「Caligula -カリギュラ-」シリーズなどで知られるゲームクリエイターの山中拓也氏による、ゲームインタビュー企画「山中拓也のGamer交遊録」。第5回はバンダイナムコエンターテインメントの玉置絢さんにお話を聞きました。前編では、ゲームとの出会いやヒットタイトルの変遷、好きなタイトルの話題に花を咲かせています。

玉置絢さんプロフィール

バンダイナムコエンターテインメントで企画職。「サマーレッスン」立案・プロデューサー・ディレクター、「エースコンバット7 VRモード」プロデューサー、「エースコンバット インフィニティ」リードゲームデザイナーなど。直近の仕事は「スカーレットネクサス」のコンセプト整理担当。

Twitter:https://twitter.com/oktamajun

インタビュー:山中拓也
文・構成:近藤智

ゲーム機よりも先にパソコンへ触れていた幼少期

山中:そもそも僕はクリエイター側に同年代の友達があまりいないので、玉置さんは貴重な同業者なんですよ。

玉置:完全な同業って珍しいですよね。

山中:とはいえ表向きには一緒に仕事をしたことがあるわけでもないので、読者の方に僕らの接点から説明すると、玉置さんから「Caligula -カリギュラ-」シリーズでお世話になった開発会社のヒストリアさん※経由で会いたいと言ってくださったんですよね。

※ヒストリア……Unreal Engine専門のソフトウェア制作会社。家庭用機向けのタイトルやVRコンテンツなどの開発に携わる。「Caligula2」の開発も担当。

玉置:「サマーレッスン」のアジア言語のローカライズなどをヒストリアさんにお願いしていて、公私ともにヒストリアさんの方とは仲が良かったんですよ。プロデューサーはディレクションまでできないから、信頼して任せられるクリエイターが必要じゃないですか。そこで、お互いに信頼できる開発会社さんがいたという繋がりですね。

山中:僕は玉置さんがとにかくハードコアなゲーマーだっていうことは知ってるんですけど、そもそもゲームとの出会いっていつなんですか?

玉置:ちょっとその前に一言だけお礼を言いたくて。過去の記事を読んだんですけど、弊社のタイトル(特に『テイルズ オブ』シリーズとか)を取り上げていただき、ありがとうございます。

山中:うわー、ちゃんとしてる!

玉置:いやいや!(笑) まずゲーム遍歴でいうと初めてゲームを見たのは2歳の時で、いとこの家でファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」です。自分で初めてプレイしたゲームは、ゲームボーイの「スーパーマリオランド」ですね。今は健康なんですけど子供の頃は病弱で、5歳の時に長期入院することになった時に親が買ってくれたんです。

スーパーマリオランド
https://www.nintendo.co.jp/titles/50010000006750

山中:今の玉置さんを見るとマリオ出身の人とは思えないですけどね。僕も「スーパーマリオランド2 6つの金貨」は遊んだんですが。

玉置:「スーパーマリオランド」のノコノコって、甲羅が爆弾なんですよ。いつものイメージで甲羅をキックできるものだと思ったら、爆発してやられちゃう。すごく理不尽で、5歳の子がやるには難易度が高いんですよ。最初のアクションゲームがそれだったせいか、今もアクションゲームをやるときは身構えちゃいますね(笑)。

そもそも、家にパソコンがあったんですよ。親が建築設計士で、図面を引いたり構造計算をするのに使っていたんです。4歳の時にお古を貰って、おもちゃ代わりにお絵描きソフトとかで遊んでた方がゲームより先でした。

山中:天才ハッカーの経歴聞いてるみたいですね。玉置さんと僕は1986-87年生まれで同学年なんですよね。物心ついたときにはファミコンが大流行していた頃で。

玉置:そんな頃ですから、パソコン触っている同級生はほぼいません。最寄りのコンビニまで15分くらいかかる田舎だったので、ゲーセンもありませんでした。

親もテレビゲームをばんばん買い与えるのには抵抗感があったようで、ゲームソフトが欲しいと言うと、買う代わりに4本ぐらいゲームのプログラムを書いて、それを改造して遊べって。音楽の打ち込み方も教えてもらって、プログラムを勉強したのは8歳です。パソコンが家にあったのは人生の岐路だったのかもしれません。

