11月25日(金)から書店フェアが開始になるなど、数多くの施策を行っている「アイドルマスター シャイニーカラーズ」と「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック2022」のコラボについて、担当者にインタビューを実施した。

目次
  1. 「少女コミックといえば杜野凛世さんにお願いするしかないでしょう」
  2. ノベルティの配布条件は書店員の負担軽減も兼ねたものに
  3. コラボ動画は凛世、智代子による台詞の読み上げに注目
  4. すべての「アイマス」ブランドのPがいる成文堂 南浦和店
  5. 「海が走るエンドロール」は少女コミック?少女コミックの多様化、ボーダーレス化
  6. この企画を切っ掛けに、いろいろな“新しい出会いの輪”を広げていけたら

「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック」は、全国の書店員から「たくさんの人にすすめたい漫画」「皆に読んでほしい漫画」をアンケートで募集し、ランキング形式で発表する「全国書店員が選んだおすすめコミック」のスピンオフ企画だ。すでに11月24日(木)に結果が発表されており、翌日の11月25日(金)からは書店フェアがスタートしている。

今回、同企画と「アイドルマスター シャイニーカラーズ」がコラボ。少女漫画をお互いに貸し借りをする“をとめ”なアイドル・杜野凛世と園田智代子が公式アンバサダーに就任し、さまざまな施策が行われている。その取り組みについて日本出版販売 マーケティング推進部 企画課の片山淳子氏と鈴木風薫氏、キャンペーンに参加している成文堂 南浦和店の松井絵里子氏に話を伺った。

インタビュー・編集:TOKEN
文・構成:小林白菜

「少女コミックといえば杜野凛世さんにお願いするしかないでしょう」

――Gamerはゲーム情報を取り扱う媒体でして、コミックについて取り扱うことはまれです。なので、まずは今回の取り組みの概要からお聞きできればと思います。

鈴木:もともと、弊社で主催している「全国書店員が選んだおすすめコミック」というアワードがあって、こちらは今年で18回目を迎えるんです。その名が示す通り、全国の書店員さんにご協力いただいてアンケートを行い、おすすめする声の多かった上位1位から15位までの作品をランキング形式で発表するという建て付けで毎年開催しています。

そのスピンオフという形で2021年から始めたのが、少女コミックにスポットを当てた「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック」です。こちらは1位から10位までの作品を発表しています。

――少女コミックにスポットを当てるのは今回で2回目ということですが、「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(以下、「シャニマス」)とのコラボを行うことになったのはどういった理由なのでしょう?

片山:以前「アイドルマスター」のほかのブランドと日販でコラボさせていただく機会があり、シリーズファンの皆さまや書店員の皆さまとの親和性も高く、よい企画になったという手応えがありました。ぜひまた別の「アイドルマスター」ブランドともお仕事がしたいという想いがあったんです。

その中で、少女コミックのフェアに「アイドルマスター シャイニーカラーズ」を起用させていただくことになったのは、私が「シャニマス」を知っていて、「少女コミックといえば杜野凛世さんにお願いするしかないでしょう」と思い至ったからです。

「シャニマス」のシナリオの中で、凛世さんがイケメンの台詞を読むというのが“シャニマス流行語大賞”にノミネートされるくらいファンの方にとって印象的だったのではないかと思います。あわよくば実際の少女漫画の台詞でそれができないかな、という想いがありました(笑)。それがアワード自体、いろいろな方の目に留まる切っ掛けになればいいなと。

――凛世がイケメンの台詞を読むというのは「をとめ大学」のコミュで描かれていますが、凛世と一緒に園田智代子もアンバサダーに選ばれたのは、「をとめ大学」がふたりをフィーチャーしたものだったからですか?

片山:そうですね。やはり凛世さんが少女漫画を読む切っ掛けになったのは智代子さんなので、凛世さんひとりより、放クラ(※杜野凛世、園田智代子が所属しているユニット「放課後クライマックスガールズ」の愛称)の絆も感じられるものになったほうが良い企画になると思いました。

――日販さんのほうで企画を固めた上で、バンダイナムコエンターテインメントさんに相談されたのでしょうか?

