「忍者マストダイ」をレビュー。忍者に武士に鬼といった和のキャラクターが活躍する世界を墨絵風ビジュアルで描いたスマートフォン向け疾走バトルRPG。その魅力を紹介する。
「忍者マストダイ」は、PANDADA GAMESからリリースされたスマートフォン向け疾走バトルRPG。タイトルが示す通り、本作のテーマは忍者。主人公である忍者のクロは指令により鬼族討伐の任につくが、そこに陰陽師や武士などの思惑がからんでくるという和のストーリーが、墨絵風ビジュアルによって表現されている。まず、このビジュアルがかなりカッコいい!
ランアクションをベースに多彩なギミックを搭載した横スクロールアクションRPG
「疾走バトルRPG」と銘打たれているが、ゲームシステムの基本はいわゆるランアクションゲームだ。ランアクションゲームとは、強制横スクロールで移動し、登場する障害物を回避していくというタイプのゲームのこと。スマートフォンゲームの黎明期に盛り上がったジャンルなので、懐かしさを感じる人もいるのではないだろうか。
「懐かしさ」と書いたが、本作は懐かしのゲームジャンルをそのまま再現したという作品ではない。障害物を回避していくという基本こそランアクションだが、そこに様々なギミックを搭載し現代的な作品へと進化させている。「疾走バトルRPG」という銘にふさわしい内容に仕上がっていると感じた。
どんなギミックがあるのか例を挙げるなら、そのひとつが逆スクロール。通常のステージでは左から右に向かってスクロールしていくのだが、シーンによっては右から左に向かってスクロールしていく場合がある。もちろん、何の意味もなくスクロール方向が切り替わるわけではない。切り替わるのは主に、「追手から逃げる」など、ストーリー上のシチュエーションを表現する際。ストーリーとステージが密接にかかわっているところが、RPGらしさを感じさせてくれる。
なお、いわゆるランアクションゲームは、プレイヤーがミスをするまでどのくらいスコアを稼げるかというルールのものが多かった。しかし、本作はストーリーとステージが密接に関わっているため、ステージクリア型の構成がとられている。ステージの導入で会話パートが発生し、その後アクションパートとなり、クリアすることで次のステージへ…という、スマートフォンRPGで多く見られる構成だ。ただ、ミスをするまで無限にプレイできるという昔ながらのモードも存在している。
そして、逆スクロール以外でおもしろいギミックが綱渡り。本作における基本の回避アクションは前方へ高速移動するダッシュと、ジャンプ。しかし綱渡り中は、ダッシュの代わりに上下の反転アクションが登場。綱の上側と下側を行き来することで障害物の回避が可能になる。障害物を回避するという基本は変わらないものの、立ち回りが大きく変化。これによって、プレイにいい緊張感がもたらされている。
忍者だったら忍術で攻撃!爽快な忍術アクション
ランアクションの基本は「障害物の回避」だが、本作は「疾走バトルRPG」なので攻撃も可能。もちろん、忍者だから忍術を使った攻撃が行える。これが非常に爽快だ。
攻撃は武器によるものと忍術によるものの2種類存在し、いずれもゲージが貯まった際にボタンタップで使用可能。武器よりも忍術の方がゲージが貯まりにくく、その分威力も強力になっている。
武器・忍術いずれの攻撃も、敵にダメージを与えて倒すことができる。ただ、ゲージが貯まるまで時間がかかるため、連発はできない。なので、攻撃はあくまで切り札的なもので、立ち回りの基本は、あくまで回避といえる。
ただボス戦では、攻撃によってボスのHPをゼロにすることが目的となるため、攻撃の比重がアップ。ボス戦では武器、忍術だけでなくアイテムによる攻撃が行えるようになる。マップ上に登場するアイテムに触れることで、即座に攻撃が可能。ボスの攻撃を回避しつつ、いかにアイテムを取るか?その上でいかに適切に武器や忍術を使うか?ここでもやはり回避という基本は変わっていないが、プレイ感は大きく変化する。さまざまなタイプの楽しさが味わえるというのは、間違いなく本作の魅力のひとつだろう。
ちなみに「忍術が使える」というのは、個人的に評価ポイントだった。「忍者モノなら忍術が使えて当たり前なんじゃない?」…そう思う人もいるだろうが、ゲームの中には、忍者モノだけど忍術が登場しない…というものも意外と多い。もちろん、その作品のコンセプトや世界観的に忍術は不要だったのかもしれない。けど、忍者が主人公なら是が非でも忍術アクションを楽しみたいというのが筆者の本音だ。なので、本作は個人的に評価が高い。忍者モノはこうでなくっちゃ!
力の入った演出も必見!プレイして満足感の高い一作
最後に本作の演出について触れたい。本作は、花江夏樹さん、悠木碧さん、鬼頭明里さん…といった豪華声優陣がキャラクターボイスを担当している。このため、ストーリー的な演出表現も見どころのひとつ。…なのだが、筆者が伝えたいのはそこではない。ボイスもいいのだが、筆者的に訴えたいのがステージ中のちょっとした演出だ。本作は、細かな演出まで手を抜いていない。
たとえば、とあるステージでは落雷が発生。またあるステージでは、コウモリがこちらに向かって飛んでくる。いずれも単なる演出にすぎない。ただ、こうした演出は存在することで魅力が確実にアップする。しかし仮になかったとしても魅力がダウンするわけではないだろう。そもそも存在しなかったとしても、我々プレイヤーは気づきもしない。にも拘わらず用意したということは、それだけ開発陣が力を入れたということだろう。言い換えれば、それだけ我々を楽しませてくれようとしているわけだ。
しかもコウモリの表現に至っては、立体的に飛んでくる。本作は2D的な横スクロールゲームなので、基本的に敵や障害物の移動は上下左右という平面上だ。もちろんキャラクターも2D。しかしこのコウモリの飛行は、拡大縮小などの2D的な処理を上手く使って立体的に表現されている。この表現があることで作品の中の世界に広がりのようなものが感じられ、思わず筆者はこの表現に飲み込まれてしまった。本当にちょっとした演出なのだが、丁寧に作られていると感じた部分だ。
本作をプレイして、ステージギミック、アクション、そして演出に至るまで丁寧に作られた作品だということがよくわかった。本作のダウンロード数は全世界で1億ダウンロード超えとのことだが、それも納得の内容だ。スマートフォンを持っている人なら、プレイして公開はないだろう。是非一度はプレイしてみてほしい。