作り手の愛が伝わる「ウマ娘 プリティーダービー」にハマる

玉置:そういえば、親が作った簡単なゲームの中に、競馬ゲームもあったんですよね。そんな私もおじさんになり、今は……「ウマ娘 プリティーダービー(ウマ娘)」に数十万円も課金している……。うーん、そう考えたら思えば遠くまで来たな(笑)。27年後にまさかまた競馬のゲームやってるなんて。

ウマ娘 プリティーダービー
https://umamusume.jp/

山中:僕も「ウマ娘」はすごくやりこんでいます。

玉置:私は、もともとすごくお世話になっていて、企画職として恩師だと私が勝手に思っている小山順一朗さん(※アーケード版「アイドルマスター」プロデューサーなど)から、石原章弘さん(※「アイドルマスター」総合ディレクターなど)とゲーム開発をした当時の示唆にあふれるエピソードをいろいろ聞いていたんです。それで、直接の面識はなかったんですけど、バンダイナムコエンターテインメント(バンナム)を退職されるときにもメールでご挨拶させてもらいました。新規IPを作るのは大変だから「サマーレッスン」頑張ってね、って丁寧にお返事を頂いて、凄く嬉しかったです。だからそれから何を作っていらっしゃるのかすごく興味があって、今はもういらっしゃいませんがCygamesさんで「ウマ娘」に関わっていらっしゃったと知って興味を持って始めたんですよ。

山中:夢がありますよね、面白ければ売れるっていう。あれだけコストも時間も使って作れるという環境は、現実的にCygamesさんしかできないないでしょう。

玉置:Cygamesさんは本当に抜け目がないですね。教科書にできるような、色んなところに工夫がある。「プリンセスコネクト!Re:Dive」登場のあたりから特に多くの人が気付きましたが、次の時代のお手本となるような隅々まで行き届いたUI・UXデザインが本当にすごい。大手の会社で全世界の老若男女が知っている某IPの担当をされているエリートな方がUI・UXの研究を目的としてプレイされていたという話もあるくらい。

そうした今までの研究とこだわりが全部「ウマ娘」のユーザビリティに活かされていて、何をすればゲーマーのやる気が出るかっていうことを熟知しているなと。キャラクターのシナリオも「分かった、俺が何とか育てて優勝させてやる!」っていう気分になる作り方が実にうまい。

山中:本当に、単純にシナリオが面白いですよね。競馬への愛を感じます。手前味噌なんですけど「Caligula -カリギュラ-」に関しても、僕が心理士の資格を持ってるのが説得力というか、安心の担保になっている部分があると思うんです。なんとなく「心理学はカッコイイっしょ!」ってノリで僕が作ってたら、多分皆さんの反応も違ったと思うんです。

「ウマ娘」に関しても作り手の愛が凄く分かるし、競馬をよく知らない人間にもテキストから伝わるものがある。やはり会社としての積み重ねというか、練度の高さみたいなものが発揮されているなと。

玉置:やはり一番感動したのはあの手に汗握るレースのゲーム仕様ですね。自分の担当しているウマ娘が勝つかどうか、ほんの何分間かでここまで興奮させるのがよくできている。ほかにもネットで言っている方がいましたけど、これって映画的なカメラ演出にも秘密があるんですよね。レースの終盤、実際には自分の担当するウマ娘がリードしていたとしても、そこを望遠レンズで撮ると、圧縮効果によって「すぐ後に二番手がいる」ように見えるんですよ。すぐ追いつかれそうっていう恐怖感がずっと付きまとうようになっていて、カメラの位置によってどっちが勝つか分からないっていうことをも含めて本格的に映像を練ってやっている。

