MAGES.より2023年4月27日に発売となったPS4/Nintendo Switch用ソフト「やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完」。同作の発売を記念して、原作者の渡 航氏と戸部 翔役の堀井茶渡さんにインタビューを実施した。
今年でアニメの初回放送から10年を迎え、10周年プロジェクトが進行中の「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」(以下、「俺ガイル」)。3作にわたってMAGES.より発売されたゲームも含め、幅広いメディアミックス展開が作品全体の魅力を押し上げているように思う。
ゲーム3作目となる「やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完」(以下、ゲーム「俺ガイル完」)の発売を記念して、Gamerでは原作者の渡 航氏と、戸部 翔役の堀井茶渡さんへのインタビューを実施。普段から交友関係のあるお二人ならではの気の置けないやり取りで、アニメ10周年を迎えるまでを振り返ってもらいつつ、ゲームについてもさまざまなエピソードを聞くことができた。
インタビュー・編集:TOKEN
文:胃の上心臓
濃密な「俺ガイル」アニメ10周年を振り返る
――「俺ガイル」がアニメの初回放送から10周年を迎えました。これまでを振り返ってみていかがでしょうか?
渡:もう10年もの時が流れたという事実に驚きがあります。途中、原作の続刊が中々出ない時期もありましたが、それでもアニメやイベントなど何かしらの形で常に「俺ガイル」が側にありました。
先日、10周年のオールナイト上映会でキャストと顔を合わせたのですが、もうアニメ第1期や2期が何年前なのか、年数がパッと出てこなかったりしました。区切りと言えば区切りなのですが、完結後もずっと何らかの展開が続いていましたし、今なお1年目かのような感覚があります。
堀井:10年と聞くと長い時間のように思えますが、本当にそれだけ経ったのかと感じるくらいに毎年何らかの動きがありました。自分は出演者としてもファンとしても「俺ガイル」を追いかけているので嬉しいです。
こんなコンテンツは中々ないじゃないですか。こうやって10年も展開を続けられたのは、ファンのみなさんが応援を続けてくださったからです。キャスト・スタッフもわたりん(※渡先生の愛称)を筆頭にプロの仕事をし続けていますし、それがファンのみなさんにも伝わっていると感じます。
――堀井さんはいつ「俺ガイル」を知ったのでしょうか?
堀井:俺ガイル第1巻発刊前からわたりんと別作品でお仕事を一緒にしてまして、その時に「新作です」と第1巻を貰ったのが出会いでした。当時のライトノベルはラブコメがトレンドでしたが、他のどの作品にもない一癖も二癖も違う魅力がふんだんに含まれているように思いました。まさに渡 航節と言いますか。
前作の「あやかしがたり」も読ませてもらっていたので、今回はこう来たかと驚いたんです。ラブコメ要素の強かった1巻から2巻でまた毛色が変わり、そこから本格的に独特な魅力が感じられるようになって。どんどんこんなの読んだことがないという感覚にのめり込んでいきました。
そしてアニメ化が決まった3巻の発売あたりで自分も戸部役として関われる事になり、収録やオンエアが進むにつれ、原作もアニメも好きになっていきました。だからこそコラボをやっている店舗や聖地など、色々な場所に足を運ぶようにもなっていきました。
ああいった企画を見かけるとついつい参加してしまうんです。本当は江口(※比企谷八幡役の江口拓也さん)とかヒロイン陣がいてくれた方が良いですが、それはなかなか難しいですからね。僕に気づいた俺ガイルファンの人に「やっぱチャドさんいた!」とか思ってもらえたら面白いかなと思っています。
今日まで秋葉原のボークス秋葉原ホビー天国2で開催している「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完 第三回 総武高校奉仕部模擬店」に仕事前に行ってきた
— 堀井茶渡@えぐわたちゃど (@chado_horii) May 14, 2023
今回の描き下ろしのゆきゆいろはすもみんな超可愛いし、入口にガッツリ俺ガイルで実に素晴らしい#oregairu#俺ガイル pic.twitter.com/FuaCoyeLyf
――1人のファンとして渡先生にお話されたりはするのでしょうか?
