独特の爽快感は今も健在!約13年ぶりに現行機で蘇る謎解きミステリー「ゴースト トリック」体験版プレイ&開発者インタビュー

プレイレビュー
0コメント 近藤智

カプコンが2023年6月30日に発売する、PS4/Nintendo Switch/Xbox One/PC(Steam)版「ゴースト トリック」の体験版プレイレポートとメールインタビューをお届けする。

本作は「逆転裁判」シリーズの生みの親である巧舟氏が手掛けた名作謎解きミステリー「ゴースト トリック」(2010年発売)の現行機版だ。“死”から始まる物語を、高解像度・高フレームレート化したグラフィックや新たな機能と共に楽しめる。ここでは体験版で触れられた2章までの範囲と、開発陣へのインタビューをお届けしよう。

※画像はPS4版(プレイはPS5)です。

“死”から始まり記憶をめぐる物語が、より美しく遊びやすく!

主人公「シセル」は、ゲーム開始時点ですでに何者かによって死を迎えた存在だ。自分の記憶が一切なく、何故こうした状況にあるのかは何も分からない。魂となって漂ううち、シセルは「クネリ」と名乗る電気スタンドの導きで《死者のチカラ》を手に入れる。明日の朝になれば魂が消滅してしまうタイムリミットの中、シセルは「自分は一体何者なのか?」「誰に殺されたのか?」「何故、殺されなければならなかったのか?」という謎に迫っていくのが本作の最終目的だ。

シセルが真実を追う上で、新米刑事の「リンネ」が重要なキーマンとなる。シセルが殺害された現場にいたため、何らかの事情を知っている可能性が非常に高い。しかしリンネもリンネで何者かに命を狙われており、シセルと同様にほどなく命を落としてしまう。彼女がこのまま死んでしまえば、二度と真実へたどり着くことはできないだろう。そこでシセルはリンネが死んでしまう「4分前」に遡り、彼女の危機を《死者のチカラ》で防ぐことになる。

どうにかシセルはリンネを狙う殺し屋を撃退するが、彼女は組織的に狙われている様子で、次から次へと新たな刺客が差し向けられる。シセルは時に犠牲となった存在を救い、時に真実に近づくため大きな困難に立ち向かうことになる。

状況こそやや重々しく思えるかもしれないが、「逆転裁判」シリーズをプレイしたことがあればお分かりのとおり、巧氏が生み出す軽快なテンポと独特のセリフ回しで悲壮感はほとんどない。とくに序盤から登場する忠犬「ミサイル」は、一度でも遭遇したら忘れられないほどの可愛らしさとインパクトがある。こちらはぜひ、実際に体験してほしい部分だ。

なかでも本作の特徴は、リアルタイムに進んでいく連鎖的なギミックだ。そのまま眺めていても時間がただ経過するだけで、4分間が過ぎれば再び悲劇が起こってしまう。プレイヤーはシセルの能力、モノに「トリツク」と「アヤツル」を駆使し、この結末とは違う新たな未来を引き寄せなくてはならない。

シセルは時間の止まった死者の世界で、周囲の無機物へ「トリツク」を繰り返して移動でき、さらに現実の世界へ戻れば、その無機物を「アヤツル」ことで変化を起せる。とはいえ移動は自由に行えるわけではなく、一定の距離内にある無機物の「コア」を介してしか移動できない。また「アヤツル」も、例えば電化製品のスイッチを入れる、扉を開ける、音を鳴らすなど、ささやかな挙動が精いっぱいだ。しかし、わずかな行動でも敵の注意を逸らして隙を作ったり、特定の人物の行動を変えたり、届かなったコアへの道を切り拓いたりと、色々な変化を起こせる。この小さな変化の積み重ねこそ、運命を更新するカギとなる。

このトリツク&アヤツルのポイントは、なんといってもリアルタイムに時間が進んでいくこと。すでに1度「このタイミングで、こういうことが起きる」と流れを把握できているので、その瞬間を狙って行動を起こすのが重要となる。例えば序盤には、今まさにリンネが敵の攻撃を受けてしまう場面がある。この場合は攻撃が行われるまでのわずかな間に「トリツク」で移動し、ちょうどいい無機物にたどり着いて「アヤツル」で敵の注意を引き、リンネが逃げる時間を稼ぐ……といった具合だ。