だから、ただ競馬が好きで、レースはみんな興奮するだろうという競馬ファン目線の想像だけじゃなくて、ゲームクリエイティブのプロとして汗握るような体験を提供するために、レンズ設計、映画理論まで突き詰めている。そして、その興奮を最大化するようにゲームストーリーが組まれている。オープニングソングに「君と勝ちたい」というフレーズがありますけど、たったその一言に全てのコンセプトが立脚しているんですよね。シナリオのコンセプトも「ウマ娘本人がいかに勝ちたいと思っているか」という説明に集中しているから、大長編とかではないのにプレイモチベーションづくりとしてはもう何も言うことがない。

山中:理想の体現ですよね。シナリオ、グラフィック、カメラ、ライブ、演出と細部に至るまで全てのセクションが同じコンセプトというか、同じ思想に向いて同じベクトルで進んだときに、ああいう結晶ができるんだなっていう。どうしてもゲーム作りってスケジュールがあって、コストがあって、色々な事情と限界がある中でどこまで100%に近づけていけるかっていう作業だと思うんですけど、それの100を見た感じがします。

玉置:その少し前に登場した「原神」もインパクトがすごくて、もうその時点で「理想を実現しようとしたら、できる」ということにコンソール市場とかスマホ市場とかの違いはない時代なんだっていうのが完璧に示されたわけです。で、じゃあ日本のメーカーはどうするんだ? という問いが我々全体に突きつけられていたわけですが、そのひとつの答えがすぐ数か月後に出てしまったという(笑)。今年は色んな業界人のマインドセットが更新される運命の年になってるんだと思います。

山中:そうですね。文学的な面では、僕はここ数年「『Fate/Grand Order(FGO)』がある世界で何を作ればいいのか?」っていう話だったと思うんですよ。文学・商業的な両面で今後はそれは「『ウマ娘』がある世界」になった。僕はもうちょっとニッチよりに生き場所があるんですけど、それこそバンナムさんとか「ウマ娘」がある世界で何をするだろうっていうところは課題ですよね。

玉置:そういう課題に向き合うために俯瞰して分析するなら、「ウマ娘」以前/以降みたいな話というより、結構長いスパンで起きているリニアな変化だと思ってます。この大きな流れにおいて私がFGOより前に言及したいのは、スクウェア・エニックスさんの「スクールガールストライカーズ」です。このゲームがロンチした当時、3Dキャラの女の子がぐりぐり動いて活躍するタイプのソーシャルゲームはほぼ皆無でした。なぜわざわざ3Dにしたのかという経緯を開発者の方が講演でお話されていたのですが、当時ソーシャルゲーム市場全体でカードの2Dイラストの美しさが一旦の完成を見ていて、これ以上そこにお金をかけても効率よく魅力を足し算することができないレベルの天井に至っており、じゃあ次の差別化はどうするの? という悩ましい時期だったと。そこに対する一つの解として3Dキャラの動く存在感というそれまでにないコストで勝つことにしたわけですね。この頃に、「カードの性能と2Dイラストのフォトショ的美麗価値」というトレーディングカードに由来する基礎商品力で競争する時代から、ソーシャルゲームならではの何かをプラスアルファしてキャラクターの売り出しをブーストするという、今に至る流れに切り替わったのだろうなと思っています。

スクールガールストライカーズ2
http://schoolgirlstrikers.jp/

「FGO」もまずストーリーで感動したり共感したりして、そこで憧れたサーヴァント(キャラクター)が欲しいと思わせる流れですよね。それも付加価値の乗せ方が進化した結果と解釈できます。2Dから3Dといったグラフィック面での価値ブーストだけではなく、「キャラクターという存在そのもの」の魅力に着眼し、アドベンチャーゲームとして感動させることでも欲しくなる価値をブーストできるよね、と。

そこから今の「ウマ娘」を見ると、やはりこの流れの延長線上にあります。競争社会の中で勝ちたいというキャラの願いに心を動かされ、「この子の勝利を実現できるのは自分しかいない!」という気分になる。ここまではストーリーの役目。それに加えて、レースのゲーム体験を通して勝てる勝てないのヒヤヒヤ感情を繰り返す味わうことで「勝たせてあげたい」の想いを倍がけしているのがポイントです。