堀井:基本的にファンとして話しかけるのは本人もやって欲しくないと思うので……。
渡:そうですね。茶渡さんに感想言われると腹立つんで(一同笑)。
堀井:なので「めっちゃ面白かった!」くらいのふわっとした感想に留めています。新刊が出たらTwitterで感想を呟いているので、多分それを目にしているだろうなと。
――「俺ガイル」という作品を通して色々な活動をされたかと思いますが、特に印象に残っているエピソードはありますか?
渡:やれることは大体やってきましたが、歌やイベント稼働は単純に他のキャストより僕の稼働費が安いからじゃないかと(笑)。費用対効果的に僕が少しでも人を集められるなら、キャストひとりのスケジュールを貰うより全然安いのは間違いないですし……。
堀井:ちゃんと需要もあるから! 「俺ガイル」のマスコットキャラクター的なところもあるし、キャスト陣が弄りやすくて場が盛り上がる。
渡:あと他のキャストのスケジュールが取れなかったので、茶渡さんとアメリカに行ったことも印象深いです。オファーをかけても流石に来ないだろうと思ったのですが……。
堀井:キャスト番手的にはかなり優先度は下ですしね。話を貰った時は本当に俺で良いのかな? とか、アメリカの人たちは戸部を認識してくれてるのかな? って思っていました。
渡:でも向こうの方たちも戸部をちゃんと認知してくれていました。不安はあったけれど結構みなさん見てくれているんだなと思いました。後はクレジットには掲載されていないのですが、アニメでしれっとガヤの収録に参加したりしていました。
堀井:実は男性キャストが少ない時とかに出演しているんです。本編の収録後に江口と僕とわたりんとでガヤ収録してました。例えば第3期「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」でのプロムのリハーサルシーンは僕たちがやっています。よく耳を澄ましてみてください。
渡:けど茶渡さんはガヤでもバレるので、あまり声を出さないようにしていたり……。
堀井:なるべくちょっと声を変えてましたね。
渡:流石にクレジットが出ると恥ずかしいので掲載しなかったのですが、とにかくお金のかからない人として呼ばれる事が多かったなと。
堀井:本当に便利に使われてるよね。
渡:歌とかもそうですけれど、誰かが喜んでくれたり、少しでも話題にしてもらえたらそれで良いと思ってやっています。
――会場で原作者がパフォーマンスして、あそこまで喜ばれることは無いですよね。
堀井:そもそも原作者が歌うって謎ですし、続の放送後の「俺ガイルFes.」イベントのライブパートでもわたりんがオーラスを飾ったりしていますから……。
渡:ハナかトリかをキャストではなく原作者がやるという。まあ、それで1ツイートでも増えるならいいかな。それを許容するお客さんの度量の深さといいますか、10年付き合ってくれた人たちなので、制作側だけでなく作品を取り巻く環境も読者視聴者の方に良い感じに育てていただけて嬉しく思います。
堀井:「俺ガイルFes.」は毎回盛りだくさんな内容なので、本当に楽しかった記憶しかないですね。キャスト陣のキャラソンや、やなぎなぎさんの生歌を聴けるし、トークも見られるし。
渡:毎回みんな大暴れするので、時間が押すんですよ……。
堀井:配信をやっている時もギリギリで。ここで終わります、後30秒で切れますみたいにモニターに出て、そのまま終わってしまったこともありました(笑)。またイベントはやって欲しいです。Blu-rayやDVDの特典映像として収録されていますし、会場に来られなかった方はそちらでチェックしてみてください。何なら今までの映像を編集したものを有料で配信したり、Blu-rayやDVDを売ってくれるなら絶対買いたいですよね。
あと今年やっていた千葉市とのコラボでは、作中に登場した聖地の位置関係を知れたりしました。現実にある場所を使っているからこそですよね。
