、弱点を補えるようになる。
それぞれのクラスには、スキルや特性を強化するクラスツリーも存在し、レベルアップ時に獲得するクラスポイントを使ってアンロックを進められる。ツリーは、それぞれ異なる性質をもつ3つのサブクラスに分岐しているが、隣接したマスであれば異なるサブクラスのツリーも開放でき、自由な成長ルートを選択できる。このクラスポイントは最大で20までしか獲得できないため、すべてのツリーを開放することはできないが、ツリーはいつでもリセットしての振り直しが可能。
これとモジュール、セットしたスキルをあわせたキャラクタービルドの幅はかなり広く、同じクラスを選択したプレイヤー同士でも、まったく異なる性能に仕上がることが珍しくなくなっている。ビルドによっては、最初はいまいちだと感じたスキルの使い勝手が劇的に向上することもあり、自分のスタイルにあったビルドを試行錯誤するのが非常に楽しい。
数字的なパラメータしか変化がないタイプのハック&スラッシュは、どうしてもプレイが単調になりがちだが、本作はゲームのプレイフィールをビルドによって大きく変えられるようになっており、飽きもきにくい作りとなっている。
クラス同士の連携が鍵。あらゆるクエストでCo-opプレイが可能
メインストーリーを含めて、あらゆるクエストで最大3人までのCo-opプレイが可能になっているのも本作の特徴。特定のフレンドとパーティを組むほか、野良プレイヤー同士のランダムマッチも用意されており、ゲームプライバシーの設定をオープンに設定している、進行度の近いプレイヤーにマッチングが行なわれる。自身の設定をオープンにしておけば、どこからともなくやってきたプレイヤーが手助けしてくれることもあり、一期一会の共闘感が楽しい。
本作のマルチプレイは戦闘だけではなく、キャンプでアイテムの整理や強化を行う戦闘以外の時間も一緒に行動することになる。ただ、エモート機能を活用して挨拶などはすぐに行えるものの、野良だと意思疎通をとるのがなかなか難しい。ワールドティアを指定しての検索なども行えないため、ランダムマッチは不便なところも多く、ややかゆいところに手が届いていない印象も受けた。PS5版では、コントロールセンターを開けばランダムでマッチングされたプレイヤーをすぐボイスチャットに誘ったり、フレンド申請することもできるので、活用してみるのもいいだろう。
またマルチプレイでは、敵に倒されてしまっても味方に救助してもらうことが可能になるのに加えて、敵のヘイトも分散する分、同じワールドティアでもシングルより圧倒的に攻略が楽になるという印象を受けた。
今回筆者が使っていたパイロマンサーは、至近距離まで近づかれると使いにくいスキルが多いのだが、味方にトリックスターがいる場合、近づいてくる敵の動きをスローで止めてくれる上、密集したところに広範囲のスキルを叩き込むチャンスが増えていた。変異者のクラスはそれぞれに得意な距離が異なるように調整されているので、こうした連携が自然と生まれるようになっているのが楽しい。シングルプレイではできない、クラス同士の特性を生かした連携は、マルチプレイの大きな醍醐味となっている。
一方で発売当初はオンラインプレイに関連した不具合が多く、不自然な表示が発生したり、エラーが起こることも少なくなかった。現在はアップデートパッチによって状況は改善傾向にあり、致命的なバグも修正されているため、発売初期にプレイを中断してしまった人も、改めてプレイして欲しいところだ。
なおメインクエストを一通りクリアすると、エンドコンテンツ的な位置づけとなる「遠征」を行えるようになる。こちらは戦闘に特化したタイプのコンテンツで、ワールドティアとは別にティアが管理されており、ティアによって報酬で得られるアイテムの性能が変化する。メインクエストについては、すべてソロでクリア可能なバランスなのだが、こちらはほぼマルチプレイが前提に近い難易度となっており、かなり歯ごたえがある。ハック&スラッシュは、入手した装備や育成したキャラクターを使う場面があってこそなので、さらに難しいティアの遠征に挑むため、最高レアのレジェンダリー装備が欲しくなるという循環がうまく作られている。
本作はやりこみ要素に加えて、豊富なビルドによって試行錯誤の幅もかなり広いので、フレンドと一緒にガッツリと遊びたいゲームを探している方にはかなりオススメできる。対人戦の要素がなく、操作感もシューターとアクションゲームの中間的な位置づけなので、アクションゲームは得意でもシューターはあまり遊んだことがないというプレイヤーのシューター入門ゲームとしても最適だ。
なお本作は、マルチプレイやデータ引き継ぎも可能な体験版(PS5/PS4/PC(Steam))が配信されている。本作に興味をもった方は、まずはこちらをダウンロードして、「アウトライダーズ」の世界に触れてみて欲しい。