こうなると、そのキャラクターがもっと勝てるよう育成するために行動したくなる欲求はもっと強くなります。これもイラストが綺麗で性能が強ければ欲しくなるというだけではない付加価値づくり、価値ブーストの一パターンですよね。「FGO」のような、本格的ストーリーでキャラ価値ブーストするという発明もふまえつつ、更にゲームパートが成しうる総合体験も組み合わせればキャラに向かう感情や欲求をもっと動かせるんだ、という発想で作られているように見えます。

一見それほど独創性のある考えには見えないかもしれませんが、この思想をこのレベルまで本気でやってきたソーシャルゲームはなかなか無かったというのがポイントです。こういったタイトルの登場は、市場全体で「ゲームであること」に改めて重きを置く時代になってきたということを意味しています。

これ、もっと手前の21世紀初頭、家庭用RPGが一時期「ただ映像を見てるだけ」「ムービーゲー」なんて揶揄された時代からの20年を考えたら、すごくいい流れなんですよ。家庭用もスマホも、どんどん総合的にゲームでしかできないことに挑んでいる。そこでキャラクターに向かう感情をどう最大化させるか、共感させるかという方向へ進化している。こういう大きな良い流れだと考えれば、今になって急に大変な課題が降りてきたというより、「キャラ価値ブーストの市場競争」がどんどん良い方向に偉大さを増していく歴史の渦中にある。ここで我々は次に何をすべきか。

山中:そうですね。僕もそれを感じた走りが「チェインクロニクル」だったんです。お金を出してキャラクターのイラストを手に入れて、じゃその金額に対する満足度をどれだけ高められるかという議論がされていた時代に、キャラクターにストーリーが付いてくる、ボイスがついてくるっていうのを初めて濃密に体験したのが「チェインクロニクル」でした。僕がそこで感じたのは、やっぱり今ってモノをぽんと渡されても無理なんですよね。

チェインクロニクル
https://chronicle.sega-net.com/

本当に素晴らしい芸術作品のようなモノでも、急にそれだけ渡されてその価値を判断できない。でも美術館に行って絵画にキャプションがあって、作者の歴史みたいなものが書いてあれば、それで「これは素晴らしいものなんだ」とようやく体感できて、お金を払える。これがうまくできてるタイトルがちゃんと生き残ってる、人気を得ているという感覚があります。

玉置:最近、話題になったキーワードに「夜好性」というものがあるじゃないですか。「YOASOBI」「ヨルシカ」「ずっと真夜中でいいのに。」という“夜”がついているアーティストを好む人が増えているというものですけど、これも一緒ですよね。ぽんと曲だけで出すんじゃなくて、アーティストそのものというか、アーティスト存在から滲み出る「世界」を色々なメディアで総合的に伝えている作品がウケているのは、ゲームだけに限らず現代としてそういうトレンドですよね。

そういう流れで言うと、やっぱり山中さんが作ってるものって来てるなって思うんですよ。山中さんは一般受けしようというのが自分にはないとよく仰いますが、あまりもうメジャーもマイナーも差がないのかなと。

例えばですけど弊社の「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」が「PlayStation Awards 2019」でVR Awardを受賞したときに担当プロデューサーとして会場にいたんですが、その授賞式で目立っていた有名作品の一つは「NieR:Automata」だったんですよね。その時ヨコオタロウさんが「こんなゲームがこんなに売れるなんて、ちょっとおかしい」って話をしていて。その時は言ってる意味があまりよく分からなかったんですけど、確かに遊んでみると、クリエイティブ的にはマスに平たく丸く受けようと思って作られたものではないことは明らかですよね。でも、もうそういう「知ってる人が好き、好きな人が好きならそれでいい、ついてこれる奴がついてこい」っていう心意気で作られたもの、遊ぶほうも「世の中一般が好きかは知らないけど自分は好きだからこの作品はこれでいいんだ」って密かに思っていた作品が、気づいたらなんかみんなそう思ってて、結果全員好きみたいになっている。さっきの「夜好性」のアーティストもヒットしていますけど、皆これがデビュー時からマスに受けるヒット曲になると思って聞いていたかというと、そんなことないですよね。

