対戦ミステリー「CRIMESIGHT」プレイレポート――騙し合いの楽しさは詰まっていながら、初心者でもプレイしやすい工夫も満載

「CRIMESIGHT」は、犯罪捜査AI“Sherlock”と犯罪諮問AI“Moriarty”に分かれて、シミュレーション空間上にある吹雪の中の洋館で犯人を特定するか、あるいは殺人を実行する対戦ミステリー。

4人でプレイするときはMoriartyから派生した操作撹乱用のAI“Irene”も加えることが可能となる。このIreneは人狼ゲームにおける狂人の役割だが、MoriartyとIreneはお互いを認識しているのが特徴。通常の人狼ゲームよりも連携が取りやすい。

筆者は対戦ミステリーは好きであるものの性格がシャイであるため、知らないところに飛び込んで遊ぶというのが少し苦手。しかし本作はそういったインドア派、もしくは対戦ミステリー初心者でも楽しめる作品になっていると感じた。以下でゲームのルールや実際にプレイした感想をお伝えしていく。

ゲームのルールの前にまずは本作の世界観から解説しよう。本作の舞台は2075年のロンドン。ネットワーク上のあらゆる情報から未来の凶悪犯罪を予測するシステム“Foresight AI”が実用化されており、世界の凶悪犯罪は90％減少しているという設定だ。

しかし、その上で発生を防げない事件を起因として、世界が破滅に向かっていく未来が予測される。開発者たちはこの事態を憂慮し、破滅の起因となる犯罪を捜査・解決するのに特化したAIを生み出す。

旧世紀の小説に登場する、稀代の名探偵の名を冠した“Sherlock”は数多の事件を追う中で、ひとつの事実を導き出す。それは事件の中心にて蜘蛛のように居座る、自分に匹敵する性能を持つ犯罪諮問AI“Moriarty”であった……というもの。

このような土台のもと、SherlockとMoriartyはAIのシミュレーションのなかで戦いを繰り広げることになるのが本作。デジタルゲームの対戦ミステリーではストーリーが希薄のものが多い印象だが、本作はしっかり世界観が作られている。ミステリーものの小説が好きな筆者はこの設定だけでもワクワクさせられた。

本作にはメインキャラクターであるSherlockやMoriarty以外の“Pawn”と呼ばれるシミュレート空間上のキャラクターたちが存在するが、これらのビジュアルも個性的で目を引く。ゲーム中の音楽も緊張感のあるものや不安を煽るものだったりと雰囲気たっぷりでゲームを盛り上げてくれる。ゲームが良くできているのはもちろん、雰囲気も素晴らしい作品だ。

さて、ゲームの内容だが、Sherlock側は犯人を特定すること、Moriarty側は殺人を実行することが目的となる。館内には事件の被害者となるターゲットと実行犯となるキラーが存在しており、自分の運営が有利になるように進めていく。自分がどちらの陣営になるのかはプレイするまでのお楽しみだ。

Sherlock側はターゲットとキラーが分からないのでキャラクターの行動を見ながら推理していくことに。Moriartyはキラーに殺人を実行させることになるが、そのためにはキャラクターが凶器を見つけ、ターゲットとふたりだけで同じエリアにいるという条件が必要になる。そのため、いきなり決着がつくということは絶対に無い…とまでは言えないが、非常に稀。

プレイヤーは各キャラクターを制御（操作）することができ、Sherlock側は3人、Moriarty側は2人を操作できる。同じキャラクターを制御した場合はMoriarty側が優先されるが、Moriartyはターゲットのことを制御できないようになっているため、Sherlock側が意図しなかった行動をしたキャラクターは「少なくともターゲットではない」と言える。これによって、ターゲットの候補者が絞り込まれ、と同時にそれを狙うキラーが「徐々に浮かび上がってくる」のが醍醐味だ。なお、誰からの制御も受けなかったキャラクターは自発的に行動するため、不確定要素も交えながら推理していくことになる。そのため、怪しい行動があったとしても、それはAIの可能性もあり、断定することはできない。注意深くプレイヤーの行動を探りながら少しずつMoriarty陣営を探っていくことになる。