片山:実は、智代子さんのことは念頭にありつつ、まずは凛世さんひとりの起用という形で、ちょっと控えめにご相談したんです。「こういうアワードを弊社でやっているので、その公式アンバサダーとして283プロの杜野凛世さんを起用させていただけないでしょうか?」と。すると、バンダイナムコエンターテインメントさんのほうから「智代子も一緒に起用してみてはどうでしょう?」と言っていただけて、ありがたかったですね。

――今回、ふたりのイラストも「アンバサダーらしい」というか、凛世と智代子が普段あまり着ないフォーマルな衣装を着ていて、特別感がありますよね。

鈴木:こちらからイメージをバンダイナムコエンターテインメントさんにお伝えして、それに沿って描き下ろしていただきました。「全国書店員が選んだおすすめコミック」の公式サイトなどが、赤い緞帳が下がっているみたいな、“豪華な授賞式”を連想させるテイストだったので、それに合わせていただいた形ですね。

片山:“授賞式の司会”をイメージして描き下ろしていただきました。最初の告知画像では腰のあたりまでしか見えていなかったと思うのですが、全身を見るとジャケットは燕尾で、ショートパンツとの組み合わせになっているんです。放クラは元気なイメージが強いと思うので、授賞式のためにピシッとしているおふたりという、なかなか見られない一面を楽しんでいただけたら嬉しいですね。

ノベルティの配布条件は書店員の負担軽減も兼ねたものに

――今回、書店さんと一緒に取り組むという点に関して、施策のポイントなどあれば教えていただけますか?

鈴木:我々としても、より多くのファンの方に届いてほしいという想いがありましたので、SNSなどでしっかり情報発信していきたいというのは書店さんと相談しています。とくに(松井さんが働いている)成文堂 南浦和店さんの取り組みは素晴らしいんですけど……。

松井:いえいえ(笑)。

鈴木:すごく「わかり手だなぁ!」と感じることをしてくださってありがたいです(笑)。そういった形で地元の書店さんにも発信していただいて、お近くに住むファンの方に「こういうキャンペーンをしているんだ! 行ってみよう」と思ってもらえて、盛り上がるといいなって考えています。

片山:少女コミックは男性の場合、手に取る切っ掛けがない方も多いと思うんです。SNSの反応でも「これを機に少女漫画を買ってみようかな」といった投稿も見られたりしていて、そういった切っ掛けが作れたら嬉しいですね。

鈴木:書店で使っていただくために用意したポップには、書店員さんへのアンケートでいただいたコメントの中から、我々で抜粋させていただいたものを載せているんです。コメントしてくださった方の性別は載せていないのですが、男性の方からの「この少女コミックがおすすめです!」といった熱いコメントもあります。

読む機会がないだけで、性別に関係なく楽しめる作品が少女コミックには多いというのは我々も普段から感じていたので、「凛世と智代子が紹介しているから読んでみようかな」みたいに思っていただければと考えています。

片山:そういった狙いがありつつ、ノベルティの配布は少女コミック以外も含め、すべてのコミックが対象なので、まずは気軽に足を運んでいただければとも思っています。ある意味で欲張りなキャンペーンです(笑)。

――ノベルティを貰うための要件で「ほんのひきだし」の記事を提示するというものがありますが、これがけっこう珍しい印象を受けました。店頭のポップで初めてキャンペーンを知ることもあるかなと思うのですが。

鈴木:店頭でキャンペーンを知った方も、ポスターのQRコードを読み込んでいただければすぐ記事にアクセスできるようになっています。やはりノベルティはファンの方の手に渡ってほしいので、コミックの購入者全員に配布するのではなく、記事を提示するというワンアクションで「ノベルティがほしい」と意思表示をしていただく形にしました。

あとは書店さんの負担軽減の意図もあります。今回、対象が「店内のコミックすべて」と広範囲に及ぶので、例えば対象商品にノベルティをセットで陳列していただくようなこともできません。また、販売時に書店員さんが対象商品のことを常に意識しておかなきゃいけないというのは負担になりますし、お渡し漏れにも繋がりますよね。

お客さんから「これがほしいんです」と記事を出していただく方法なら、記事の中にキャンペーンの条件や対象店舗も書いてあるので、万が一キャンペーンのことが伝わっていない書店員さんが居ても、確認しながらお渡ししてもらえるんじゃないかなと思っています。