渡:僕は実家が近いのでヒヤヒヤしましたけれども。実際に自分が居た場所だったので、昔の知り合いと顔を合わせないといいなと思ったり。なりたけ、今日は行っても大丈夫かな? 知り合いがいないといいな……と祈りながら通っていました。
堀井:なりたけコラボは念願でしたね。「俺ガイル完」の時に発表したけれど、新型コロナウイルスの影響で延期になっていたので、本当に満を持してでした。
渡:自分が中学とか高校の頃からずっと通っていたラーメン屋だったので、何か不思議な気分だなと(笑)。見慣れた光景に普通に「俺ガイル」が入っているのには驚きました。
堀井:描きおろしも可愛かったし、あのままの形でも良いから第2弾、第3弾とやって欲しいですね。えぐわたちゃどとして一度ロケに行かせてもらっていたので、今回公式としてコラボできて本当に念願が叶って良かったなと思いますね。
――渡先生の出られている配信番組で、出演者ではないのに堀井さんがマネージャー的な感じでいらっしゃったりもしていたと思うのですが、原作者とキャストの距離がここまで近い作品も中々ないですよね。
堀井:これもわたりんたる所以な気がします。「俺ガイル」の現場に僕がいるのはもう見慣れた光景なんですよ。わたりんが「俺ガイル」関連のイベントに登壇する時は、僕もなるべくスケジュールを空けるようにしています。
ガヤ笑い要因なのかマネージャー的な立ち位置なのかSP的な立ち位置かで変わってくるのですが、「俺ガイル」の色々な現場を関係者として見たくて。ある意味特等席で「俺ガイル」を楽しんでいるファンであり、関係者でもあると思っています。
渡:毎回僕の方から呼んでいる訳ではないんです。けれど何かある度に行っていい? と聞いてくるので、それならまぁ……と。
堀井:基本的にわたりんがガガガちゃんねるに出演する時も行って良い?と聞いて、ガヤ笑いをやっています。何なら、事務所に本人問い合わせ日にして貰ってスケジュールを調整するくらいです(一同笑)。
渡:これは茶渡さんだからこそというところもあります。良く知らない子だったら断ってしまうので。後はイベント中に放っておいても大丈夫ですし、特に邪魔をする訳でもないので構わないと思っています。
堀井:アニメの収録は1期の2話から戸部の出番が無くても毎回見学していました。本当ならデビューして間もない子が許可を得て参加するものなので、僕みたいに10年以上もキャリアを積んだ奴が見学しているのはおかしいんですよ。けれど「俺ガイル完」の頃には現場にいるのが当たり前になっていましたし、2期からはダビングにも参加していました。
もうキャストなのかスタッフなのかわからなくなってきています。アフレコに参加する時はもちろん仕事ですけれど、それ以外は趣味に近いです。とはいえ、自分に出来ることがあるなら微力ながらでも必ずやりたい。イベントのガヤ笑いとかはお客さんが笑っていいポイントがわかりやすくなるので、あった方が現場の空気も良くなりますし、キャストも話しやすくなるんです。
僕にできることはほんのわずかではあるのですが、コラボイベントなんかはもっとファンのみなさんに「こういうのをやっているよ!」って知ってもらって、行きたいと思う人が増えれば良いなと思って足を運んでいます。
渡:僕や茶渡さんならお金も掛からないですし、僕たちが楽しんでいる姿を見せた方が行きやすいと思うんです。この先ポップアップショップやラッピング電車や店舗なんてそうそうないだろうし、やっている内に行こうみたいなところもあったり。お葬式で流すメモリー映像をひとつでも多く貯める終活の一環みたいなところもあります。
堀井:俺ガイルコラボの現場に行って写真や動画を撮影してる時のお決まりですね。我々の思い出映像(笑)。
渡:これ遺影にするからって言ってるよね(笑)。
――江口さんを加えたえぐわたちゃどの活動も長くされていますが、普段からおふたりは定期的に交流しているのでしょうか?