ゲーム業界で言ったら、最近だと「天穂のサクナヒメ」が分かりやすい。世界累計出荷本数が100万本ってすごいですが、何がすごかったかっていうと超本格的なお米作りですよね。開発者の方の、DASH村を最初に作ろうとしたけど、そんな規模で作れなかったからお米だけ徹底的に作ろうという考え方が面白いんですけど、そういう発想ですよね。「UNDERTALE」とかもそうですけど、尖らせていこうという考え方が結果的にすごく売れている。

やはり、最初に届く範囲がどうのこうのではなく、強い想いで濃厚に喋りたいものを持っている人が勝ちの世の中になってきている。それでいうと山中さんは、ずっと世の中の人が何となく思っているけど言語化できなかったり、モラルや常識の枷から意識下に押し込んでいたりするようなことを「お前らのまやかしを掘り出してやろう、逃げられないようにしてやろう」とばかりにズバッと鮮やかに、時にはエグいほど力強く伝えていくような魅力ある、モノ作りをされている。それはマスの人全員に届けるような大きい声ではないかもしれないけれど、目をそらせない「伝染するタイプの声」で、そこから逃げられる人は少ない。だから面白いしウケるんだと思います。

「シヴィライゼーション」ほかシミュレーションゲームに没頭

山中:玉置さんは、プレイヤーとして好きなゲームのジャンルってあるんですか?

玉置:これはあんまり外で言ってないし、今後に差し障りがないか不安なんですけど……熱狂的なシミュレーションゲームファンです。Steamなどで遊んでいるプレイ時間の上位をみると、ほぼシミュレーションゲームです。一番ライフワークでやってるのは「シヴィライゼーション」で、あとは「SimCity」や「シティーズ:スカイライン」、最近だと「RimWorld」はもう何百時間やったか。

シヴィライゼーション VI
https://2kgames.jp/civilization6_jp/

山中:未知の惑星が舞台のサバイバルシミュレーションですね。

玉置:あとはソビエト連邦が舞台の「Workers & Resources: Soviet Republic」は、発想が面白い。「SimCity」といえば民主主義、資本主義のゲームなので、ここに住宅を建てていいよって言ったら勝手に建つじゃないですか。でもこのゲームはプレイヤーが計画的にマンションを建てて、住人には「住め」っていう(笑)。プレイヤーがゲームキャラにあれこれ行動を指示して管理したいっていう欲求って、実は社会主義的だよね? ……という耳の痛いツッコミにも取れるゲームです。

シミュレーションゲーム好きとしての極めつけは、カイロソフトさんの「ゲーム発展国」。これは9歳の時に雑誌の付録で遊んでからずっと触れているんですけど、ゲームを作る仕事をしてて、遊びでゲームを作るシミュレーションゲームやるっていう(笑)。

山中:僕もやりましたよ。カイロソフトさんのゲームって一生遊んじゃいますよね。

玉置:「ゲーム発展国」のなにがいいって、実際にはもう死ぬような思いして4年に1回とかで作れるゲームのタイトルを、2分に1回とか5分に1回ぐらいのペースで考えられるところですね。設定まで考えちゃう。

山中:僕もこの業界に入ってから「ハードのローンチとしてはこれだろうな」とか「新ハードに参入するんだったら、この人気作の続編を出した方がいいよな」とか考えちゃいます。

玉置:野球ゲームでも育成モードばかり遊んじゃいますね。個人の育成じゃなくて、チームの育成ばかりやってしまう。

山中:僕も育成というかシミュレーションが好き人間なので。もう「パワフルプロ野球」はサクセスモードのために買います。幼い頃にやってたのは「ザ・コンビニ」とか「テーマパーク」とか。