松井:書店側としても、お客さんから言っていただけるのがいちばんわかりやすいのですが、「言葉で伝えるのは恥ずかしい」という方もいらっしゃると思います。「すみません、これ」とスマホの画面を提示すれば意思表示になるというのは、いい意味でお互い気楽にできるやりとりですよね。

――本当に現場で運用する際の事情をしっかり汲み取った上での条件なのですね。

コラボ動画は凛世、智代子による台詞の読み上げに注目

――コラボ動画の内容についても、詳しくうかがえればと思います。

片山:やはり「シャニマス」本編のイベントのオマージュといいますか、「実在の少女コミックに登場するイケメンの台詞を凛世さんに言ってほしい」という想いから始まっているので、そこは実現させたかったんです。バンダイナムコエンターテインメントさんにも「コラボ動画を作りたい」というお話を最初からしていました。

鈴木:去年「全国書店員が選んだおすすめコミック」のほうで動画は作っていたので、そこにボイスを追加するという感覚ではあるんです。

片山:あとは、バンダイナムコエンターテインメントさんからゲームで使われているSEのデータもいただいていまして、こちらも動画で使用しています。W.I.N.G結果発表時のドラムロールとか。

――おぉーっ! それはいいですね……!

片山:キャンペーンに参加しなくても、動画を観るだけで楽しめるように意識しました。「シャニマス」をプレイしていない方だと「なんで女の子のアイドルがイケメンの台詞を読んでいるんだろう?」と不思議に感じるかもしれませんが、ファンならニヤリとしてくれると思うので。

――動画全体の流れとしては、どのような形になりますか?

片山:動画の進行は衣装と同様、授賞式をイメージしたものになっています。アイドルのお仕事としての、アンバサダーらしい活動を楽しんでいただけるかなと思います。

鈴木:やっぱりお仕事感があったほうが、ファンとしては嬉しいですよね。

片山:「ふたりとも司会の仕事、頑張っているね……!」みたいな(笑)。

鈴木:その上で、ランキングの上位3作品の台詞をおふたりに読み上げていただくようになります。

――台詞の読み上げには凛世だけでなく、智代子も参加するのですか?

片山:そうですね。上位3作品の出版社さんにもご協力いただいて、名台詞・名シーンを選定していただいたのですが、結果的にひと言だけ喋ってもらうというより、せっかくなので智代子も一緒になって掛け合ったりしてもらおうということになりました。

――SNSの投稿キャンペーンはいかがでしょうか? 動画やノベルティの配布に先行して、おすすめ作品の感想を投稿してもらっているかと思いますが。

片山:凛世さんと智代子の新規ボイス収録がある関係で、声優さんの色紙をプレゼントしますよ、というリッチなキャンペーンになっているんですけど、やはりこれを機にコミックの話をしてほしい、コミックを手に取ってほしいという想いが大きいです。

「ノベルティを貰いに行きたいけど、何を買おうかな?」と迷った方が投稿で紹介されている作品をチェックすることで、読んだことがなかった作品との出会いに繋がったらいいなと思っています。

鈴木:先ほどの話と通じることだと思うのですが、男性であろうユーザーさんが「この少女漫画、読んでみたら意外と楽しめた!」みたいな形で紹介されていたのを見たときは「そういうのを待ってました!」と(笑)。

ランキングがまだ発表されていない段階でトップ10入りしている作品をバッチリ紹介している方もいて、「勘がいいなぁ~」などと思いながら、こちらも楽しく拝見させていただいています。

――この投稿キャンペーンも少女コミックに限らず、自分が好きな漫画作品を投稿できるということで、少女コミックに詳しくなくても投稿できるのはハードルが低くていいなぁと思います。

すべての「アイマス」ブランドのPがいる成文堂 南浦和店

――書店サイドとしては、こういった取り組みをどのように捉えているのでしょう?

松井:やはり現状、「お客さまに店舗に来てもらう」というのがハードルだと思うんです。足を運びたくなる本が書店に置いてあるのがいちばんではあるのですが、付加価値として「書店に行って、紙の本を買ってみよう!」と思ってもらう切っ掛けになるような、こういった機会を作っていただけるのはすごくありがたいです。

もうひとつ、これは個人的な意見かもしれませんが、書店員は毎日たくさんの本が入ってきて、一方で売れ残ってしまった本を出版社に戻すという、ルーティンのような仕事になりがちです。なので、こういったある種のお祭りみたいなことがあるのは大歓迎です。楽しくお仕事できるに越したことはないですからね。

――キャンペーンに向けた準備はこれからになるかと思うのですが(※インタビュー当時)、どのような展開をするご予定ですか?