渡:会わないときは数か月会わなかったりするけれど、会うときは週に3日とか4日会うこともあるし。タイミングによりけりです。
堀井:仕事仲間というより友達みたいな感覚です。わたりんの家で雑魚寝して泊まる事も普通にありますが、原作者の家に雑魚寝していく声優なんて聞いたことないですよね。
アニメ1期から3期の頃は、ほぼ毎週、わたりんと自分と江口さんとで集まって一緒にTwitterを活用したリアルタイム視聴をやっていました。収録後の飲み会もこの3人は大体最後までいたり。この時間が楽しいと感じていたので、ファンのみなさんにもお裾分けしたら面白いかなと思ったのがえぐわたちゃどの発端です。
渡:江口さんのスケジュールが中々取れず、奴とどこかに遠出する、遊びに行くみたいな事が中々できなかったからこそみたいなところもあります。
堀井:仕事としてスケジュールを確保しちゃえばいいんじゃない? ってね。ギャラも出すし。みんなで遊ぶ日を作りたかったんです。やっぱり関係性って繋がろうとしないと疎遠になっていってしまう。「俺ガイル」の作中でもまさにそういった話がありましたが、無くしたくない大事な関係なら自分の方から歩み寄りたいなと。
この業界は共演している最中に仲良くなっても自分の参加する作品によってはタイミングが合わず3、4年会わないとかザラにあるので、この楽しい関係を続けるきっかけになればという想いもありました。
ゲームオリジナルも端々から感じられる“渡 航らしさ”
※以降はゲームの内容に関する言及がありますので、ネタバレを気にされる方はご注意ください。
――ここからはゲーム「俺ガイル完」についてお聞きしていきます。発売から1ヶ月が経過しましたが(※インタビューは5月末に実施)、実際に触られましたでしょうか?
渡:このインタビューにあわせてプレイしてきました!
堀井:自分もこの記事が出る頃にはフルコンプしていると思います!
――導入部分から原作と違った展開となりますが、遊んでみて好きなシーンはありましたか?
堀井:ゲームオリジナル展開もわたりんが監修しているので、端々から渡 航節が感じられました。前作や前々作よりもその点が顕著だったので、収録台本を読んだ時もグッと来ましたし、ファンとしてはプレイできて良かったなと思いました。
ひとまず雪乃ルートをクリアしたのですが、終盤の展開は夜中にひとりでプレイしているにも関わらず、大きな声が出るくらい驚きました。
終盤で陽乃が本音でアドバイスしてくれるオリジナルシーンがあったのですが、あまりに綺麗な姉妹感に、本編では見られなかった光景を見れた嬉しさがありました。そういうifを求めていた人は、そんな展開をボイス付きで楽しめるので絶対にプレイした方がいいと思います。
(イベントスチルの資料を見つつ)男子たちのサウナシーンも好きですね。海老名さんが見たら「愚腐腐ッ…」と興奮するなと。絵面だけ見ると美少女ゲームではないですからね。みんな顔を上気させているし、そういうゲームかな? って思っちゃう。戸部がタオルを持っているけれど、もしかして隼人くんのタオル取っちゃったのかな? みたいに見えますし。
――ご自身が演じられた戸部についてはいかがですか?
堀井:八幡と絡むシーンは純粋に楽しみでした。原作でもアニメでもふたりが絡むシーンはそこまで多くないですし、本編では描かれててもアニメでは尺の都合上カットされるシーンもあったので。今回のゲームでもそれが見られたのは嬉しかったです。
八幡と喋っている時の戸部は、割とそこまで騒がない素の一面を出しているんです。うるさい奴ではあるのですが、良い奴ではあるので。だからゲームで“とべはち”を楽しんで貰えたらと思います。
戸部みたいなチャラくてウェイウェイしたキャラクターって、ともすれば苦手な人が多いじゃないですか。だからそんな中でもちょっと違う戸部の良さを感じてもらえると嬉しいです。原作からそういうキャラクターとして描かれているからこそ、僕がそういう彼の一面を表現できていればいいなと思っています。
――渡先生はシナリオを監修されているそうですが、いかがだったでしょうか?