このほかにも敵と犠牲者が遭遇しないよう相手を誘導して危機を乗り越える、シセルが特定の場所へ移動するためのサポートをさせるといったケースもある。こうした場合はさまざまな手段でターゲットの注意を引き、うまく狙い通りの行動を取るように仕向けなくてはならない。無機物を「アヤツル」ように単純にはいかないため、シセルの独り言やほかのキャラクターの考えをヒントにしながら、あらゆる手段を試してみよう。

多彩なキャラクターの織りなすストーリーも、本作の見どころのひとつ。誰がどの人物と、どんな場所との接点があるのかなどの情報も分かりやすく整理されているので、こまめに確認しておけばより理解も深まるだろう。

ちなみに筆者は、約13年前にDS版をプレイしている。当時はタッチペンで直感的に操作できたが、今回の現行機版ではコントローラーを使った操作となるため、感覚が大きく変わってしまうのではないかという懸念があった。しかし実際にプレイしたところ、とくに引っかかる部分もなく、当時とほぼ変わらない操作感で楽しむことができた。

そして後ほど開発スタッフからもお答えいただいているとおり、本作のストーリーはぜひネタバレなしのまっさらな状態で進めてほしい。筆者も細かな部分こそ忘れてしまっているが核心はしっかり記憶していたので、序盤から「この時点でもう伏線を張っていたんだ」と改めて感心したほど。何も知らないままプレイできるのは一度きりなので、声を大にして伝えたい部分だ。

イラストやBGMを集められるコレクション機能も追加され、一部初公開の設定画も鑑賞できる。動くピースを入れ替える「ゴーストパズル」や設定された条件の達成を目指す「チャレンジ」も楽しめるので、初めて触れるプレイヤーはもちろん、かつて本作を存分に遊びつくしたプレイヤーにもぜひ体感してほしい。

オリジナル版&現行機版の開発スタッフへインタビュー

ここからは「ゴースト トリック」オリジナル版のディレクター・巧氏、現行機版のディレクター・丸山敦史氏、プロデューサー・和泉真吾氏へのメールインタビューをお届けする。

巧舟氏 丸山敦史氏 和泉真吾氏

――2010年発売の「ゴースト トリック」が約13年の時を経て現行機でリリースとなります。巧さんは本作に対し「キョーレツな思い入れがある」とTwitterでお話しされていましたが、オリジナル版の制作当時の構想や振り返りなどをお聞かせください。

巧氏:《ゴーストトリック》は、《逆転裁判》とは違うスタイルのミステリを作ろうというコンセプトから考え始めました。最初にあったイメージは“群衆劇”…謎めいた人たちが抱えた秘密を解き明かしていくゲーム。そのため、最初に考えた企画では、ゲームの舞台は一棟のマンションで、そこに暮らす様々な住人たちを観察して、彼らが抱えた謎を解いていく、というゲームでした。

そこで、そういう「観察」ができる主人公とは、どんな存在なんだろう? と考えた時に浮かんだのが、「タマシイ」というコンセプトでした。そこから《死者のチカラ》というアイデアが生まれて、そのチカラの正体は何だろう…と考えていって、自らの死を追うタイムリミットサスペンスに変化していきました。

――リアルタイムに進行していく中でシセルを操作する、いわゆるピタゴラ的装置の進行が非常に印象的でした。こちらはどのような経緯で取り入れられたのでしょうか?