シミュレーションゲームに限らずなんですけど「テーマパーク」で僕が一番面白いなって思った経験は、遊園地を作って、フライドポテト屋さんを作って、塩分量を辛くすると隣のドリンクがより売れる。これが面白いなと。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」でも、火を付けたら上昇気流が発生して上に登れるみたいな、そういう気づきが面白い。シミュレーションゲームで試行錯誤していく中でそういう気付きと出会う体験はいいですね。

玉置:「SimCity」の開発者のウィル・ライトさんは、最初に「SimCity」を売った時にゲームって言わずに”digital playgrounds”(デジタル遊び場)みたいな言い方をしていたそうなんですよ。当時ゲームといえば攻略目標があって、エンディングがあって、クリアできて初めてゲームと見なされてる。でもシミュレーションゲームは昔から必ずしもそうでもないジャンルだったと思うんです。そして今、普通にソーシャルゲームを楽しんでいる時代に「ゲームに終わりがあるかどうか、一定時間遊んで完結しないものはゲームじゃない」なんて誰も言わなくなったんですよね。勿論、家庭用ゲームには必要ですけど。そう考えたらデジタルの遊び場という考え方は、今の世の中でこそ必要なのかなと。

それこそ「サマーレッスン」にもエンディングはありますけど、実質デジタル遊び空間、一種のコンピューターおもちゃですから。やはりゲームの体裁がないと不安に思う人がいるから、後付けでゲーム要素を足して「一応、育成ゲームなんだ」と納得して遊んで欲しかっただけで。

山中:音が鳴れば面白い、触って気持ちよかったら楽しいみたいなものの発展系でしたね。すごくプリミティブなんだけど、そこの究極を目指している。僕が作ったことないゲームだから、楽しそうだなって思いますよ。

玉置:冒頭に話題にした最近流行している音楽の売り方みたいな、トランスメディアでメッセージを伝えていくトレンドとは正反対ですよね。そういうメッセージ性とかは必須ではなくて、純粋にオモチャ的におもしろい、気持ちいいみたいなことを提供していきたい、という心意気がシミュレーションゲームにはあることが多いです。この2つが両方とも進歩し続けているというのがゲーム業界だと思います。

山中:人と喋ると楽しいし、異性が近くにいるとドキドキする。火は温かい、水はおいしいみたいなレベルのものをフィクションの中で実現しようとしてる。それはすごく職人芸ですよね。

悲しみを乗り越える「メモリーズオフ」に熱中

山中:今までの人生で熱中したゲームタイトルってどんなものですか?

玉置:人生に影響を受けたのは「シヴィライゼーション」と「ファイナルファンタジータクティクス」。あとはやっぱり、「ACE COMBAT 04 shattered skies」ですね。この作品が直接的なバンナム入社の理由です。アドベンチャーゲームであげるとしたら「メモリーズオフ」と「Lの季節」ですね。

メモリーズオフ(画像はメモリーズオフ ヒストリア)
http://memoriesoff.jp/historia/

山中:僕も同じ世代を生きているので、触ったゲームは似てるなっていう感じがします。「メモリーズオフ」はプレイできてないんですが、コアな人気は認識しています。

玉置:「メモリーズオフ」はウハウハのギャルゲーでもなく、keyさんの“泣きゲー”みたいなジャンルとも少し違っていて。ストーリーが泣ける瞬間に収束していくような作りではなく、悲しくて苦しいけど誰も悪くない状況の中で、どうやって乗り越えていくかみたいなところがテーマでなんですよ。1作目はゲーム開始時点で主人公が付き合っていた彼女が死んでしまっていて、残された友達たちとどう生きていくかというテーマでスタートするんで、当時は衝撃でしたよね。

「サマーレッスン」のシナリオをお願いした会社さん※とのご縁もここからで、「メモリーズオフ」に参画されてた方々が多くいらっしゃったんですよ。そこの社長さんが書いておられたノベライズも全部読んでいたので、ペンネームを覚えていて「あっ!」て。