渡:目を通しましたし、かなり書き直しています。これは毎回の作業になってきているのですが、特に今回はプロットから何稿も重ねているので、一番手間がかかっています。
改めてプレイしたと言っても全部シナリオは把握しているのですが、やっぱりキャスト陣の声でセリフを聴くと良いなって感じるシーンがたくさんありました。自分ではさらっと書いたつもりだった割に、えげつない破壊力を持っているなと思ったところもありました。
例えば雪乃と“指輪”がキーになるとあるCGのシーンでは、「コイツ何してくれてんの!?」みたいに思ったり。そうやってキャストの力で破壊力を増したシーンは多々あるんだろうなと思います。
後は雪乃ルートと結衣ルートについて。表裏一体になるように構成段階から考えていたので、お互いのインタールードを含めた関係値の揺れ動きをゲームで見ると、いちプレイヤーとしての感情の逃げ場がなくなってしまい困ってしまいました。見ているこちらの追い詰められ方が半端ないなと。
ディスティニーランドを回っている時にちょっと別行動した瞬間のシナリオとか、なんでこんな酷いシナリオを書くんだ!?と思ったくらいです。ちょっと俺、ルート選択を間違ってしまったかな? みたいに思いました。もうこれを書いた奴は人の心を持ってないんじゃないだろうか、というくらいの追い詰め方になっていて。
けれどそれだけキャラクターたちもプレイヤーのみなさんも追い詰めたからこそ、最後の破壊力がえげつなくなって良かったなと思っています。
――原作で使われたセリフとかも盛り込まれていましたよね。
堀井:ifだけれど、あり得ない話ではないといいますか、あったかも知れない話になっているんですよね。わたりん監修でちゃんと整合性が取れているからおかしいところがないんですよ。だからこそ、プレイしていて「ここはこう来たか!」という驚きがありました。それこそ、終盤の破壊力の高いセリフは何回も聴き直しましたし。こういう遊び方ができるのは、ゲームならではだよね。
渡:辛くて泣いてしまうようなシーンもありましたが、今回はキャラクターたちの掛け合いが楽しいシーンも多くて良かったなと。特にいろはす(一色いろは)は誰よりもキレッキレだったので、改めて佐倉綾音はこういう性格の女の子を演じてもらうとピカイチだなと感じました。もうね、いろはすはほんと世界一可愛いクソ女だなと。
――アニメと連動してこれまでゲームが3作発売されました。これは相当珍しいと思うのですが、その点についての感想はいかがでしょうか?