松井:うちの店舗で現在進んでいる準備としては、絵が描けるスタッフによる凛世さんと智代子さんのイラストが増えている状態です。

一同:(笑)。

――それは自作のポップなどに使用するということですか?

松井:そうですね。キャンペーン期間に向けて、棚を作るときにポイントポイントでイラストを使わせてもらう感じになります。

――成文堂 南浦和店さんでの店頭での展開はどういったものになりそうですか?

松井:昨年の「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック」でも、少女コミックの棚をひとつ開けて、ランキング入りした作品を並べるような形でした。なので今回は、そこにアンバサダーのおふたりが加わるようなイメージになると思います。

自作のイラストを描いているのはコミック担当のスタッフなのですが、公式のポップも加わって、店内を見渡せばすぐ目に留まるような形になるんじゃないかと。少女コミックコーナーは「シャニマス」一色みたいな感じになるかもしれません。

鈴木:少女コミックコーナーを「シャニマス」がジャックするみたいな(笑)。

成文堂 南浦和店でのキャンペーン展開

――「アイドルマスター」シリーズと日販さんのコラボによって、書店さんの店頭で展開するキャンペーンは今回で2度目ということですが、前回の取り組みで楽しかったこと、やってよかったことなどはありますか?

鈴木:それは我々も気になりますね……。

松井:やはりお客さんが飾り付けなどを見て「わあっ!」と喜んでくれたりしているのを見ると、やってよかったなと思いますよね。それから、今回はコミックが対象ですが「この人は普段、こういうものを買わないんだろうな」という方がランキング入りした作品などを買ってくれたりするのは、アガる瞬間ですよね。「新しい出会いが生まれた瞬間なんだろうな」っていう。その機会を作るお手伝いができた嬉しさというんでしょうか。

片山:我々も店頭に足を運んだとき、お客さんがキャンペーンの展開に気付いた瞬間を横から見られると楽しいですね(笑)。

――書店員さんがイラストを書かれているということでしたが、書店員さんの中での「アイドルマスター」シリーズの知名度はどういったものなのでしょうか? 「こういうキャンペーンをやるよ」と伝えたときのテンション感といいますか。

松井:「アイドルマスター」シリーズ自体の知名度はかなり高いと思います。書店のスタッフって……その、だいたいオタクなので……。

一同:(笑)。

松井:シリーズを知っている子は多かったですし、その中には「シャニマス」のプロデューサーもいるので、アンバサダーのふたり(凛世と智代子が選ばれたこと)を見て「わかる!」と言っていました(笑)。

なので、絵を描ける書店員が描いた凛世や智代子を「シャニマス」Pの書店員がチェックして、オッケーをもらうみたいな流れで制作作業は進んでいます。

――「シャニマス」Pの監修が入っているわけですね(笑)。

松井:前回のコラボは私がチェック係をしていました。うちの店舗だと、各ブランドそれぞれのPが居て、兼任してる子も居ます。

片山:成文堂南浦和店さん以外にも、「シャニマス」を応援してくれている書店員さんには、店頭の装飾にご協力いただきました。「をとめ大学」のカードイラストなど、ゲーム内イラストを掲示してくれている書店さんもあります。

――「シャニマス」のカードイラストは映えますからね……! アイドルのいろいろな魅力が引き出されていて、純粋に可愛いというのもありますし、そのイラストだけでも物語が想像できて、共感できるものもあったり。

片山:そうですね! ゲームをプレイしていない方にも、書店で見かけただけで魅力が伝わりやすいんじゃないかと思います。

――普段、少女コミックにあまり触れない方におすすめするというのは大変だと思うのですが、書店で何か意識している点などはありますか?