プレイしているとややこしくなりそうだが、キラーの可能性が残っている人物とターゲットの可能性が残っている人物はアイコンで表示されているので確定している情報については迷うことはない。ここはユーザー間での説明の手間や思い違いのミスなどを省けるのでかなり親切だ。

マップだが、キャラクターは3エリア先まで移動できるが3エリアを移動すると疲労となり、一時的に2エリアしか移動できなくなる。そのため、連続で3エリアを移動することはできないようになっている。

この制限を受けるのはSherlock側だけであるのも重要だ。Moriartyの制御は強力なので、疲労しているキャラクターであろうと無理矢理3エリア移動させることができる。ただしその場合、「そのキャラクターはMoriartyの制御で動いた」ことが明白となり、これによってもつまり「ターゲットでない」ことが確定してしまう。使いどころにはかなり気を付ける必要がある。

キャラクターは探索で食料を入手することで食事ができるが、食料を持たずに夜を明かすと空腹に。この状態でも移動範囲が狭まってしまう。

ほかにも野犬の潜入やガス漏れなどの多彩なアクシデントがあり、放っておくと状態異常になるので対処をする必要がある。

空腹などの状態異常がふたつ以上あると“瀕死”に。この状態だと視界を失い、その場にいないと見なされ、犯行を防げなくなる。Moriarty陣営のチャンスとなる。

空腹にならないためにも探索は重要だが凶器も探索で見つかるのでキラーに凶器を渡してしまう可能性もでてくる。Moriarty陣営は食料と凶器を色で見極めることができ、確実に凶器を見つけることが可能。ボイスチャットに繋いでいるときは「食料を探していた」などの言い訳ができるわけだ。

と同時に、Moriartyにとってもキラーの行動範囲が狭くなるのは望ましくないため、裏を返せば「状態異常を長らく負っているキャラクターはキラーである可能性が低い」とも言える。

Moriartyはキラーに対してのみ、襲撃のコマンドを選ぶことでターゲットを狙うことができる。ただし、襲撃は必ずキャラクターの行動順序がターンの最後になるため、そのキャラクターがキラーであることが確実に特定されてしまう。実行する際は確実を期したいところだ。なお、襲撃が失敗してキラーが特定されたあとも1制御分の延長時間があり、この間もゲームは続く。最後の勝負というわけだ。

また、1日の終わりにはSherlockの推理が。その時点でターゲットの3エリア内にキラーがいるかどうかを推理してくれる。これにより、どの人物にとってどの人物が安全か一気に割り出される。Moriartyは状態異常のキャラクターが増えれば有利になるが、Sherlockの推理でキラーとターゲットの候補が狭まってくるため、より慎重にプレイする必要がある。そのため、最後まで緊張感のある対戦が楽しめる。

なお、本作は外部ツール（Discord等）を用いてボイスチャットでワイワイと遊ぶこともできるが、Ping機能でどのキャラクターを制御するか伝えることが出来るので、ボイスなしでも十分に楽しめる。Pingの宣言通りに行動をする必要は無いし、ミュート機能で特定の人物だけには知らせないこともできるので、対人ならではの騙し合いもしっかり堪能できる。また、Pingとは別にスタンプ機能もあり、「誰を疑っているか」などを表現することも可能だ。

MoriartyとIreneだけが見ることができるPingなど、便利なものも多いので、快適に遊ぶことが可能だ。

ルームはフレンドで遊ぶもののほか、すぐに遊べるクイックマッチも存在するがPingやスタンプ機能のコミュニケーションで手軽に遊ぶことができる。

対戦ミステリーというジャンルは普段プレイしない人には敷居が高く感じるかもしれないが、本作は初心者でも楽しめるように工夫されている。記事を読んで気になった人はぜひプレイしてみてほしい。