渡:これがバトルもバリバリにやってる原作なら納得ですが、「俺ガイル」ですからね。いわゆるノベルゲームというジャンルが衰退を見せ始めて久しいこの時代に、3作目を出してもらえるのは驚きました。ノベルゲームに馴染みのない人も増えているだろうに、よくやるなとも思いましたね。
堀井:他人事!(笑)
渡:スマートフォンで遊ぶソーシャルゲームだと、どの選択肢を選んでも最終的なシナリオは変わらなかったりするので、逆にノベルゲームは体験として新鮮なのかもしれないと思ったり。大体1話につき40~50タップという制限がない、そういうスマートフォンのゲームのお約束を無視したノベルゲームって、こうやって超時間向き合うゲームだったよなと改めて感じました。
堀井:腰を据えてやる感じだよね。
渡:僕自身もノベルゲームをそもそも通ってきているから、シナリオはしっかり書かないとって意気込んでいました。だから書き応えがありましたし、遊んでいてやり応えもかなりあったと思っています。
――今回は過去の2作と比べるとシステムはシンプルで進めやすかったですよね。
堀井:1作目(「やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。」)は本当に難しかったですよね。どうやっても平塚先生に辿り着いてしまって……。
渡:そもそもルートに入れないんですよね。僕もめっちゃ難しいなって思ったし。
堀井:滅茶苦茶シビアで、今まで遊んだノベルゲームの中でも、クリアできなかったのはあの作品しかないんじゃないかと思うくらいでした。
――そういう点で、今作は物語そのものを楽しめるような感じでしたね。
堀井:シナリオが重要なのでゲームシステムを凝り過ぎなくても良いと思いました。
渡:やっぱり1作目が難しすぎた記憶をみんな持っていたので、そこからの2作目(「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続」)はルート的な意味でのボリュームを増やしました。3作目は物語により没入させて深掘りすることを目指したことから、この形にまとまりました。
1作目から3作目まで毎回コンセプトが違いますよね。だから今回は、ゲーム性の側面を追及するというよりは、シナリオを意地でも読んでもらいたいという方向になりました。
MAGES.広報:プロデューサーの柴田(編注:柴田太郎氏。「メモリーズオフ」シリーズのプロデューサーなどを務める)から聞いたのですが、渡先生が悩んでいた部分として「ルート分岐において、八幡の行動をプレイヤーが選択するのはありか」というのがあったそうですね?
渡:八幡の意思をプレイヤーが選ぶことに対する心情の乖離が気になったんです。プレイヤーのみなさんは八幡に感情移入しているのに、そこで彼の意思や感情を選択できてしまうと凄く違和感があって。「でも八幡はそうしない気がする……。だって八幡だぜ?」という引っかかりがあったんです。なので、八幡が置かれるシチュエーションのリアリティ、この状況なら彼は動くだろうという説得力を高める方に注力しました。
最初の奉仕部存続云々についてもそうですが、状況が動いているならそれに即して八幡の心情も動くし、決断や選択にも繋がるかなと。プレイヤーのみなさんもそこを追いかけられるのではないかと考えました。なので、選択肢はキャラクターではなくシチュエーションに振っています。
結果的にシナリオ量が増えて大変なことになったのですが、場所と行動にシチュエーションが伴ってはじめて八幡の感情が動くという、少しめんどくさい段階を踏む形になったと思っています。
堀井:こんなに選択肢が出てこないノベルゲームを、僕は遊んだことがありません。本当に要所要所のシチュエーションでどのヒロインとのルートに進むのか決まっていくので、遊んでいると選択肢が1度も出ないまま1時間くらい経過していることもありましたし。
渡:遊んでくれるプレイヤーの方があくまで八幡というスタンスなので、八幡が好みのヒロインを狙って細かく行動を起こしていくなんてことは、まあないだろうなという部分もあります。だから選択肢自体もシンプルになっていきました。
――今回も限定版にOVAが収録されています。その感想もお聞かせください。
渡:「俺ガイル完」のBlu-rayとDVDに特典として収録していた小説(「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。-新-」)の内容と被るのですが、実はアニメのシナリオの方を先に書いていました。自分で書いていて良いなと思う部分が出てきたので、特典小説として逆輸入しました。
今回のOVAを見てようやく「俺ガイル」がちゃんと終わったと思ったし、新しく始まろうとしているぞという感覚も覚えました。本当に佐倉さんと悠木碧さんの“いろこま”コンビの掛け合いが気持ちよくて、ずっと聞いていたいと思うくらいでした。
堀井:いろこまの素晴らしさは「俺ガイル完」の最終回で感じられていたので、OVAとして楽しめるのは本当に嬉しかったです。「俺ガイル」ってキャラクターたちが生き生きとしていて、掛け合いのテンポがめちゃくちゃ良いじゃないですか。今回の物語だと結衣が覚悟を決めてあのラストを迎えますけれど、ちょっとした宣戦布告もあるので、本当にあの3人らしいなって思いました。
「俺ガイル完」を見て「俺ガイル」が改めて本当に好きだと思った人こそ、今回のOVAは後日談としても区切りとしても絶対に楽しめるはずです。僕は最後に泣きました! だから今回のゲームを作ろうと思ってくれたMAGES.さんには感謝を伝えたいです。ゲームがなければこのOVAは見れませんでしたから。
渡:本当にありがたいです。僕も仕事を振られないとやらない人間なので……。
堀井:TVではあそこまででしたが、本作に関してはゲームとセットで1万円ちょっとなので、お得でしかないですよ。この記事を読んでくれている人は、今すぐにでも購入したほうがいい!