松井:書店員がお客さまに直接本を勧めることって、普段ならほとんどないんですよね(笑)。ポップを出して、それに気付いてくれた人に興味を持っていただくという、基本的には“待ちの姿勢”で、アパレル店みたいな声掛けもしないですし……。今回のように大きく売り場に展開する以外だと、レジ前や、店先の目に付きやすいところにおすすめしたいものを陳列するような形になりますね。

鈴木:書店さんでおすすめするということで言えば、ランキング入りしていなくても書店員さんイチオシのタイトルがあって、それをおすすめしたい場合のために、「当店のおすすめ!」と書かれたブランクのポップなんかも用意しているんです。

「ランキング入りはしなかったのですが、私が投票したのはこのタイトルなんです。激推しなんです!」と言ってくださったり、SNSにアップしてくださる書店さんも実際にいらっしゃって、そういう形でプッシュしていただけるのは、こちらとしても嬉しいですよね。

――漫画好きならばこだわりのイチオシタイトルみたいなものがある方も多いでしょうから、そういった勧め方もできるならと張り切りたくなる書店員さんも多いかもしれませんね。

片山:ノベルティの配布は店内のすべてのコミックが対象ということで、少女コミック以外の棚で使っていただけるポップもありますので、各書店さんに活用していただければと思っています。少年漫画を買いに来た方などにも「あれ? シャニマスのアイドルがいる」みたいに気付いていただけたらいいなぁと。

「海が走るエンドロール」は少女コミック?少女コミックの多様化、ボーダーレス化

――ランクインした10作品について、お三方から何かコメントがあればお聞きしたいのですが、いかがでしょう?

鈴木:今回、巻数指定などもないので、新しい作品もあれば、すでに多くの巻数が出ている長期作品もあって、バランスの良いラインナップになったと思います。

片山:メディア化された作品や、過去作が有名な作者さんの作品もありますしね。

――前者は昨年アニメ化された「かげきしょうじょ!!」、後者は「アオハライド」「思い、思われ、ふり、ふられ」を描いた咲坂伊緒先生の新作「サクラ、サク。」などですね。

鈴木:書店員さんのご意見として、このラインナップは納得なのか、意外なタイトルが食い込んでいるのかというのは気になるところです(笑)。

松井:納得ではありますけどね。

片山:少女コミックってどこまでがそうなのかっていう線引きが難しいんですよね。

松井:「これ少女コミック? でもそっか」みたいに一瞬疑問符が付くものはありますね。

鈴木:「海が走るエンドロール」や「かげきしょうじょ!!」はどうなんだろうと思いつつ、でも全国の書店員さんがこういったタイトルを少女コミックと認識しているんだなというのは、これから少女コミックを考える上でひとつ参考になるかなと思います。

松井:レーベル的には「女子力高めな獅子原くん」も少女コミックという括りで考えることはあまりないですよね。ジャンル分けするなら青年コミックになるはずで。

片山:少女コミック・少女漫画というジャンル自体がだいぶボーダーレスになってきているところはあるんですよね。女性も少年コミックを読みますし、大人の女性に向けた作品と少女コミックの違いって何だっけ? レーベルで分けるんだっけ? みたいなところもありますし。

鈴木:「少女コミック」という括りでアワードを作ることで、スポットが当たる作品を狭めてしまうかなと思っていたのですが、蓋を開けてみたら幅広い作品に投票があったのは、私としては嬉しかったです。ユーザー投票系のアワードだと、女性で少年コミックを読む方は多いけど、男性で少女コミックを読む方は決して多くはないという偏りが結果に出ている印象です。どうしても、「全国書店員が選んだおすすめコミック」のほうでは少年コミック・青年コミックが強いので。

ほかのコミックアワードでもよく目にする作品が、このアワードでもランクインする傾向が強くて、どうしても少女コミックを取り上げることが少なくなってしまいがちなんですよね。それも昨年から「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック」を始めた理由のひとつとしてありました。

――今回ランクインしたタイトルは本当にバラエティ豊かで、少女コミックにあまり触れてこなかった方にとっては、いい意味で掘り出し物と言えるものも多いラインナップなんじゃないかと思います。

鈴木:「ザ・少女コミック!」と言える恋愛モノもあれば、2位の「消えた初恋」はちょっとBL風味が入ってきたり、5位の「海が走るエンドロール」は65歳を過ぎた高齢の女性を主人公にした生き方の問い直しといったテーマがあったり。「みんながイメージするような少女コミックばかりじゃないんだぞ」というのがひと目で分かる感じになったと思います。

――個人的なおすすめなどはありますか?