※エレファンテ……ゲームシナリオの企画・執筆をメインに活動するシナリオ制作会社。代表取締役社長の日暮俊彦氏は日暮茶坊名義で活動している。

山中:僕らものようなゲームをめちゃくちゃ遊んだ世代が実際にゲームを作る側になると、遊んだゲームを作った人に会うことが多いですよね。にしても、僕らよく公私問わずギャルゲーの話しますね。

玉置:皆、大っぴらに言ってないだけで思ったよりやってると思いますよ。ギャルゲーというより普通に読み物として楽しみたい人と半々なのかな。他にご縁をこじつけで話すと、私はワンダースワンで数少ないギャルゲーである「卒業」をやってたんですけど(笑)、まさかワンダースワン作った会社に入社するとは思いませんでした。

山中:バンダイナムコエンターテインメントという大きな会社にいたら、自分がゲーマーとして好きだったタイトルに関わることもあるかもしれないですよね。

玉置:「エースコンバット」はまさにそうですね。それで実際に飛び込んでみてよく分かったのは、当然ですけど「自分がいなくても自分が好きだったゲームはできていく」んですよ。自分がいない状態で好きになっているんだから、自分が入ったところで、それ以上何ができるというのか。ただ居るだけでは何も変わらない。最初気づいた時、ちょっとむなしくなりました。なので、これは「好きなゲームのプロジェクトに入りたい」と思っている新人のひとに会ったら体験談としてよく話しています。

でも落胆する必要はないんです。自分だけの貢献の仕方があればいい。私がラッキーだったのは「エースコンバット」シリーズの中でも関わったのが基本無料の「ACE COMBAT INFINITY」や、「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」のVRモードなど、元々あった魅力に新しい時代の要素を掛け算した変わり種ばかりだったので、そういう新ネタを勉強すればするほどすぐ貢献できるという意味でモチベーションを持てる道があったことですね。

ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN
https://ace7.acecombat.jp/vr/

これ以外にもRPGや格闘ゲーム、アクションゲームなど色々なタイトルに関わりました。それまであまり触れなかったゲームでも、そのプロジェクトに所属したらファンになりますし、その後に関わらなくなっても続編が出るたびに感慨深くなります。自分がゲーマーとして食わず嫌いでやらなかったものでも仕事で関わったらやりますし、一番サポートが豊かな環境ですから、その中でファンになっていくのは大いにあります。そこもゲームファンとしてこの業界で働くことの楽しい側面ですね。

山中:僕もゲーム業界へ入って初めて作ったタイトルはユークスさんの「UFC」という総合格闘技のゲームなんですよ。自分の今までの嗜好とはとても縁遠い業界だったんですけど、やっぱり作る側でいると知識もどんどん増えて、楽しかったです。パチンコ演出に関わったときもそうですね。

玉置:食わず嫌いだっただけで、意外と面白いってありますよね。その後のゲーム作りで意外と役に立ったり。

山中:まさに「Caligula -カリギュラ-」のBGMがインストからボーカルに入るのは、パチンコがヒントになりました。パチンコの演出で複数ラインで音を管理する中でBGM1をミュートして、BGM2をシームレスに流すとかをやってた経験からです。

玉置:全然繋げて考えられないようなものも、そうやって繋がってますよね。入社前の経験も含めて。

山中:本当に今の若い子に……というとおじさんすぎるけど、ゲーム業界を目指す若い子とかは、今の我々がしてないその人だけの経験を会社に入る前にやってきてくれたら、多分それだけでゲームになりますよ。

山中 拓也

ゲームの企画、シナリオ、プロデュース、ディレクションなどで活動中。代表作はアニメ化も果たした「Caligula -カリギュラ-」シリーズ。最新作の「カリギュラ2」では全編のシナリオも担当。元カウンセラー志望で心理士資格を取得していることもあり、人間心理と現代病理を追求した作風が特徴。

Twitter:https://twitter.com/pug_maniac

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