巧氏:マンションを舞台に考えていた企画では、住人にとりついて、その人の固有のアクションを使ったパズルを考えていました。でも、人間を操る方向では、あまり発想が広がらず…どうも、考えていて新しさを感じなかったんです。そこで、思いきってモノにしかとりつけないよう方向転換してみました。

人にとりつけるのであれば、移動する時は誰かにとりついてトコトコ歩けば済むわけですが、モノにしかとりつけないならそうはいきません。ステージの中を「移動」すること自体がゲーム性につながるわけです。こうしてゲームの方向性が固まっていきました。

――いつごろから現行機での「ゴースト トリック」復活の企画がスタートしたのでしょうか。

和泉氏:ゴーストトリックを移植しよう!という話を具体的に始めたのは、2021年の後半だったと思います。移植のご要望がたくさん寄せられていた作品だったことと、遊んでいただいたユーザーの皆様の満足度が非常に高い作品だったので、これを13年前にお届けできなかった方に、ぜひ遊んで欲しいと考えたことが今回の移植を決めた理由です。そのため今回の移植では、マルチプラットフォーム対応とアジア言語の追加対応を行いました。

また、原作の発売から13年が経過していますが、いつの時代にも、どこの国の方でも、どんなハードでプレイしても変わらない「普遍的な面白さ」を持ったタイトルという点も大きかったです。

――当時の直感的な操作がどうなるのか非常に気になっていましたが、コントローラーでの操作もまったく違和感なく楽しめました。一画面への最適化や操作性など、どのように取り組まれたのでしょうか。

丸山氏:取り組んだものは、UIの調整です。ゲーム中に表示されるUIはゲームプレイに大きく影響を与えるものなので、「どこに」「どのように」表示するかをUIのメンバーと検討を重ねて、改善しました。

その中でも特に難しかったものは、アヤツルの表示です。とりついた後、そのものがアヤツルことができるのか、そしてどんなことができるのかは、とても重要で、ゲームプレイ時のユーザー視点を考慮しつつ、改善を行いました。

――その他、現行機ならではのこだわりや注目点についてお聞かせください。コレクション機能なども楽しみです。

丸山氏:現行機ならではのこだわりとしては、操作感も含めた「ゲーム体験」の再現ですね。もちろんオリジナル版をただ再現するのでは、画面のサイズ、コントローラー、解像度、サウンドの鮮明さなど、再現はできているが体験としては劣化してしまうと考えています。PS4やPCでプレイするにあたって、違和感なくあの時の体験を再現するために、解像度、FPS、サウンド、UIなどを改修し、できるだけあの時のプレイを再現しています。

――オプションで画面の背景パーツを左右で設定できるのがユニークでした。どういった経緯で実装されたのでしょうか?

丸山氏:まず、オリジナル版からゲームの画面比率を変更してしまうと、背景やキャラ、ギミックが意図せず表示されてしまい、ネタバレやゲームの難易度変化が発生してしまう問題がありました。そのため、ゲームの画面比率はそのままに、空いた左右にUIを表示しつつ、背景も変更できるような遊びを加えました。

――DS版から音楽面の人気も非常に高かったと思いますが、DS版の杉森雅和さん、今回のアレンジを手掛けられた北川保昌さんとは、それぞれどのように作り上げていったのでしょうか?

巧氏:杉森くんは、《逆転裁判》の第一作目の音楽を作った天才。彼の強みは、オリジナルの新しい世界を生み出せるところだったので、《ゴーストトリック》でもう一度組むことができたのはシアワセでした。

すでにカプコンのスタッフではなかったので、曲のイメージを伝えた後は、データとメールのやりとりで曲作りを進めました。制作期間中は、最初に顔合わせしただけでしたが、すばらしい仕事をしてくれました。

北川さんは、《大逆転裁判》の音楽を作った天才。彼は、分析力が高く、聞く者のココロをつかむ、強いメロディと音を生み出します。実はオリジナル版の制作当時、杉森くんの作った曲を実際にNINTENDO DSで鳴らすところで関わっていたので、れっきとした“ゴーストサウンドチーム”の一員だったんですね。

今回、BGMは、ゲーム中の好きなタイミングでオリジナル版とアレンジ版を切り替えられるので、最も重視したのは、その音楽的な機能・役割が変わらないことでした。なので、北川さんと何度もやりとりして、その曲のイメージを共有しながらアレンジの作業を進めました。

――杉森雅和さんの手掛けられる新曲は、ゲーム内のどこで使用されるのでしょうか?