渡:結果的に3ヒロインそれぞれのスタンスが見られましたし、今回のゲームにもそれなりにハマったので、いいパッケージングだったと思います。ゲームとあわせて楽しんでもらえると嬉しいです。
堀井:ゲームの限定版を購入しないと見れないものですが、これは見た方が絶対にいいと思います! ゲットしておかないと絶対後悔するOVAだよ!
渡:これを見てくれたらもっとアニメが見てぇなと思ってくれるんじゃないかなって。
堀井:「俺ガイル-新-」のアニメ見たい! 作って! みたいにね。
渡:そういう声をあげていただくためにも購入していただいて……。
堀井:我々は「俺ガイル」のアニメをもっと見たい! 「新」も「結」も見たいんだ! けれどそのためには、わたりんが原作を書かなければいけなくて……!?
渡:そのためには数字的な裏付けが……!! けれど、みなさんに盛り立てていただけるなら頑張れる気はしています。そうやってみなさんに買ってもらったタイミングで、同時視聴会とかやりたいと思っています。やり方が一生わからないんだけれども(笑)。
堀井:大丈夫、俺が教えるから(笑)。
好きなゲームの話や今後の展開への抱負も
――ゲームメディアでおふたりがインタビューを受ける機会は珍しいと思いますので、好きなゲームの話もぜひお聞かせください。
渡:僕はJRPGを遊ぶ事が多いです。「テイルズ オブ」シリーズは最新作が発売されると仕事を休んで3日くらい家に籠りますし、「テイルズ オブ アライズ」もずっとプレイしていました。
あと「アルトネリコ」シリーズがめちゃくちゃ好きでしたし、「幻想水滸伝」のリメイクはずっと待っています(編注:「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」として2023年に発売予定)。ただ発売されると3日、4日稼働しなくなってしまうので、僕が暇になった暁にいいタイミングで出して欲しいです。
堀井:僕は「俺たちに翼はない」という作品が印象に残っています。この作品があったからこそ僕は「俺ガイル」に関わっているんです。わたりんが心の師匠として慕う王雀孫さんの作品ですし、戸部の原型とも言えるキャラクターも登場しています。
渡:原型にはなってねーよ!(一同笑)
堀井:この作品があったから僕が「俺ガイル」に入れたのかな? という部分もあるので、僕の人生において「俺ガイル」と並ぶ大きな存在になっています。だから今はハード的に難しいかもしれないのですが、触ってみて欲しいです。
渡:「俺ガイル」は一作目と二作目のゲームを「おまとめセット」として出し直してもらったので、ありがたかったですね。
――「俺ガイル」という作品が長く続いた要因について、渡先生や堀井さんはどのようにお考えでしょうか?