片山:私と鈴木はふたりともずっと「うるわしの宵の月」を読んでいますね。

鈴木:選ばれる前から「いいよね~」と言い合っていたら、案の定1位を取って、「そうだよね~!」みたいな(笑)。

――おふたりとも納得の1位と言えるタイトルなんですね(笑)。

松井:少女コミックの売り場ってけっこうピンクピンクしているので、男性が立ち寄りにくいのも分かるんですよね。でも「シャニマス」がお好きなら少女コミックで描いているような内容への親和性もあるかなと思うので、この企画がまだ触れたことのない作品に触れる切っ掛けになったら私としても嬉しいです。

鈴木:やはり読んでくれる読者の間口を広げたいという想いが大きいです。このアワードを立ち上げるときはポップやポスターをピンクにする案もありました。でも、そこでいまある少女コミックのイメージをそのまま強めてしまうのはよくないと考えて、いまのようなオレンジっぽい色を基調としたものになったんです。それが結果的に放クラのカラーと合致したっていう(笑)。寄せたわけではなく、偶然の一致なんです。

片山:偶然の一致が起きたときは思わず「最高じゃん!」って言っちゃいました(笑)。

鈴木:この色にしたのはより多くの方に少女コミックを手に取ってほしいという想いからなので、ぜひ皆さんに読んでいただけたら嬉しいですね。

この企画を切っ掛けに、いろいろな“新しい出会いの輪”を広げていけたら

――こういったキャンペーンで興味を持って、手に取ってくれる方が増えるという手応えはありますか?

松井:そうですね。「興味はあるけど、どうしようかな?」と思っていたであろう人たちにお買い上げいただいている印象はありますね。ランキングにタイトルが載ることで、ある種のお墨付きというか「やっぱりおもしろいんだ!」と思ってもらえているんだと思います。

片山:いま、やはり漫画作品全体で見て作品数が多いので、「どうしよう?」と迷ったとき「ランキングに入っているなら間違いないでしょう」というのが後押しにはなるんだと思います。

鈴木:いまの漫画ってスマートフォンのアプリでも気軽に読めちゃいますし、アプリで1作品を読むと、その作品を読む人の趣向にあったタイトルがレコメンドとして出てくるじゃないですか。そうやってどんどん自分の興味があるものに最適化されていくところがあるので、たくさんある選択肢の中からひとつを選ぶことって少なくなってきていると思うんです。

そういった方たちにとっても、ランキングという分かりやすい形で選定していると、手に取ってもらいやすいのかなと。

――書店で本を選ぶことの魅力って、“新しい出会い”とか、“選ぶ楽しみ”といった部分が絶対にありますもんね。最後に、我々のメディアでこの記事を読む読者は「アイドルマスター」シリーズのプロデューサーの方が多いかと思います。今回のコラボが気になっているプロデューサーさんへ、メッセージをいただけますでしょうか。

松井:成文堂 南浦和店としては「店員一同、プロデューサーさんの視察をお待ちしております」という感じですね。

片山:私はもともとコミック企画の担当者ではないのですが、「シャニマス」のプロデューサーだったということで、今回から「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック」の企画に参加しました。

前回は参加店舗が600ほどだったのが、今回は920店舗の皆さんにご協力いただいて、すべての都道府県を含むキャンペーンになっています。お近くの書店でプロデューサーとして活動できるというのは皆さんの喜びになるかなと思うので、ぜひお気軽に足を運んでみてください。「シャニマス」を切っ掛けに、さらにいろいろな出会いを見付けていただきたいなと思います。

鈴木:私はこれを切っ掛けに「シャニマス」を始めまして、同じように少女コミックが好きで、今回のキャンペーンを切っ掛けに「シャニマス」が気になる方もいるんじゃないかなと思います。もちろん「シャニマス」が好きで少女コミックに触れる方もいらっしゃると思うので、お互いに新しい出会いが生まれて、相互的に楽しいことになれば嬉しいです。

それから「この書店さん、こういう企画をやってくれているんだ」と知ってもらえるような発信もしていますので、書店さんのファンになってくださる方がいたら、それもすごく嬉しいです。この企画を切っ掛けに、いろいろな輪を広げられたらと思っています。

――ありがとうございました。

「アイドルマスター シャイニーカラーズ」コラボ紹介
https://hon-hikidashi.jp/enjoy/156726/

「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック2022」結果発表
https://hon-hikidashi.jp/enjoy/159252/

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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