和泉氏:「Ghost World」という曲なのですが、そのタイトルのとおり本作の世界観とミステリアスな雰囲気を表現した曲になっています。本編クリアー後に聴けるようになりますので、ぜひ聴いていただきたいです。

――新たにやりこみ要素として「チャレンジ」が実装となりますが、コンプリートを目指す場合、どの程度の難易度になるでしょうか?

丸山氏:ゴーストトリックでは、トリツク・アヤツルを駆使してキャラクターを助けて運命を更新することで進んで行きますが、正解のルート以外でもキャラクターがいろいろな反応をします。

わざと失敗することでしか見れないやり取りもあり、そういった寄り道部分にやりこみ要素を設けています。コンプリートを目指す場合、かなりの歯ごたえのあるコンテンツになっているかもしれません。

――登場キャラクターの中では、やはり「ミサイル」への注目が高いかと思います。「逆転裁判」シリーズをはじめ、とくに巧さんと縁の深いキャラクターかと思いますが、これから現行機で遊ぶプレイヤーへ改めてミサイルの魅力をご紹介ください。

和泉氏:カノンのために献身的に頑張るところだと思います! あとは芯を食ったセリフというのでしょうか。何気ないセリフが核心をついていることが多いので、一言一句を見逃せないキャラ(全キャラともに、そうなんですが…)だと思います。

丸山氏:ミサイルの魅力は、嫌うにしても慕うにしても、つぶらな瞳のごとくまっすぐで全力なところですね。だからこそ、ご主人がちょっといじわるしてしまう気持ちがすごくわかります。

巧氏:ファンのみなさんにはおなじみの話なのですが、実は、オリジナル版を制作していた当時、ぼくの家に「ミサイル」という名のポメラニアンの子犬がいて…それを深く考えずにゲームに登場させたのが、あの“勇猛なる小動物クン”だったんですね。だから、あのセリフまわしや行動は、我が家のミサイルそのもので…それが、説得力のある存在感につながっているのかな、と思います。

――SCRAP制作の「ゴースト トリック」オリジナル謎解きキット付きも発売されますが、どのような仕上がりかポイントをご紹介ください。

和泉氏:ゴーストトリックの「トリツク」「アヤツル」のプレイをアナログ(紙の上)で見事に再現しているコンテンツです。これまでにSCRAPさんの謎解きコンテンツを遊んだことがある方にとっても、きっと歯ごたえのある内容になっていると思います。ゲーム本編のネタバレを含みますので、クリアー後に遊んでください。

――発売を楽しみに待つファンの方々へメッセージをお願いします。

和泉氏:初めて遊ぼうと思っている方、まずは唯一無二にして秀逸なストーリーを楽しんでもらいたいです。そのために入り口として体験版を用意したので是非プレイしてみてください!その後はストーリーのネタバレを見ないよう、SNSで「ゴースト トリック」を検索しないなど、気をつけて発売日を迎えていただければと思います!

丸山氏:オリジナルのファンの方へ、オリジナル版をプレイした当時とはキャラクターの見え方や、会話の中に隠れた意図などが見えてくると思いますので、新要素や高画質・アレンジBGMと共にその体験を楽しんで頂きたいです。

初めて遊ぶ方へ、オリジナル版の発売から10年以上経っていますが、このゲーム体験は新鮮かつ驚きに溢れているので、ネタバレに気を付けて、一度しか味わえない貴重な体験を楽しんで頂きたいです。

巧氏:今回のプロジェクトは、10年以上の長い間、このゲームを深い愛情で遊び継ぎ、応援してくれた方々がいたからこそ実現したのだと、勝手に解釈して、勝手に感激しています。本当にありがとうございます。

このゲームは、オリジナル版の当時から絶対の自信がありました。初めてタイトルを知った方はもちろん、すでに遊んだ方にもぜひ、リファインされた《ゴースト》の世界を楽しんでいただければウレシイです!

※画面は開発中のものです。

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