渡:めんどくさいキャラクターたちのめんどくさい物語がすごく長く続くのが「俺ガイル」ですが、ファンのみなさんがそれに耐性を持っているといいますか。そんなめんどくささを我が事のように捉えてくれる方が多かったからこそ、さらにめんどくささが加速してここまで長く続いたんじゃないかなっていう気がしています。
多分ファンのみなさんの心にしっかりトゲをさし続けたからこそ、自分たちの青春を振り返るかのごとく「俺ガイル」を見てくれていたんだと思うんです。最近では中学生の頃に読んでいました、みたいな子と現場で会ったりするんです。すると、「『結』は次いつ出るんですか?」と聞かれたりして……(一同笑)。
けれどみなさんがそうやって好きでいてくれる、支え続けてくれるからこそ続いているんだなって思います。後はイベントとかを開催すると、みなさんよく会いに来てくれるんですよね。それに関わるプロデューサーたちも毎回気合が入っていますし、そういう色々な人たちの熱意がそうさせてるんじゃないかなって。
僕からやりましょう! とは一言も言っていないんですよ。常に誰かが何かをやってくれるからこそ、「俺ガイル」は続いたと思っています。だからこれから先もずっと、何かを催促し続けてください。やっぱり数字が出れば続けられるので、色々な形でたくさん応援していただけると嬉しいなと思います。
堀井:僕はわたりん自身や、「俺ガイル」という作品そのものに魅力があってこそな部分があると思いますね。作品自体の魅力があるからこそキャストは台本を読み込むし、スタッフさんたちもキャラクターたちの表現や動かし方の細部にまでこだわる。それぞれがプロの仕事をしてくれるからこそ、みんなひとつふたつと、自分の出来ることのさらに上の段階を目指していける。それがファンのみなさんにも伝わっているんじゃないかって思います。
その起点がどこかというと、やっぱり渡 航先生と「俺ガイル」じゃないですか。原作から夢中に読んで思い描いたものが、みんなの力で形になっている。渡 航じゃなかったらここまでやれなかっただろうなって思います。
わたりんの人柄的に、プロデューサーたちもやろうよ! ここはどう? みたいに提案しているのだと思うし、作品でも八幡のところになんだかんだみんなが集まってきて、力を貸してくれるじゃないですか。そして最終的に絆が生まれてという流れがエモいじゃないですか。本当に「俺ガイル」の座組も似ていると思うんですよね。
八幡とわたりんを起点にみんなが集まってきて、それぞれのやれることをやる。その上で何か良かったねと言える関係を構築できているということが、端から見ていて僕は似ているなと思っています。
渡:似てはいないかな……。
堀井:いやいやいや、俺の視点からはってことだからさ!
渡:まあ個人の感じ方はそれぞれだからね。これ以上は止めておこう。
――アニメ10周年でまだまだ展開が続くと思いますが、これからの抱負をお聞かせください。
渡:ようやくアニメ化10周年で、10個の企画を半ばくらいまで発表しているのですが、もうちょっと展開があるのでこれからも楽しみにお待ちいただければと思います。
10年があっと言う間だったので、多分20年もあっと言う間だと思うんです。なのでもう後20年くらいはお付き合いいただきたいというつもりで、僕も今色々と動いています。その筆頭が「結」なのですが、それに限らず表に出していないものがブワっと後ろに控えているんです。もうゲームの新作が出てもプレイする時間が無いくらいです。
だから引き続き応援していただければ色々なものをお見せできると思います。これからもぜひお付き合いください。
堀井:もう一生「俺ガイル」をやって行って欲しいなと思います。ファンとしては年一でも何か供給があればそれだけで生きていけるものだから、ずっとやって行って欲しい。アニメだろうが原作だろうが、コラボショップでのfeel.さんの可愛い描きおろしだろうが、それだけで本当に嬉しいなって思えるので、一生何かしらの「俺ガイル」が動いてくれると幸せですね。
それこそ千葉コラボやなりたけコラボも好評だったから、第2弾やりましょうとかもいいですね。この先あと半年くらいは10周年イヤーが続くので、この先も動きがあるだろうなと思います。今から企画を立ち上げても間に合います。関係各所の方は、製作委員会に企画を持ち込んでいただければ可能性はあると思います。ぜひこの10周年のお祭りを最後まで楽しんで、そして11周年目を迎えましょう。
渡:この先も15周年、20周年と同窓会のような形でまたみなさんと集まれたらと思っています。ファンのみなさんと一緒に、これから先は100周年を目指して頑張りたいと思います!
――ありがとうございました。
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